東雲りんのアバター入門!② アバターによってアイデンティティはどう変化するのか

アバターとは、自分の分身となるキャラクターのことを指し、現在もSNSやゲームで多く使われています。ソーシャルVRでは、アバターの価値はより重要になっており、アイコンやキャラクターのみならず、もう1つの身体といっても過言ではありません。

東雲りんのアバター入門では、ソーシャルVRにあるアバターの背景・文化をなるべく分かりやすい形で噛み砕き、まだ触れていない人の手助けになるようにお届けします。

前回は、「アバターになる」ことはどういうことかと紹介したところで、今回はアバターと自身のアイデンティティがどのように結びついているのか、掘り下げていこうと思います。

アバターとアイデンティティの結びつきは、人それぞれ異なります。例えば、「アバターは自分の分身」という人もいれば「アバターは自分の子供のように愛でるもの」という人もいます。

筆者はアバターを人と話しやすくなるフィルターのようなものと考えています

今回は、ソーシャルVRのヘビーユーザー3人による鼎談形式でお届けします。なるべく様々な視点を出すため、物理肉体の性別とアバターの性別の組み合わせや、プレイスタイルが異なる人を呼んできました。

この記事を読むことで、メタバース住民がアバターに対してどのような考えを持っているのか理解する最初の1歩になれば幸いです。

今回の鼎談では、左からゆいぴさん、蘭茶みすみさん、らいずさんを迎えて行いました。また、今回の鼎談はソーシャルVRユーザー全体の総意ではないことは予めご了承ください。

今回の登場人物

筆者
(東雲りん)

まずは自己紹介をおねがいします。

蘭茶みすみ

みなさんはじめまして、蘭茶みすみと申します。メタバースでアイドル活動や、Vtuber活動、文章でメタバースについて語ることをしています。

らいず

らいずです。インターネットで15年ぐらい遊び人をやりつつ、オンラインゲームをやっていたらVRChatにたどり着いた感じです。普段は、何か作って公開しているわけではなく、ただ遊んでいるだけです。

ゆいぴ

こんにちは、ゆいぴと言います。元々現実ではネイリスト、アイリストとしてサロンを経営していたのですが、今はメタバース上でお洋服やアクセサリーなどの女性向け衣装を取り扱う「Melty Lily」というショップをやっています。

自分の身体をデザインできるのがアバター

ーー蘭茶さんは、どのような経緯で今のアバターになりましたか。

蘭茶みすみ 現実の肉体は男性なのですが、ずっと女の子になりたいと思っていて、女の子の方が向いていて、私じゃないかと考えていました。現実の肉体は、あくまでも生命を維持するための箱であって、アバターの自分が本来の自分を表していると考えています。

らいず そういえば、以前どこかで蘭茶さんが「現実の肉体はアバターの”内臓”だ」と言っている場面があって、すごく面白いなと思っていたのですが、そのことについて聞いてもいいですか。

蘭茶みすみ アバターの肉体は自分でデザインできて、逆に現実の肉体は自分でデザインできないものです。現実でも、お化粧をしたりしている人もいると思うのですが、アバターはお化粧の延長線上に立っているようなものかなと考えています。

ーー蘭茶さんの話を聞いていると、現実の肉体はいらないと考えているように感じます。自分としても、肉体が不便だなって気持ちは分かります。一方でソーシャルVRのコンテンツに触れることによって、現実の歴史やコンテンツの偉大さを感じるようにもなりました。蘭茶さんは、同じように感じたことはありませんか。

蘭茶みすみ 自分も現実で山登りの趣味がありますので、現実でのコンテンツの良さを理解しているところはあります。それでも、現実の肉体が自分で決めることができない状態を克服できないのが辛いと思っています。

ーー蘭茶さんの着てる服に何かこだわりとかはありますか?

蘭茶みすみ 現実で女装をしているのですが、その時の服装をしていることがありますね。アバターで着ることによって理想の自分に近くなります。他の人は、アバターを変えることはあると思うのですが、自分はそこまで変わりませんね。

らいず ゆいぴさんがさっきからジロジロと服を見ているのですが何をしているのですか。

ゆいぴ 服を作っているので、どんな服の構造になっているのかなって見ていました。

青春の再履修

ーーらいずさんはどのような経緯で今のアバターになっていきましたか。

らいず 最初は女性アバターを使っていたのですが、馴染まなかったのでやめました。今は14歳の男の子という設定男性アバターを使っています。

ーー14歳というのに理由はありますか。

らいず 私が現実で14歳だった時期って、インターネットにのめり込みはじめた頃で、同世代がいわゆる”青春”をしている頃、自分は人生の老いと衰えについて考えていたんですよね。それで外見に気を遣うことに興味が出なくて。

バーチャルの世界で青春時代のやり直しをする人は多くいると思うのですが、自分も青春時代にしなかったことをやることにしました。自分はそれを「青春の再履修」って呼んでいて、その履修内容の1つが「男の子を楽しむこと」だからですね。

ーーらいずさんの格好は、14歳の男の子を楽しむものということですね。

らいず そうですね。今の格好も14歳の男の子の身体で、ファッションを楽しんでいます

ゆいぴ 確かに14歳の男の子っぽいし、しまむらとかで中高生向けに売ってそうな服な感じがする。ちなみにらいずさんは、大人にならないとできないことがあると思うのですが、興味はないのですか。

らいず 14歳でいるのは、大人になるに連れて何事も驚くことが減ってしまうと思うのですね。精神的な衰えを防ぐための心構えというのがあります。後は、自分はお酒は飲まないし、ギャンブルもしないので、逆に大人の遊び方を教えて欲しい感じです。

ゆいぴ じゃあ、14歳の遊びは知っているってことですか?

らいず 14歳の遊びも全然知らないですね。外で友達と遊びに行くとかも全然わからない感じでした。だから、学園時代の遊びが鮮麗に映っていますね。

ーー自分としてもらいずさんと似たような感じで、学園型コミュニティの私立VRC学園でフレンドと遊んでいるときに「ああ、これが放課後で遊ぶか。楽しいな」って思ったので分かります。

らいず ミニ四駆とかの学園時代の遊びをずっとやっていたい感じですね。

かっこいい女性像

ーーゆいぴさんは、今に至るまでにアバターはどのように変わっていきましたか?

ゆいぴ 案内をしてくれた人がロリのアバターだったこともあり、最初はロリのアバターを買いました。その後、ミラーを見て動かしたときに「何かこれって違うな」ってアバターが自分だって認識することができませんでした。

ーー違和感を感じた理由というのは、なりたいアバターと見ていたいアバターのズレでしょうか。

ゆいぴ その気持ちは分かるのですが、ロリのアバターを買ったときは、どんなアバターがいるのか分からなかったのが大きいですね。自分はかっこいい女性が好きなので、自分でかわいい動きをしないものだから、ギャップを感じてしまいました。

ーーかっこいい女性というのは具体的にはどのようなものですか?

ゆいぴ 自分の中でのかっこいい女性像は、好きな髪色である黒髪があるかなって思っています。これまでにも、4体アバターを使っているのですが全員黒髪にしています。

ーー改変するのは大変なのですが、その行動力はどこからきていますか?

ゆいぴ 元々好奇心が強い性格なので自分でとにかくツールを触ったり調べたりして、アバターを可愛くしたい一心でした。それで、次の日には成人の女性アバターを買って、メイクやネイルをさせてたんです。

ーーちなみにメイクやネイル以外にはどのようにアバターを変えていきましたか。

ゆいぴ 後は服装に関しては、元々アバターを販売しようと考えていたこともあり、自分で作った服を着せています。作る服の種類は、アバターに似合うものや、リアルの自分には年齢や体型などの理由で着れないものにしています。どの服も、憧れやなりたい自分になるためにしています。

ゆいぴさんが自ら制作し着ている服

まだソーシャルVRをやったことない人に向けてメッセージ

ーー最後にソーシャルVRをやったことのない人に向けてメッセージをいただいてもいいですか?

らいず 前に他の方がツイートしていた内容に影響受けたものですが、ソーシャルVRやメタバースって”あの世”みたいな場所だと思っています。

現実にいくつかある宗教でも”あの世”や”天国”に該当するものがあると思います。その”天国”では誰もが一度現実の肉体から魂が抜けて、老いも怪我も病気も知らない好きな肉体(アバター)で毎日過ごせるようになる。これがソーシャルVRやメタバースでの生活に近いかなって考えています。

蘭茶みすみ やったことのない人に向けて言いたいのは、ソーシャルVRの世界ではさまざまなバックグラウンドを持っている人がいます。その中で、自分のなりたい存在になることや好きなものに突き進むことで自分の世界を作っています。ソーシャルVRは、お互いに尊重している多様性に富んだ世界だということを知ってほしいです。

ゆいぴ ソーシャルVRをやるにはVR機材のハードルは低くはないけども、やることで視野が広がったり、見たことのないものを見れたりします。仮に「自分には合わないな」って思っても、現実世界でのありがたさが分かると思います。VR機器のレンタルでもいいので、私達の生きているこの世界を見てほしいです。

あなたもアバター選びをしてみよう

今回の鼎談を通じて、ソーシャルVRのユーザーがいかにしてアバターを認識しているのか、選んでいるのか分かったと思います。

次回は、アバター選びについて種類から探し方まで、ソーシャルVRのユーザー目線でお届けします!