1月13日から1月22日まで「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」が開催。VRChat上に作られたバーチャルピューロランドを舞台に、バーチャル音楽フェス「SANRIO Virtual Festival」やVRパレード「Musical Treasure Hunt」などさまざまなイベントが会期中に行われました。
そんな中、同イベントの期間に合わせてVRChatのコミュニティイベントとして、「VIRTUAL PURO VILLAGE」にて「VRCラジオ体操/Questラジオ体操部」、B4エリア「CHILLPARK」では「私立VRC学園」とのコラボ企画も実施されました。
本記事では、私立VRC学園とのコラボ企画「みんな仲良く課外授業」最終日に、サンリオのプロデューサーとして同イベントの立ち上げにかかわった町田雄史さんによって行われた授業「Sanrio Virtual Festival 開催秘話」の様子をお届けします。VRができる環境が誰1人もいない状況から始まったプロジェクトがなぜここまで上手く行ったのか、貴重な話を聞けました。
VRライブを作るまでの流れ
今回の講義をするサンリオの町田雄史さんは、LINEスタンプやパズドラコラボなどのデジタルコンテンツのライセンスチームに所属し、「SHOW BY ROCK!!」のプロデューサーも担当している方です。
最初に話したのは、なぜ「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」(以下、サンリオVfes)を開催しようと至ったのか。
1つ目は、サンリオピューロランドでオールナイトのフェスを開催した経験を持っていたことで、デジタルで開催すれば遠くの人に届くのではないかという考えがあったとのことです。
2つ目は、「SHOW BY ROCK」のイベントでスマホでトーク会を開催したときに、親に隠れながら参加した女の子の話を出しました。このときに参加した女の子から「目の前にアーティストやキャラクターがいることは普通ではない」と痛感し、バーチャルに可能性を感じたとのことです。
バーチャルピューロランドのこだわり
プロジェクトの初期のメンバーは、サンリオから3人、サンリオピューロランドからライブを手掛けるスタッフが2人の5人からスタートしました。
構想を練っているときに出会ったのが、ワールドをはじめとしたサンリオVfesの制作・開発全般を担当したGugenkaと総合演出を務めた篠田利隆さんなどがいる異次元TOKYOの2つでした。
今回の私立VRC学園などのコミュニティコラボは、同じく異次元TOKYOに所属する芋けんぴさんからソーシャルVRの流行りやコミュニティについて聞き、紹介してくれたことから始まったようです。
バーチャルエンターテイメントを作り上げていく
サンリオはこれまでもバーチャルに限らず様々なコラボをしてきたことで知られています。それは、サンリオのキャラクターはシンプルなデザインで「余白」があるから実現できること。アーティストやキャラクターに寄り添えるところが長所とのことです。
サンリオVfesは、リアルのアーティストもバーチャルなアーティストも混ぜる多様性があるのが最初から決めているコンセプト。リアルもバーチャルもキャラクターも「みんななかよく」と目の前にいるアーティストがいる「バーチャルならでは」を組み合わせてバーチャルエンターテイメントを作っていくと話していました。
最高品質でライブ体験するためにVRChatを選んだ
開催するプラットフォームを考えていたときに、VRChatはPCVRの環境を整えようとすると初期投資などのハードルが高いという問題点が挙げられていました。ですがエンタメの会社としてのプライドもあり、VRChatに開催する流れになったそうです。
GugenkaがVRChatとの公式パートナーになったこともあり、VRChatで開催する流れもあったとのこと。今回のサンリオVfesではVRChat公式も宣伝してくれたことを嬉しく語っていました。
バーチャルピューロランドの裏話
サンリオVfesのコンセプトは、閉館後のピューロランドに地下5階のバーチャルピューロランドができた設定。潜れば潜るほどコアなコンテンツが広がっていくようにしたそうです。
新しくできた「VIRTUAL PURO VILLAGE」では実際にあるピューロランドにある360度ステージを踏襲しつつバーチャルならではの世界観や演出を盛り込むようにしたエリアとのこと。実際に開催されていたVRパレードの様子は別の記事で触れているので気になる方は読んでみてください。
再現度の高いエントランスは、Gugenkaの制作チームが朝5時にドローン撮影したものをフォトグラメトリーにし、修正して作成したとのことです。エントランスエリアなどの無料エリアの詳細についても、別記事で詳しく掘り下げているので気になる人は要チェックです。
サンリオVfesで苦労したのが、アーティストたちをどう表現するかといった問題です。
今回の開催では、実際のピューロランドにあるフェアリーランドシアターで撮影したものをバーチャルピューロランドで再現したフェアリーランドシアターに合成する形にしたそうです。合成することで、リアルとバーチャルの境目が分かりにくい仕上がりになりました。
バーチャルのアーティストでは、360度のステージにしアーティストをどこからでも見られるようにしたとのこと。今回のライブでは、前回とワールドは同じにし、パーティクルの数を増やしたそうです。フェスにおいて帰ってきた感覚と去年よりすごい感覚が大事ということで挑戦したと語りました。
VRChatのライブチケットを購入した人にはSPWNの配信も合わせてついてくるのは、有料ライブでもしも見れなかったときの対策とのことです。カメラワークに関しては、実際のライブでも携わっているCAMBRが関わることで、より臨場感がある映像になりました。
ファンが公式を突き動かす時代
最後に話したのは、VRChatで活躍するアーティストたちについてです。参加アーティストの中にいるAMOKAと話したときに、「お邪魔します」という気持ちだったところ「わたしたちの世界に来てくれてありがとう」と感謝を伝えられたことが鮮明に覚えていたとのこと。
パーティクルライブを披露するキヌさんの存在も忘れられなかったとのこと。製作途中の作品を確認したところ、キヌさんの本気度合いを感じ取れ鳥肌を感じたと語りました。
講義が終わった後に実際にキヌさんのライブを見に行った筆者としては、キヌさんの本気度合いが感じ取れたという言葉に共感しました。今回のライブでは、今のソーシャルVRの取り巻く環境に向けたメッセージ性の高い内容だったためです。ぜひともアーカイブなどで視聴してみてください。
VRパレード「Musical Treasure Hunt」やバーチャルクラブ「GHOST CLUB」を手掛けている0b4k3さんの存在も大きかったとのこと。0b4k3さんにはワールドのプロデュースから任せて作ってもらったのもチャレンジの1つと語り、クリエイターと直に話して世界観を作っていく体験ができたそうです。
最後にサンリオVfesはファン、クリエイター、アーティストのみんなが創るフェスとなっていることへの感謝を伝えました。2021年に開催したときはエンタメ業界の中で注目されていろんな評価が下されたけども、参加したい人の声や一緒に作り上げたクリエイターなどの声もあって続けて来られたとのこと。これまで、今日、これからの出会いや、つながりを大事にしてほしいという言葉で講義は終わりました。
サンリオVfesは22日までの開催となりますが、29日、30日にはアーティストたちのタイムシフト上映、パレードの再上映が行われます。執筆現在ではチケット販売も行われているため気になる方は公式Twitterからご確認ください。
またアンケートも実施されているとのこと。今後の開催検討を目的とのことですが、「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」通じて心を揺さぶられた人は、その思いを届けてみたらいかがでしょうか。
●参考リンク
・SANRIO Virtual Festival 2023特設サイト
・私立VRC学園公式Twitter