7月8日、東京理科大学 理工学部はVRChatにて「メタバースで「創域」の可能性を探る~VRChatで異分野交流を~」を開催しました。今回のイベントは、東京理科大学 理工学部が2023年4月に「創域理工学部」と名称変更するにあたりメタバースで異分野交流をしていく内容です。
講演者の中には、VRChat内の学術交流コミュニティ「VRC理系集会」の主催Kurolyさん、司会進行にはMeta Quest2アンバサダーのおきゅたんbotさん、株式会社TAM / TAMTO METAVERSE LAB 角谷 仁さんとVRChatに精通した人と連携が行われていました。
VRC理系集会は、「メタバース空間上で研究者の学術交流」をミッションとしていることもあり、今回の東京理科大学と連携をしたことに意義を感じました。
メタカル最前線は、イベントの様子をレポート。これからのメタバース活用や異分野交流の可能性をお伝えします。また、YouTubeにてアーカイブが残っているため気になる方はぜひ確認ください。
会場の様子と挨拶
今回のイベントでは、VR会場と東京理科大学内の会場が用意されています。またVR機器のレンタルもあり、参加者はVRChat経験者と未経験者の半々になる形になりました。
冒頭では、学長はフォトグラメトリーによるリアルアバター、学部長はホットドッグのアバターで挨拶。学部長の挨拶では「学部長だけどもホットドッグです」と登場し、会場には笑いが起こりました。
大学教授による講演発表
2人の大学教授からVRChatの空間を活かした講演発表が行われました。
まず行われたのは、建築学科 宮津 准教授から防災研究 地震設備「21号館実験棟 建築構造・材料実験室」に関する発表。リアルタイムで中継を行い、地震を擬似的に起こせる装置を使い震度の比較を行いました。
発表の中では、装置で出した震度はどれほどか、VR会場にいる人達に問いかけるクイズも合わせて、リアルとバーチャルの掛け合いを行ったのが印象深いです。
2人目は、国際火災科学専攻 水野 准教授から防災研究 火災設備「火災科学研究所実験棟」に関する発表。研究施設で、火がどのように燃え上がるのか実験した3D映像を、教授がVRChatに来てコミュニケーションを行う内容。会場では3D映像が流れ、燃え上がる煙の勢いに見ている人が引き込まれるほどの迫力がありました。
参加者との質問を受けて回答する場面もあり、教授とソーシャルVRのユーザーが、気軽にVR空間上で学術交流ができることを実感しました。
VRChatの集会を科学的に分析!? 理系集会のKurolyさん発表
大学教授の発表の後は、有志の発表にVRC理系集会のKurolyさんによる「メタバースと異分野融合」のスライド発表が行われました。
内容としては、分野融合の意義を確認した後に、コロナによる対話の機会が失われている事実に触れ、VR空間上で代替できるか検証する流れです。
VRC理系集会の参加者から対面時間を算出するアルゴリズムを作成し、検証しました。検証の中では、多種多様なバックグラウンドを持つ参加者同士の会話や、異分野交流に繋がる会話が発生したことを考察しました。
VRC理系集会のデータになりますが、VRChatの多くある集会系イベントがどのような効果があるのか調査した例は貴重だと思います。VRChatユーザーは、Kurolyさんの講演を見て、普段遊んでいるときの様子が科学的にはどうなのか、ぜひ見てほしいです。
パネルセッション
発表が終わると、4人の発表者によるパネルセッションへ移りました。会場のワールドにパネルや説明用の3Dモデルが設置され、参加者は気になる発表者へ向かいました。
パネルセッションでは、3Dモデルを展示し、立体的に描けるペンを使ってどのような構造なのか説明する場面もあり、バーチャルならではのやり方で伝わりやすいと感じました。
Kurolyさんコメント 多くの人へ活用できる大きな一歩
メタカル最前線では、Kurolyさんより今回のイベント開催した感想を貰いました。
今回のイベントを通じて、志や目的が近い企業や団体とソーシャルVRのコミュニティが連携を取ることで、より充実したメタバース活用していけるのではないかと感じました。イベントに使われたワールドは今後公開する予定のため、気になる方は今後の情報を追ってみましょう。
●参考リンク
・東京理科大学理工学部(Twitter)
・VRC理系集会(Twitter)
今回のイベントのように、アカデミアが学術的取組の選択肢としてメタバースを採り入れるという動きは、今後のメタバースを利活用した学術交流を広めていく上で大変重要な一歩だと感じています。
こうした一歩一歩の踏み重ねを丁寧に続けていきながら、将来的に当たり前の選択肢としてメタバース学術イベントが定着していくことを期待しています。