2025年2月23日。三連休の中日、六本木のど真ん中に、VRChatの音楽好きが170人あまりが集まった――と書くとその熱量が伝わるでしょうか。
ライブイベント「UNPLUX」。ライブハウスに全国から集まった人々が目にしたのは「StrollZ」、「PHANTOM」、「CROWK」、「JOHNNY HENRY」の、4組のVR発アーティスト。遅延が無いサウンドと圧倒的な音圧、そしてバーチャルではまだ伝えきれない彼らの千変万化な表情・表現を全身に浴びた数時間でした。
今回筆者は、「UNPLUX」オフィシャルカメラマンとして最前列での撮影を敢行。本記事では、写真を中心としたライブレポートをお届けします。当日いらっしゃった方はライブの余韻に浸りながら、ダイジェストでお楽しみください!

歴戦のVRアーティストと、多種多様なファンが六本木に集結
「UNPLUX」は、インストユニット「StrollZ」と、オルタナティブロックバンド「PHANTOM」が主催した、リアル音楽ライブイベント。会場は東京都港区六本木のライブハウス「unravel Tokyo」で、「StrollZ」、「PHANTOM」に加え、ヒップホップユニット「CROWK」とブルースロックバンド「JOHNNY HENRY」の計4組が出演しました。
今回の出演者4組は、VRChatでの音楽活動を年単位で重ねてきた人ばかり。彼らのファンも多種多様。思い思いの格好でライブ会場を彩っていました。中には世界に1枚しかないオリジナルグッズを着用している猛者も。

会場で販売していた出演者のドラマー・ジャンクさんをモチーフにしたTシャツは、売れ行きも好調。ご本人も着用しての出演となりました。

またライブ前には、ファン有志総勢40名以上による、六本木交差点に面するCHINTAIビジョンでの街頭動画広告が放映開始。ライブ開催を喜び、そして応援するファンたちの粋なサプライズに、出演者たちは驚きの声をあげていました。
定刻通り、17時15分開場。待ち切れず列を形成していた観客たちで地下2Fの物販コーナーは、この日限定の各アーティストのグッズや音源を買い求める人であふれかえりました。入場後、早速今回のオリジナルグッズのタオルを掲げる観客も。限定販売のタオルはもちろん完売。入手できた人はラッキーでしたね。
サックスとピアノが先陣を切る。トップバッターは「StrollZ」!

最初のステージを飾ったのはインストゥルメンタルユニット「StrollZ」。ピアノがセットされたステージに、サックスをさげたざっくさんと、しあのさんが現れた直後、歓声がフロアに爆発しました。


当日サポートメンバーのシェルさんが、急遽出演キャンセルとなってしまいましたが、「彼の分まで演奏する!」との思いを声にし、サポートメンバーのmoiriさん、ジャンクさんと目配せしあいながらパワフルなナンバーを次々に奏でる2人。



『ランバリオン』や『霧ノ帳』、Ambientflow Kuさんの楽曲『星』カバーなど、「StrollZ」定番のラインナップに、会場のボルテージは着実に上昇。サックス、ピアノ、ベース、ドラムが織りなすサウンドは、疾走感の中に優美な色もただよう唯一無二なものです。

配信音源も素晴らしいですが、ステージ上のライブ感は楽曲をさらに高めていくように感じます。彼らの音楽はライブで完成すると言っても、過言ではないのかもしれません。

最後には、未発表の新曲「飛鳥」を披露。トップバッターとしてunraval tokyoを最高潮に温め、颯爽とステージをあとにしたのでした。
- 東雲草
- ランバリオン
- 霧ノ帳
- 雨後
- 星
- 夏手帳
- 飛鳥
「我々なりのHIPHOP」が炸裂!ゲストも駆けつけた激アツな「CROWK」!


「StrollZ」の興奮も醒めやらぬなか、ステージ上にDJ卓を置き、現れた2番手はVR HIPHOPユニット「CROWK」。2023年の「VARTISTs」を思い出させる出演順です。



DJ jentagawaのDJingから始まり、MC2人による、観客を追い上げるマイクパフォーマンスが炸裂!「我々なりのHIPHOPを全力で浴びせに来たぜ!」と宣言しながら代表曲『嗤ゥせぇるすまん』が幕を開け、さらに『Mappa!!』、『Fairy Dance』と、アップテンポで畳みかけてきました。
合間には、CROTCHETさんが会場を訪れたご家族のエピソードを披露して会場をホッコリさせる場面もありつつ、さらに『砂砂楼閣』を投入。VRアーティストとして幅広く活躍する「AMOKA」のあいぽさんをゲストボーカルに迎えた一曲ということで、ゲストに音声であいぽさんが参戦。スペシャルなステージがフロアを沸かせました。



さらに、WisKさんが主宰するVR Rapコミュニティ「Cipher Communication Circle」発ユニット「HIPHOPJACKLIVE」のメンバーとのコラボレーション新曲『RUN-KING』がお披露目。メンバー5人のうち、クサリさんとなみびとさんをステージに迎え、ダイナミックなHIPHOPで畳みかけます。


そして最後は、4人で『THE BLACK TRAIN』を熱唱。コール・アンド・レスポンスによって、観客の一体感はクライマックス。これ以上ないほど場を暖め、次のアーティストへバトンタッチしました。
- 嗤ゥせぇるすまん
- Mappa!!
- Fairy Dance
- 砂砂楼閣 feat.あいぽ(from AMOKA)
- RUN-KING feat.なみびと、クサリ、s4boRima from HIPHOP JACK LVE
- THE BLACK TRAIN
もはやラスボス!?貫禄満点な「JOHNNY HENRY」のステージ!

3組目はブルース・ロックバンド「JOHNNY HENRY」。ここ数年で自主企画ライブや対バンを多く積み重ねており、今回の出演者の中でもリアルライブへの出演はトップクラスです。
「みんな、前2組がめちゃくちゃ上がるから揺れて疲れたでしょ。あとに続くPHANTOMのためにも、バラードしか持ってきていません」と、冗談かどうかわからないMCをいれるボーカルのYAMADAさん。肩の力を抜きつつも、堂々とした振る舞いはさながらラスボスといったところ。




『怪人Y』から始まるステージは、MCで話したことなどどこ吹く風な、ロックンロールの嵐。しかし新曲『息』は、「JOHNNY HENRY」でもめずらしい、しっとりと聴かせるバラード。熱気あふれるunraval tokyoを優しく落ち着かせる、有言実行なステージを見せていきました



しかし、直後には代表曲『Emotion』をぶつけ、会場は一気にトップギアに!そしてシメに言わずと知れた名曲『愛にすべてを』。フロアにこだまする「愛にすべてを!」のコールが、トリのステージへと最高のバトンをつないでいきました。
ちなみに、合間には1stEP『Get A Life』頒布を発表。そして会場全体に、新曲を試聴できる名刺サイズのカードも配布する、うれしいサービスも見せてくれました。このとき、観客がお行儀よくカードを受け取り、後ろへ手渡していく、ほほえましい光景も広がっていたことはお伝えしたいところです。
- 怪人Y
- Paint it Blue
- 深夜徘徊のブルース
- 息
- Emotion
- 愛にすべてを
「VARTISTs」に憧れ、目指した舞台。トリを飾った「PHANTOM」のステージ!


トリを飾るのは、主催の片翼を担う「PHANTOM」。楽曲リリースはもちろん、2024年にはStrollZとリアルで対バンを実施し、直近特に活躍がめざましいVRロックバンドです。そして2025年からは、これまでサポートメンバーだった夢二さん、ジャンクさんの2名が正式メンバーとして加入しました。
「僕らは今日出演するアーティストの中でライブ活動を始めていちばん日が浅いんですけど。2023年のVARTISTsを観客として観たときほんっっとうに悔しくて。同じステージに立とうと決意してやってきたので今日を迎えた事を嬉しく思っています」



観客からは万雷の喝采で迎えられたふぁんさんのMCも交えつつ、『涙雨』『メンドローム』『ブラックヘアー』『炭酸』と、さわやかで、時にパワフルで、時にはやさしいバンドサウンドがこれでもかと投入! 夢二さんのアグレッシブなギタープレイが会場を大いに盛り上げつつ、残響すら楽曲の合間の演出に仕立て、観客にたしかな緊張感を持たせるステージが展開されました。

ラストには新曲『ニジクラゲ』が初お披露目。清涼感と疾走感にあふれたサウンドと歌声を前に、出し惜しみするかと言わんばかりに観客は腕を振り上げていました。そして、拍手喝采と、エレキギターの残響音とともに、「PHANTOM」の4人はステージを去っていきました。




――もちろん、ここからアンコール。期待に応えステージに戻ってきたのは、「PHANTOM」と「StrollZ」。「UNPLUX」の主催を務めた2ユニットが最後に披露したのは、「PHANTOM」代表曲のひとつ『しらはえ』……の、「StrollZ」コラボバージョン。「PHANTOM」のバンドサウンドと、「StrollZ」とサックス&ピアノが融合した、唯一無二の音が響き渡り、「UNPLUX」は無事大団円を迎えたのでした。

- 涙雨
- メンドローム
- ブラックヘアー
- 炭酸
- ニジクラゲ(新曲)
- 【アンコール】しらはえ(「StrollZ」コラボver)
オンラインで聴ける時代だからこそ、リアルの”音”を響かせる

「”知らない顔から知ってる声がする”不思議な体験」とは、「VARTISTs」ライブレポートで特に印象的なフレーズでした。
VRChatアーティストが一同に会した、記念すべきあの舞台から約1年半。リアルのステージに立つ人々も増えたことで、”知らない顔から知ってる声がする”現場は、レアとは言い切れない体験になりました。
しかし、レアではなくなったとしても、同じ時間は二度とありません。出演者にとっても、参加者にとっても、「UNPLUX」はそれぞれの記憶に鮮明に焼き付くものになったはずです。ライブのハッシュタグを追いかけても、あの日を思い出しながら「どうだった?」と自分自身の心に問うても、きっと同じ答えが得られるはずです。
「SYNCROOM」を筆頭に、気軽に自宅からネットワーク回線越しに、様々な人たちと音楽活動ができる時代となりました。VRChatでは今でも、同じワールドに集まったセッションが日常的に行われています。しかし、VRChatを飛び出して、リアルの世界でライブをすることは、まだまだ得難い体験です。
主催として、そしてトリとしてステージに立った「PHANTOM」は、「VARTISTs」をきっかけにこのステージへ向けて駆け出しました。バーチャルでは味わえない”音”を響かせ、人々に届けるべく、リアルのステージを目指すアーティストが今後も現れるかもしれません。その可能性を感じるほど、この夜には大きな熱気が宿っていました。
様々なドラマを生み出した「UNPLUX」でしたが、なんとVRChatにやってきます。「UNPLUX in VRC」は、6月14日に開催予定です。当日行った方も、行きそびれた方も、「V-Kitazawa AWAKE」へ足を運びましょう!

また、AONEKO/青猫さんによるオープン弾き語りワールド「FirstNoteStation~始発駅~」にて、当日放映されたファン有志による応援動画が放映されています。あの日を振り返ってみたい方は、ぜひ観に行ってみてください。そして、ここに立つ人々の中から、まだ見ぬ「リアルの舞台に立つアーティスト」を、ぜひ探しに行きましょう!