PICO Motion Tracker Waist Versionレビュー。腰トラッカーでどう変わる?買う価値はある?

4月9日、「PICO 4 Ultra」と「PICO 4」対応の腰装着型モーショントラッカー「PICO Motion Tracker Waist Version」が発表されました。価格は5900円(税込)。現在、Amazon、ヨドバシカメラ、ビックカメラなどの認定販売店で販売中です。

本デバイスは、2024年9月から発売されている足首用トラッカー「PICO Motion Tracker」を補完する腰部用トラッカーです。両商品を組み合わせることで、フルトラッキングの精度を向上させることができます。

従来の足首トラッカーだけでは、激しいダンスやVRChat内での座り込み、寝そべりといった複雑な動作において精度が落ちる場面がありました。腰用トラッカーが加わることで、腰の動きを正確に捉え、アバターの動きがより自然で安定したものになります。

仕様と特徴

まずは仕様について。もともと、足首用トラッカーである「PICO Motion Tracker」を追加購入して腰に装着することは可能でしたが、今回の腰用モデルは専用ベルトが付属し、トラッカー本体も1個のみとなっています。

実質的に、従来のトラッキングデバイスに専用ベルトを組み合わせた形となりますが、すでに「PICO Motion Tracker」を所有するユーザーが必要な分だけ追加購入できるようになり、既存ユーザーにフレンドリーな選択肢が登場した形です。

さらに直近では「PICO 4 Ultra」と「PICO 4」に最新OSアップデート(V5.13.0.U)が配信され、トラッカー全体の動作精度改善がアナウンスされています。特にトラッキングアルゴリズムの最適化により、トラッキングの安定性が向上しているとのこと。

今回の記事では、この最新OSの効果も含め、腰用トラッカーあり・なしの両パターンで徹底検証し、詳細に比較していきます。

装着感・導入について

腰用のトラッカーについて、まずは装着感から見ていきます。装着感については、おおむね足首用のトラッカーと変わりません。ベルトは伸縮性のあるゴム製で、マジックテープで固定します。足首用との違いはベルトの長さのみです。

トラッカー本体は足首用と同一のハードウェアを使用しているため、充電する際も足首用と混ぜて管理しても問題ありません。

導入はシンプル。腰用のトラッカーの初回起動時に「PICO Motion Tracker」の設定画面からトラッカーの個数を3個に変更するのみで完了します。

キャリブレーションも従来とほぼ変わらず、腰用トラッカーの位置確認が一度挟まる以外は、「目の前を見る」「足首のトラッカーをカメラに映す」だけです。

なお、腰用トラッカーは、装着位置が前方か後方かによって機能が異なります。公式によると、前方装着は座っている姿勢や寝転んだ状態など、静的なシーンに適しており、後方装着はダンスやスポーツなどのアクティブな動きに最適とされています。

腰のトラッキング有無で検証・比較

ここからは、腰用のトラッカーの有無による差を比較しつつ、動作確認をしていきます。腰用トラッカーは前方に装着。今回は日常的な動作を想定し、お辞儀、座り、寝転がって回転、の3つの動作で検証しました。

実際に使ってみた感想としては、腰トラッカーの追加による劇的な変化は特に感じられませんでした。「PICO Motion Tracker」はAIによる動きの補完が大きく機能しているため、OSアップデートによる動作の学習データの改善が性能向上に大きく寄与しています。

そのため、「PICO Motion Tracker」発売当初に比べると座りや寝そべりは改善されているものの、腰トラッカーを1個増やしたことによる恩恵は、個人的には大きくないと感じました。

ダンスのような激しい動きを伴う場面の精度を確認したい方は、VRChat内で開かれたPICO公式イベント「PICO Carnival」のアーカイブを確認することをオススメします。このイベントでは、腰用も含めて「PICO Motion Tracker」を装着したダンサーによるパフォーマンスが披露されています。

身体を動かす機会が多い人や、「PICO 4」ユーザーにおすすめ

変化幅が狭いとはいえ、元から安価な「PICO Motion Tracker」のトラッカー1個分の価格である5900円で、より安定したトラッキングを得られるのは魅力的です。充電するトラッカーが1つ増えるのが手間なくらいなので、座り込みや寝そべりといった場面での不安を少しでも軽減したい人員はおすすめできます。

一方で、ダンス等での利用は、筆者自身がダンサーではないため使用感を詳細に語ることはできませんが、VRChat内のイベントを現地で見ていた印象では、他のトラッカーと遜色のない動きだった印象です。

結論としては、身体を動かす機会が多い方は購入を検討する価値があり、そうでない方は現状の足首トラッカーのみでも十分に楽しめる、と言えそうです。

また、そもそも「PICO 4」本体をまだ購入していない方や、「PICO 4」はあるが「PICO Motion Tracker」は未購入の方には、ヘッドセットとセットでトラッカー本体を購入することをオススメしたいです。

完全にフルトラッキングに興味がない場合を除きますが、アバターと動きが一体になれる恩恵は想像以上に大きいものです。そして、足首用トラッカーだけでもVRChat内での写真撮影時に、全身の自然な動きを表現できるため有用です。

足がそれぞれ動かせるのはもちろん、上半身と下半身の身体が一体になるような「ひねり」が魅力的

腰用トラッカー追加の効果が控えめに感じられるのは、足首用トラッカー単体での性能と満足度がすでに高いからでもあります。

さらに、フルトラッキングの機材を買っても毎回セットアップするのに面倒くさくなり、結局使わなくなることがあります。ですが「PICO Motion Tracker」は、コンパクトなトラッカーでかつ、充電も足首用なら2つだけ。キャリブレーションも2ステップで行えるうえ、本体と合わせて設計されているのでサポートも充実しています。

ヘッドセットと足首用のトラッカーをセットで購入しても10万円程度。金額としては大きいですが、フルトラッキングの環境まで整えると考えたら格安です。

またPICOは、定期的に本体やトラッカーがプレゼントされるキャンペーンを行っています。執筆時点で行われているセールでは、本体と足首、腰のトラッカー含めて89800円で販売。この価格は、本体を購入するとトラッカーも付いてくるといった状況です。

購入を検討する際には、合わせてキャンペーン情報もチェックしてみるといいでしょう。これまでは、ブラックフライデーやクリスマスなどセールが開催されやすい時期にキャンペーンが用意されている傾向があります。