【PR】フォトグラファーじゃない人が作り上げた個展とは アバターが生きている感覚を生み出す写真を見ていく

フォトグラファーを名乗らない男が、“感覚”だけで撮ったアバターの写真は、なぜこんなにも生き生きしているのか。

写真を撮るという行為は、VRChatの中ではメニューからどこでもサクッと出して撮れる一方で、突き詰めようと思えばさまざまな表現が可能です。ある意味、普段の記念写真とフォトコンテストに出されるような作品とでは、同じVRChatで撮影すると言っても全く異なるものが生まれます。

今回ご紹介するのは、フォトグラファーではない普段はDJをしている人が撮影した写真の個展です。今回は、撮影したあかなすさんとワールドや企画を主導しているkoujiさんにインタビュー。

写真に対する独特のスタンスや、思わぬところでDJの要素が繋がってくる、独自性あふれる面白い世界をご覧ください。

左からあかなすさん、koujiさん

フォトグラファーでない人に展示を依頼した理由

──今回、あかなすさんを選んだ理由を教えてください。

kouji 前回の展示が「YOYOGI MORIアバター」のフォトコンテストで、次回以降どうするかと考えたときに、一度仕切り直しの意味を込めて、さまざまなアバターを上手に撮るあかなすさんにお声がけしました。

この個展は、フォトグラファーの選りすぐりというよりは、フォトグラファーなのかな?と思うような人にお願いするようにして、そんな「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ホップ」あたりを担当できればと考えているんです。あかなすさんの素敵な写真を見て、ぜひお願いしたいと思いました。

──あかなすさんは、いつ頃から写真を撮り始めたのでしょうか?

あかなす VRChatを始めたのが2023年12月頃で、写真を撮り始めたのは2024年2月頃です。ただ、実はフォトグラファーと名乗ったことはなくて、普段はDJとして活動しています。

── 事前にXのアカウントで調べたときに「あれ、フォトグラファーではない……?」と感じました。

kouji 自分としても、フォトグラファーだと思っていたら違うのかも、と思っています。

──あくまでも、名乗りやスタンスの問題なのでしょうね。

あかなす そうですね。僕は他のフォトグラファーのように継続的に写真を投稿するわけではなく、1〜2週間ほど間が空くこともよくあります。

──定期的に投稿することがフォトグラファーの条件といったわけではないですが、かなりあり方としては緩い感じですね。 1階はどのような作品が展示されているのでしょうか?

あかなす ポートレートがほとんどですね。

──ぱっと見た印象だと、写真の雰囲気や比率もかなりばらばらな印象を受けます。

あかなす 基本的にはXに投稿した写真をそのまま掲載しているため、16:9だとクロップされてしまうので黒枠を付けて調整しています。最近は撮影ギミックも充実していますね。

──セルフポートレートを撮影する際に意識していることはありますか?

あかなす 正直、あまりないですね。VRChatに来るようになってから写真を撮るようになったので、構図などの知識は全然ありません。ただ、撮るときに考えているのは、そのワールドに来たら何をするのか、そして自分のアバターのキャラクター性をどう表現するか、ということです。

──そのキャラクター性は、アバターそのものに由来することが多いのでしょうか、それとも改変したコーデに由来することが多いのでしょうか?

あかなす 改変ごとに変わりますね。同じアバターでも、改変の方向性は違うことがあります。

撮影ギミックを使いこなす!一人二役撮りで生まれる「物語性」

──2人が並んでいる写真が何枚かありますが、どのように撮影していますか?

あかなす 「Avatar Pose System」の拡張機能を使って一人二役状態で2人とも自分で動かしています。

──ギミックのおかげで、撮影の幅が広がっていますよね。

kouji 1人だと静かな雰囲気になりがちですが、2人になると物語性が出てきますよね。

──あかなすさんの写真は2人だとアバター同士の掛け合いがすごく素敵で、見ていて楽しいですね。

あかなす アバター1人だと、アバターを大きく写さないと写りが悪くなるものも出てきてしまいます。もちろん面白い写真ではありますが、2人いると比率的に撮りやすい写真が多くあります。

──ちなみに、「Avatar Pose System」以外だとどういったものを使いますか?

あかなす 「VirtualLens」や「Integralカメラ」を使っています。

──2つとも写真撮影用のギミックだとオーソドックスなものが並んでいますね。

kouji ポートレートは人それぞれで変わってくる印象ですが、あかなすさんは意識していることはありますか?

あかなす 明確に作りたいものを持って作ることはないですね。素敵なワールドがあれば、とりあえず「Avatar Pose System」でアバターを置いてから、良い画角を探すのを繰り返しています。なので、アバターがどういるのかを想像してから写真に取り掛かる感じです。

フィギュア感覚で固定して置くことができ、ポーズ調整やアバターと分離して自由に移動して撮影できる

──かなり緩いところからスタートして、撮りたいものをふと撮るといった感じですね。2階にはどのような作品が展示されているのでしょうか?

あかなす 基本的にはフレンドと撮影したものが中心です。

──フレンドとの写真は、撮影会のような撮影のために設けたものですか?それとも、普段の日常を切り取ったものですか?

あかなす 半々ですね。

──(上記の写真を見て)構図がしっかり決まっている写真と、普段VRChatで遊んでいる様子の両方が伝わってくる感じがします。アバターの位置やポーズをガッチリ決める写真と、何気なく撮影する写真では雰囲気が違ってくると思うのですが、その両方が感じられますね。

あかなす この写真は撮影会で集まった写真ですが、この集まり自体は写真撮影を積極的にするわけではないんです。なので、隅っこで雑談していたら小さなアバターたちが集まってきて、思わずシャッターを切った感じです。

kouji 私もその集まりにいたのですが、普通に写真撮影をしていましたね。

まさかのDJ機材が撮影ツールに?

──3階は正方形のスクエアで構成されていますね。ここまで多くの引き出しがある印象ですが、どうやって引き出しを増やしているのですか?

あかなす 写真の構図についてはあまり積極的には勉強しないのですが、アバターのポーズなどは資料を探して参考にしたりしています。

──作品を見てみるとアバターと実写を合成したような……改めてこの4枚に統一感がないですね(笑)

あかなす ワールド自体は3Dモデルで作っているのですが、実写っぽく見せているんです。影の入り方や「Integralカメラ」のノイズ、粒子を入れています。アバターに関しては、ゲームの『ブルーアーカイブ』のような雰囲気を感じたので銃を持たせて、ポーズを普通の女の子っぽくして日常感を出したら面白いと思って作りました。

──レタッチなどはどうしていますか?

あかなす あまりしません。彩度と明るさの調整が基本で、あとはマスクを使って光源を強調するくらいですね。書き込みなどはしないので、レタッチ自体は5分くらいで終わらせています。それと光源周りは「Light Limit Changer」を使って設定することで、撮影時に済ませています。最近は「Integralカメラ」にハマっているのですが、全然分からないなりに動かしています。

「Light Limit Changer」を使うと彩度や光源の向きなどライティング周りの調整ができる

──「Integralカメラ」は実際のカメラのような画を出せる一方で、操作が複雑だと言われていますよね。

あかなす フォトグラファーの間でも、コントローラーでのパラメーターのスライダー操作が大変だと聞きます。僕はスライダーでの操作を全て「MIDIコン」と呼ばれる、DJや音楽制作に使う機材に割り当てて操作しています。

──ここに来てDJが繋がってくることってありますか!?

あかなす 実は公式の機能で一部の操作はMIDIコンに対応しているんです。だから、中身のコードを見て全部に対応できるようにコードを書いて対応させました。そのおかげで気軽に撮りやすくなったので、最近はよく使っています。使うのが面倒だと、せっかく入れても使わなくなってしまいますからね。

補足:商品ページに実際にありました。

──これはフォトグラファーとして活動していないだけで、さすがに放っておけないですよ。koujiさんが個展をお願いするのも納得です。

kouji メインDJなのは分かるんだけども……という気持ちでお願いしました。コントローラー対応は本当は売り出してもいいのではと思うのですが、DJとフォトグラファーはそもそも被らないですよね。

あかなす コントローラーごとにコードが変わってしまうので、販売のようなことはできないんです。

kouji 本当に魅力的な方なので、Xで流してしまうだけなのはもったいないといつも思っていました。

──複数枚の作品を並べるからこその面白さがありますよね。Xで単体で見るのとは違った感想や良さは、個展ならではです。今回みたいな作風の出てくる幅が広いとよりなおさら実感しますね。それにしても、展示する作品の裾野を広げるのは大事ですね。

あかなす 他のフォトグラファーはどの写真も考えを持って撮影していると思うのですが、自分は「いい感じなものが撮れたな」と撮影しているだけですから。

kouji 感覚で写真を撮るのも、楽しさの原点だと思いますし、無視できないですよね。知り合いで写真を撮られている方は多いのですが、フォトコンテストが増えて「どうすれば勝てるか」と悩まれている方もいます。だからこそ、写真の楽しさってここにあるんだ、と思っています。

あかなす VRChatである以上、写真と言われていますが絵みたいなものじゃないですか。だからこそ、ワールドに入って「ぱっとその良さを切り取る」ような写真を撮れたらいいな、という気持ちはあります。

個展は8月17日から1ヶ月期間限定公開

今回は、ご自身のことを「フォトグラファーではない」と語る、あかなすさんの作品とスタンスを紹介しました。写真とまとめても、さまざまな写し方や役割、向き合い方があると思います。その中でも、VRChatの写真撮影において原体験に近い、アバターで楽しんでいる様子を切り取ることが中心だったと思います。

そんな作品が楽しめる個展「かそうの旅路」展は8月17日よりワールド「Gallery & fanCafe Kittens」内のスペースで公開。インタビュー中で言及した通り、個展で作品を一覧にするからこその魅力があります。9月20日までの期間限定のためお見逃しなく。