【PR】大丸・松坂屋アバターの裏側に迫る 『玲來』と『零韻』キャラクターデザインのゆえん

今を活躍するイラストレーターやモデラーと大丸松坂屋百貨店がタッグを組んでアバターを販売している大丸・松坂屋アバター販売公式。アバター・ファッション領域に参入してからこれまでに12体ものアバターを世に送り出してきました。

このたびメタカル最前線は、キャラクターデザイン、プロデュース、制作を担当した大丸・松坂屋とV社にインタビューを実施。

インタビュー企画の第3弾となる今回は、アバター『玲來』『零韻』のデザインを担当したイラストレーターのORIHARAさんにインタビュー。イメージディレクターとしても活躍されているORIHARAさんに、2体のキャラクターのデザイン論をはじめ、メタバースとアバターカルチャーについてお話を聞きました。

ORIHARAさんプロフィール

©Cloud Nine
Adoを筆頭にデジタル上に生きている人間のイメージディレクターを得意とする。
現代のヘアメイクでありスタイリストである。
イラストレーター面では妖しさ、美しさ、儚さなどの反面力強い眼や特徴的な影、仄暗さのある絵を得意とする。
公式Xアカウント
所属先 株式会社クラウドナイン

ORIHARAさんの世界観のルーツ

©Cloud Nine

ー今回のアバターではダークな色彩が使われています。元々ダークな色彩の妖しさ、美しさ、儚さを表現したイラストを描くとお聞きしましたが、ダークな色彩を好んで使う理由を教えていただけますか。

単純に黒が好きなんです。黒、暗い色、そして薄暗い色。例えば、住んでいたエリアで感じた街中の暗さ、妖怪の現実離れした仄暗さなどに魅力を感じることが多くて、何かを選ぶ際にも黒に惹かれがちです。
今回出させていただいたラフには、明るい色彩の衣装もありましたが、ダークな色調の玲來と零韻が一番良かったと感想をいただいて。やはり私に求められているもの、強みの部分は「暗さの表現」なんだと思って最終デザインを仕上げました。

黒が好きになったルーツは何ですか

小さいころから、例えばランドセルの色などで第三者に好きな色を決められることにしっくりこなかったんです。それで、黒の何色でもないという感じがとても好きになりました。

あと、郊外の駅から5分10分歩くと急に静かになるコントラストが好きで。メインストリートは賑わっているのに、横の路地を見ると一気に雰囲気が変わって、今立っている所はすごく明るいのに、向こうは影がさしていて、現実じゃないみたいな場所。路地裏とか木陰。仄暗さを感じるコントラストに惹かれることが多かったです。

©Cloud Nine

今回は1つのテーマで複数体のデザインをされたとのことでした。「玲來」と「零韻」は姉弟という関係ですが、キャラクターデザインをするにあたって、どのような経緯でこの設定が生まれたのでしょうか。

元々きょうだいという設定が好きなのですが、今回その設定を提案した理由はキャラクターの受け取り手、今回であればモデルを買う方が2体のキャラクターの関係性の余白を想像して、どちらにも愛着を持って大事にしていただけたら、という気持ちからです。

きょうだい設定が好きなのには、どんなルーツがありますか。

私にはきょうだいがいないので、小学生のころからきょうだいという存在に憧れがあります。大人になってからも、きょうだいという設定自体が好きなのはもちろん、キャラクターデザインをする際に背景情報があると作業しやすいので、お気に入りの設定です。

バーチャルは2.3次元

自分のデザインが3Dモデルになったのは今回が初めてとのことですが、ご覧になった時どう思いましたか。

第一印象は、シンプルに「うわー!動いている!」と(笑)。文字通り、魂が宿っているなと感じました。イラストにも魂が宿るという表現を使いますが、今回のPVでモデルとしてアバターを着用した方や、実際に購入して使う方によって、それぞれパーソナルな動きがあるじゃないですか。それを見た瞬間、「生き物になったんだ」と実感しました。

ー今回の2体のデザインが完成に至るまでの経緯について教えてください。

私のイラストが3Dアバターになるのは初めてだったので、さまざまなモデルを拝見して勉強しました。その中には中性的な骨格のモデルもあり、せっかくだったら男女で差が小さいドールのような作り物感、つまり少年少女感を出したいと思ったのがスタート地点でした。

キャラクターデザインの仕事では、必ず裏設定でキャラクターの性格もデザインしているのですが、自分の想像を超えた動きを見て、その世界観を超えていってくれたところにとても感動しました。

バーチャルって2.5次元よりも2次元に近い2.3次元くらいのような場所だと捉えていて。 今回はバーチャル上のキャラクターのデザインなので、せっかくなら現実ではあまり着られないアニメ的な2次元の要素、例えばミリタリー風×ロリータ要素や、現実だと重力の関係で難しい、思いがけないシルエットなど、私がアニメの世界にいたら着たかった憧れのデザイン要素をたくさん盛りこみました。

正装というテーマから生まれた2体のパーソナリティ

――「正装」というテーマをどう表現したのでしょうか。

「正装」は日常とは違う場所にあるものだ、という前提から作業をスタートしました。「隙の無い自分、完璧な自分になるための服」が正装の良いところだと考えていて。フリルをたくさん付ける、ハイヒールを履かせる等、良い意味で生活感の無い、作りものめいたデザインに挑戦しました。

先ほどお話ししたように、こんな性格でこういう思想があるから、この服を着る、この表情をする、こんな着崩し方をするというような、キャラクター性の裏設定を外見に反映することが多いです。

ーー玲來と零韻は、どういう思想があってこの衣装を着ているのでしょうか。

私の中では、玲來はわがままで暴君な姉、そして生まれながらそれに付き合わされている弟の零韻。玲來が椅子に座っていて零韻は隣に立っている写真があるのですが、この表現は2人らしいなと思いました。

玲來は、無意識にわがままで絶対君主の姉だけど箱庭のお姫様でもある。彼女のそんな性格が、服の非対称さにもよく出ています。黙っていると大人しそうに見えるのに、喋ると多分怖い。ギャップがあっていいですよね。

それに対して弟は、姉から「あんたはこうしたらいいんじゃない。ほら正解だった」という風に引っぱられて育ってきたので、少しぽやぽやして自然と姉についていく感じになっています。自我が薄めの雰囲気で。ハイヒールも本人が選んで履いているのではなくて、「あんたはヒールが似合うから」と姉が履かせているところがありそうだったり。 服もベースはお揃いだけど、弟の方がシルエットがゆるくなっています。


PVやサンプル画像を拝見した時、玲來は得意げなものやほほえみ等、さまざまな表情のサンプル設定があったのに対して、弟は微動だにしない感じになっていて、ぽいな〜と思わず笑ってしまいました。

姉は生まれた時、姉ではないのですが、弟は生まれた時から弟なんです。姉は生まれた後、1人でいたころもあって、だから彼女は自分でなんでも決めて、自由に進む感じ。こんな設定を考えていました。

3Dモデルを拝見した時に、自分が考えていた設定をデザインから汲み取ってくれたんだなと思いました。あくまでも買った方の好きな設定で使ってもらえたらと考えていたので、パーソナルな設定についてはお話ししていませんでしたが、思っていた以上デザインの意図が反映されているのが嬉しかったですね。

ーー懐中時計と仕込み傘も特徴的ですよね。

この2点は、モデラーさん側のアイデアなんです。教えていただいた時「かっこいいな」って思ったんですよね。隙間を想像して作ってくれたものなんだなって。

ーー2体それぞれのお気に入りのポイントはどこですか。

玲來はアシンメトリーのスカートですね。シルエットを意識してデザインしています。PVを観た時に、スカートの揺れとシルエットがとても綺麗だと感じて、一番気に入っています。

零韻はハイヒールや、パンツの前面のスリットがお気に入りです。赤と黒のコントラストを意識しました。

アバターカルチャーとイメージディレクターという仕事の類似性

メタバースやアバターカルチャーについてどんな考えをお持ちですか。

遊んでいる人の話を聞いたり、SNSで読んだことはありますが、まだ自分で経験したことはありません。インターネットカルチャーの一つだと思っています。10年前は、インターネットは別の世界だと感じる雰囲気があって、現実とは違う自分になれる気がしていました。

でも現代では、インターネットは一つの現実になっているのですが、今のメタバースのアバターカルチャーはそうではないように感じていて、イメージディレクターという私の仕事とやっていることが近いのかも?と思っています。

外見は視覚情報なので、良くも悪くも人のイメージの大半を占めますよね。こういう声になりたい、こういう外見になりたいなど、自分の中で理想のキャラクター性というものがあっても、実際の外見を変えることはなかなか難しい。

垣根や制限を全部越えて、なりたい自分になれることはとても画期的で、人を幸せにする発明だなって。

アバターを購入したり改変したりすることで、自分のなりたい骨格や身長といった理想のパーソナルをデザインできることが、メタバースやアバターカルチャーの凄いところだと捉えています。ですので、メタバース上のアバターは、新しい自分というより、もう一つの自分の体。そういう前向きなイメージを持っています。