どうも!
そろそろ接客イベントの歴史を語れるくらいにはVRC歴が長くなってきた男、ニードです。
今回は2024年に幕を下ろした&幕を下ろすイベントのオーナー様へのインタビュー記事になります。
今や星の数に匹敵する量になったVRChatのイベント。
その中でも4年以上の長期運営を行ってきた老舗イベントのオーナー2名から、接客イベントの今昔、そして運営に関する知見を語っていただきました。
接客イベントを運営してみたい方は、ぜひ先人の知恵に耳を傾けてみてください。
(幕を下ろすこともあり、結構なぶっちゃけ話をいただきました)
それでは行ってみましょう!!
インタビュー対応者紹介
荒川リョウ さん
5年間継続運営中の老舗VRホストクラブ「Altair」(以下アルタイル)2代目支配人。
2024年の7月に運営終了のアナウンスを投下しており、閉幕の準備を進めている。
※アルタイルの紹介記事
あすかぴさん
2024年3月に幕を下ろした執事&メイド喫茶「Yggdrasill」(以下ユグドラシル)オーナー。
4年間運営された欧風コンセプトの接客イベントで、過去にメタカル最前線の正月特番にもご協力いただいた。
※ユグドラシルの紹介記事
イベントの閉幕するに至った経緯
──早速で恐縮ですが、老舗イベントといわれるまで長期運営したイベントに、幕を下ろすことになった経緯を教えていただけますか?
私もリアル事情の変化が大きいですね。4年も運営していると色々と状況が変わりました。自分の心境も周辺環境も。
体調面も含めて私の小回りが利かなくなってしまったので、中途半端に続けるなら終わらせてしまおう、ということになりました。
──老舗イベントと認識されるまで運営が続いていましたが、後任を立てずに幕を下ろす決断をされた理由を聞いてもいいですか?
私が2代目オーナーということもあるので、後任を立てる選択肢はもちろんありました。
ただ、後任を任せたいと思っていたスタッフが自分より先にイベントを卒業してしまいまして……
先ほど話した自分の事情が重なったのもあったので、幕を下ろすことにしました。
──キャストや他のスタッフから選抜するといった方法は無かったのですか?
リョウ
もちろん考えましたが、「そこまでして続けたいか」という自問に対して、答えはNoでした。
野球選手の引退するパターンって知ってます?
加齢とともに緩やかに実力が下がっていって引退する選手と、まだまだ活躍できる中でスパッと引退する選手がいます。
常に変化し続けるVRChatの世界で、『アルタイル』の最後を考えたとき、私は後者を選んだ。ただそれだけです。
私の場合はイベントの発足理由が大きく起因しています。
ユグドラシルが発足した理由は「私がイケメンアバターを見たいから」が根底にありました。
沢山のキャストたちが集まってくれて、運営を続けていくにあたり様々な考えが加算されましたが、根底にあるのは自分の私欲です。
なので後任を立てるという考えはなく、「私のイベントは、私のイベントのままで終わらせよう」という結論に着地したんです。
あと、仮に後任を立てて続けてもらったとしても、恐らく時代に合わせて色々変化していくと思うんですよね。世界観とかシステムとか。
それを私以外の人が変えるのを見るのが、耐えられないだろうなという気持ちもあります(笑)
どこまでいっても「私のイベント」であってほしいという願いもあるんでしょうね。
────お二人とも、自分のイベントが好きだからこそ幕を下ろす決断をされたんですね。
プレイヤー人口・イベント数の増加に伴う界隈の変化
──ここ数年で、VRChatのイベント界隈は劇的に変化しました。
イベント運営視点で昔から大きく変わったと感じたところを教えていただけますか?
目に見えてVRChatのユーザー人口が増えました。
アルタイルはリクイン受付式のイベントなのですが、リクインが届く数も年々増えていきましたね。
数年前まではリクイン数が足りなくてホストが余るのではと肝を冷やすシーンも多かったのですが、今は絶対にないです。
あと、お客さんの性質も変化しましたね。
昔はアルタイルに初来店するお客さんってNewUserとかVisitorがほとんどだったんですよ。でも最近はTrusted Userの方が初来店されることが、珍しくなくなりました。
──他の界隈にもお店の名前が届くようになったから……とかですか?
それもあるかもしれませんが、VRChatの人口増加と共に、遊ぶ場所が増えたことが大きいと思ってます。
昔はイベントも少なかったので、積極的に遊びたい層は早めにアルタイルにたどり着いていたのですが、最近は別の場所でTrusted Userまでしっかり遊びこんでから来店される方がほとんどですね。
だって最近のイベントカレンダーってすごくないですか!?
昔は数件だったイベントが今は1日で100件超えてるんですよ!?
それめっちゃわかるー!!
私もリョウさんと同じ意見です。
イベント数はもちろん、その中でも男性アバターメインのイベントが本当に増えたと思います。
ユグドラシルはメイドDayと執事Dayの2種類を使い分けていたのですが、昔は執事Dayのリクイン数がメイドDayの1/3以下だったりするのは当たり前でした。
当時の男性アバターの需要の低さが伺えますよね。
それがプレイヤー人口の増加と共に、女性人口が増えたこと。
そして大人気アバターの水瀬や杏里が登場して、男性アバター需要がものすごい勢いで上がっていったんです。
私も含めて水瀬君にキャーキャー言う女性が沢山出てきて、男性アバター使用者もすごい増えました。
今ではリアル性別が男性の方が男性アバターを常用するのは普通に見かけますが、昔は本当にいなかったんですよ!
何をどう足掻いても、みんな女性アバターを使ってました。
今はイケメンを沢山拝めるいい時代になったもんです。
──その流れ、自分もめっちゃわかりますわ。
ライターを始めたころは「男性アバター使いって珍しいですね」ってよく言われました。
男性アバターが流行り始めたときは、正直「水瀬を着ればモテる」みたいな空気ができていて、あやかりたくて自分も買ったりしました(笑)
──最近新しいイベントが続々立ち上がっていますが、老舗イベントのオーナーとして今のイベント界隈に何か思うことはありますか?
先ほどの質問と繋がりますが、男性アバターイベントが増えたことはすごく良いことだと思います。
もともと男性アバター使用者が少なかった時代に「男性アバターの魅力を伝えたい」という気持ちを込めてアルタイルを運営してたこともあったので、うれしい流れが来てますね。
またイベントにそれぞれコンセプトがあって、バリエーションが増えたのも良いです。
──確かに、ホストクラブだけでもいろいろなコンセプトのイベントが立ち上がってますもんね。
男性アバターの話が続いたので、ちょっと別軸で話しますね。
ここ数年でメイド喫茶系のイベントは沢山立ち上がってますが、ユグドラシルのようなクラシカルメイド系のイベントがないなと思いました。
アキバ系とかコンカフェ系は多いんですけどね(笑)
これは恐らくユグドラシルが先陣として存在したからかなと思ってます。
昔はイベント数が少ないのもあって、コンセプトが被らないように界隈全体が気を使ってたところがあるんですよ。
内容が被ると少ないお客さんの取り合いから面倒ごとが起こる可能性があったので、仁義を欠いた行動は許されない風潮がありました。
今はユグドラシルも幕を下ろしたし、人口とイベント数増加で多少コンセプトが被ってもお客さんの取り合いは発生しないので、変に遠慮せずどんどん立ち上げてほしいです。
執事喫茶が立ち上がったら連絡ください。行きます!
仁義の話につながりますが、ホストクラブも同様の界隈でしたね。
新しいホストクラブが立ち上がった時に「アルタイルさんに筋は通さないと」と言って関係者が挨拶に来たことがありました。
私個人としては別に気にしてなかったのですが(笑)
──昔はお互いが共存するための筋みたいなものがあったんだなぁ。
運営が頭を抱えた「スタッフ同士の恋愛問題」
──イベントの運営が長くなるほど運営が難しくなると思います。長期運営において起きた問題について教えていただけますか?
いろいろとありますが、1番大変だったのはキャストさんが特定のお客さんへ接客NGを出した時の対応ですね。
人間なので感情的な問題が出るのは仕方がないことですが、仕事ではないので、「それは困る」と運営側から言えないんですよ。
明確に運営に支障をきたす人ならオーナー権限を発動させますが、個人の好き嫌いで入店NGは出せません。
なのでリクインは通しますが、指名シーンで該当キャストが立ち会わないように毎回調整していました。
1〜2件ならともかく、時間経過とともに調整内容が膨大になってくるので、それらをすべて頭に叩き込んで対応するのはマジで大変でした。
こちらは男女混合のイベントだったので、スタッフ同士の恋愛問題が頻発しました。
男女でカップルが成立することもたくさんありましたし、その人たちが喧嘩中はイベント共演NGが出たり、特定の男性を巡った壮絶な女の争いが繰り広げられたりしました。
大小含めると本当にもうもう数えきれないくらい……大変だった……
うわぁ~そういう問題があったのかぁ。
恋愛問題はキャスト同士だけに留まりませんでしたね。
とあるキャストの彼氏がお客さんとして来たとき、指名順都合で彼氏の接客ができなかった場合、その人を担当したキャストがものすごい気まずい想いをしたり……
あまりにも頻発するので、途中で運営ルールに恋愛に関する項目を追加しました。
「恋愛を制限はしないが、イベント運営にその私情を持ち込むな。何かあれば即指導」という内容ですね。
なので、今後イベントを立ち上げるオーナーに伝えたいです。
キャスト・スタッフが男女混合なら、恋愛的な問題が発生した時の対処案を用意しておいてください。ほんとに発生します。マジで!!
──若い男女が集まればそりゃそういう問題も発生するか。いい話が聞けたなぁ。
次世代のイベントオーナーへ伝えたいこと
──これからイベントを立ち上げたいと思っている人たちへ、何か伝えたいことはありますか?
言い方はアレですが、「イベントに期待しすぎない」ことですね。
イベントを立ち上げようとすると、常に賑わってるキラキラの人気イベントを目指しがちです。
人気イベントを目指すことを悪いとは言いませんが、この世界にも需要があるので、そもそも人が来なかったり、最初は人が来ても途中から閑古鳥になったりすることはザラにあります。
こうなると最初の高すぎるイメージとのギャップに心折れちゃう人が多いです。
なので、イベントを立ち上げるならとにかく「期待しすぎない」ようにと伝えたいです。
まずは楽しむこと、これが大切です。
私からは大きく3点。長くなることをご了承ください。
オーナーの方には何よりもまず「自分のやりたいこと」を大切にしてほしいです。
私も色々あって、運営中に一度ユグドラシルが本当に嫌になったことがありました。何もかも投げ出して逃げたくなったこともあります。
そうなった時、イベント立ち上げ時に心に埋め込まれていた「自分のやりたいこと」と向き合うことで乗り越えることができました。
熱い想いは自分を支えてくれる大きな柱です。大切にしてください。
次に、「キャスト同士が仲良くなりすぎない」環境を作ることも大切だと思います。
イベントで久しぶりに会って、一緒に行い、終わったら解散する。
キャスト間がそれくらいカジュアルな関係だったからユグドラシルは長く続いたと思ってます。
イベントでしか会わないから、スタッフやキャストにとっても特別な「楽しい時間」になる。そして、「次の開催日が楽しみだな」と、次回を楽しみにしてくれる要因ができる。
仲良くなりすぎて、日常の延長にイベントが置かれてしまうと、この気持ちが緩んでしまいます。
メリハリをつけて、1回1回をキャスト側も楽しい時間にするために、お伝えしたい運営のコツです。
最後に一番大切なこと。「キャスト」を大切にしてほしいです。
ユグドラシルが開店してから1年くらいたったころ、集客が落ち込んで苦労した時期がありました。
運営として色々と奔走しましたが、その時に「お客さんが来なくて一番悲しむのはキャストたち」ということに気付きました。
私の考えに賛同してキャストをやってくれているのに、人が来なければ時間を無駄にさせてしまい、モチベーションが下がってしまいます。
「お客さんのため」を念頭に置いて運営として行動することは大事ですが、キャストがやる気をなくしては元も子もありません。
イベントの勢いが落ちた時こそ、キャストのメンタルケアをしたり、積極的にコミュニケーションをとるなど、「お客さんのため」ではなく「キャストのため」に何をするかを考えて動いてあげてください。
イベントを運営すると本当に色々あります。
これから辛いことがあるでしょう、泣きたくなることもあるでしょう。
文句を言ったって良い、たまには逃げ出したっていい。たまには思いっきり喧嘩もしちゃってください。
その上で、誰よりもキャストのことを大切にしてあげてください。これは本当に大事だから。
──最後に、今までイベントに来てくれたお客さんにメッセージをお願いします。
この度、突然の閉店告知に様々な反応をいただき恐縮です。
ここまで来れたのは何よりもご来店いただいた皆様のおかげです。
我々がどれだけイケメンをそろえても、お客さんが来なければお店は成り立ちませんから。
私個人としては閉店後もどこかのイベントに現れるかもしれませんが、その時は気兼ねなくお声がけいただけると嬉しいです。
ありがとうございました!
まずは4年間ご愛顧いただきありがとうございました。
いろんな思い出がユグドラシルでできて本当にうれしかったです。
キャスト・スタッフ・お客さんのご協力あってこそ、ユグドラシルはきれいに終われたと思っています。
要望も多いので、もしかしたら単発で復活することもあるかと思いますが、その時はまたこのイベントを愛してあげてください。
私が作り愛した箱庭を、存分に楽しんでほしいです。
本当にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!
──お二人ともお忙しい中ありがとうございました!
そして長期運営お疲れさまでした。お二人は界隈にとって無くてはならない存在だったと思います。これからは1人のお客さんとして、一緒にVRChatを楽しみましょう!
1番の理由はリアル事情の変化ですね。
自分が2代目支配人になって3年ですが、人生のステージが変わるには十分な時間ですから。
VRChatにも最近はイベント開催日以外で入ることが少なくなってしまいました。