VRChatにある遊園地ワールド制作者が集う! 遊園地座談会

「ぽこピーランド」「ファンタズムセブン」「VRメルヘン村」「アフマ大陸」…….

ソーシャルメタバース「VRChat」上にはさまざまな「遊園地ワールド」が存在します。いろいろなアトラクションが楽しめて、特に今話題の「ぽこピーランド」は、VTuberの甲賀流忍者ぽんぽこさんとピーナッツくんがコンセプトということもあり、これをきっかけに新しくVRChatをはじめる人が現れるほどの魅力を持っていますよね。

そこでふと思ったんです。

「VRChatの遊園地ワールドは、なにがそれを遊園地足らしめるんだろうか……」

そんな疑問を解消するべく、今回は3人のワールド制作者を招集!
遊園地ワールドを実際に作ってきた、ぬるもとさん、VR蕎麦屋タナベさん、新 arataさんの豪華メンバーで、それぞれのワールドに対する印象や、作るうえで心掛けたことなどを座談会形式で深掘りしていきます!

各クリエイターを紹介

座談会の前に各クリエイターを紹介していきます。

1人目|「ぽこピーランド」製作総指揮 ぬるもとさん

1人目は、ぬるもとさん。バーチャル展示会イベント「バーチャルマーケット」でワールド制作を行っており、「ぽこピーランド」では製作総指揮を務めました。

ぽこピーランドは、VTuberのぽんぽこさんとピーナッツくんをテーマにしたワールドで、ワールド内には2人のモチーフとなったアトラクションなどが用意。中でも、「ピ虐研究所」は、体験してきた人たちの間で「ガチのホラーだ」と大きな反響を呼びました。

2人目|「VRメルヘン村」「ファンタズムセブン」制作 VR蕎麦屋タナベさん

2人目に紹介するのは、蕎麦屋タナベさん。個人、企業問わずにさまざまなワールドを手掛けている方になります。

今回は、2つのワールドを紹介。

「VRmeruhenmura」は、佐賀県に実際にあるテーマパーク「メルヘン村」がモチーフとなったワールド。ドングリスと呼ばれるキャラクターが話題になるなど、VRChatユーザーの間で話題になりました。

もう1つ紹介するのは「ファンタズムセブン」になります。ユーザーから募集を集めたアイテムを取りまとめたワールド。そのカオスさから「ファンタズム」がタナベさんの代名詞になりました。

3人目|「アフマ大陸」制作 新 arataさん

3人目に紹介するのは新 arataさん。「アフマ大陸」を手掛けたワールド制作者です。

「アフマ大陸」は7つのアトラクションで構成されているワールド。ワールド内では「アフターマ部」の集まりを模したキャラクターで登場しており、独特の世界観が話題を呼びました。Quest対応をしているのもポイント。

ドングリスがミーム化した!? メルヘン村

ーー本日はお集まりいただきありがとうございます。まず聞いてみたいのですが、みなさんお互いのワールドは見に行かれましたか?

arata 座談会の前の日にタナベさんの「ファンタズムセブン」に行きましたよ。

タナベ まず、「ファンタズムセブン」について弁明させてください。あのワールド、みんなから「狂っている」とよく言われるんですが、あそこの展示物はノージャンルで皆さんから募集したんですよ。私はそれをまとめているだけなんです。

ーーいきなりの弁明(笑) あくまで、取りまとめているだけなのに諸悪の根源として見られちゃってるということですかね。

arata 入り口の方で、募集したものだというアナウンスも流れていましたね。

ーー弁明の必要があるのは、「ファンタズムセブン」だけで、他のワールドはタナベさんの”狂気”ということでいいんですかね?

タナベ もう1つは「VRメルヘン村」ですね。あれは、佐賀県に実際にある遊園地「メルヘン村」をVRChat上に公認で作らせてもらったんです。僕から見たらごく普通の遊園地ですよ。行っている人たちが「狂っている」と言っているだけです。 

arata メルヘン村のオブジェクトから闇が放たれているのですよね。

タナベ 解せぬと思っています。実際にあるものをそのまま出しているだけなんです。

ーーメルヘン村が狂っているということですか…… 特に反響があったものとかありますか?

タナベ メルヘン村の巨大なリス「ドングリス」ですかね。自分の知らないところへ行ったら、「ドングリス」の話題になっていて、ミーム化してる!と思いました。

ぬるもと ワールド内でも「ドングリスの歌」が延々とループされてましたよね。

ーーあれは、中毒性の固まりですよ。

タナベ 作っている本人は真面目なんです。ただ、いろんものが相まって、とんでもないワールドになってしまいました。

arata 実は、「アフマ大陸」を制作する際に、いろんなアトラクション系のワールドを巡っていたんですよね。その時に「VRメルヘン村」にも行きました。

ぬるもと うちでも「ぽこピーランド」制作にあたって、定例会議をしていたのですが、初回の定例は「VRメルヘン村」で行いました。

ーー結構影響を与えていますね。たしかに、「ぽこピーランド」の制作開始と「VRメルヘン村」が話題になったのって2022年の3月で同時期ですしね。

ぽこピーランドを作る上で学んだ遊園地のワクワク感とは

ーーぬるもとさんのツイートで見かけたのですが、もともと、ぬるもとさんとbironistさんで「アフマ大陸」を見にいかれてたとか。あれは、どういった経緯だったのでしょうか。

ぬるもと 大体の遊園地ワールドに行かせてもらったので、「アフマ大陸」もその1つという感じですね。

arata 本当に嬉しいですね。語弊があるかもしれないですけども、「アフマ大陸」が「ぽこピーランド」にちょっと影響を与えたってことですもんね。30年は誇りたい。

タナベ ワシが育てたって書いといてください。

(笑)

ぬるもと 実際に、参考にさせていただいたところもあるんですよ。巡ったワールドの中には、遊園地のアトラクション置いただけで「遊園地です」みたいなことがありました。そんな中でも、「アフマ大陸」は、入り口だったり、建物だったりで、インパクトや勢いが強くて。それをきちんと設計してあげることが大事なんだなって思いましたね。

タナベ 遊園地の定義について考えてみると、遊園地って乗り物だけではないと思うんです。フレンドと一緒に行ったり、入り口からのワクワク感だったり、すべて込みで遊園地だと思うんですよ。遊具がただ置いてあるだけで閑散としてしまっていたり、入り口のワクワク感が少なかったりすると、遊園地としての魅力は薄いなって思ってしまいます。

ーー導入って大事なんですね。

ぬるもと 導入の大事さで言えば、アフマ大陸の入り口はインパクトありました。

arata そんなに言ってもらえるとは……技術がないのを勢いでカバーしたので、勢いを評価してもらえたのは嬉しいですね。

ワクワク感でいくと、「ぽこピーランド」の改札通ったときもすごかったです。「はじまる」って感じでした。

ーーファンとしては、改札通るときのアイテムでぽこピーの歴史が詰まっているのが伝わってくるんですよね。

arata ぽこピーのことに詳しくない人でも楽しめたのは本当にすごかったですよね。ピ虐(※ホラーアトラクション「ピ虐研究所」)とか本当に怖かったです。

ぬるもと 専門のスタッフに1年掛けてもらいましたので。

ーーぽこピーを知らない人でも楽しめる人でも楽しめるように工夫しましたか。

ぬるもと ぽこピーを知らない人やぽこピーは知っているけどもVRを知らない人など一通り検討して、合わないものをなくすように心がけました。

ーー減点されない作りにしていったわけですね。

こってりラーメンのようなアフマ大陸

ーー制作するにあたって1番苦労したことはなんでしょうか。

arata 「アフマ大陸」の場合は、Questの対応ですかね。

ーー容量の制限に引っかかっていたようでしたよね。

arata 進捗40%のときに697MBありまして……いろんな人に聞いてテクスチャや音楽の容量を下げることができました。

ーーアフマ大陸がはじめての大規模ワールド制作だったと思うのですが、どのぐらい期間がかかりましたか。

arata 3ヶ月ですね。ただ、モデリングができず、アセットを組んで作った時間になります。タナベさんやぬるもとさんの場合だとモデリングをしていると思うので、その分時間かかりますよね。

ーーそもそもこんなにもアフマ大陸を知ってもらえるとは思わなかったところでしょうか。反響はありましたか。

arata 2人と違って、自分に発信力があるわけではなかったですからね。フレンドの方に拡散してもらったのが大きかったと思います。Twitterでエゴサーチをしているのですけども、「MAD世紀末大車輪」が大反響ですね。

ーー新 arataさんの世界観が1番濃く反映されている場所が反響を呼んでいると。

arata MAD世紀末鎌倉というワールドで、MAD世紀末集会というのを行っているのですね。最近嫌なことを炎と骸骨と仏像でグルグル回してストレス発散させるということをやっているんですよ。フレンドの方からすると、MAD世紀末大車輪はいつも通りのことをしているわけなんです。

タナベ 日本語しゃべっていますか?

(笑)

ーー結構いろんなクリエイターが反応していて、最近だとJOHNNY HENRYのYAMADAさんが反応していましたよね。

arata まさかここまで広がるとは思わなかったのでありがたいです。

タナベ VRChatのあるワールドを見立てていたときがあって、きれいなワールドとかは醤油ラーメンとかなんですよ。新 arataさんのワールドは、こってりしている「天下一品」なんです。そのぐらい個性があります。

Pubicボタンの重み

arata チームで作られているのが新鮮に見えたのですが、毎週進捗を報告しているでしょうか。

ぬるもと 毎週決まった時間に行って、深夜まで作業みたいな感じですね。開園前だと朝まで作業することもありました。

タナベ Publicボタン(公開)を押すときに震えましたか?

ぬるもと 1年間作って、いろんな人が開園するのを待っているので震えましたね。

ーータナベさんはいかがでしょうか。

タナベ 僕の場合は、Publicボタンを押すときに苦労させてやるって思って押しているんですよね。

(笑)

arata さっき弁明を必死にしていましたけども、意味ないですよね(笑)

タナベ ファンタズムセブンのときは、「明太子おにぎり食べ終わったら押すね」ってツイートしたんですよ。

ーーPublicボタンの重みは一体どこへ……

タナベ その後残念なことに、ワールドにバグが生まれてしまったんですよ。 どうしようかなって思って、バグをそのままに入り口に「わび石」を置きました。

これから作っていきたいワールドについて

ーーこれから作りたいワールドはありますか。

arata 実はアフマ大陸を作ってきた後に世界一周してきたのですけども、VRChatのみなさんにも体験してもらいたいなと考えています。アトラクションなのかは分からないですけども、なんらかの形にしたいなと思います。

ぬるもと ぽこピーランドは、まだ途中なんですよ。拡張していきますし、常設のワールドなのでイベントとかもやるのかなって、長く楽しんでもらえるように色々やっていこうかなって感じです。

タナベ ファンタズムセブンの続編を今年やります。仮タイトルで、ポカポカファンタズムになります。

ーー今回はありがとうございました。