軽い、小さい、きれい。VRChat民も注目のVRヘッドセット『Bigscreen Beyond』を体験!

Bigscreen Beyond展示

4月20日。筆者はあるイベントのため、都内某所を訪れました。

「JAPAN BEYOND DEMO」――日本国内で初めての開催となる、VRヘッドセット『Bigscreen Beyond』の公式体験イベントです。

軽食も提供された和やかな会場には、「世界最小・最軽量」といわれる、話題のVRヘッドセットにふれようと多くの人が詰めかけました。もちろん、筆者もその一人。

本記事では、いま各所で注目を集める最新VRヘッドセットを体験した所感を、レポート形式でお送りします。

世界最小・最軽量なVRヘッドセット

まずは、『Bigscreen Beyond』について軽く解説しましょう。

『Bigscreen Beyond』は、ソーシャルVR『Bigscreen』を開発している、Bigscreen社が発表したVRヘッドセットです。2023年に発表後、2024年には日本向け出荷がスタート。国内のVRChatユーザーのもとにも届き始めています。

Bigscreen Beyond展示

最たる特徴は127gという本体重量。2024年現在、これより軽いVRヘッドセットは存在しません(参考までに、『Meta Quest 2』はデフォルトストラップの状態で503g)。圧倒的な軽さに加え、解像度は5120 x 2560ピクセル、パネルにはマイクロOLED(有機LE)を採用。鮮明な映像表現も売りです。視野角は102度とやや狭めで、ソーシャルVRを作っている会社だけあり、マイク性能には定評があります。

そして、SteamVR対応ベースステーションを用いるトラッキング方式(いわゆるアウトサイドイン方式)を採用しているため、『VIVEトラッカー』や『INDEXコントローラー』と併用できるのが最大の強み。長らく『VIVE Pro』や『VALVE INDEX』を使い続けてきた人々にとって、有力な乗り換え先候補と言えるスペックなのです。

「世界最小・最軽量」というキャッチコピーとともに登場した期待の一台。当然、VRChatユーザーとの相性はバツグン……のように思えます。さて、実際はどれほどのものでしょうか?

外観チェック:一目でわかる小ささ

Bigscreen Beyondデモ機

それでは実機を見ていきましょう。今回体験したのは「オーディオストラップ」を装着した『Bigscreen Beyond』。『Meta Quest 2』の「Eliteストラップ」のようなダイヤル式ストラップに、ヘッドホンも搭載されたオプションパーツです。

Bigscreen Beyondデモ機 フェイスクッション外した状態

こちらは正面部分。一目でわかると思いますが、とにかく小さくて薄い。スキー用のゴーグルとスケール感は大差ありません。

Bigscreen Beyond 筆者注文フェイスクッション

このままだとレンズがむき出しなので、フェイスクッションをとりつけます。このフェイスクッションは、ユーザーごとにオーダーメイドで作成されたもの。iPhoneまたはiPad(※「Face ID」対応モデル)でスキャンした顔面のデータを送付し、「顔面に完全フィットするもの」を作ってもらいます。

Bigscreen Beyond フェイスクッション装着状態

装着した状態がこちら。フェイスクッションと本体はマグネットで簡単に脱着できます。一方で、メガネをかけたままの装着は不可。視力矯正が必要な人はコンタクトレンズをつけるか、取り付け型の処方レンズを別途購入・装着する必要があります。

動作体験:ビビるほど軽くて、めっちゃきれい

Bigscreen Beyond 筆者装着の様子1
Bigscreen Beyond 筆者装着の様子2

というわけで実際に装着。ストラップの位置取りに少しコツがいりますが、装着の流れは「かぶってダイヤルを締める」だけ。『VIVE Pro』や『VALVE INDEX』をお使いならば難しくありません。

Bigscreen Beyond 筆者装着の様子3
Bigscreen Beyond 筆者装着の様子4

無事に装着できたところで、さっそくおどろかされます。軽い。めっちゃ軽い。重さというものをまるで感じない。「ほんとにこれVRヘッドセットか?」と疑うレベル。

オーディオストラップによって重量はさすがに127g以上にはなっていると思うのですが、『Meta Quest 3』と比べても圧倒的に軽いのです。顔面にも、頭頂にも、一切の重量負荷がかからない、というのは驚異的です。

そして、顔面に完全フィットするフェイスクッションのおかげで、外の光景は一切入ってきません。鼻の下などにスペースが生まれることもないので、一度かぶれば視界にはVRの世界”だけ”が広がります。

Japan Shrine[spring](VRChat)

軽さにうっとりしながら、体験コンテンツとしてVRChatのワールドをいくつかめぐりました。今回筆者が選択したのは「Japan Shrine[spring]」と「AudioOrbs」。前者では「映像の鮮明さ」を、後者では「暗所での描画」をチェックしてみました。

結論から言えば、びっくりするぐらい鮮明! うれしい! 高解像度で発色もよく、スクリーンドアもほとんどなし。筆者は『Varjo Aero』というプロシューマー向けヘッドセットを使っているのですが、体感の見え方はこれとほぼ同等でした。

AudioOrbs(VRChat)

加えて、「暗さ」をはっきり感じられました。これはパネルにマイクロOLEDを採用しているため。LCD(液晶ディスプレイ)を採用する現行VRヘッドセットと比較すると、暗いところがより暗く表現されており、臨場感はピカイチ。特に、暗闇で発光オブジェクトが踊る「AudioOrbs」でその表現力を強く味わいました。

鮮明で、臨場感のあるVRを、装着していることを忘れるほど軽いヘッドセットで見る。ここまでくると「この世界にいる」感覚がかなり強くなります。高い没入感を、これまでのVRヘッドセット以上に実現できている一台だと感じました。

懸念されること

めっちゃ軽いしめっちゃきれい。「これでいいじゃん」と思ってしまうほどのVR体験でしたが、気になるポイントもいくつかありました。

まずは装着感について。上記の通り、軽さと顔面のフィット感は申し分ありませんが、顔に圧がかかる箇所は従来のVRヘッドセットとは大きく異なります。具体的には、水泳のゴーグルのように、目の周りの近くに圧力がかかるイメージ。はっきり言うと「慣れが必要」です。これは『VIVE XR Elite』でも感じられたので、小型化の宿命かもしれません。

次に映像の見え方について。鮮明さは文句なしですが、ピントの合い方は若干シビアな印象を受けました。今回の体験会ではIPD(瞳孔間距離)を後からいじれる特殊なモデルを使っており、取り急ぎでIPD調整をしたことも影響していそうです。ちなみに、IPDは顔面スキャン時に測定し、そのデータをもとに完全固定されたものが発送されるとのこと。

なお、今回筆者は「裸眼」かつ「視力補正レンズなし」で体験したのですが、その影響か一部で報告のある「ゴッドレイやグレアが顕著」という現象には遭遇していません。逆に言えば、視力補正レンズを使った場合は、この限りではない可能性があります。

また、今回は10分にも満たない体験だったため、長時間使用した場合にどんなことが起きるかは未知数です。発熱や、上記のようなゴッドレイやグレア、ピントズレ、なにより独特の装着感からくる顔面への負荷などは、実際に数時間使ってみて検証してみたいところです。

余談ですが、筆者が一番気になったのは「まつげがレンズにけっこうあたる」でした。目とレンズ間の距離がやや近いのが影響していそうです。

俺は買う

Bigscreen Beyond 箱の中

懸念点こそいろいろ挙がりますが、筆者の率直な感想は「俺は買う」です。はい。自分は買います。

決め手ですが、映像がきれいなのはもちろんなのですが、なにより軽い。とにかく軽い。これにつきます。日ごろVRChatを長時間プレイしている身ですが、重いものをかぶり続ける負担は、やはり無視できません。

軽いに越したことはない。しかもSteamVR対応で、『VIVEトラッカー』とも併用できるし、有線だから電源の心配も不要。それだけで購入動機としては十分といっていいほど、この軽さは魅力的です。

逆に、上記のような点の優先度が高くない場合は、必ずしも本機が最適ではないとも言えます。特に、『Meta Quest 2』などを使っている人の場合、ベースステーションとコントローラーは別途用意する必要があるので、乗り換えハードルはやや高めです。

また、総合的に「相性の個人差」を感じたのもたしか。フィット感はもちろん、裸眼でもいける視力か否かは、大きなポイントとなりそうです。顔面に完璧にフィットする都合上、手元が一切見えないので、ドリンクなどを手に取りにくくなる点も、人によっては相性の悪さを感じるかもしれません(普通に額まで持ち上げてしまえばよさそうですが)。

購入時に顔面スキャンが必要になる点もふくめて、一筋縄ではいかないデバイスですが、類を見ない魅力があるのは事実。「VRは楽しいけど、ヘッドセットが重くて続かない……」という人には大きな助けとなるはずです!

『Bigscreen Beyond』販売ページはこちら。
https://store.bigscreenvr.com/ja-jp/products/bigscreen-beyond