VRChatには、星の数ほどの「ワールド」と呼ばれるが存在します。楽しい思い出が詰まった場所もあれば、クリエイターの都合などでアクセスできなくなってしまう、幻のようなワールドも少なくありません。
2025年4月、そんな幻のワールドの一つが、数年の時を経て再びユーザーたちの前に姿を現しました。その名は『SAKURA hiroba』。2018年頃、多くの日本人VRChatユーザーに愛された、美しい桜が咲き誇る広場です。
なぜこのワールドは、これほどまでに再公開が待ち望まれていたのでしょうか? VRChat黎明期から活動するバーチャル美少女YouTuber「のらきゃっと」さんは、この場所を「初めて紹介したワールド」と語ります。
今回はのらきゃっとさんに案内役をお願いし、蘇った『SAKURA hiroba』を巡りながら、ワールドの魅力と、VRChatの「あの頃」の記憶を紐解いていきましょう。
ワールド紹介
『SAKURA hiroba』は、2018年に公開された、桜が綺麗な小さな広場があるワールドです。公開後、諸事情により非公開に。一度再公開されたこともありましたが、2025年4月まで非公開となっていました。ワールドの制作者は、Japan shrineの作者でも有名なRootGentleさんです。

昭和後期のようなノスタルジックな住宅街の奥にその広場はあります。桜の木に囲まれたその場所は、多くのユーザーを虜にし、その心に多くの思い出を刻みました。
また、隠し部屋といった制作者の遊び心もあります。暗い部屋から見られる窓一面の桜は輝いて見える美しさです。


のらきゃっとさんに聞くあの頃の『SAKURA hiroba』
今回は、2018年当時のVRChatを知る「のらきゃっとさん」にお話を伺いました。のらきゃっとさんは2017年4月に活動を開始し、同年12月からはバーチャルYouTuberとしても活躍されています。VRChatでは、2018年から配信やワールド紹介動画の投稿などを行う活動9年目の古参ユーザーです。
──2018年当時の『SAKURA hiroba』はユーザーにとってどのような場所でしたか?
あの頃の『SAKURA hiroba』は、日本人ユーザーを中心に多くの人が集まるワールドの一つでした。当時有名だったワールドには『Japan Shrine』や『Japan Town』がありましたが、『SAKURA hiroba』はそれらに比べて軽量かつコンパクトな設計だったため、多くのプレイヤーにとって“とりあえず集まる場所”として重宝されていました。
──当時と比べて変わったところはありますか?
全体的に大きくは変わっていませんが、ポストプロセスが追加されたように感じます。そのためか、当時よりも春うららかな雰囲気が増しているように思いますね。
でも当時から写真的な美しさは変わらないです。今のVRChatではワールドだけでなくアバターのクオリティも上がっていますが、当時はリアルなワールドに対してアバターがバーチャルの存在のように見えて浮いている感じがしたのが印象的でした。
それが面白い点でもありましたが、裏を返せば、それだけこのワールドのクオリティが当時としては抜きんでていたということでしょう。

──このワールドの好きなところを教えてください。
もちろん綺麗な場所なのですが、「きっとこの近くの住人しか、この綺麗さを知らないんだろうな」と感じさせるような、“ひっそりとした秘密のスポット感”が、ここを特別な場所だと感じさせてくれるのだと思います。

──確かに、この町にあるストーリーのようなものを感じさせてくれますね。
想像力を働かせる余地、そしてその考察になんとなく応えてくれるかのような懐の深さがあるのがやっぱりこのワールドのいいところだなって思いますね。
桜の木に囲まれた広場、特に大きな桜の木にはしめ縄が巻かれていて、この地域を見守ってきた存在としての印象を感じさせてくれます。神様が見守ってくれているかのような気持ちを感じさせてくれますね。
あと、ワールドの作りとしても、アセットハンターのわたしにとっては桜の木が違う形になっているところもアツいところです。

──同じ桜の木でも、何が使われているのか目ざとく確認するわけですね。のらきゃっとさんとしても、このワールドはとても思い出深いと聞きました。
はい、ここは私が初めてYouTubeでワールド紹介を行った、思い出深い場所なんです。私のYouTubeチャンネルのトップにも、紹介動画を掲載していました。
ただ、紹介したワールドが非公開になってしまい、動画内では「もう行けない場所」として案内する形になっていたので……今回再公開されたことで、あの動画もようやく本当の意味を持ったように感じます。
あと、わたしの2番目のボディのお披露目配信をした場所でもあります。わたしのボディは、いくつかバージョンがあるのですが、ファンの皆さんがそれぞれ花の名前で呼んでくれたりします。この場所で配信したことで、2番目のボディは「桜」のイメージと呼ばれています。なので、わたしのイメージを象徴する場所だと言ってもいいでしょう。


──当時からのらきゃっとさんとしても、たくさんの思い出がある場所だったんですね。
お話を聞かせていただきありがとうございました!
参考リンク
・RootGentle(ワールド制作者)
・のらきゃっと(X、YouTube)