VRChat上で音楽活動をしているねるるまねるさんが自身の音楽グループ『ねるまであいする』の1stフルアルバム『Day Dreaming』を4月21日に公式Boothショップでの販売を開始することを発表しました。おって5月8日に各種サブスクリプションサービスでの配信も予定されています。
特徴は総勢8名ものVRChatで活動する音楽勢とのコラボレーション。『美少女1年生』『グラボのファンが廻る夏』等VRChatカルチャーをふんだんに取り入れたこだわりの楽曲とMVを制作し話題をよんだつつみちぎりさんをはじめ、異なった音楽性をもったアーティストばかりです。
先立って公開されたクロスフェードを元に、『ねるまであいする』の音楽性について、自身もシンガー・コンポーザーとして活動する、弊編集部ライターの千種ナオさんにコメントをもらいました。
今回メタカル編集部では、『ねるまであいする』1stアルバムリリースに際してコンセプトや制作に対するヒアリングを実施。「今まで1人きりで作ってきた音楽を初めて素敵な友達と共に作り、発信出来ることに感謝しています」と語る、音楽と創作に対するねるるまねるさんの思いをお伝えします。
作曲歴10年の打ち込みテクノDTMer。
2023年夏ごろVRchatにて音楽活動を始め、『ねるまであいする。』を結成。
ライブ活動など行うが、あくまでも趣味の範囲。
独創的な世界観をマイペースに発信しています。
『Day Dreaming』がうまれた理由
『ねるまであいする』は、ねるるまねるさんの音楽活動名義です。グループとして存在しますが、4月現在メンバーはねるるまねるさんのみ。『Day Dreaming』は『ねるまであいする』名義として初めてのアルバムです。
『Day Dreaming』というタイトルは、以前とあるインターネットの今は会えない友人に「あなたと初めて会った時、その時間が白昼夢のように感じて、現実味が無かったんだ」と言われたことから考えるようになった「自分がいる証」がきっかけ。
人がいた証拠は、本人が全て消してしまえばもう何処にも残らない。残らなければ誰かにとっての白昼夢のような存在になってしまう。そんな存在の儚さや危うさを、美しく切ないと考えるねるるまねるさんが選びぬいたタイトルです。
アルバムという形をとったのは、ストリーミングで音楽を聴きながすことが当たりまえになった時代だからこそ「通して聴く良さ」に気づいてもらいたいから。通して聴く体験を設計するため、世界観を統一し、曲順にもこだわったそうです。
特にアルバムの1曲目、グループ名を冠した『ねるまであいする。』は、フィーチャリングにも参加しているMoe Takanashiさんが歌ったカバー曲『ねむるまち』という曲を、ボーカル部分のみ抽出し、REMIXした楽曲がベースになっています。
ねるるまねるさんにとって、VRChatでの本格的な音楽活動はこの曲から始まったという思い出深い曲だそう。タイトルをグループ名にして1曲目に置き、物語の始まりを演出しています。(この手法はイギリスのポップロックバンド『THE1975』のオマージュ)。
アルバムを作るにあたって、ねるるまねるさんはジャケットも力をいれたい派とのことで、今回可愛くも儚さを感じるイラストが印象的な古咲さんにオファー。目を閉じて夢中になりながら音楽を聴いているねるるまねるさん自身を表現してもらったそう。アルバムを聴いた人にも「私と同じように音楽に夢中になってもらえたらいいな」と言っています。
コラボしてくれた友人たちの個性あふれる音楽性の良さを活かすために、試行錯誤しました。ぜひ最初から通して聴いてほしいです。
もし私が「白昼夢のような存在」だったとしても、私とみんながいたという証拠はこの『Day Dreaming』に残っています。私にはこのアルバムが残せただけで幸せです。大満足です。本当にありがとう。
VRChatで培った自分と友人との関係性の証
今回の『Day Dreaming』は総勢8組+イラストレーターとのコラボレーションをしていますが、特徴と感じるのは楽曲から感じるアーティスト本人と友人たちとの関係性。単なる音楽に関わる界隈の知り合いだからという薄いものではなく、日常で音楽談義を積みかさねた各メンバーの音楽性への理解度が深く、各楽曲に反映されています。
今回の取材にあたり、全12曲6,000字超えの楽曲解説を預かりましたが、諸事情により割愛します。別の機会にお伝えする機会もあるかもしれません。
言ってしまえば内輪ノリですが、VRChatで積みかさねた時間とお互いに対してのリスペクト、「一緒に音楽をつくるって楽しい」というクリエイターのコラボレーションにおいての根幹にあるエモーションを感じます。
コラボレーションしたアーティスト達からもアルバム配信に際してのコメントをもらっていますのでご紹介します。
VRChatでは、本業はうどん愛好家で、趣味でイベントスタッフ活動や音楽制作をしています。今回参加できたことをとても光栄に感じています。
初めてアルバム全編を聴いたとき、体中の神経はざわめき、涙はちょちょぎれ、大変な衝撃を受けました。事前にある程度のことを知っていたにも関わらずです。是非みなさんにもこの衝撃を体感してほしいなと思います。
アルバムを最後まで聴いたとき、ねるさんを中心にアルバムに関わった人たちと冒険している物語を見たような感覚になりました。確かに人はそこに存在して言葉をかわしているが、現実で実際に顔をあわせているわけではない。夢と現実の狭間のようなバーチャルにいる時間をこのアルバム名で表現しているのではないかと感じました。『水面の鳥』がちゃんと形になって嬉しいです。少し無茶はさせられましたが(笑)。頑張って歌ったので是非聴いてください。
ねるさんからギターを弾いてほしいと言われ「あれ?何で僕がギター弾いてる事知ってるの?エスパーなの?」と思いましたね。当初はギターソロだけの話でしたが、せっかくの機会ですので全パート弾かせてくださいとお願いし、曲の雰囲気を自分が出来る最大限の力で表現する為に、それぞれのパートのギターの音色を1から作りました。毎日通勤中にデモ音源を繰り返し聴いて向きあった楽曲です。完成曲を聴いて、こんな素敵なものに関わらせてもらえたことに凄く感動しました。1人でも多くの人に聴いていただきたいです。
ねるちゃんとはWarp RecordsやOrbitalなど90年代来のブリティッシュテクノの話で以前少し盛り上がったんです。その辺のルーツを意識しつつ、得意そうなアンビエント風の音作りで破壊してもらうことを期待して、私は元気な4つ打ちの短編をぶつけて再構成してもらうことにしました。完成品を聞いてびっくり! 想定を軽く上回って宇宙まで行っちゃうほど想像力豊かな曲に生まれ変わってました!
アルバム全体も、あらゆる音楽性を飲み込んで自由に暴れているのに一貫した世界観が展開されている、大胆かつ繊細な個性にあふれた最高の一枚になってると思います。いっぱい評価されてほしい!
みんなといるのになんだかさみしいとか、なにかつらいわけじゃないけどどこか遠くにいきたいとか、そういう自分を大切にしたい瞬間に聴きたくなるアルバムです!ねるちゃだいすき!ちゃぁ〜〜!
歌詞制作をしました。普段はパーティクルライブを作成して活動しています。非日常感が特徴のアルバムだと思います。居るけどどこか上の空。ふわふわと夢の中を旅しているような感覚を体験できるかと思います。ゆったり楽しんでね。
元々音楽のセンスが抜群と思っていたのでコラボの話が来た時はとても光栄でした。一緒に制作した『プラネタリュウム』もですが、アルバムを通して壮大な世界観と、いつもそこにある当たり前のもの・いつなくなってもおかしくないものの存在と不思議な感覚を味わえるかと思います。
是非たくさんの方に聴いてもらいたいです。そしてねるちゃんにはこれからものびのびと音楽をしていってもらいたいです。
普段は完全に1人で制作することが多いのですが、ご縁をいただいて参加しました。以前よりねるさんの手数の多さと唯一無二の音作りに驚かされてましたので、共作のお話は本当に嬉しかったです。僕で良かったんだろうか……!
『Being a Wallflower』はコードを差し替えたり、音数を増やしたりと好き勝手にトラックを作ってしまいましたが、ねるさんの巧みなアレンジによって自分だけでは絶対に出せない持ち味のユニークな楽曲となってます!独特のグルーヴと変わりゆく空間系の波をお楽しみください。
<リリース情報>
【タイトル】『Day Dreaming』
【発売日】2024年4月21日(日)0:00 Booth販売スタート
【価格】税込1,000円
【販売ページ】
Booth:https://nerumade.booth.pm/
各種ストリーミング:2024年5月8日(水)配信開始
<トラックリスト>
BoothでのみEP『Another Day Dreaming』も同時発売。
『Day Dreaming』制作時に一緒にできた楽曲の中でも、自分のカラーが出た作品を収めた版。500円で販売。
公式Xアカウント:https://twitter.com/Neruma_Official
公式note :https://note.com/neruruma_neru_cc
『ねるまであいする』の音楽性をカテゴライズするなら「アンビエント・ミュージック」ということになる。
しかしそれは「環境に偏在する音楽」では決してない。単に既存の言葉に当てはめるならそうなるだけ、である。このアンビエントは「環境に強烈に存在を主張する」音楽。巨大なスケールで聴くものを包みこむ。『ねるまであいする』の音楽が中心ではなく、四方八方からやってくる。
「私と同じように、音楽に夢中になってもらえたらいいな」と控えめなコメントを出しているが、このアルバムは聴くものの身を決して離さない。
「アンビエント」という安易なカテゴライズに釣られて聴いてみるといい。そんな安易な言葉でくくろうとしたことが間違っていた、と思わせる衝撃がここにある。