ソーシャルVR上で小説を書いている人をご存知ですか?
VRChat、NeosVRを拠点に活動しているメタバース小説家sunさんは、ソーシャルVRにある動画プレイヤーを使ってリアルタイムで小説を執筆しています。小説の題材となるのはソーシャルVRで実際に遊んでいるユーザー。
誰しもが1度は想像したことのある「自分が主役の物語」を、書き手であるメタバース小説家sunさんとの掛け合いやイベントに参加している人達によって作り上げていきます。
とはいえ出張執筆とはどういったイベントなのかピンとこないと思います。本記事では実際に出張執筆を依頼して体験した筆者が、メタバース小説家sunさんに出張執筆はどういったものかインタビューしてきました。
最初はVTuberになって出張執筆をするつもりだった
ーー自己紹介の方よろしくおねがいします。
sun メタバース小説家sunです。普段は無償有償問わずにメタバース上で小説を書いています。題材としては、メタバースで遊んでいるユーザーがメインです。最近は私立VRC学園などで講師をやらせてもらったり、ワークショップを開催したりしています。
ーーはじめに出張執筆が知らない人に向けてどのようなイベントなのか教えてください。
sun 動画プレイヤーの配信機能を使って、リアルタイムで小説を書くイベントになります。いわばお絵かき配信の小説版と思ってください。
ーー出張執筆をはじめたきっかけとはなんでしょうか。
sun VRChatを始める前から、VTuberとうまく関わる方法としてリアルタイムで小説を書くという方法を考えていました。そのときはVTuberになって配信をするつもりでいたのですが、VRChatだと配信せずとも書くことができるのが分かって今の出張執筆となりました。
ーーじゃあVTuberになる話は……
sun 今はもうないです。出張執筆をするのがVTuberになる目的だったので。
会話が盛り上がる場作りの工夫を心がけている
ーー個人的には出張執筆ってVRChatの性質をうまく使っているのかなって思っています。VRChatって「みんなで雑談」はコンテンツとして強いところがあると思うのですが、出張執筆は会話の場作りをするイベントなので上手いなって感じました。
sun 出張執筆をやりはじめてから気づいたのですが、物語に興味があっても文字は頭に入らないって人は多くいるんですよ。ライターの前で言うことではないと思うのですが。
ーーライターをやっていて痛感するところなので分かります。
sun ですが、文字が頭に入らない人でも朗読という形だったら、頭の中にすっと入ってくるってことは多いです。出張執筆だと、参加している人たちの掛け合いや内容に対しての質問で声があがるので、文字が苦手でも楽しめるようになっています。
ーーとなると会場が盛り上がるようなテーマ選びも大事になりますよね。
sun 題材になる人にとって熱く喋れる内容にすることを意識しています。例えば質問をYesかNoで答えられる質問からだんだんと自由に答えられる質問にすることで、相手に喋らせる工夫をしていますね。
ーーそういった工夫によって出張執筆中は盛り上がるというわけですね。
sun 題材になった人の魅力をみんなで挙げていくうちに、思わぬ魅力が出ると盛り上がります。出張執筆ではワイワイと盛り上がる熱をいただいて、執筆を進めています。
ーー思わぬ魅力というのは土壇場でのひらめきとか、アドリブの面白さみたいなライブ感でしょうか。
sun まさにそうです。正直なところ、セリフにある一人称や口調などを自分で考えたり、確認を取ったりせずにすむので楽ですね。
ーー実際に使った言葉が使えるわけですからね……
sun ただし、上手くやるには事前に場面や起承転結を用意する必要があります。りんさんの場合ですと、アバターについて掘り下げる特集を連載していたので「記事を書いている場面」と「アバターを紹介する」の2つを物語の軸に決めました。
ーーそして誕生日会で出張執筆をしていたので、オチで「誕生日を祝う」ことにしたわけですね。
sun そうなります。「記事を書いている場面」「アバターを紹介する」「誕生を祝う」という3つの要素があれば、内容がブレることもありませんし、参加者に質問をするときも状況がつかめないということもなくなります。
ーー上手く盛り上げるためには事前の準備が必要というわけですね。
sun 例えばいきなり物語の舞台をどこにするかって聞かれても、選択肢が多すぎて困ってしまいますよね。参加者にする質問の負担を減らすためにも、事前の準備をしっかりしています。
ーー場合によっては、事前に決めていた内容から外れてしまうことはありませんか?
sun 出張執筆においては私のプロットからは外れてもよくて、みなさんの魅力や願望を引き出すことができれば大成功なのです。あとは私の出した内容を否定する形のほうが、みなさんの意見を引き出しやすいですよね。
ーー人の心をつかんでいますね。
sun 人の心をつかむことだと出張執筆だといつもの小説に比べてプロットはそこまで決めずにやっています。理由としては、自分の意見が反映されると嬉しくなる人の心理を利用するためですね。
プラットフォームごとの特徴
ーー出張執筆は色んなプラットフォームで開催していますが、プラットフォームごとの特徴の方はどうでしょうか。まずは、VRChatから聞いてもいいですか?
sun VRChatはユーザーの数が多く、盛り上がりやすいですね。最初に出張執筆をやったプラットフォームだからというのも理由にあるとは思います。
ーー次にNeosVRだとどうでしょうか。
sun NeosVRだと、出張執筆に欠かせない動画プレイヤーを持ち運びすることができて、本当にどこでも書くことができます。完成した小説にサインをして参加した人に配るみたいなこともできたりと、できることの幅が広いです。
ーーNeosFesta4のアンバサダーになっていましたね。
sun 出張執筆をした人の縁や、メタバース小説家の珍しさから務めることになりました。
ーー開催期間中は出張執筆を何度かしていましたね。
ーーclusterはどうでしょうか?
sun clusterは標準機能にチャット機能とエモートがあって、喋れない人でも参加できる敷居の低さが魅力です。
ーースマホから参加できるのも含めてclusterは参加しやすいですね。
sun 敷居の低さだと、ほかにも出来事がありますね。Vtuberさんの配信で出張執筆を行ったときに、コメント欄を小説に反映できるのです。VR機器のない配信を見ている人も参加できるというのは、文字ならではの強みかなと思います。
ーーいろんな形式に適合できるのが文字の強みというわけですね。
出張執筆はなりたい自分へのきっかけ作りにしてほしい
ーー出張執筆の依頼はどのようにすればよろしいでしょうか。
sun 私のTwitterにリプライを送ってもらうか、相互フォローしている人ならばDMでおねがいします。最初の頃は間口を広げても困るかなって思っていたのですが、現状だと声をかけづらい状態なので今後は気軽にできるようにしていきます。
ーーskebの依頼もありましたが違いはあるのでしょうか。
sun skebは正確には出張執筆とは異なります。skebはリテイクや打ち合わせができないので、小説を書いてもらいたいけどもおまかせしたい人に向けたものです。
人によって、小説の内容をすり合わせて内容を決めたい人とおまかせしたい人がいると思いますので自分に合うやり方を選んでください。
ーー最後に記事を読んでいる人に向けてコメントをお願いします。
sun 小説って聞くと難しそうなイメージがありますが、なりたい自分へのきっかけ作りや推しの小説を書いてほしいみたいな感覚で考えてもらえればと思います。出張執筆はもちろん、講師やワークショップもやっていますのでお声掛けしてもらえると嬉しいです。
ーー今回はありがとうございました
ソーシャルVR上では自分の見せたい姿であるアバターを通じて多くの人と交流します。小説を書くことを通じてなりたい自分へのきっかけ作りにつながる出張執筆は、理想と現実を繋げる良い方法だと思います。
イベントとしても、自分のフレンド同士で会話が弾んだりしたり、自分では分からなかった思わぬ魅力で盛り上がったりと魅力的です。ぜひ誕生日や贈り物としてメタバース小説家sunさんに出張執筆を依頼してみてはいかがでしょうか。
●参考リンク
・sun@メタバース小説家(Twitter)