クリエイターは、VRChatをどう見るのか、『旅する喫茶』恒川さんが語る、VRChat世界の「旅」の形

みなさんは『旅する喫茶』という喫茶店をご存知でしょうか。
『旅する喫茶』は、東京都・高円寺、福岡県・うきは市に実店舗を構えつつ、日本各地を「旅」しながら、地方の食材や地域の魅力を発見し、発信し続けている喫茶店です。

看板メニューは、色鮮やかな「クリームソーダ」と、土地の個性を映し出す「カレー」。
そんな『旅する喫茶』のオーナーである恒川さん、実はVRChatユーザーでもあります。

その事実を知った『旅する喫茶』の一ファンである筆者・ふれあ。が、
「恒川さん、VRChatやってるんだ……」
と何気なく呟いたところ、まさかのご本人から反応が。

そこからは、もはや勢いでした。
気づけばそのままインタビューの流れに突入し、こうして記事を書くことになっています。

……そんな経緯で始まった今回のインタビュー。
恒川さんが作り上げてきた世界観や思想を辿りながら、「リアルでクリエイターとして活動している人」だからこそ見えてくるVRChatの魅力、そして「VRChatにおける旅とは何なのか」というテーマを、少し前のめり気味に深掘りしていきます。

インタビュー概要

ふれあ

メタカル最前線編集部デスク/ライター

今回のメインインタビュアー、元々『旅する喫茶』というコンテンツが好きなファン、ファン目線から、恒川さんのクリエイティブな部分や世界観を深堀りしたい!という思いからインタビューを行っている
高揚のせいから言い逃れできないほど長めの語り・ゆるいテンポ・高めの熱量でやっている

柘榴石まおりん

メタカルライター リアルで恒川さんとのご縁があり2017年頃から活動を知っていたため、今回大興奮で参加したミーハー。コーヒーは水出し派。

恒川

クリームソーダ職人。
写真家、ファッションデザイナーといった活動しながら、クリームソーダ作りを行う。出張喫茶「旅する喫茶」の主宰。東京都高円寺と福岡県うきは市に実店舗がある。

そもそも旅する喫茶とは?

簡単な自己紹介

ふれあ

まず最初に簡単な自己紹介をお願いします!

恒川

はじめまして。「旅する喫茶」という名前で、東京と福岡に実店舗を構えつつ、日本各地を巡りながら出張開店を行う活動をしています。メインメニューはクリームソーダとスパイスカレーで、旅をするように人や場所と出会っていく、そんな喫茶の形を続けています。

企画「旅する喫茶」を作る上で、特にこだわっていることや大切にしている要素

ふれあ

企画「旅する喫茶」を作る上で、特にこだわっていることや大切にしている要素ってありますか?

恒川

結構難しいですね……。自分自身、あまり「これだけは譲れない」みたいな強いこだわりを決めずに、その時の気持ちでふっと旅に出て、縁を作っていくことを大事にしている感覚があって。それを言葉にしようとすると、なかなか難しいなと思います。

ふれあ

こだわりを固定しないからこそ、コラボレーションや外部の世界観と自然に混ざれる部分もあるのかな、と感じたんですがどうでしょう?

恒川

そうですね。「旅のキーワード」みたいなものは毎回意識していて、例えば丸善さんで行った「文豪クリームソーダ」の企画なら、「文豪の世界に旅をするなら、どんな景色だろう?」と考える。現実でも仮想でも、「どこへ旅をするか」を考えること自体が、企画の軸になっていると思います。

制限があるから、表現が立ち上がる、VRChatに広がる創作文化の手触り

VRChatを始めたきっかけ

ふれあ

VRChatを始めたきっかけについて教えてください。

恒川

本当にシンプルで、仲の良い知り合いのフォロワーさんがいて。僕が「VRChatに興味がある」みたいなことをX(旧Twitter)で呟いたら、色々と教えてくれてハマっちゃって、その流れですぐにMeta Questを買った感じです。

まおりん

ちなみにそれって何年前くらいですか?

恒川

はっきりとは覚えていないんですが、3〜4年くらい前だったと思います。

恒川さんの遊ぶ頻度

まおりん

始めた当初から今まで遊ぶ頻度ってどんなもんなんですか? 多分普段お忙しいとは思うんですが……。

恒川

タイミングによりますね。2週間くらい触らないこともあれば、毎日入る時期もあります。一応フルトラも持ってはいるんですけど、まだ慣れているとは言えないですね。

まおりん

凄い意外……意外過ぎるかも

VRChatで感動した衣装/アバター

ふれあ

恒川さんは「旅する喫茶のツナマヨ」という名義で服飾もされていますが、VRChatで特に印象に残っている衣装やアバターはありますか?

恒川

実はVRChatを始める前から知っていたブランドで、「YOYOGI MORI」がありまして。「HATRA」というリアルブランドが「YOYOGIMORI」さんと協力して3Dの洋服やアバターを出しているんですが、それがシンプルにオシャレで感動しましたね。価格帯もかなり高級志向で、それでも成立させているところがすごく良いなと思っています。

*YOYOGI MORI https://yoyogi-mori.booth.pm/items
*YOYOGI MORI NINE HARTAhttps://yoyogi-mori.booth.pm/item_lists/mvdTD5P8

ふれあ

あれは本当に面白いですよね。「この価格帯でもいける」という確信と、高級路線でちゃんとブランドを作る判断が、かなり挑戦的だなと感じました。

恒川

本当にカッコいいですよね。まだ購入はできていないんですが……(笑)

VRChat内の創作文化について

ふれあ

VRChatの創作文化って、マルチクリエイターが多いこともあって、かなり独特な場所だと感じているんですが、恒川さんの感覚ではどうですか?

恒川

VRChatって、リアルと違って視覚と聴覚以外の情報がほとんど無いじゃないですか。だからこそ、自分のやりたいことや、表現したいものを絞って作らないといけない。その制限が、すごく面白いなと思いながら遊んでいます。

ふれあ

情報量が少ない分、あえて削ったり、デフォルメしたりする人も多いですよね。
アニメっぽい表現もあれば、リアル寄りもあって、全部を統一しなくていい感じが独自だなって僕も思いますね……。

「VRChatだからこそ」出来る表現

ふれあ

VRChatならではの表現について、魅力を感じた世界観やワールドがあれば教えてください。

恒川

そうですね、結構僕もそんなに日が浅くて、あんまり回れてない……言うならば初心者なんですけど

まおりん

今さっきの話の通り入ってるなら初心者じゃないですよ(笑)

恒川

いやいや、本当に初心者です(笑)。
ただ、ワールドを回る時には結構考えながら見ていて、
現実ではありえない体験ができることや、五感情報が少ない中で「音と映像だけでどう世界を作るか」という部分を学ばせてもらっています。

ふれあ

なるほど。

恒川

この考え方って、現実世界にも応用できるなと思っていて。現実は情報量が多い分、色々な要素で補完している部分があるじゃないですか。
例えば「オシャレなカフェだと味が美味しく感じる」みたいな感覚ですね。
そういう補助情報がない中で、何を研ぎ澄ますか、という視点がすごく勉強になります。

まおりん

その視点は、やっぱりリアルでずっとクリエイティブを続けてきたからこそだと思います。

恒川

ありがとうございます。シンプルに「面白い」というのが一番の動機ではあるんですが、この世界はアイドル文化やアニメ文化に近い部分もあって、元々そういうものが好きな「オタク」気質の自分としては、居心地の良さも感じています(笑)

「青に近い気持ち」、色彩が語る、恒川さんの内側

普段の活動で意識している色彩

まおりん

普段の活動で意識している色彩感覚を、言語化するとどんな感じになりますか?

恒川

あーそうですね、それも難しい質問ですね……。

まおりん

これは聞いてみたかったんですよね

恒川

なんだろうな……結構自分が作品として出すものは青がメインなんですが、自分の服装とか自分自身を表すものは黒が多いんですよ、ただやっぱり「自分の気持ちに近い色」は青みたいな所がある気がしますね。

「自分の気持ちを表す色」

まおりん

今さっき「気持ちが近い色は青色」と言われていましたが、その気持ちの色っていうのは好きだなって認識したきっかけとかありますか?

恒川

それで言うと、結構写真を撮る時に編集していくと「青」に寄せちゃうみたいな部分はありますね、後は写真を撮る時に惹かれるものが空だったり、水面に反射する光とかだったりするので、結構自分のデータを見返したら「青」でまとまってたりします。

まおりん

リアルなお写真って結構前から撮られてると思うんですけど、いつぐらいからそういう感じの写真を撮り始めたんですか?

恒川

もう本当に気づいたらそうなっていた感じですね、なのでいつって言われると困ったり(笑)

まおりん

あ~、自然と気づいたらっていう感じなんですね。

ちなみに「自分の気持ちを表している色」が青っていうのは、どういう感じのお気持ちなんですか?

恒川

結構写真を編集したりとかそういう時に綺麗とか落ち着くとか、そういった部分の感情が写真に現れてくるっていう感じですね……。

グラデーションについて

まおりん

恒川さんのお写真は結構「いくつかの色彩が混ざった」グラデーションのような感じの物が多い気がするんですが、これってどうしてですか?

恒川

そうですね、僕も推測にはなっちゃうんですけど、写真に映すものが空や海みたいなグラデーションがあるものなので、そこが深い所で繋がってる気はしますね、変化が一枚の中であるもの、「時間の流れ」がわかりやすい物に心を動かされている部分はあると思います。

まおりん

今のお話聞いてて思ったんですけど、クリームソーダも時間の経過で変わるグラデーションですよね、最初の完成形から溶けてミルキー色になるみたいな

恒川

実は僕、それを眺めるのが好きで、食べ物なんだけど「時間を楽しむ」みたいな部分がありますよね、クリームソーダって

作品作りの対象としてのクリームソーダ

まおりん

ちなみにクリームソーダを表現のモチーフとしてよく選ばれてる理由って何でですか?

恒川

一番は、幼少期の記憶ですね。愛知県出身なんですが、喫茶店のモーニング文化が強くて、おばあちゃんの家に泊まるたびにモーニングに行って、クリームソーダを頼むのが楽しみでした。

もし何かやるなら、クリームソーダを通して、
あの頃感じていた「楽しみ」を誰かに渡せたらいいなと思ったのが始まりです。

まおりん

これは実際に飲んでるふれあさんにお話を聞きたいかも

ふれあ

僕ですか!? いや…なんというか、お店が不定期で営業するとこ含めて子ども心の「楽しむって一番良いよね」みたいな部分がクリームソーダから感じられますね、後はクリームソーダという概念って料理の中でも溶けるものだから「時間」みたいな部分を感じやすいので、子供の頃の恒川さんの気持ちとか、好きな写真の概念とか、そういったものが点と点で繋がって線になった感じを感じます。

まおりん

好きな色や心惹かれる色味みたいな部分から、時間を表現するアイテムと幼少期の記憶の組み合わせで出来てるっていうのはなんか感慨深いとこがありますよね

恒川

本当に小さい頃の記憶っていうのが根底ですね、そこは多分ブレないと思ってます。

恒川さんにとって「創作」とは?

まおりん

恒川さんってアパレル合わせて色々なクリエイティブを世に出していますが、それを出していくうえで受け取った人に何を届けたいとかどう感じてほしいと思ってますか?

恒川

実は結構僕は、受け取り手がどう思うかは何でもいいと思っていて、もちろん喜んで欲しいという思いはあるんですけど、結局は自分の創作物でしかないので、作った時点で一区切りついてはいます。 ただ一区切り付いた後にどう楽しむんだろう?という楽しみを期待してはいますね

ふれあ

なんかその思想は結構VRChatのアバターを作ってる人たちに近いもの感じますね、「改変」っていう文化がここは根強いから、この子の物語やキャラクター性はどう解釈するかはあなた次第ですよみたいな概念がある気がする。

恒川

あー、確かにそれに近いかも知れないですね、先のことに興味はあるんですが、あくまで絶対にこうしてほしいみたいなものはない。 一方通行ではあるんだけど細く繋がっていて「自分の中だけで完成しないもの」が僕の中の創作だと思っています。

VRChatの中で心動いた色

まおりん

ちなみに、VRChatの中で心が動いた色彩みたいな物ってありますか?

恒川

Ozenさんと猫屋敷やよいさん、あとはトラバさんが作るワールドがだいぶぐっと来た色のワールドかもしれませんね、あ、今僕が上げたワールドよく考えたら全体的に青いかもしれません

リアルとVRChatのリンク

まおりん

リアルでメインに活動されていると、やっぱりリアルからVRChatに持って期待要素とかリンクさせたいものってあると思うんですけど、何かありますか?

恒川

そうですね、VRChatは完全に趣味でやっているのでビジネス的な物はあんまり考えてないんですが、ワールドは一個作ってみたいなって

アニメの聖地みたいな感じで、現実には存在しないけど、現実とリンクしている場所みたいな感じの物をVRChatに作りたいなと思っています。

もうひとつの旅の場所として「VRChatを歩く」

旅する喫茶 分室について

ふれあ

Xの方で「旅する喫茶分室」を制作中と言われていましたが、VRChat内に喫茶を作ろうとした理由についてお聞きして良いですか?

恒川

元々現実とVRChatをあんまり分けて考えてなかったので、本当に思い切りで「喫茶店こっちでも作ってみるか」って感じで始めましたね、「味覚がない場所で喫茶店を成立させるにはどうすればいいか」という創作意欲もきっかけだったと思います。

VRChatの「地域性」

ふれあ

VRChatって、色んな地域の人たちが居るのでそれが混ざり混ざって「独自の地域性」みたいなものが出来ているように感じているんですが、恒川さん的にはどう思いますか?

恒川

そうですね、あんまり僕の感覚的には変わらなくて、空想の世界から空想の料理もあるし、写真とかもこの世界の独自のものがあって、違うことを言うなら味覚とか嗅覚とかそういったものがないくらいしか、本当に変わらないと思ってます。

一番最初にVRChatで出したい衣装

まおりん

今まで作った恒川さんのお洋服の中で一番最初にVRChat上で衣装にしたい服ってどれですか?

恒川

ワンピース系のデザインが好きなので、クラシックな感じのワンピース作ってみたいですね、こう……リアルなフレア(広がり)感と細かいVRChatだからこそ出来るフリル表現みたいなのを両立した「普通の服」を作ってみたいです。

まおりん

めちゃくちゃ楽しみにしてます!

最後に一言

ふれあ

最後にこのインタビューを読んでくれるユーザーやファンに関して一言お願いします!

恒川

僕自身、最初から何でも出来たわけじゃなくて、「ちょっとやってみよう」から始まったことばかりなので。もし気になっているなら、難しそうに見えても気軽に始めてみてほしいです。
一緒に楽しくやれたら嬉しいですね。