4月25日に発売されたアバター『しらつめ』。豊富なカラーバリエーションやブレンドシェイプの数々、デザイン面のこだわり、積極的な発売前の告知の数々によって、注目が集まったアバターとなりました。
また、アバターの制作者も注目するポイントです。丸く優しい雰囲気の低等身のアバターを出してきたずちこーんさんと数々のメイクテクスチャと『てんぱすおおもり』はじめショップの商品画像を制作してきたメメロランドさんがタッグを組んで手掛けています。
今回はずちこーんさんとメメロランドさんの2人にメールインタビューを実施。質問をまとめて送信したところ、丁寧な資料ともに返信をもらえたため掲載します。
『しらつめ』のアバターレビュー記事も公開されているため、アバターの詳細を知りたい人は下記のリンクからご確認ください。
制作期間について
──「しらつめ」の制作に取り掛かったのは、いつ頃からでしょうか?
ずちこーん 2023年10月3日にイラストを描いてからすぐに制作に取り掛かりました。

──お二人で一緒に制作しようと思われたきっかけは何でしょうか?
ずちこーん 初期段階から、キャラクターが「かわいいか、美しいか」のチェックをのために、顔・髪・服など全体をメトロさんに何度も見ていただき、修正案を出してもらっていました。
そのため、最初から制作に関わっていただいており、その流れで主にテクスチャ・マテリアル・カラバリ・サムネイル等をメトロさんに制作していただくことになりました。
メトロ 制作開始からリリースまでに、口頭と画像指示含めて1000回以上の修正指示をしたと思います。顔のバランスから髪の毛1本の位置や太さ・・・服のディテール部分のデザインや皺の位置の指定、整合性などで関わっていくうちに、2人のアバターという認識になっていったと思います。

──制作にあたって、特にお礼を伝えたい方はいらっしゃいますか?
ずちこーん 制作を共にしたメトロさん。大切なオリジナルアイテムを、事前対応の募集に来てくださった作家さん(BOOTHページのクレジットに記載しておりますのでご覧ください)
アニメーターコントローラーの修正やデバッグ、FaceEmo版プレファブの追加などの大変な作業を引き受けてくださったさたにあさん。イラストなどの作品で応援してくださる方、
しらつめを楽しみに待っていてくださる方、そして、改変を楽しんでくれているみんなへ
心から感謝をお伝えしたいです。
メトロ まず思い浮かぶのは、やはり事前制作をおこなってくださった作家さんがたです。未完成だったしらつめを、今の姿まで押し上げて、多くの人に祝福される誕生に導いてくださったと思っています。
決して表では目立たない大変な仕事を引き受けてくれたさたにあも、この作品の重要な功労者です。無茶なスケジュールだったにもかかわらず、快く対応してくださりました。今のしらつめの当たり前に動くように見える表情周りや機能は、彼無しでは実現していません。本当にすごいことをしてくれているんです。
また、共に制作したずちこーんには特別な感謝を抱いています。
彼の創作には確固たる信念と譲れないたくさんのこだわりが存在しています。制作の中で私が提案した修正やアイデアも、彼の意志の前で儚く散ったものがとても多いです。何度もずっと2人でしらつめという女の子に向き合うなかで、ふと彼が「自分の作品」から「ふたりの作品」に変えてくれた瞬間がありました。
私の中に長らくこびり付いていた、どこまでいっても自分の作品ではないという意識や虚無感を変えて本気で取り組めるようになったのは、彼が私を認めて許してくれたからと思っています。
そしてしらつめを待っていてくださった皆さんや、しらつめを着せ替えたり、写真を撮って大切にしてくださっている方々には、日々ありがとうの気持ちが止まりません。
デザイン・制作へのこだわりについて
──「しらつめ」アバターのデザイン面でのコンセプトを教えてください。
ずちこーん デザインのコンセプトは、しらつめの名前の由来にもなったシロツメクサです。
ふわふわなお花をイメージして髪の毛や服をデザインし、あたたかで幸せな四葉のクローバーをイメージして、たくさんのリボンを作りました。特に靴の裏もデザインしていますので、もし機会があれば見ていただけると嬉しいです。
──顔だけで1029個という膨大なシェイプキーを実装された背景には、どのような想いがありますか?
ずちこーん 現在しらつめはver1.3となり41個増えて顔シェイプキーは1071個になっています。等身大のキャラクターを制作するにあたって大切にしていたのは、改変を楽しんでもらうことでした。自分だけのオリジナルキャラクターをつくれるような、自由度の高いアバターを目指しました。
VRChatで出会った大切なフレンドさんの中に、ひとつのアバターで数百種類の素敵な改変をされている方がいて、そんなふうに愛されて、着せ替えやカスタムが楽しくなるようなアバターを作ってみたいと思ったことが、このシェイプキー実装のきっかけです。
メトロ 改変を楽しんでいただく為に実装したBlendShapeは、一方では相当なやる気をもってしないとその多さに驚いてハードルに感じたり、面倒さに繋がってしまうデメリットもあると感じていました。
また、しらつめデフォルトカラーの「soyo」は、その他の少女型アバターに比べて肌の色が暗めで黄色掛かっています。多くのVRChat用衣装を着せた時にそのままだとトーンが違い過ぎて浮いてしまいやすいのです。
それらを解決するために、「OtherColor」を誕生させました。
様々な衣装や髪型と合わせやすい明るい色の肌色から、日焼けしたような色、クールな彩度の低い黒色なども作りました。
同時にBlendShapeで顔や髪型に変化を持たせ、合計7種類のprefabの中から自分の理想の姿に近いものを選んでスタートさせることができるようにしてみました。
7人とも別々のサンプルアバターを公開しているので、ぜひお気に入りのカラーを見つけてほしいです。

──エモートやしゃがみ機能など、コミュニケーションを意識した機能面で、特にこだわった点はありますか?
ずちこーん エモートは、楽しいを表現できるようなものを意識して制作しました。
しゃがみ機能については、みんなが仲良くなってほしいという想いから、小さい子たちとも目線を合わせてお話ができるように制作しました。

特にこだわった点としては、しゃがみの度合いが60%を超えないと固定されないように設計した部分です。自然な動きと操作性のバランスを意識しています。
──アバター制作全般において、特に大切にしていることや心がけていることはありますか?
ずちこーん 楽しい、優しい、あたたかい印象のキャラクターや機能を、いつも意識しています。お迎えした方がアバターを通しての人との関わりの中で、そういった素敵な気持ちが広がって、友達が増えたり、素敵な関係が生まれたらいいなと勝手に思っています。
デザイン面ではたくさん大切にしていることはあるのですが、その一つとして挙げるのであれば、360度どこから見ても綺麗に見える造形を意識してます。例えば目は球体の眼球を採用したりしています。

メトロ ずちこーんはアバターを作る時、明るいコミュニケーションとサプライズ感をかなり重視したエモートやメニューを考案しています。相手を一番に思い遣ることを念頭に置いたブランディングと創作意識だと思います。
私の気付かないようなところに気付いて配慮して、たくさん考えて誰もが楽しく使えるものを生み出しています。
個人的に心掛けたのは、キャラクターの高い解像度です。しらつめという子がなぜこの髪型をしているのか、普段どんな生活をしているのか。そこから導き出されるイメージから、選ぶ服の質感や髪のまとめ方、おくれ毛の本数と場所、髪のつや、手のかたち、体型を想像して制作をおこないました。
また規約では、センシティブなどの表現に制限をつけています。様々な意見があるとは思いますが、製作者にアバターが厳しく守られているという認識に救われる方々がいると信じています。この先どんな方にも安心して、ある種の誇りをもってハルノププのアバターを使っていただけるような運営にしていきたいと思っています。
商品画像のこだわりについて
──商品画像の説明が「親切でカワイイ」と評判ですが、制作時に意識されていることはありますか?
メトロ ありがとうございます、光栄です。しらつめに限らずですが、自分のデザインよりも「その商品らしさ」を表現することを意識しています。
すべてのサムネイルで意識しているのは、購入した人、BOOTHギフトを受け取った人がわくわくすること、誰かに商品を紹介するときに恥ずかしくないこと。
その商品やブランドを纏う事自体に誇りや意味が持てるような、愛されるような商品の顔を作っています。
今回はしらつめのキャラクターコンセプトに基づいて、シンプルで取っつきやすい内容にしました。そして先述したとおり、表現の規制や利用規約を守って頂きたい思いから、少しのプロダクト感を出しています。個人の作家のものというより、企業や大きな制作チームを思わせるような無難な構成やバランスにすることで、クリーンな印象を与えるように意識しています。そこから選ぶ言葉や緩急でお茶目さを演出し、お堅い感じや真面目さを緩和しています。
──特に気に入っている商品画像のポイントがあれば、ぜひ教えてください。
メトロ 毎回あまりなくて。ですが、ハンドサインと表情を並べているサムネイルの手のアイコンイラストは大好きです。これはずちこーんが元々自身のショップで使用するために描き下ろしているイラストなのですが、彼の優しい絵柄のタッチを感じてとてもかわいいです。
またそのページの表情写真も、ずちこーんがVRで撮影したものなのですがすごく愛らしく、制作中の癒しになりました。
