12月17日、東京都・秋葉原にてVRChat Inc.による”公式”のオフラインビジネスイベント「VRChat Japan Business Experience 2025(以下、JBE2025)」(主催:VRChat Inc.、企画・運営:株式会社V、GMOペパボ株式会社)が開催されました。そのステージイベントで、「VRChat上でのカルチャーとビジネスの関係性とは?」と題した講演が行われました。
登壇したのは、トランス・コスモス株式会社 グローバル事業統括エグゼクティブマネージャー 畠山導人さん、株式会社harmony 代表取締役CEO 原島篤史さん、株式会社MIGIRI 代表取締役 Takaomiさんの3名に加え、株式会社往来 代表取締役社長 東智美(ぴちきょ)さんがモデレーターを務めました。
4名によるVRChat上でのカルチャーとビジネスの関係について語るセッションのレポートをお伝えします。
日本VRChatカルチャーの本質とユーザー特性とは?
VRChat上でライブ制作を行う株式会社MIGIRIのTakaomiさんは、クリエイティブに関する感性や理解、情熱といったものが強いユーザーが多い傾向にあると言います。それはVRChatのワールドやアバターなど誰か別のユーザーが作ったもので遊んでいるからで、そこからアバターの改変やそのアバターの写真を撮ったりなど、まさにクリエイティブな遊び方をしていることが多いと語ります。

それに対してモデレーターのぴちきょさんは、VRChatを始めたユーザーが作品を作り始めたり、イベントを開くようになるまで、他のプラットフォームよりも早いと感じると話します。
独自の世界観でアバター向け衣装を制作する株式会社harmonyの原島さんは、VRChatのポジティブな交流によってクリエイティブが生まれていると考えていると話します。交流の多いVRChatでは、「この人たちと遊びたい」という気持ちが集会を開いたり、思い出を写真で残したりといった行動に繋がっている。VRChatで仲良くなった人たちに喜んでもらいたい、驚かせたいといった”ポジティブなクリエイティブ”に繋がっているのが、綺麗なVRChatになっているんじゃないかと考えていると語りました。
海外ユーザー向けにVTuberグッズを扱うECサイト「GeekJack」を運営するトランス・コスモス株式会社の畠山さんは、クリエイターとユーザーがほぼ一緒である環境であるゆえに、企業がVRChatへ参入する際のハードルは高くなっていると話し、さらに日本人は元々クリエイター気質が多くて、VRChatの自己表現の場としてとても適しているのではないかと語りました。
総じて、どの登壇者もVRChatの日本人ユーザーには、”モノ”を作ることが好きな人が多く、VRChatというクリエイティブな場でその実力を開花させた人が多いこと、さらに交流によって促進されているとわかります。VRChat Inc.の基調講演では、「VRChatユーザーにおける日本人のクリエイター数は、他の世界のクリエイター数の総数よりも多い」といった話もありましたが、VRChatという仮想の場が日本人の気質に合致して作り上げた現実だと考えられます。

カルチャーを理解した体験設計とコミュニティ連携とは?
次に、VRChatのユーザーやイベントの特性を理解してビジネスを行う三社は、イベント設計を行う際にどのように特性を加味しているのかについて話しました。

株式会社MIGIRIのTakaomiさんは、VRChatのおもしろいところが”近さ”であると語り、距離感がとても重要だと話しました。ライブであれば演者との距離感をきちんと設計することが大事だと言います。またTakaomiさんは、自身が制作するVRChatのライブイベントについて、ワールドに入ってから終わった後の余韻まで、ユーザーがどういった体験をするかを非常に大切に考えていると共に、現実と違ってどの場所からも音を出せるのを活かした空間音響の視点も大事にしていると話しました。

持続可能性への挑戦 カルチャービジネスの課題と突破口は?
現在のVRChatは、iOS版がリリースされたことによりVRChatの敷居は低くなったものの、よりユニークな体験をするためにはスペックの高いPCやVRヘッドセットの用意といったコスト面や、知識の習得も必要になる場面が多くあります。それは同時にビジネスにつなげていく際の課題になることもあります。
自身がゲーム会社で3Dモデリングなどの経験がある畠山さんは、VRChatのユーザーが自身でモデリングをしたり、Unityでアバター改変をしていることについてとてもすごいことだと語りつつも、VRChatユーザーのハードルを下げない限りユーザーの母数は増えていかないと考えていると語りました。しかし、クロスプラットフォーム化は良い流れであると同時に、違う文化のユーザーが一度に多く入るためこれまでの文化が流される可能性も考えられ、それならばデバイスや回線の改善が進むことの方が良いと見解を述べました。
原島さんは、他のプラットフォームとの比較で考えた時に、ROBLOXは用意されたゲームで遊ぶ、言わば”テーマパーク”的なイメージがあり、対してVRChatは遊びを自分たちで作る”砂場”のような違いがあると語りました。そうした”砂場”でビジネスをしていくということに原島さん自身極めて難しくもおもしろい問いだと考えており、まだ答えは出ていないと話しました。
今後VRChatへの期待とこれから参入する企業へ
最後に三社は「VRChat」への期待や、参入する企業への言葉を述べました。

トランス・コスモス株式会社の畠山さんは、この業界でやるには辛抱強くやっていかないと難しいと話し、またこの会場にいる皆さんと一緒に頑張って盛り上げていきたいと語りました。
株式会社harmmonyの原島さんは、VRChatは他のプラットフォームにはない、自分たちの力で遊べるコミュニティがあるので、そういったコミュニティと企業とが盛り上がっていける場になっていくことに期待を寄せていました。またこれからVRChatへ参入する企業に対しては、生活の中で生まれる遊び心をビジネスに転換できないかという発想を持つことが重要だと語りました。
そして株式会社MIGIRIのTakaomiさんからは、これからVRChatへ参入する企業や担当者は、VRChatを遊ばずにVRChatのビジネスはできないと強く語り、「ぶいちゃで遊びましょう!」と言いました。
最後にぴちきょさんからは、VRChatへの企業参入のハードルは高いと感じつつも、VRChatでのビジネスを行いたい人を待っていると語りました。

VRChatのコミュニティと接し、深い理解を持ってビジネスを行っていることがとても伝わるセッションだったと筆者は感じました。しかしセッションでもあったように、企業はもちろん、ユーザーもVRChatを始めるハードルの高さは感じるところではあります。これまでのコミュニティと企業との繋がりだけでなく、VRChat運営とも手を組みこの世界を広げていくことができればよいと願っています。


















