VRChatでマンガやアニメ、ゲームなどのキャラクターの衣装を使ったアバター改変をしているユーザーを見たことはないだろうか。ひと昔前であれば、それは個人が二次創作として作ったものか、悪い例で言えば公式が販売するゲームから”ぶっこ抜き”された二次利用不可のデータを使ったものだったかもしれない。しかしその中で、版権元の許可を得たキャラクター衣装を販売している企業も現れている。
株式会社ARROVA(アローバ)は、株式会社Vと共同でマンガやアニメ、ゲームといったIP を使った”公式”のVRChat対応アバター向けの衣装を制作。それらをデジタルファッションマーケットプレイス『TOKYO AVATAR GATE(以下、TAG)』で販売しています。これまでに公開されたものでは『攻殻機動隊 S.A.C 』や『東映荒波計画』、『モブサイコ 100』や『鋼の錬金術師』などの有名作品を取り扱ったアイテムも登場しています。
メタカル最前線はTAGを運営する代表取締役社長 河合佑介さん、プロダクトマネージャー 本間悠暉さんのお二人にインタビューを実施。どうしてマンガやアニメキャラクターの衣装を販売するのか、TAGはこれからどのような展開を見せるのか。実は小学校の同級生で同じ時代を過ごしてきたお二人にその狙いをお聞きしました。

TAGの立ち上げ、なぜVRChatでIP衣装を?
––TAGを立ち上げた経緯を教えてください。
河合:元々株式会社ARROVAは、ゲーム内の広告事業や、FortniteやRobloxといったメタバースサービス向けのワールド制作を中心に行ってきた会社です。一貫して3Dデータやバーチャル空間を通した体験や、その中で伝えることを考えた活動を行ってきました。そういった場で、企業体験やユーザー体験が豊かになることが重要だと考えています。そんな中で、生活者のコミュニケーション表現ともなっているデジタルファッション領域にも取り組めると良いと考え、この事業を開始しました。
––その中でなぜVRChatでIPを扱うことを選んだのでしょうか。
河合:元々自分たち自身がマンガやアニメが好きだったことが大きな理由となります。せっかくのメタバース空間なので、現実では体験出来ないような体験をしてみたいという思いがありました。加えて、コンテンツビジネスを行っている企業様との距離が近く、メタバースにおけるIPの不正利用などの課題をお伺いしていたことも理由のーつになります。
VRChatを選んだ理由としては、弊社では他のメタバースでの事業も行っている中でVRChatが一番”コミュニケーション”が活発に行われているプラットフォームだと思ったからです。FortniteやRobloxは現状ゲームがメインになっている面が強い印象ですが、ゲーム系メタバースも徐々にコミュニケーション系のプラットフォームに変わってきていると捉えています。VRChatはコミュニケーションだけでここまで着実に伸ばしてきたという意味である種、他のメタバースでも求められているもの、辿り着く先がVRChatのような世界に今後なっていくのだろうなと、我々としては考えています。そしてアバターの幅がここまで多様な世界観はVRChatしかないと思っているのでVRChatを選びました。
––ゲームやカルチャーに理解があるからこそ辿り着いた感じがありますね。

運営陣もアニメ好き!触れてきた作品はいかに
––お二人ともアニメ好きとお聞きしていますが、その原点をお聞きできますでしょうか。
本間:小学生の頃からアニメや少年誌を読むことが多かったです。僕はどちらかというとVR技術みたいなものに興味があって、自分の好きなものと組み合わせていろいろできないかなと考えていたところからこの事業をやっています。
河合:僕は10歳年上の姉がいるのですが、その姉の影響で小学生の頃から『新世紀エヴァンゲリオン』のDVD BOXが家にあったので見ていたり、当時放映されていた『機動戦士ガンダムSEED』、連載されていた『鋼の錬金術師』もずっと見ていたりしました。中学・高校はずっと男子校で、大学も理系で男子が多い環境だったので、学内ではマンガを友人と貸し借りして読んだりしていました。またライトノベル全盛期ということもあり、原作を読む他、アニメ化されたらそれをみんなで見たりしていました。日常系以外はほぼほぼ見漁っていた少年時代を過ごしていましたね。
–– お二人ともアニメが深く人生に刺さっていますね。そういった経験や知識も衣装の制作
に活かされているんでしょうか。
河合:TAGの商品は基本的に版権元様から監修が入るので大きく影響を与えている点はないのですが、この監修が入る前までの間に、本間とキャラクターのデザインの細かいところの話をする時に理解度が高くなります。たとえば、『鋼の錬金術師』の「ロイ・マスタング」の衣装を作る際、「手袋のデザインは左手にも錬成陣が入るのか」といったキャラクターの設定に関する情報がすばやく出ることで、制作から監修に提出するまでのサイクルはかなり早くなっているかなと思います。
–– マスタングは手袋の片手だけ発火布の設定でしたっけ。
河合:エンヴィーを倒す時は大火力とピンポイント射撃を両手で打ち分けていましたね。そんな話を本間といつも会社でしています(笑)。

ワールド装飾にイベント開催、TAG 運営が考える今後の展開とは?
–– TAGの今後の展開を教えてください。
本間:今後、イベントを定期的に開催していきたいと考えています。現状、ワールドは建物の外側ができている状態になっています。少し前に開催していた『エクボの日』イベントでは屋外に『モブサイコ100』の「エクボ」の装飾を行っていましたが、そのような形で建物の外を装飾するようなものはこれからもやっていきたいですね。あとは、建物の中が完成したら、アイテムをより近くで見たり、着用できるようにしたりしていきたいです。
取り扱う作品については、今年は立ち上げ1年目ということでいろいろ試行錯誤していた部分もあったのですが、来年からはさらに多くの作品をご提供できるように構想中です。詳しいタイトルについては、まだお待ちください。
–– 次に公開する作品もとても楽しみです! 運営方針として考えていることはありますか?
河合:我々は、TAGをデジタルファッションの”百貨店”のような存在にしていきたいと考えています。百貨店には、1階には高級なコスメ、2階にはハイブランド衣類といったそんな空間があると思います。そういった空間を作っていき、その上で広げていきたい方向性は大きく2つ考えています。
1つは運営チームからお声がけしたクリエイターさんに、TAGへの出品を検討していただいており、高品質な商品を手掛けているクリエイターさんや、これまでVRChatを盛り上げてきたユーザーさまと一緒に、ある種、TAGの限定商品みたいなものを作っていただくことも考えています。また、その他にも日本のブランドが持っているリアルの商品を、3DアセットとしてECサイト上で販売ができたらと考えています。
もう1つの方向性としては、日本人の創作活動を全世界に届けるということです。創作の力というものは、自分自身も「ニコニコ動画」の全盛期にいろんなものを見て育ってるので、プロアマ問わずすごいものだと思っています。そういったコンテンツのグローバル展開というところは必ずしていきたいと考えています。日本のマンガやアニメの作品、個人のクリエイターさんの作品が、海外のVRChatユーザーさまたちに届きやすくなるような環境を作っていきたいです。我々が企業だからこそできることかなと思いますので、頑張ってやっていきたいと考えています。
守りたいのはクリエイターの活躍の場、IP を扱う立場としてのこれからの役目
–– 海外展開の点でいうと、小学館さんと資本業務提携を締結されたニュースが先日ありましたが、この提携も海外展開を視野に入れたものだったのでしょうか。
本間:小学館様との業務提携に至った背景としては、クリエイターさんたちへの還元やそういった部分の土壌を整えていく必要があると考えていて、TAGのプロジェクトに関心を寄せていただいたというところです。現状、VRChatでは版権元とは関係ない使い方や、ゲームなどからデータを抜いてVRChatで使っているようなユーザーもいることもあり、そういったところでユーザーの皆さまが安心安全に遊べるような世界にしていかなければならないと考えています。そうでないと新しいコンテンツも生まれませんし、このバーチャルな世界がそういった遊び方をしてもいいと認知されてしまう。このままでは、いずれ何らかの”ほころび”が生じてしまうと思うので、この状況をしっかり整備していくための連携となっています。
–– VRChatにおける著作権の問題はとても根深いので、直接版権元と組んで取り組めるのは確かに企業にしかできないやり方ですね。
河合:TAGでクリエイターさんにインタビューさせてもらった際に、とあるクリエイターさんの作品が海外のサイトで勝手に販売されてしまったケースをお聞きしたことがありました。そういうことが起きた際に、自分のところに還元がない状態になってしまうと、いろんな方たちが積み上げてきたものが壊れかねないと思っているので、マンガやアニメといったIPに限らず、一般クリエイターさんたちの権利もちゃんと守られて、その方たちがちゃんと収益を獲得して、また新しい創作を創り出す、そういった好循環が作られる必要があると思っています。
プロアマ問わずクリエイターさんたちの権利がちゃんと守られて、新しい創作がちゃんと生まれるような世界が保たれるようになるといいと思っています。
本間:僕らの世代の話になるのですが、小学生の頃は「モバゲー」や「mixi」が出たりと、インターネットで人と人が繋がる、コミュニケーションを取れることが増えた時代でした。そこから現在、アバターやバーチャルを通してコミュニケーションを取れるようになり、今のこのVRChatのコミュニティができたと思うんです。その中で、クリエイターが活躍しやすい土壌ができてきて、アニメやマンガに多く触れてきた僕らのような世代としては、クリエイターが活躍できる環境作りや、公式の作品がこのVRChatで取引されるところを目指していくことが、僕たちだからこそできることなのではないかなと考えています。
––インタビューさせていただき、ありがとうございました!

参考リンク
・TOKYO AVATAR GATE 公式サイト
・TOKYO AVATAR GATE 公式 X
・TOKYO AVATARGATE公式Discord




















