VRChatを始めてから、何か新しく趣味が増えたことはありませんか? もちろん、VRChatをやるうえでやらないといけないことはありませんが、長く接しようと思うと自ずと趣味やプレイスタイルが固まってくるはず。
その中で紹介したいのは、写真撮影。VRChatでは標準の機能としてあるものです。
ユーザーなら程度は異なれど触ったことのあるカメラ撮影がいかにしてハマっていったのか。ただ撮るだけではない、深みにどのように進んでいったのか。
3月16日よりワールド『Gallery & fanCafé Kittens』で公開される個展『仮想の出会いと自分の歩み』で作品を展示しているもりぞぉさんといっしょに見に行ってきました。

始めた頃から今に至るまでの試行錯誤をまとめた「1階」
──1階ではどのような作品が展示されているのでしょうか。
VRChatでの写真撮影を始めたきっかけや、初期のチャレンジ作品を展示しています。写真を撮ってレタッチしていくなかで、段々と自分の作り方が分かってきたのかなといった内容です。入ってすぐの作品は、Photoshopを初めて触った頃に制作したものです。

──このときはいつ頃になりますか?
2023年の5月頃です。
──タイトルに『トーンカーブ』と書いてありますね。ストレートに何にチャレンジしたのかが伝わってきます。
本当に当時何も知らない中で、ここを弄るとこうなるのかって思いながら作っていました。一応当時は、ここまで明確に考えて撮影したわけではないのですが、意識しているものを選んでタイトルを付けてあります。

──『トーンカーブ』ですと、夕暮れ頃の時間帯をイメージしつつ手持ちのかき氷で季節感を感じさせる印象を受けます。元のワールドにも季節や時間帯はあったと思いますが、トーンカーブを使ってより写真全体の色を赤っぽくすることで、夕暮れ頃の印象を強めようといった感じでしょうか?
実際に撮影ワールドよりも、色などの要素を際立たせようとしていますね。そんな感じで作品を作っていくうちに逆光などにチャレンジしていきました。

──武器がお好きなのですか? 武器が主役になるように工夫されているように感じます。
『武装』はもともと趣味だった武器周りを写真にいつか取り入れてみたいと思ってチャレンジした内容ですね。

『武装』の隣にある『指向性』はお気に入りでスマホのロック画面にしています。指向性のタイトルの通り、撮り方によって奥行きを作り出そうと思い撮影したものです。
──スマホのロック画面にしたくなるほどの画の迫力ですね。地面になぞって視線を追っていくと、アバターが自然と目につくようになっているのでバッチリ決まっています。さらに隣を見ていくと、2024年にやっていたMETAKNOTのライブ写真がありますね。
演者の立ち振舞を押さえたいなと思ったのと、デフォルトのカメラ倍率からして広角で撮れるのではないかって思いチャレンジしました。

──イベントの感動をドンピシャに捉えていますよね。赤坂BLITZとその周辺を再現したものであり、なおかつ演出でワールド全体がさまざまな色に変わっていくのが思い起こされます。
奥に行くほど写真は最近撮影したものですね。最近だと目を光らせるのがブームになっているので反映されていますね。2階、3階以降もきっと目を光らせているなって分かると思います(笑)

奥には1階のテーマとしては例外的な写真もあります。基本的に技法に注視して配置をしているのですが、「テーマ付け」といったタイトルで置かせてもらった写真です。アバターのサフィーちゃんのフォトコンテストに応募して入賞をしました。

──サフィーちゃんの改変なのですね。
フォトコンテストで応募した作品の大半はカワイイ感じのものだったのですが、その中で自分は無機質で不安な空間であるリミナルスペースで撮影しました。
──サフィーちゃんのビジュアルや印象的でコミカルな明るい作品が多そうですしね。隣にある作品はアバター改変をしていないデフォルトのままですが、迷い込んでしまったようなどこか影のある雰囲気を出せているのは流石です。
こちらもフォトコンテストに応募した作品になります。定期的にチャレンジしているパーソナルミラーを活用した1枚です。

自分ではない人を撮影することで広がる可能性「2階」
──2階に行ってみましょうか。2階ではどのような作品が展示されていますか?
2階は、今回のイベントに向けて撮影した、知り合いのポートレート作品を展示しています。大半は撮り下ろしで、何枚か以前撮影したものもあります。実際に被写体になった人も名前を出させていただいています。最近の作品ですので1階で紹介した技術の進歩が反映されています。

──知り合いを撮るのはいいですね。
付き合ってくれた人への感謝の意味もあります。ワールド選定やレタッチをする際もその人の印象、良さを引き出せるように取り組んでいます。

──先程話していた目を光らせているブームが絶賛継続中ですよね。(笑)
正直、ちょっと意識しました。

──逆光を使っているなかで顔に影が掛かっているのであれば、目を光らせることで強調するのがいいんだろうな~って思いました。見ていると、モデルをしている人の人となりが写真越しで想像させてくれるパワーがありますね。実際、自分が被写体になるときと、異なる点はありますか?
ありました。もともとアバター改変をする人ではなかったので、衣装のバリエーションがなかったんですよ。でも他の人が被写体になると、自分では撮らないような内容に挑むことになるのでチャレンジですね。
ダークな雰囲気とリミナルスペースが自分のこだわり「3階」
──最後に3階ですが、こちらはどのような作品を展示されていますか?
3階ではセルフポートレート、つまり自分を撮影した作品を集めています。自分を撮影しているので、それだけ自分の好きなものが詰め込まれていますね。特に、ダークな雰囲気やリミナルスペースが好きなので、これからも撮り続けたいと思っています。

──魚眼がハマっているのが、作品を見ていると伝わってきますね。歪むことによって、印象的な顔や手がより目を付けやすくなっているなと感じます。

──ちなみに作品を作り上げるのにどの程度時間を掛けていますか?
トータルで6時間程度ですかね。ただ考えが凝り固まるのが嫌なので、2,3時間ごとに区切りをつけて別の日に分けるといったことをしています。
──なんだか1人だけども分業制みたいな作業の進め方ですね。
実際そんな感じです。光の作業、ぼかしの調整、色の調整、みたいにそれぞれの作業工程があって、それぞれ行って最後に全体で仕上げます。ただ最初から完成像が明確にあるわけではなく、本当に自由にはじめています。なので、よく作業を紹介する方法にタイムラプスがあると思うのですが、それを見ても本当に参考にならないじゃないですかね。

──カメラ周りは独学でしょうか?
一般的なカメラの知識は、先月の同ワールドで作品を展示していたおりーぶさんから聞きました。自分のフォトグラファーは、おりーぶさんの撮影会から始まったので師匠のようなものです。VRChatを始めて1つ趣味を開拓できたと思います。
──1階から3階まで1人のフォトグラファーの変遷を辿れるなって思いますね。ぜひ普段写真を撮らない人も1階のタイトルで知らない言葉が出てきたら調べてもらいたいですね。そうすると、いかにして試行錯誤しているのか、何にハマっているのか人柄も見えてきて楽しくなりますよ。
きっと些細なことでも興味を持って進んでいけば、自ずと自分の表現や価値を見いだせると思います。僕の場合は写真でしたが、皆さんにも進むことの楽しさを味わってほしい意味でも来てもらいたいです。本当に何も知らない状態から、自分の表現をちゃんと形になるまで成長できたと思います。ぜひ、自分の中に秘めたる趣味を楽しもうと思えるきっかけになれば幸いです。

今回展示されている作品は、撮影したもりぞぉさんにとって試行錯誤と自分の中のトレンドが盛り込まれている作品になっているとのこと。作品の展示タイトルから、実際に何を意識していたのかが詳しく知ることができるため、ぜひワールドに来た際には作品と試行錯誤の歩みに注目して見てください。
個展『仮想の出会いと自分の歩み』はワールド『Gallery & fanCafé Kittens』にて、3月16日から4月19日までの期間限定公開されます。