セッションを重ねてできる「僕らの音楽」インストゥルメンタルユニットStrollZスペシャルインタビュー

VRChatで活動するStrollZというインストゥルメンタルユニットを知っていますか。

ピアノ・サックスを担当するしあのさんと、サックスを担当するざっくさん2人組のユニットです。美しい旋律のピアノと力強いサックスの表現で多くのファンを抱えるアーティストです。

特徴的なのは、彼らはVRだけでなくリアルでの活動も積極的にしていること。2023年秋に下北沢ERAでのVARTISTライブに始まり、2024年も3回、2025年は2月に六本木で大規模なリアルライブを開催予定です。VRChatユーザーの中でもリアルライブ頻度の高いVRアーティストといえると思います。

彼らがどのような経緯でユニットを組んで活動してきたのか。そしてなぜVRだけでなくリアルの場に活動を広げていっているのか。その経緯を紐解くインタビューを敢行しました。彼らのルーツに関わる音楽と合わせてお楽しみください。

セッションを重ねていつのまにか組んでいたふたり

ー結成の経緯を教えてください

ざっく
なんだかんだStrollZという名前をもらってから、もう3年たちましたね。2022年年始の僕らの結成当時、音楽をやる人たちが続々VRChatで遊び始める波がありました。SYNCROOM(ヤマハが提供するオンライン演奏アプリ)をいっぱい使う人たちがたくさん流入してきて、毎晩毎晩ライブやセッションがある日々でした。急にドン!と音楽界隈が盛り上がっていたことを覚えています。

しあの
いわゆるセッションやオープンマイクイベントと表現されるような、オファーされるライブではなく、セルフで応募して演奏できるというスタイルのイベントが本当に盛り上がったタイミングがありました。本当に半年くらい毎日ありました。あのころ睡眠時間2時間とかだったよね。このエピソードは盛ってないですよ(笑)。

ざっく 
いやぁ生活スタイル終わっていましたね(笑)。その日限りの企画バンドも多数あった中で、しあのさんとはまだ組む前でしたけど、イベントで顔合わせることが多くて。今もサポートで関わってくれるジャンクさん達とお会いしたのもその頃でしたね。

しあの
当時、本当にオンラインセッションが盛んでした。今も、世間一般から見ると、相変わらずおかしい開催頻度かもしれないですけど(笑)。

僕らって、StrollZのために曲を作るというより、お互いが作った曲をStrollZで演奏するフォーマットなんですよね。なので、組む相手が違うと変わってくるというか。2人でやると僕らの音になるっていう。

ざっく
これが面白いんですよね。

音楽を始めた理由

ーお二人はいつから音楽活動をスタートされたんですか?

ざっく
僕が楽器を始めたのは、大学の部活からです。ビッグバンドジャズ部です。なのでビッグバンドジャズしかやってきてないんですよ。吹奏楽もロックも通ってきてない。日本人の管楽器演奏者の定番ルーツは吹奏楽だったりするので、結構色物な存在でして。みんな10年プレイヤーの中に僕だけ素人ですって参加するみたいな感じでしたね。

部活に入ったのはモテたかったからなんですけど(笑)。でも部活入ってサックスが好きになりすぎちゃって。入部3日目から「僕もうサックスしかやりたくないです」って手段と目的が入れ替わっちゃったんですよね。そして楽器の練習ばっかりした大学時代でした。

あと他の人との差は「自分の楽器を持っているかどうか」。だから少しでも早くマイ楽器ほしかったんですけど、管楽器って軽く数十万円するんですよね。お金無いから死ぬほどアルバイトして手に入れたのが今も使っていSELMER SERIEⅢ(セルマーシリーズスリー)ですね。今となっては、あまりにも改造されすぎて、すっかり違う楽器状態です。

ーロマンの塊ですね。

ざっく
そうですね、ロマン楽器ですね。もう売れない。

しあの
僕もサックスが好きなんですけど、ここまでの改造はやったことないですね。せいぜい、パーツを買って変えるぐらい。

僕の音楽ルーツは言うと、PE’Zっていうテナーサックス・トランペット・ドラム・ピアノ・ウッドベース構成の5人組ジャズインストゥルメンタルバンドです。彼らの曲を幼稚園の頃から聞き始めて、音楽教室でやったり、長年触れてきたので影響をだいぶ受けていると思います。あとは吹奏楽も経験あったところからの今ですね。

ざっく
初めて2人で組んだものはPE’Zのコピーだったよね。あとはGYARIさんとかも共通点かな。

しあの
そうですね、ボーカロイドも聴くし、ジャズとポップスを足して割った感がありますね。僕側の楽曲に関しては、メロディーは僕が作ってるんで、ジャズに限らず幅広く取り入れています。映画「スイングガールズ」に使われてるような楽曲がルーツです。

ざっく
僕ってジャズプレイヤーではないんですよね。もちろんジャズニュアンスのある音は出せるんですけど、ジャズとしてStrollZをやっていないです。

僕らの音楽は「あえて言うならフュージョン」「いやJ-popだよ」

ージャズではない、と。実際音源はアップテンポの曲もスロウな曲もありますが、どういう風に作っているのですか。

しあの
僕が作る曲はアップテンポばっかりですね。

ざっく
しあのさんの曲は吹奏楽もボーカロイドの要素も入っていたりするんですよね。僕はジャズ、バラード、ワルツ系が多いですね。

しあの
僕らのジャンルに名前をつけてくれって思ってます。自分でもわかんない。あえて言うならフュージョンかと考えてますね。

ーフュージョンですか。

フュージョンというジャンルについて説明すると、日本での代表的なアーティストはT-SQUAREです。

しあの
さっきざっくさんが言ってくれたみたいに、受けてきたジャンルの影響が色々混ざった状態でパワープレイで出力している曲なんですよね。だからそういう意味でもフュージョンなんだと思う。

ざっく
フュージョンを狙って作りたいと思って作ったわけじゃなく、作った結果がこれっていう。ライブで演奏しながらセッションを重ねていってお互いの解釈をすり合わせていって、僕らの曲になっていくというところもありますね。だから最近はJ-POPだ!となっています(笑)。

ー読者様の中に、音楽の専門家はいらっしゃいますか?!

リアルライブをたくさん手掛ける理由

ー2023年からたくさんリアルライブを手がけていますが、その理由はなんですか?

ざっく
実は2024年1月のライブは、思いついてから企画を立てて告知を出すまで、多分1日ぐらいで(笑)。ちょうどしあのさんが東京に来る機会があるっていうので、ちょうどいいじゃんって。今までもVRChatの友人たちと声をかけあって、JOHNNY HENRYだったり、PHAZE(※2024年解散)だったり、友人達と大人数のリアルセッションをよくやっていたんですよね。

2023年9月に大きなステージを経験したあと、小さなハコでもっと観客と近い距離でライブしたいなという思いと、そのあと観客の有志とセッションするようなこともしたいなと思って、数回開催しました。来てくれる人も身内ばかりだし企画しやすいというのもありましたね。

ーオフ会みたいな感じでライブをしていると。

しあの
本当に2024年1月のライブの企画は、事前に相談とかまったくなくて。「東京来るなら軽くライブしようと思うんだけど、前後日程空いてる?」って軽く聞かれて。気づいたらライブの告知が出ていましたね。

ざっく
VRChatのライブって気軽にやっていいものだって常々僕は思っているんですよ。機会があるならどんどんやっていこうと。それに管楽器の演奏って聴く機会がない方にはまったくないものとも考えているので、ライブを企画して人が来てくれるならたくさんやりたいです。

2023年に初めてやったリアルライブの経験で、できなかったこともあったので、回を重ねるごとにいろいろ改善ができて、より思いどおりの演奏ができるようになりたいな、と企画しています。

StrollZは普段2人組ですが、サポートをお願いすることも多いんですよね。やるたびにサポートメンバーが変わるところもあるので、やるごとに一味違うなと感じられるのが、やってる側としても面白いんです。

しあの
普段はSYNCROOMやOBS経由で配信してることと比較して、リアルライブの生の良さをアーティストとしても観客としても感じました。それに遅延が無いこと、目線が合わせられること。だいぶ楽しさややりやすさが変わるなと思います。貴重な機会を楽しんでいます。

StrollZのこれから

ー2025年、早速リアルでの大規模なライブが予定されていますね。今までで一番の動員数ではないでしょうか。

ざっく
PHANTOMと合同と言えど、StrollZ主催でのライブでは一番大きな規模・動員数ですね。200人規模の箱なので緊張はしますがとても楽しみです。

しあの
今まで数回リアルライブをしてきましたが、どれも本当に楽しくて。今回は特に規模もデカいし音も良いと聞いているので、自分らの演奏もみんなの演奏もどんなプレイイングになるか楽しみです。

ーリアルライブを重ねてきたなかで、自分たちの活動について感じること・やっていきたいことに変化はありましたか?

ざっく
去年はこれまで作ってきたもので演奏してきましたが今年からはこれから作っていくもので演奏していきたいなと思っています。

しあの
僕らのようなインストゥルメンタルというスタイルでも、VRリアル問わずこんなに盛りあがってくれるのかと毎回感じています。コール&レスポンスのない僕らですけど、もっとお客さんと一体になれるような曲を今後作れたら面白いなと思っています。

ーリアルの即売会などのイベントも精力的に出展されていますよね。グッズ販売なども手掛けていますが、どういう意図で始められたのですか?

ざっく
グッズに関しては僕は音源だけ頒布したいと思ってますね。だけどグッズも欲しい声が意外と多いので、それなら作ろうかなという感じであまり深く考えて作ってません(笑)。

ーファンも大事にしてくれるユニットですね。2025年以降挑戦したいことを教えてください。

ざっく
最近いろいろな楽曲制作に参加させて頂いてるんですが、ライブもやりつつ音源制作をもっとしていきたいなと思っています。機材なども沢山買ってるのでやれることも増えてきたので。

しあの
個人的な目標として、今年出演したライブの写真をしっかり記録するということを現在実行してます。ライブだけして一過性のものみたいになっちゃうのがもったいないと思ったので。写真も音源も映像も残せるものをたくさん残していきたいなと思います。

ーVRChatでのイベント主催も続けられていますよね?

しあの
ずっと続けていた毎週水曜セッションイベントですが、最近水曜が忙しいので。近々「週一しあのっくすセッション」でSSSessionにしようと思ってます!

ー最後に告知事項があればどうぞ

ざっく
まだ告知は出てないのですが、StrollZとして3月15日に山梨県甲府市にあるお店 「MUSIC&SALON Knock」にてまったりライブ出演する予定です。

3月15日発売予定の 「MUSIC&SALON Knock」コンピアルバムにも東雲草アレンジ版が入る予定です。飲みに来ていただきつつ演奏を聞いてもらえたらと思います。

ーありがとうございました!今後の活動も応援しています!