「SHOWBYROCK!! ましゅまいれっしゅ!! キセキかもしれないレゾナンス」を見たらましゅまいれっしゅの沼に入ってしまった人の話

2月19日から3月17日まで「SANRIO Virtual Festival 2024」(以下、サンリオVfes)が開催されています。「SANRIO Virtual Festival 2024」はVRChat上に作られたバーチャルピューロランドを舞台とした、いつでも何度でも楽しめる期間限定VRテーマパークです。

期間中は、バーチャルパレードをはじめゲームワールドやコラボアバター、キャラクターグリーティング、コミュニティコラボなどを行っています。

本記事では、バーチャルパレード「SHOWBYROCK!! ましゅまいれっしゅ!! キセキかもしれないレゾナンス」とミニショー「はぴだんぶいとベルクックのサンリオVfes限定コラボバンド」を紹介します。

宣伝を全面に出されるとむしろ好感持てるよね

バーチャルパレードが始まる前に行われるのはミニショー「はぴだんぶいとベルクックのサンリオVfes限定コラボバンド」。はぴだんぶいと埼玉・群馬を中心に展開するスーパーであるベルクのマスコットキャラのベルクックが登場して、曲を披露してくれます。

ミニショーは3つありますが、いずれもスポンサーが付いています。今回のミニショーでは、「シナモンの「ときめきレインボー」スペシャルバージョンお披露目会」では、NTTドコモがスポンサーだったので、スマホがキーアイテムとして登場していました。

ミニショーでスポンサーの要素がどれほど関わってくるかは、本当にまちまち。今回の「はぴだんぶいとベルクックのサンリオVfes限定コラボバンド」ではどれほど関わってくるのでしょうか。

ベルクック「ベルクからオススメ商品を持って、遊びにきちゃった」

ばつ丸「遊びに来た?宣伝か?宣伝なのか?」

あっ、ダイレクトマーケットですね。

差し入れにお寿司をもらって喜んでいたが、公式サイトだと好物は銀座の高級寿司らしい。
宣伝か?宣伝(モード)なのか?

宣伝と言いながらもベルクックとはぴだんぶいの掛け合いは仲良し。ミニショーの短い尺ながらも、にっこり笑えるシーンが多いので要チェックです。

そもそもましゅまいれっしゅってなに?

この記事で紹介するバーチャルパレード「SHOWBYROCK!! ましゅまいれっしゅ!! キセキかもしれないレゾナンス」(以下、キセレゾ)は、名前の通りSHOWBYROCK!! ましゅまいれっしゅ!!の関連作品。記事を読んでいる中には知らない人もいると思いますが、このバーチャルパレード自体は本編を知らなくても楽しめる内容です。

筆者もSHOWBYROCK!!はアニメの1期は見ていたものの、3期に相当するましゅまいれっしゅ!!は見ていませんでした。3期からは今回登場しているバンドであるましゅまいれっしゅがメインとして登場しているので、SHOWBYROCK!!は見たことあるけど、知らないキャラクターがいると思う人もいるかもしれません。

軽くキャラクターの紹介をしていきましょう。

1人目はアニメでは主人公のポジションにいるほわん。田舎で生まれ育ちやってきた、純粋無垢な女の子です。

2人目は、いかにもツンデレそうな見た目をしているマシマヒメコ。ギャル寄りの雰囲気とは裏腹に、オタク気質なところが見え隠れするのがポイントです。

3人目は、ひときわ小柄なデルミン。SHOW BY ROCK!!のキャラクターは獣人で、それぞれに種族が設定されているのですが、このデルミンはデビルミント鬼龍族です。どこからツッコめば良いのか分かりません。キャラクター設定がとんでもないことになっているわりには、本人は意外とバンド内のブレーキ役です。

4人目は、活発でスポーティな雰囲気のあるルフユ。バンド内でのムードメーカーです。

……そう、今回の記事はましゅまいれっしゅを知らない人なりに楽しんで、パレードの雰囲気を紹介する内容のはずでした。

ですが、ふとアニメを見てしまいました。突然出てきた謎のビームが気になりすぎてしまったから……

最初はサンリオのアニメだぞ?ビームを出すキャラぐらい普通でしょと思っていた。
同級生にただのヤギがいた作品があったんだぞ。それでも気になって見た。

アニメを見てしまった以上、冷静にパレードを紹介することはできません。ここからは、いかにキセレゾがましゅまいれっしゅとVRChatをクロスオーバーさせたキセキのような作品なのかを力説させていただきます。

なので、ここからはパレード及びSHOWBYROCK!! ましゅまいれっしゅ!!のネタバレを大量に盛り込みます。また4期のSHOW BY ROCK!!STARSに関しては触れません。

この記事を読んでからパレードに触れるのもいいのですが、公式Xまたは公式サイトのタイムスケジュールで確認して、事前に見ておくことをオススメします。

これは、誰にでも起こるとてもありふれた、ましゅまいれっしゅに魅了された人だけの物語。

そんな……Grusを出すことをしてもいいのか……?

ライブ会場から始まり、アニメのオープニングでもありパレードのオープニングでもある「ヒロメネス」を披露。

バンドの自己紹介をしていると、突如として乱入者が現れます。そして、ビームを放たれ、謎の空間に飛ばされてしまいます。

謎の空間に謎の少女……

!?

Grus!?

ここに登場するのはBOOTHで販売され、VRChatでユーザーに使われているアバターであるGrus。本当に個人的な話ですが、筆者が大好きなアバターで、初めて買ったアバターでもあります。

いいんですか!?そんなことをして!?!?

サンリオVfesの凄さは、コミュニティとの連携とコンテンツに携わる人選の良さがあると思っています。今回のサンリオVfesで例を挙げるならば、観客を巻き込んだゲームが盛り込まれたパレード「Twinkle Guardians」のスタッフに、同じく観客を巻き込んだVR演劇を作った伊東ケイスケさんが参加したことがあるでしょう。

企画や人選がどのようにして決めていくのかは、制作側のみぞ知る事情ではあります。いずれにせよ、コンテンツと人選が最高のマッチングで繰り出してくるのがサンリオVfesの凄さなのです。

さらに、謎の少女は異世界から来た存在であることが示唆されます。今回のために用意された設定かと思いますが、アニメSHOW BY ROCK!!の1期で出ています。ざっくり話すと、現実世界の住民がSHOW BY ROCK!!の世界にやってきたことを背景を持つキャラクターがいます。

過去の設定を踏まえると、GrusはVRChatのユーザーであることを示すためのキャスティングになるのでしょう。サンリオがオリジナルでデザインしたものではなくアバターが起用された理由がしっかり盛り込まれているわけですね。

元がアバターなのにましゅまいれっしゅのメンバーと並んで違和感がないのもすごいポイント

さらに付け加えると、中盤以降の衣装に「SB69」が描かれています。SB69とは、SHOW BY ROCK!!の略称。作品の外側にいる人間でないと、まず出てこない単語です。先程の設定を加えると、現実世界の住民であり、さらにSHOW BY ROCK!!のファンであることまで考えられます。

正直映像で見ないとSB69が描かれていることになかなか気づけない
VRだとキャラクターまでの距離があるので服の細部に意識が向きません

近年では企業がBOOTHで販売されているアバターを活用することは珍しくありませんが、まさかパレードで登場するとは思いませんでした。そのアバターにGrusが使われるなんて、本当に夢みたいです。

でほわんが食い気味でかわいい子だねぇって言うのが好きです

ところで、声がGrusの持つ中性的な雰囲気とマッチしているのですが誰が演じているのでしょうか……一人称僕や衣装なども含めて、Grusのパブリックイメージをキャラクターに落とし込んでいて好きです。

うちのほわん!?!?!?!

話をパレードに戻しましょう。

謎の少女は一旦茶柱さんと名付け、状況を把握していきます。そして、謎の空間だと思っていた場所は、茶柱さんの心の世界だと判明。大きな茶柱さんも現れて緊張感が走ります。

音楽が嫌いで自分の世界に閉じこもればいいと、茶柱さんが語ります。

対してほわんは、みんなと出会えて仲間になれたと説得。

さらに、仲間がいる君たちにはわからないだろうと大きな茶柱さんが反論します。

ここでほわんが、裏切られたことはないけども茶柱さんの音楽が好きだという気持ちを聞かせてほしいと伝えます。しっかりと好きだという気持ちを聞かせてほしいと話すのが、本編でマシマヒメコとの対話を通じて得たほわんの学びを感じさせます。

そして、1人になってしまいピンチになるほわん。絶体絶命のところに他の3人が駆けつけます。

「ちょっとあんたうちのほわんに手を出さないでもらえる!? 」

ここでみんなが茶柱さんに声をかける言葉が最高に本編を踏まえているんだ……

普段はなかなか素直にほわんに想いを言えないマシマヒメコが、ピンチになると「うちのほわん」に手を出したら許さないと叫ぶのですか。

アニメ12話を通じて、ほわんとマシマヒメコの関係性がすごく丁寧に掘り下げられています。じっくり掘り下げた後に「うちのほわん」と言うマシマヒメコは、本当にたまらなく好きです。

いいんですか!? そんなことをして!?

キセレゾからましゅまいれっしゅを見て、再びキセレゾを見ると「そんなことをしていいんだ……」と驚くシーンばかりなのです。キセレゾからましゅまいれっしゅに入るのは間違いなく良い入り方だと思います。キセレゾは、アニメにあった「ここが好きなんだよなぁ……」さらなる先を見てくれるシーンが多いので、さらなる先を見てから原点を見るのも面白いですよ。

ぜひアニメ未視聴の人は、「うちのほわん」の重みを感じるために見てください。

本編では見られなかったものをサラッと出すスタイル好きだ……

茶柱さんを音楽で救おうとした場面で流れるのが、「No problem!!」。

この楽曲は、普通になりたいデルミンと特別になりたいルフユが仲違いした後に理解しようと流れたものです。今回は茶柱さんの気持ちに対して、理解し、寄り添うための曲として抜擢されたのでしょう。

アニメで流れたときは、デルミンとルフユの2人で歌う挿入歌でした。

だが……今は違う!!

今回はバンドとして4人で披露。本編で見られなかったものを出すなんて、素晴らしいファンサービスでしょうか……

マシマヒメコと茶柱さんって似てるけども違う

茶柱さんに訴えかける場面で、マシマヒメコが音楽から離れてみてどうだったのかを聞くのが素敵。基本的に強気な声で喋る場面が多いのですが、この問いかけは本当に優しい声で語りかけてくれます。初見でも印象的でした。

正直なところ、アニメのましゅまいれっしゅは、1話でマシマヒメコがバンドが分からないと外に行って、最終話でバンドって良いよねと帰ってくる話です。

物語としては王道とも言える「行って帰ってくる物語」になるでしょう。なのでアニメの主人公はほわんですが、物語を通じて描くテーマの中心人物はマシマヒメコが担っている部分が大きいです。

アニメを見た人は分かるでしょう。茶柱さんが抱えている問題は、マシマヒメコが抱えている問題に近いのです。つまり、アニメで描いたテーマの再提起。

同じ痛みを知る人だからこそ、マシマヒメコの投げかける言葉は誰よりも勇ましく、誰よりも優しいのです。

とはいえ、個人的には問題は同じでも根本は違うように捉えています。マシマヒメコの場合は才能を持つがゆえの恐怖であり、茶柱さんは才能を持たないがゆえの恐怖だと思います。実際、ライブ会場を襲ったのは劣等感ゆえのアクションですからね。

それにしても物理的な攻撃に対抗できなかったら終わっていたかもしれないってマジでどういうこと?

今度はほわんが手を差し伸べる番!

茶柱さんを救い、ほわんが茶柱さんに手を差し伸ばして歌い出すのが「エールアンドレスポンス」。何も知らない初見では、いい感じにパレードが終わりそうだと思っていました。

だけども、アニメ1話を見て驚愕の事実が判明します。

「エールアンドレスポンス」は、マシマヒメコがほわんに手を差し伸べ、ましゅまいれっしゅの4人が最初に知り合うきっかけの楽曲。

そんな……ほわんが手を差し伸べる側になるなんて……

アニメでマシマヒメコが悩んでいるときも自分のやっていることがダメだと気づきます。アニメを経た今のほわんならば手を差し伸べる側になるのは道理です。

先ほど再提起と語りましたが、今のほわんに同じことを再提起したのがキセレゾのほわんになるのでしょう。

そして、映像版では「ほわんが手を差し伸べる」ことがより強調されています。最初に倒れている茶柱さんを起こすときもほわんが手を差し伸べるのですが、強調したカット割りになっています。意図してか分かりませんが、アニメ1話を彷彿とさせます。ましゅまいれっしゅは、手を差し伸べることが始まったと意識している作りが最高ですね。

すごいよ……キセレゾ……

ここでの「プラットフォーム」は文脈ありすぎだって

楽曲が終わり、茶柱さんの本当の名前を言うところで場面転換。ライブハウスで「プラットフォーム」を歌います。

ここまで、ましゅまいれっしゅのエモさについて話をしてきましたが、VRのコンテンツとしても最高であることを話していきます。

キセレゾがVRのコンテンツとして優れているのは実在感でしょう。キャラクターと舞台がしっかり馴染んでいて浮いていません。さらに今回のパレードの舞台はアニメと違いリアル寄りの表現ですが、それでも「いつものましゅまいれっしゅ」の延長線上として捉えられます。

このライブハウスで、実在感が最高潮までいきます。

な~んだこれ!?

もう完全に現実にあるライブハウスですよ。しかも、現実のライブハウスにアニメキャラクターがいるので、2次元と3次元の境界線がめちゃくちゃですよ。

ライティングは見ての通り、ほとんど見られないであろう天井部のダクトも作られています。ここまでの冒頭のライブ会場や茶柱さんの心の中も含めて全体に言えることなのですが、見えない部分もしっかり作られています。VRだと見えない部分も含めて、全部を作らないといけないと痛感させられますね。

VRを最高に活用した部分なのですが、ライブハウスになると突然キャラとの距離が近くなります。

茶柱さんの色使いを見て改変に参考にしたいし、ましゅまいれっしゅを見てモデリング良くない?って思っていました

キャラの距離が近くなるのも本当に上手。ここまで遠かったキャラがいきなり近くなることで、ライブハウスのハコの小ささやキャラクターの存在感がより実感できる作りになっています。

さらにダメ押しとして、ライブハウスそのものが現実の空気感を再現。もうVRで参加している人にとっては、ましゅまいれっしゅと茶柱さんが目の前に「いる」になるわけですね。

ライブハウスでましゅまいれっしゅと茶柱さんがいる実在感を全力で押し出しているのは、おそらく現実のライブハウスだからなんでしょう。

話をパレードの内容に戻していきます。

ここで歌う「プラットフォーム」はいわば、約束の歌。プラットフォームが出来たのは、ましゅまいれっしゅの4人がぶつかり合って理解した後に、今の状態をキセキであり今が最高に楽しいことを忘れないと約束したからです。

キセレゾで流れた「プラットフォーム」ではどのような約束があるのか2つ考えてみました。

ましゅまいれっしゅと茶柱さんが別れて、音楽が好きであることを忘れないためのための約束。

SB69と書かれた服を着ていたことを考えると、現実世界に帰った後に茶柱さんがライブハウスで好きなましゅまいれっしゅの曲を歌ったのは想像できます。

もう1つは、先ほど紹介したましゅまいれっしゅが出来上がったのはキセキであり、今が最高であることを覚えておく約束。今回の茶柱さんに投げかけた言葉は、ましゅまいれっしゅがキセキだと忘れなかったから出せた言葉。あの日の約束を忘れていなかったわけです。

こんなにも理想的なアフターってありますか……?ビジュアル面でも劇場版なのですが、テーマも劇場版なんですよね。

あの日の思い出に浸ってそうなマシマヒメコ好き

ライブハウスが現実世界であることは、この後ましゅまいれっしゅが再びライブ会場で歌うことを考えると、対比だと思いました。

現実世界の小さなライブハウスで歌う茶柱さんと作中世界の大きなライブ会場で歌うましゅまいれっしゅ。

タイトルロゴが最後のライブ会場前に流れたことを考えると、ラストシーンだけ結構時間が経っているのかも
そうなると1つだけ続編であるSTAR!!の楽曲なのも頷ける

茶柱さんが1人でもみんなでも音楽は楽しいと言っていたことを考えれば、1人と4人の対比でもあるかもしれませんね。

いずれにせよ「プラットフォーム」の約束を忘れていなければ、遠く離れても、どこで歌っても、みんな音楽が好きだという気持ちは変わらないのです。

ましゅまいれっしゅとVRChatがキセキのクロスオーバー

今回のキセレゾはアニメでの繰り返しに近い内容で、本編を経て改めて孤独や恐怖についてましゅまいれっしゅの4人が答えました。

アニメとキセレゾでも取り扱ったましゅまいれっしゅの持つテーマは、VRChatにありふれたものであり、刺さるものでもあります。

VRChatは「好き」で動いている側面がかなりあります。だから、好きから生まれる裏切りや劣等感などといった恐怖は痛いほど伝わってきます。

ましゅまいれっしゅとVRChatはクロスオーバーできるのか、片方しか知らない人でも満足できる内容を出せるのか、両方知っている人に満足できる内容は出せるのか。

しかし不安に思う必要はなかったと思います。そもそも、ましゅまいれっしゅとVRChatは同じ方向を向いているキセキがあったから。

だけどキセキを活かしきったパレードが出来上がったのは、間違いなく監督の0b4k3さんをはじめとしたVRChatとましゅまいれっしゅを愛しているスタッフたちの手腕でしょう。

現実世界で開催されているパレードが同じく現実世界の人たちに夢を与えるのであれば、VRChatで開催されているパレードは同じVRChatの人たちに夢を与える内容でもおかしくないはずです。

間違いなくVRChatで開催されているバーチャルピューロランドでの「バーチャルパレード」にふさわしい内容ではないでしょうか。

記事内でも度々触れていましたが、映像版もぜひ見てください。映像作品として作られているので、VRでは距離や角度で見れなかったキャラの表情や演技があり、VRでは見つからなかった発見が多くあります。

そしてキセレゾが面白いと思った人は、ましゅまいれっしゅのアニメを見ましょう。

ましゅまいれっしゅは、dアニメストア及びAmazonプライムビデオで見られます。Amazonプライムビデオでは、1話だけ無料です。エールアンドレスポンスで語っていた部分は無料部分で味わえるので、視聴するかは1話を見てからでも遅くないはずでしょう。

またサンリオVfes内でも上映会が2月29日から行われます。無料で見られるのだから見るしかない。

好きを好きだと言えることをキセキだと噛み締めて楽しんでいきましょう。