10月31日、都内で開かれたシャープ株式会社の記者会見で、VRグラス「Xrostella VR1(クロステラ ブイアールワン)」が正式発表されました。
本機種は約198gの軽量ボディと高精細なディスプレイで、快適なVR体験を行える機種です。さらにメガネ型の形状となっており、手軽に付け外しができるようになっています。価格は15万円前後の予定。
現状発売はまだ先ですが、今年11月下旬から開始するクラウドファンディングにて、支援者の募集と、支援者からヒアリングを行い、今後の開発や販売の検討を行っていくとのことです。
今回筆者は記者会見に参加。実機に触れた体験をレポートしていきます。
ポイントは”手軽さ” シャープが切り込む普及しないVRの理由
今回、シャープがVR機器の開発に取り組み始めた理由のひとつに、VR体験への期待の大きさがあります。現在ゲーム用途や企業向けの研修教材など幅広く使われているVR機器ですが、シャープはメタバース空間での体験も含めて期待を寄せていることが伺えます。

シャープが考えるVRが社会に普及しきっていない理由は「付けにくさ」や「重さ」といった使う上で直面する物理的な問題です。付けていても長時間使うことができない重量や、使い始めるまでの手間を考えると広く浸透しているスマホほどの手軽さは到底ありません。
そこでシャープが今回開発した「Xrostella VR1」は「付けにくさ」や「重さ」を解消するべく、メガネ型の軽くて付けやすいスペックにこだわりました。
現状公開されている「Xrostella VR1」のスペックは以下の通りです。
| 名称 | Xrostella VR1 |
| 大きさ | 約 H160.7 × W70.6 × D106mm |
| 重さ | 約198 g |
| レンズ | パンケーキレンズ |
| ディスプレイ | 片眼2,160 × 2,160最大90Hz可変式の液晶ディスプレイモジュール搭載 |
| トラッキング | PC接続時:6Dof |
| 瞳孔間 | 58-71mm |
| 視度調整 | 0D ~ -9.0D |
| 視野角 | 90° |

「Xrostella」は、自社のスマートフォン「AQUOS」と接続して使う方法と、PCと接続して使用する方法の2つがあります。PCに接続することで、インサイドアウト方式の6Dofgトラッキングを使用することができ、同梱されているコントローラーを使って操作することができます。またVRChatをプレイするときには、PCに接続してSteamVRを立ち上げることでプレイできます。また、PC接続をするために、PC側にもアプリのインストールも必要です。

発表会ではこの「Xrostella」の試遊展示がありました。しかし今回は、機材トラブルのためSteamVRを使ったVRChat展示は体験できず、スマートフォンと接続する方法での体験になります。
まず着用感としては非常に良好。メガネのように弦のみで、本体を支えることができています。顔面にフィットしているのは、開発が日本企業であるため日本人の顔面に合わせた作りになっているからです。シャープが目指す軽さ、着けやすさはクリアしているでしょう。しかし、大きく動いたり、早く振り向くなどの動作を行うと、やはり少し本体部分が浮く感じがあり、落ちるのではないかと不安になります。

しかしそんな時には、付属品のゴム紐製のバンドを使用することで外れにくくなり、装着感はより強固になります。バンドはメガネの弦の端からそれぞれ延ばし、中央で留める仕組みです。一人でのつけ外しや紐の長さ調整が簡単にできる上、大きく重量が増したり、頭頂部に圧力をかけないような設計になっています。VRで大きく動くようなアクションを取ってもこれなら安心でしょう。

画面の見やすさについては、画質にやや粗さがあるように感じました。現在VRChatユーザーの間でよく使われているMeta Quest 3や3s、Pico 4のディスプレイ解像度と比べるとやや落ちるか同程度ですが、スマホ接続時のリフレッシュレートだとそれらより、低く感じます。これはスマホ接続時の使用感のため、PC接続した際のリフレッシュレート90Hzを体験できていたら、この印象は変わっていたかもしれません。また、視野角はいずれの中で一番狭い90度で、動画を見るだけであれば良いですが、メタバースのような空間を体験するには若干物足りなさを感じそうです。

コントローラーは、白を基調とした柔らかい色合いです。小さくて握りやすく、また掴んだ手のひらを押さえてくれるバンドも付いており、手が小さい方にも安心です。


2つ合わせて重ねると置きやすくなります。これまでのVRコントローラーは確かに直置きや、専用のスタンドを使うことが多かったですが、コントローラーだけで綺麗に置けると、片づける際にも整頓されているように感じられます。

課題はまだ多いが、付けやすい日本製VRに期待
「Xrostella」の約15万円という価格帯を考えると、現状「BigScreen Beyond 2」といったハイエンドなVRヘッドセットと並ぶもののように感じますが、それらの機種と「Xrostella」のテーマである”使い心地”や”軽さ”を考えると、重さも踏まえた全体のスペック的には「BigScreen Beyond 2」などに軍配が上がるのが現状かと思います。しかし、これらの機種は外部センサーやコントローラーを追加で購入する必要があるので、金額の比較としては「Xrostella」が一番安価ではあります。
しかし、PC接続ができるVRヘッドセットで、インサイドアウト方式のものを考えると「Meta Quest 3」や「PICO 4 Ultra」と比較すると価格は倍ほどの差になります。現状、SteamVR対応のVRヘッドセットの中だと「Xrostella」の評価は、色々な比較点の中でも中間の位置付けになってくると思います。
筆者としても、VRを体験する上で”使い心地”や”軽さ”をコンセプトとした開発は、ユーザーを増やしていく上で最も重要なポイントだと考えます。VRに興味を持ち、いざ体験したとしても「VRヘッドセットが重かった」「使いにくかった」という声は少なくありません。そして、それが理由で遊ばなくなってしまう方も多くいるでしょう。シャープが開拓したいこの層には、まだ眠れる将来のVRユーザーが多くいるかもしれません。
現状「Xrostella VR1」の課題はまだまだ多いですが、まだ走り始めたばかりのVR機器事業です。今後はクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」にて、今年11月下旬から支援者の募集を開始。クラウドファンディングの支援者に「Xrostella」の使用感などをヒアリングしていくとのことです。
シャープとしては、VRゲーマーやビジネス用途、メタバースユーザーなど広くいるVR使用者の意見を広く聞き、どのような方向に改善していくかを考えていくフェーズなのかと思います。国産VR機器である「Xrostella VR1」に興味や期待を持っている方は、クラウドファンディングが開始したら内容をチェックするといいでしょう。
「Xrostella」商品化は2026年度内の見込みとのこと。その日までにさらなる進化を遂げることを楽しみにしています。




















