イベントだけでは終わらない。コミュニティ利用もされていく「メタバースえひめ」制作陣インタビュー

clusterで、1月19日にメタバースえひめのワールドが公開されました。

ワールド公開当日には「オープニング記念イベント」が開催され、盛り上がりを見せていました。メタバースえひめは、道後温泉、愛媛県庁、忽那(くつな)諸島中島の3つのエリアで構成されたワールド。温泉や県庁、ビーチといったさまざまな愛媛に実在する場所が1つのワールドにまとまっています。

メタバースえひめは、単なるワールド公開やイベント開催だけではありません。クラスター社がこれまで培ってきたメタバースの知見を生かし、メタバース空間上に愛媛県の観光地や街を構築し、観光客誘致だけでなく、県民向けのデジタル上のコミュニティ生成や行政との直接の関わりの場の創出を目的としたプロジェクトです。また、愛媛の問題をデジタル技術で解決する「トライアングルエヒメ」の一環でもあります。

「メタバースえひめ」で今後どのようなイベントが予定されているのか、利用者がコミュニティとしてどう活用してもらいたいのかをインタビューしてきました。

インタビューにご協力いただいたのは、メタバースえひめを立ち上げたプロジェクトの「トライアングルエヒメ」担当の金子さん、クラスター社亀谷さん・上杉さんです。

プロジェクトの始まり

ーーメタバースえひめを採択した理由やきっかけをお聞かせください。
「トライアングルエヒメ」担当金子(以下、金子):トライアングルエヒメ事業自体は、愛媛県が運用しています。トライアングルエヒメの中に、クラスター社からご提案いただいたメタバースえひめがある位置づけです。
今回メタバースえひめを採択した詳細の理由は非公開にさせてもらいます。
ただ採択した背景として、クラスター社からイベント利用のみならず自治体の窓口や教育にもメタバース空間を利用できる提案や渋谷のメタバース空間を運用している前例があります。

ワールドのこだわりポイントと進め方

ーーワールド設計に関して質問です。どのようにしてワールドを決めていったのでしょうか?
金子: お互いにコミュニケーションをとりながら、進めていきました。
クラスター社から「県内の人になじみがあり、そのうえで、県外の人にとって象徴的なものにしていく必要がある」と提案いただきました。
すり合わせする中で、道後温泉内海に、大小さまざまな島が重なることで現れる景観である「多島美」の中島を提案しました。

クラスター社上杉(以下、上杉): 実際決まってから制作完了まで半年ほどのスケジュールで動いています。実公開とはスケジュールが異なりますがCGでの制作期間は半年程度です。
設計に当たっては、「どこを再現するのか」ではなく「なぜやるのか」「なんのために使ってもらうのか」という制作の意図をしっかりを組み上げるところに時間を割いています。

ーーワールド作成について詳しくお聞かせ願えればと思います。今回、愛媛県庁・温泉・中島と3エリアあります。一番注目してほしいポイントはどこでしょうか?
上杉:道後温泉の中のイベントエリアに関しては、温泉や床の質感にまでこだわってつくっておりますので、リアルな温泉の雰囲気が感じられるかと思います。
また、中島エリアに関しては、実際の中島の海岸から見える景色をベースに作成しているため、現地で見える景色と同じものをご体験いただけます。

ーー瀬戸内の「多島美」を表現するにあたり、どのような工夫をされましたか?
上杉:海のきれいさと島の自然の「匂い」が感じられるように、デジタル空間ではありますがなるべくリアルの浜辺からの景色を流用しています。
また、プランナーやディレクター、制作陣全員で実際に数日かけて島や瀬戸内を周りながら、現地の空気感を体感することで、デジタルでの空間制作をする際に息吹を吹き込めるように自分の身を持って体験していることも大切にしています。

金子:愛媛県が持つ宣材写真なども利用していただきました。

ーーワールドを巡った際、再現度の高さが印象的でした。リアルに即したワールドにしようと決定した経緯について教えてください。特に飛鳥乃湯の外観のみならず中の浴場までの実装に至った理由を詳しく伺いたいです。
クラスター社亀谷(以下、亀谷):再現度の高さはもちろんですが、飛鳥乃湯の中に関しては、イベントができるように少しデフォルメしています。
再現度の高い雰囲気で実際の観光地を動画や画像では伝えきれないところまで表現したく設計しました。その一方で、道後温泉エリアは縮約を変えてコンパクトに回れるようにしており、飛鳥乃湯はリアルではできないような温泉の中でイベントができる体験を提供しています。
現実の風景をそのまま再現するのではなく、メタバースならではの体験価値を想像することを意識しています。

ワールドの活用方法と今後の展開について

ーーコミュニケーションをとる場所として、どのように意識した設計をしたのでしょうか?
上杉:中島エリアでは、例えば「火のある所に人は集まって会話する」などの仮説をベースに、実際に焚き火を起こして会話を促すなどの工夫があります。

ーー愛顔(えがお)PR特命副知事「みきゃん」アバターを採用した経緯と理由を教えてください
亀谷:アバターでアクセスして、話したり、移動したり、何かを持ったり、投げたりといった身体性の伴うメタバース空間だからこその強みを生かしたいと思いました。その上で、自治体における新しいキャラクター活用の事例を作る目的として、みきゃんのアバターを採用しました。
もちろん自分自身のアバターも使えるので、コミュニティでの交流するときに自分のアイデンティティを持ち込めます。

ーーclusterを普段から遊ぶ人に、どのようにメタバースえひめワールドを活用してもらいたいですか。
亀谷:まずは愛媛の空気感を体験してもらうことが大事です。
今後に関してはまずは、愛媛にゆかりのあるユーザーの方々が集まるコミュニティになっていってほしいと思います。そして県内外の人が交流することで、愛媛にいくこと、愛媛に住むことに興味を持っていけるような流れを作りたいと思っています。

ーー今後のイベントについてお伺いできる範囲で情報を教えてください。
亀谷:今後は県内施策に力を入れていく予定です。
まだメタバースに触ったことのない人たちも、バーチャルえひめをきっかけに、デジタル空間でのコミュニケーションに興味を持ってもらいたいです。そしてデジタル空間を「創る」という体験、職業にも興味を持っていただきつつ、皆様のデジタルへの興味関心を引き上げるきっかけになればいいなと思っています。
もちろん同じ空間を活用して愛媛の魅力を外に発信していく場所としても活用していくので、特にユーザーを絞ることはしませんが、「県内での利用」という新しい試みに挑戦していきます。