VRChatで遊んでいたある日のこと。
「ひうごさん、久しぶりだね」

フレンドとワールドを巡っている時に聞こえた声。
夕日の差す窓際に、彼女、あるいは彼が立っていた。
VRChatに出会った頃、正直長く続ける気はありませんでした。
「VRChatって、おかしな人たちの集まりでしょ?」そのくらいの認識だったからです。
僕がどうしてVRChatを楽しむに至ったのか。
今回ご紹介するのは、そんな新参VRChatterの軌跡の一部です。
学生寮で見た「頭に変な機械」それがファーストコンタクト
あれはまだ学生だった2018年。寮の友人の部屋で見た光景がVRChatとのファーストコンタクトでした。
「頭に変な機械をつけた友人」が「変な形のコントローラー」を握り、「男性の声をした女性キャラクター」と談笑している。

すげぇ世界だぜ……
「VRゴーグルに何万円も出資し、美少女になりすましたおじさんと話をする世界」
僕には縁がないな、と本気で思っていました。
数年後、社会人になってから別の友人に「VRChatやろうよ」と誘われた時も、正直、気乗りしませんでした。
別に僕、バ美肉おじさんとそこまで話したくないし、VR機器も安くはないし……
「ゴーグルなくてもできるよ」と言われ、お金かからないなら…と渋々ダウンロードしたくらいです。
ハマるきっかけは、3つの体験
そうして渋々始めたVRChat。最初は操作もおぼつかず、友人の後ろをついていくだけ。
遊び方もわからない僕に、いくつかの体験がVRChatへのイメージをがらりと変えてくれました。
今回はその中でも、3つの体験に絞って紹介していきます。
一つ目は、「USiOPORT」というワールドでの出来事。

この「USiOPORT」は、さまざまなワールドへの入り口が並んだ、案内所のような場所です。
ワールドにあるギミックに触れながら話を聞いていると、なんとワールド制作者のUMIUSiOさん本人!制作者の方とこんなにフランクに話せるんだ!?と驚きました。

VRChatって「初心者にやさしい世界」なんだなと感じたのを覚えています。
二つ目は、「NAGiSA」というワールドでの出会いです。
1対1で5分間だけ話せるこの場所で、僕と同じようにVRChatを始めたばかりの人たちと出会い、気軽に悩みを共有できました。ここで出会った人たちとは、今でも一緒にゲームワールドで遊んだりしています。

このNAGiSAが妙に自分の性に合っており、今でも定期的に訪れるワールドです。
そして三つ目が、「よるとうげ」での衝撃体験です。
VRChatを始めて約2週間、僕はついにVR機器を購入しました。
「これで……これで僕も頭に変な機械をつけて狂える……ッ!」
学生時代の奇異の眼差しは、この時すでに羨望の眼差しに変わっていました。
そして、ゴーグルを手に真っ先に向かったのが「よるとうげ」です。

音と映像が立体的にを飛び回り、目まぐるしく変わる世界と音の暴力にぐちゃぐちゃにされながらも、自宅がライブ会場になったかのように一人ではしゃいでいました。

ライブ終了後は、まるで魂が抜けたような放心状態。
それまでの僕はVRChatを「人と話すための場所」だと思っていましたが、これは完全に「芸術体験」でした。
思わぬ再会、7年前の君へ
VRChatの本当の面白さに気づき始めた、そんなある日のこと。
「もしかして、ひうごさん?」
「その声は、わが友nekocoちゃんではないか」
そう。彼女(彼)こそ、あの時「頭に変な機械をつけた友人」が「変な形のコントローラー」を握り、「男性の声をした女性キャラクター」と談笑していた、まさにその人だったのです。

あの頃は「すげぇ世界だぜ…」と遠巻きに見ていただけでしたが、久しぶりに話した彼女(彼)は、今やBlenderやUnityを駆使してワールドやギミックを自作する、すごいクリエイターになっていました。
あの日、僕の目に奇妙に映ったあの姿が、今ではめちゃくちゃカッコよく見えます。
最近では風になびくカーテンを作っていて、数々のワールドに採用されているようです。

あれ?今僕、「頭に変な機械」をつけて「変な形のコントローラー」を握り、「男性の声をした女性キャラクター」と談笑している……?
今日もきっと君のことを待っている人がログインしているはず
学生時代、「おかしなこと」だと思っていたVRChatは、最高の没入体験を僕に与え、7年越しに友人と僕を繋いでくれました。
今では最高のコミュニケーションツールだと思っています。
VRChatは、自分から話しかける勇気を持つと、もっともっと楽しくなります。
VRChatにいる人たちは、みんな優しいから頼って大丈夫!
あなたを待っている人が、どこかのワールドで今日もログインしていますよ!
(TEXT BY ひうご)