Join戦争、イベントが開催されているインスタンスに参加するための競争を指した言葉。VRChatの性質上ワールド内で入れる人数の枠は少ないことも多く、オープンと同時に入れないと難しいことがほとんどです。
そんなJoin戦争をモチーフにしたゲームワールドをご存知でしょうか。
ゲームの名は『Join Wars』、まさしくJoin戦争です。ゲームの目的は、Join戦争に勝利して伝説のVRChatterになること。ゲーム内に出てくるカードなどのフレーバーは、VRChatに関係したものばかりで、VRChatユーザーによるVRChatのゲームです。
ですが、この『Join Wars』はただのVRChatネタがてんこ盛りのゲームと考えてしまうのはあまりにもったいない。『Join Wars』のすごさは、ゲームデザインの元となった『ドミニオン』から「いかにして」VRChatに落とし込んだのかが見どころのゲームなのです。
この記事では、『Join Wars』のゲーム内容を紹介しつつ、凄さを伝えていきます。
ゲーム内容紹介
『JoinWars』のゲーム内容をざっくり説明すると「改変してJoinする!1番Joinしたら伝説のVRChatterになって勝利!」といったもの。まるでVRChatの説明みたいだ……
もう少しゲーム内容を深く踏み込んで説明すると、カードを使って現金と改変力を手に入れます。この2つは、ブースにて強力なカードの入手や効果の付与に使われます。なお販売されているものは、毎回ランダムです。
Joinのカード(もしくは効果)を使ってカードをワールドにJoinさせると点数がもらえます。点数は人気という形で表現されていて、改変すると人気の点数が多い効果が付けられます。
使われたカードは捨て札にいきますが、デッキが全部なくなると捨て札にあるカードを戻します。なので、改変し続けることでデッキにあるカードがどんどん強くなるわけです。
ですが、Joinをしてしまうとそのカードは使えなくなってしまいます。人気の点数が高いカードには、強力な効果を持っているので駆け引きが生まれるわけですね。勝つためにはリソースの分配に気を配りながら、カードを強化、Joinする必要があるわけです。
また、改変ばっかりするのはいいけどもJoinをしなかったら負けます。だから伝説の存在になるためには、こまめなJoinが不可欠。……これゲームの説明だよね?VRChatの攻略法になっていない?
この記事ではざっくりとした紹介ですが、実際のワールド内には丁寧なチュートリアルがあるので、実際に動かしながらやってみるのが1番です。
ゲーム的な観点で見ると、デザインの雛形はボードゲーム『ドミニオン』がベース。リソースを管理しながらビルドを構築し、勝ち点を得る流れはまったく一緒です。ビルドを作っていくという観点においては、『ドミニオン』を知らずとも『Slay the Spire』などの近年のローグライクゲームを遊んでいる人には馴染みやすいかもしれません。
VRChatとデジタル両方のアプローチから考えられているゲームデザイン
ゲーム内容から分かる通り、フレーバー部分はVRChatに落とし込んでいます。ですが、『JoinWars』のすごさは、フレーバー部分以外にあるゲームデザインまでVRChatに落とし込んでいることです。
ゲームの目的である「改変をしてJoin戦争に勝つ」は、VRChatユーザーならば刺さる人はいるでしょう。そして、改変に没頭してJoinしないとゲームに勝てないジレンマは、ゲームとVRChat両方に言える面白さもあります。
そして、「改変」という概念もデジタルならではです。アバターというデータを改変するのはもちろん、カードを改変するのもデジタルだからできることです。
アナログのボードゲームにおいてもカードに効果を付与させるのはできなくはないですが、処理が難しくなってしまいます。
カード効果に関しても、デジタルとVRChatを両方を活かしたアプローチをしています。
たとえば「残業」といったカード。VRChatユーザーからすれば、「残業していてVRChatに入れない!」と思うでしょう。カードの効果を見てみると、お金は多くもらえるけども「虚無」が増えてしまうデメリットが付いてくるといった内容です。
残業することでお金はもらえる一方で、疲労感といったマイナス感情や仕事が忙しすぎてVRChatや改変ができないといったものを外れカードである「虚無」の追加で表現されています。
「虚無」が増えてしまうとデッキの中にあるカードが外ればかりになるため、ゲーム的にも不利になってしまいます。結果として、残業ばかりしていると改変もJoinもできないわけです。
……これ『VRChat』と『Join Wars』どっちの話しています?
他にもワールドにJoinすることで得られるボーナスもデジタルならではの強み。毎ターンごとに獲得できるかの抽選をアナログでやるとなると手間が増えてゲームの進行が遅くなります。また、ワールドに入っている人数ごとにボーナスが獲得できる確率が下がる仕様も、デジタルで常に確率できるからこその仕様です。
VRChatのボードゲームワールドの体験に特化させた作り込み
そしてゲーム内容以外にも体験に関してもVRChat向けにチューニングされています。
まずはデジタルなので、効果処理が本当に楽です。カードによって状態が付与されても、ゲーム側で処理や効果をまとめてくれます。また、選択が必要なときは何の効果で行っているかも教えてくれます。
ゲーム内では、スティックでの移動をほとんどせずにゲーム側が効果を処理するために必要な場所へワープしてくれます。地味にありがたいポイントで、いちいちどこに動くかを考えずに済むのでゲームのテンポを上げるのに役立っています。
ワールド内に動画プレイヤーが置かれています。VRChatのワールドとしては珍しいことではありませんが、ゲーム内では効果音はありますがBGMはないため「何を」流してもいいようにユーザーに委ねる選択肢を与えています。また、ゲームに参加しない人でも動画を見てダラダラ過ごせる選択肢があるのも嬉しいポイント。
ゲームの進行に関してはターン制であるものの、プレイヤーが同時で行っているため待ち時間でイライラすることも少ないです。また、ユーザーごとに移動エリアが制限されていることもないので、操作を教えることもできるので、慣れていない人が混ざってもフォローしやすいのも成熟度がバラバラであるVRChatユーザーにフレンドリーな作りです。
制作者によると、カードの効果も妨害系を意図的に排除しています。
プレイヤーとしてはいかにして最強のビルドを作るかに専念できるため、ギスギスしすぎないので好感が持てます。結果として1人でもスコアアタック感覚でやり込めるため、遊びの幅が広がっているのではないでしょうか。
ゲームワールドにおいて1人でも遊べる選択肢があるのは、必ずしも誘えるフレンドがいないVRChatにとって遊ぶハードルが下がるので嬉しいですね。ゲームワールドがあっても、ゲームを一緒に遊んでくれるフレンドは付属するわけではないですから。仮に1人で遊んでいるとしても、フレンドがソーシャルから遊んでいるのを確認して来るかもしれません。
『Join Wars』に構成されているあらゆる要素が『VRChat』とは何かを理解していないとできない作りです。カルチャーからワールド作りまで、これまでの『VRChat』が結集したとも言えます。
『Join Wars』は基本無料で、カードや改変効果が追加される有料パックがvazarにて販売中です。無料でもやりごたえありますが、さらにやり込みたいと思えたら買ってみてはいかがでしょうか。