みなさん、「アバター」と聞いたら何を思い浮かべるでしょうか。アバターとは、自分の分身となるキャラクターのことを指し、現在もSNSやゲームで多く使われています。例えばSwitchのゲーム「あつまれどうぶつの森」で自分の分身を作って住民と交流をしたことがある方もいるかもしれません。
ソーシャルVRでは、アバターの価値はより重要になっており、アイコンやキャラクターのみならず、もう1つの身体といっても過言ではありません。
しかし、触れたことがない人からすると「そんなにアバターに思い入れってあるの?」「なぜ女性のアバターを使っている人が多いのか」「アバターにファッションをするってどういうこと?」と様々な疑問が思い浮かぶしょう。
ソーシャルVRのアバターを取り巻く背景・文化は、触れたことのない人からすると把握するのは難しいと思います。筆者自身、ソーシャルVRで遊んでいく中で学んでいくことが多くありました。
今回のアバター入門では、ソーシャルVRにあるアバターの背景・文化をなるべく分かりやすい形で噛み砕き、まだ触れていない人の手助けになるようにお届けします。
全4回で、VRの進化から、アバターのアイデンティティ、アバターの種類、アバターのファッションと様々な観点から紹介。今回の特集ではアバターの背景・文化をお届けするため、アバターの導入方法などの操作については触れません。
特集一回目では、ソーシャルVRのアバター特有の要素、自由に動かせる身体・変わる目線・VR感度について紹介していきます。この記事を読めば、あなたも「アバターになる」ことを理解できるようになるでしょう。
6DoF VR技術による圧倒的な没入感の向上
この記事を読んでいる人の中には、昔のVR機器やスマホVRで遊んだことがある人がいるかもしれません。その時は、頭を動かして360度映像を眺めるようなことをしていませんでしたか?
実は、今のソーシャルVRで遊んでいる人たちのVR環境は、その頃から大きく変わっています。
みなさんは、VRで遊ぶ上で欠かせない機能、DoFをご存知でしょうか。DoFとは、Degree of Freedomの略でVRの移動する自由度で、現在では3DoFと6DoFの2つがあります。
3DoFは、頭と首の回転や傾きを検知し、頭を動かすと周囲の映像を見ることができる状態です。Oculus GOなど旧世代のヘッドセットやスマホVRは3DoFを使ったヘッドセットになります。
6DoFは、3DoFの頭と首の動きと傾きに加え、前後・左右・上下の移動を含めて検知するものです。頭と首を動かして周囲の映像を見るのみならず、自分の身体を移動するとVR空間も移動ができるようになったのです。MetaQuest2などの主流のヘッドセットは6DoFで、ソーシャルVRで遊んでいる人も、6DoFの環境です。
つまり、ソーシャルVRで楽しんでいる人たちは、棒立ちで立っているわけではなく、全身を動かして楽しんでいるということです。イメージとしては、3DoFではかわいい生き物を見るだけだったのが、6DoFだと屈んで実際になでることができるものです。
VR機器の進化によって、これまで以上に没入感を感じながらVRを主体的に身体を動かして楽しめるようになったわけです。
「目線」が変わる衝撃
ソーシャルVRで遊ぶ時はアバターの視点から遊び、アバターから見る目線はそれぞれ異なることをご存知でしょうか。
現実と同じく、身長の高いアバターは高い目線から、身長の低いアバターは低い目線からVRの仮想空間を眺めます。
この違いは、みなさんが思っている以上に衝撃的です。比較画像を用意したので見てみましょう。
どちらも同じ場所、同じ光景を眺めていますが、見えている世界が完全に異なります。
目線が異なれば周りの見え方も変わって、周りのアバターが頼りに見えるようになったり、普段は人を見上げていたのが見下ろすようになったりします。
普段の生活が身長によって影響を受けていて、アバターによって身長が変われば立ちふるまいや他のアバターの印象も変わります。
「VR感覚」まで生える!?
ソーシャルVRで遊んでいる人の中には、視覚や聴覚以外のVRで再現されていない感覚も感じる人がいます。実質的に感じる感覚を、VR感覚と呼びます。
VR感覚を感じる場面は人それぞれ異なり、多くの人が感じるものとして挙げられるのは、落下する感覚とアバターから感じる触覚でしょうか。落下と触覚どちらも「視界から想像する」ことによってVR感覚を感じるようになっています。
例えば、落下する時の感覚は、ジェットコースターに乗るような場面があります。ジェットコースターの位置が高くなっていき、落下した後に浮遊感を感じるようなイメージです。
ソーシャルVRでは落下して怪我をすることもないため、気軽に高いところから落ちることもあり、落下に対してVR感覚を感じる人は多くいると思われます。
次に考えられるのは、自分のアバターに触られたときの触覚があります。例えば、アバター同士でスキンシップを取るときに、お互いの顔をなでると触られている感覚を感じます。
すべてのスキンシップをしている人が、VR感覚を持っているわけではありませんが、スキンシップを取ることでVR感覚が開発されやすいかもしれません。
他にも、アバターに生えているしっぽや、暑い場所に行って気温に対してVR感覚を感じる人もいます。ただ、人によってVR感覚の程度は異なり、VR感覚がないから楽しめないというわけではありません。
アバター文化の広がり
自由に動かせる身体を得て、アバターの視界から見られる景色から想像して、感覚を感じる。3つの要素によって、ソーシャルVRのアバターは、これまでのアバター以上に一体感を感じるようになりました。
一体感を感じるようになったアバターを用いて、ソーシャルVRで日々の生活を癒やしたり、活動をしたりしています。
では、ソーシャルVRに住んでいる人たちは、アバターに対してどのような考えがあるのでしょうか?
次回は、ソーシャルVRで遊んでいるユーザー3人の鼎談を通じて、アバターと自身のアイデンティティはどう結びついているのか。バーチャル住民の生の声を通じて、お届けしたいと思います。