CLUSTARSというコミュニティをご存知でしょうか。
CLUSTARSは「失敗上等」を掲げるコミュニティで、参加者が失敗を恐れずに挑戦できる環境を提供することを目的としています。参加者同士が支え合い、コミュニティ内での失敗を温かく受け入れる文化が醸成されています。CLUSTARSは主に「cluster」で活動しており、多様なイベントを開催しています。
VTuberとしても活動する由宇霧(ゆうぎり)さんと、Discord管理人のうしくんが発起人です。CLUSTARSは、初期のイベント「FRESHSTAGE」から発展し、現在では多くのメンバーが集まり、活発なイベントが定期的に行われています。
本記事では、VTuberとして活動しつつ「CLUSTARS」というコミュニティを設立した由宇霧さんにインタビューを行いました。その内容をお届けします。
イベントをきっかけにコミュニティ作りを決意した
―─いつごろからCLUSTARSのようなコミュニティを考えていたのでしょうか?
CLUSTARSのような形を考え始めたのは2023年の2月くらいの発足の直前くらいです。その前からコミュニティ作りや居場所作りに関心を持っていました。
その目的で作っていたのが「特化Vの会」という、何かしらの活動とテーマジャンルに特化したVTuberたちのコミュニティです。
こちらは今でも活動しているのですが、当初はX(旧Twitter)のスペースで活動していました。その人たちの新しい出口として何か使えるツールがないかなというときに、clusterやVRChatに出会いました。
特化した知識やジャンルの配信は、もちろん最近は状況が変わりつつありますが、同時接続者数が10人以下になる世界です。ただ、ソーシャルVRであれば、目の前に10人いるインパクトは大きいので、その方々に向けて話すことで、配信以上の体験を提供できます。その人たちと良い居場所を作りたいと考えたことがきっかけです。
──YouTubeとソーシャルVRの大きな違い、ソーシャルVRで居場所を作ろうと考えたきっかけはなんでしょうか。
ソーシャルVRの世界で出会った映像カメラマンのkomatsuさんとVsingerの撮影をするというイベントを行った際、これまでにない感動を体験したのが大きいです。
バーチャルアイドルとして活動する、桜兎フルガさんという方がいて、その人はイベントでもかなり動くタイプで、カメラマン泣かせな部分もあります。そんな桜兎フルガさんをkomatsuさんが追い切ったという、今までに体験したことのない感動に包まれました。
会場全体を巻き込んで沢山移動するアーティストさんの撮影を最後まで追い切ったという撮影の技術に対する感動はもちろんですが、特にパーソナリティをよく知っているkomatsuさんがカメラで追い切ったことに感動を覚えました。
タレントだからすごいとかではなくて、自分が見続けたその人の変化に感動するんだなというのを身をもって実感した出来事でした。例えるなら、自分の子供が運動会で頑張ったときの感動に近いですよね。
この経験を得た時期が2023年3月のCLUSTARSを立ち上げようとしたタイミングとほとんど同じで、タレントとか関係なく、誰かにとってのコミュニティ、居場所を作ることが必要だなと確信した瞬間でした。
「自分ごと」になると、みんな動き出す
──主要人物の1人でもある税理士Vtuberうしくんとの出会いはどうでしたか?
うしくんとの出会いは、出会いそのもの以上に出会ったタイミングが大きかったですね。自分が前に出てYouTubeで100万再生される動画を作っても世界は変わらないだろうと感じてしまったことがあります。個人で届けられる範囲に限りがありますし、YouTubeなどではアルゴリズムによって届ける幅に制限が出てきてしまいます。
私の場合は性教育を取り扱っているので、性教育やセクシーな話題に興味を持っている人にしか届かないですよね。もちろん逆に言えば、強く興味がある人には届くとも言えますけれどね。
これではすべての人を救えないし、何も変わらないわけです。そのような状況が続くのであれば楽しくないと思い、自分が前に出ていき、自分が売れることに興味がなくなってしまいました。
自分がどうにかするよりも、他の人にとって「自分ごと」になるようにしていきたい、私のイベントではなく、一緒に作ってくれた人のものにしていきたいと考えるようになりました。
みんな、「自分ごと」になってくれるとちゃんと告知とかしてくれるようになるんですよね。結果、自分のアルゴリズム以外の人にも知ってもらうことができるようになるし、素敵だなと思いました。
しさんは、自分の価値観の変化先とちょうど合致したんですよね。多分見てきたものが一緒なんじゃないかなと思うぐらいのスピードで意気投合しました。
──ソーシャルVRでの共同作業で気を付けていることを教えてください。
2つあります。
1つは、いろんな人とやる時こそ、なるべく最初はお金を使わないようにしています。お金を使わない分、お願いしたことに対して修正は基本言わないようにしています。開催の日付を間違うような致命的なケースは別です。
クオリティを保証したいわけではなくて、その人のできること、話し方、作業のテンポをソーシャルVRでのイベントを通じて知りたいのでそのようにしています。
相手の価値観や相手が良いと思っているものを否定しないことが根本です。その結果多様性が生まれて、私1人では想像もつかなかったことが生まれたり、相互作用が生まれると思っています。
もう1つは相手にとって嫌なことを断れる空気を努力して作っています。特に関係が浅いうちは気に掛けています。「由宇霧さんの依頼を断ったら次がないんじゃないか」みたいな心配を持つ人もいます。私は、その関係性じゃ今後続かないことが分かっているので、そこで無理して欲しくないんですよね。「今忙しかったら本当に今回はやらなくて大丈夫だよ。絶対次頼むからね」って、最初のうちは意識して言うようにしています。
──CLUSTARSをやっていく中で、達成感を感じた瞬間を教えてください。
CLUSTARSにはイベントカレンダーというものがあるのですが、カレンダーに全部イベントが埋まったときや1日に2個3個イベントが実施されているときに達成感を感じました。
CLUSTARSを立ち上げる直前の2023年の1月頃からclusterのイベントが増えてきて、認知されるには、毎日やらないといけない状態になりつつありました。
1人が頑張るんじゃなくて1つの冠を掲げてみんなでやれば、その人が週に1回しかイベントを行っていなくても、「あのチームは毎日イベントをやっている」と見てもらえると考え、現在の形式でCLUSTARSを始めました。
壮大なイベントや質の高いイベントをすることよりも、毎日目に触れてもらうのが大事だと感じたので、まずは5分登壇して、後半に何かコーナーがあるという形式で「FRESHSTAGE」を最初に始めました。
なので毎日イベントが埋まるまで来たのだなと思った瞬間、「これが求めていたものだ」と感じることができました。
まずは「手伝うこと」から
──ソーシャルVRで何かやりたい、主催したいなと思ったとき、何から始めたらいいか、何かアドバイスがあればお願いします。
まずは人を手伝うことですね。リアルの世界でいきなり「イベントやりましょう」と言ったら、劇場代を払ったり、お金や移動時間を使ってリスクを負わなければいけないので、なかなか挑戦できない方もいるかと思います。
ソーシャルVRだったらお金はかからないので、失敗してもリスクが低いので、まずは誰かのイベントを手伝う事から気軽に始めてみるのがおススメです。最初から自分で主催しようとしても何から手をつけたら良いかわからないので、すでにあるフォーマットを知ってそこから自分流にアレンジしていくと友達もできて健やかに成長することができると思います。
──チーム運営のコツなどあれば教えてください。
気合を入れてチームを作ったはいいけれど、相性が悪くて空中分解した場合、正直その後大変なんですよね。相性が合わなかった人と別れるというのも辛いし、別れた後もなんとなく気まずくて、行きづらくなってしまうということがあると思っています。
私はそういうことが起きないためにどうしたらいいんだろうと考えて、あらゆる企画に対してのスタッフを期間限定にするというやり方をソーシャルVRの世界に来てからずっと続けています。どんなに仲が悪くても期間限定であれば、期限がありますし、終わったときの達成感があるので、そのようにしています。
──今やっていて感じること、共につくりあげることで魅力を感じることを教えてください。
全てがちゃんと積み上がっていくことに感動しています。私が1人でお金を稼ぐとか数字を稼ぐということをやっていた場合、お金を使い切ってしまったときや、20万登録のチャンネルがBANされたときには何も残らないんです。
誰かと一緒に作っている限りは、その人と一緒に作ってきたもの、作ってきた思い出がまず残ります。もしもそのチャンネルとかイベントとか、その関係性がどこかで壊れてしまったとしても、その壊れる時までその人と一緒にやってたんだっていう思い出がちゃんと積み重なっていきます。
どれだけ自分が頑張っていたとしてもその頑張りを自分1人しか知らないのって結構苦しいと過去の経験で感じています。
大勢の人の前、たとえばYouTube配信をしても、「なんか大変そうな演技してるんでしょ」とか、「金のためでしょ」って思われてしまったりとか、全然意図と違う取られ方をしてしまうんじゃないかなって私は思っています。
今やっているような小さなコミュニティの中で共に作るということをしていると、自分の頑張りを過程からしっかり見てくれる人がいます。自分のことを分かってくれてるなっていう実感がすごくあります。
だから一緒にやっているプロジェクトの中で私がミスしたら、「由宇霧さんがこのミス?こんなにやっているあの由宇霧さんが?」って今はなります。
でもそれってVTuberの由宇霧だけを知っているわけじゃなくて、普段の私の行いをちゃんと見ている人たちだから、「由宇霧さんがこうなるってことは、よっぽどなことなんだな」ってちゃんと理解してくれると思っています。数字や、表面上だけじゃないことが何よりも心強いなという実感が自分自身持てるようになりました。
失敗しても笑いあい、思い出として共有できる仲間がいて、今自分でちゃんと満足できるところに来ることができたので、私はこのやり方をしてよかったと思っています。