株式会社メタバースクリエイターズは株式会社Kultureとの協業より、7月1日にメタルダンスユニットBABYMETALの結成15周年を記念した公式ワールド『Avatar Dance Stage』がVRChatにリリースされました。
ライブや映像で音楽を「視聴する」体験から、ユーザー自らが音楽の世界に「没入する」体験へと進化させる、BABYMETALの新たな挑戦として始動したプロジェクトです。
このプロジェクトはVRChatのワールド以外にも、Robloxにも楽曲『ヘドバンギャー!!』をテーマとしたマルチプレイ型のホラーゲームがリリースされます。
今回は、『Avatar Dance Stage』について紹介。そして狙いについて見ていきます。
自分のアバターが楽曲に合わせて踊れる楽しさ
ワールドに足を踏み入れると、ステージが目の前に広がります。観客席のパネルから簡単な操作で、最大3人まで同時にステージに上がることが可能です。


ダンスが始まるとカメラは自動で切り替わり、自分のアバターが踊る姿をさまざまな角度から眺めることができます。

ステージは3種類から選べ、ダンスを彩るエフェクトも用意。「踊ってみた」動画や記念撮影のための機能は一通り揃っている印象です。また、YouTubeやニコニコ動画などへの動画投稿や配信が、各種プラットフォームの規約を守れば問題ないと明言されている点も、楽曲を扱う上でありがたいポイントです。


一方で、気になる部分も見えてきます。オープン時点で踊れるのは『ギミチョコ!!』と『メギツネ』の2曲の一部のみ。BABYMETALのプロジェクトのために作られたため、この規模になるのは分かるものの、物足りなさを感じるのが正直なところです。
さらに大きな課題は、アバターの表情です。現状、ダンス中に表情を変化させるにはユーザー側でアニメーション設定が必要で、この一手間は気軽に楽しみたい層にはハードルが高いと言えます。せっかくのキレのあるダンスも、アバターが無表情のままでは魅力が半減してしまいます。(設定についてまとまったドキュメント)
またVRChatに馴染みのないBABYMETALファンからすると、自分のアバターで踊る楽しさを感じるために必要であろう、アバターへの愛着やVRChatのカルチャーへの理解が追いつかないかもしれません。
これらの点を踏まえると、現状ではBABYMETALファンとVRChatユーザー、そのどちらに向けても、アピールが弱いというのが率直な印象です。
「クリーンなダンスワールド」を作ってみる
では、なぜ制作陣は『Avatar Dance Stage』を公開したのでしょうか。
その答えは、このプロジェクトに込められた想いにあります。ディレクターのコクリコさんは、このプロジェクトの意義を「VRChatにおけるMMDダンスワールドの問題を解決できる方法を『実際に』提示したい」と語っています。
VRChatのカルチャーに詳しい方ならご存知の通り、ユーザーが作成したダンスワールドの多くは、権利的に厳しいもの。
今回のプロジェクトの真価は、コンテンツのボリュームではなく、BABYMETALという世界的なアーティストと公式にタッグを組み、権利者、制作者、そしてユーザーの全員が納得できる「クリーンなダンスワールド」という新しい”かたち”を提示したことそのものにあるのです。
この取り組みは、VRChatのカルチャーを尊重しつつ、企業として真正面から権利問題に向き合った、真っ当な一歩と言えるでしょう。
なので『Avatar Dance Stage』は、「多くの課題を抱えているが、可能性を実現するためのワールド」だと言えます。実際に作ってみたところどう映るかは今まさに実証中と言えるでしょう。
今後の展開を望むなら、ぜひハッシュタグ「#VRC_ADS」をつけて、その感想を写真や動画とともにSNSに投稿してみてください。
●参考リンク
・BABYMETAL公式Xアカウント
・プレスリリース