実際に染物屋で働いている人が作った晴れ着!? IZUMIさんにインタビュー

12月になり年の瀬が近いこの頃、アバターでも晴れ着で新年を迎えたいという人も少なくないでしょうか。そんなあなたに紹介したい晴れ着があります。

こちらの晴れ着は、VRChat向けに衣装を販売しているファッションブランド「IZMism」から販売されます。制作したIZUMIさん実際に大阪の老舗染物屋で働いている方で、晴れ着にも仕事での経験が反映されています。

今回はそんなハイクオリティの晴れ着を販売するizumiさんにインタビュー。izumiさんのクリエイターとしての考えから晴れ着のこだわりポイントまで聞いてきました。

もともとは趣味で3DCG作品を作っていた

ーーVRChatに興味を持ったきっかけを教えてください

IZMismのバーチャルファッションを立ち上げる事になり、現在のVRプラットフォームの主流となっている「VRChat」の現状を知るためにプレイし始めました。

はじめは現地調査の意識が強かったのですが、その独特な雰囲気、ユーザー同士のコミュニケーションにすっかりハマってしまい今では普通に遊ばせて頂いております。現実とは異なる世界だからこそ生まれた文化圏などまだまだ興味深い事が一杯です。

ーーアバター衣装製作以前にBlenderなどの3Dモデルに触れたことはありますか。また、アバター衣装製作はいつ頃からはじめましたか?

2018年頃に趣味でBlenderを触りはじめ、3DCG作品を趣味で作っていました。Blenderをはじめて半年も立たないうちにMMDモデルを作って、MMD上でダンスさせていました。その時にMMD上で物理演算でひらりと揺れるスカートに魅力を感じ、アバターを作ることよりもアバターの服を作ることが好きなことに気づきました。

元々高校、大学と美術系だったので、作品を作るためのデッサン力、表現力やコンセプト説明まで芸術表現の基礎はあるので、3DCGでの作品の制作に抵抗はなく、それほど難しいとは思わなかったです。学生の頃は3DCGの総合芸術性に強く惹かれてこれでどんなことが出来て、どういう発展性があるだろうと独自で研究をしていました。

その試行錯誤の結果、独自のワークフローを確立して、リアルな布のテクスチャを3DCGで実物の様に制作することが一番得意な表現となり、ドレスを作ったり、靴を作ったりしていきました。その後に株式会社BALの皆さんにお誘いいただき、現在のIZMismのバーチャルファッションに続くという感じです。

ーー株式会社BALはとはどういった関係でしょうか。

IZUMI 私はBALの社員というわけではないのですが、衣装のデザインに集中できるように販売などのサポートをしてもらっています。

衣装にユーザーが喜んでもらえるような工夫を加える

ーーリアルとアバターで服の表現に違いなどはありますか。

リアルな衣装の表現が得意ですが、アバターに着せるので、現実よりも少しデザインと形共にデフォルメして作成しています。

例えば私の大正ロマンの作品だと、袴を脱いだらミニ着物になったり、日本刀をセットで販売したり、小物などをユーザーが楽しめるようにデザインしています。

リアルの文化を踏襲し、さらにバーチャルならではのエッセンスを加える。IZMismを着たユーザーに喜んで欲しいことを願っていつもデザインしています。

ーー着物をデザインする際に根底に考えはありますか

このまま何もしないと徐々に失われていくであろう日本文化をバーチャルの世界に昇華させたいという思いがあります。バーチャルの世界に季節はありませんが、実際には季節感が大事にされる気がします。

なので季節ごとの着物のテクスチャを作ったりして、バリエーションで楽しめるようにしています。きっとVRの日本にはリアルよりも美しい四季があると思っていて、忘れさられた文化や、美しい景色などを着物を作ることで表現したいと思っています。

ーー着物以外にも衣装を販売していますが、どのような考えがあるのでしょうか。

IZMismは和服のイメージが強いかと思いますが、元々私は和服より先に洋服の作品を3DCGでずっと作っていました。なので実は和服と同じくらい洋服も作ることが得意です。特にレースや刺繍の表現に特化していると思っています。

晴れ着のこだわりポイント

ーー今回販売される振り袖についてこだわりがあれば教えてください

いつも和服を作る時は実際の染色現場での知識と着物の柄に意味を込めて制作していて、今回は現実の手描京友禅の工程を踏まえて作成しています。

現実での振袖の制作の工程はまず生地に手書きで入れ墨の様に模様の下書きをして、彩色。糊置き後、柄の背景を染めて、最後に金で淵を飾ります。

この時間のかかる工程を3DCGでどこまでできるか。挑戦の意味もありました。おそらく、着物の綸子生地の織目から調べ上げて再現してるのはIZMismだけだと思います(笑)

ーー柄は何種類あるのでしょうか。

今回は新年用の着物なので柄はお正月らしい意味のある柄を3種類と各柄2種類のカラーリング6種類になります。

1つ目は、束ね熨斗(のし)と牡丹による吉祥文様です。たくさんの熨斗を束ねることから多くの人々から祝福を受けていること、人と人との繋がりを表します。斗柄(とへい)は、めでたい日の晴れ着としてよく使われる縁起物の柄です。また牡丹も「百花の王」とも称される花で、吉祥文様と呼ばれる文様の一つになります。

2つ目は雪うさぎです。帯に干支である鳥獣戯画風の餅つき兎のデザインを入れました。正月に咲く赤い実の南天を配置して、難を転じて福となすの縁起の良い意味とかけてます。

3つ目は舞鶴と波です。日本でも純白の羽を持つ鶴は、立ち姿、飛び姿ともに美しく、鶴の声聞けば喜び事ありというように鶴が舞ってきた時は縁起が良いと言われます。寄せては返す波は繰り返し、果てがないことから永遠、長寿、誕生を意味しています。

ーー対応アバターなどの商品情報についてお聞きしてもよろしいでしょうか。

対応アバターは桔梗、セレスティア、華夜、舞夜、カリン、ラスク、ゾメの7アバターです。価格は1アバター3500円で全部のアバターが入ったフルセットも用意しています。

ーー今後チャレンジしていきたいことはお聞かせください

他のデザイナーさんとのコラボレーションや、先日お仕事させて頂いた、電音部などの版権作品とのコラボもやっていきたいと考えています。あとはVRchat以外のバーチャルファッションの可能性も探っていきたいです。

ーー最後にですが記事を読んでいる人に向けてメッセージをおねがいします。

やっぱり新年はIZMismの振り袖を着て、バーチャルでも日本文化を楽しんでもらえればと思います。和服以外にも洋服を出しているので、洋服でもかわいい衣装を作れたらいいかなと思っています。

普段ソーシャルVRで遊んでいるときも、季節感ある服装やワールドに行きたくなる気持ちはあると思います。新年という大事な節目に、アバターに晴れ着を着せて迎えてみてはいかがでしょうか。

●参考リンク

IZMism公式Twitter

IZUMI(Twitter)

IZMism(BOOTH)