8月3日に東京立川で行われたカデシュフェス2024に行ってきました!
端的に言って、最高でした! カデシュファンの1人として、心から楽しめました。
VR映画スタジオ『カデシュ・プロジェクト』が初のリアルイベントを開催。VR発コンテンツがリアルイベントに展開する例が増える中で、単独のイベント団体が会場を借りて大規模なイベントを実施するのは、なかなかないのではないでしょうか。
この記事は主にカデシュファンに向けて書かれていますが、まだカデシュを知らない方々にも、私がなぜ「ホテル・カデシュ」に魅了され続けるのか、その魅力がどこにあるのかを、イベントの感想と合わせてお伝えできればと思います。
目次
なぜカデシュ・プロジェクトに惹かれるのか
会場の様子をご紹介する前に、私がカデシュ・プロジェクトに惹かれる理由、その魅力について語らせてください。
カデシュ・プロジェクトの強みは、「オタク的探求心と制約を超える同人」と言えるでしょう。商業作品のようなクオリティの高いブランディングやコンテンツ展開でありながら、同人ならではのこだわりが詰まっていると感じます。
他のコンテンツに触れてきたオタクだからこそ、「これは外せない」というポイントを作品作りで絶対に押さえたいという強い思いが生まれます。好きな作品を解釈したり、別の作品で気になった点を自分ならどうするか考えたりすることは、オタク的な探求心の表れと言えるでしょう。
カデシュ・プロジェクトは、スタッフ一人ひとりが、自分の中に蓄積された「面白い」や「好き」という感情を熟成させ、エゴをぶつけ合った結果生まれたものだと私は考えています。商業作品では難しいことも、同人なら柔軟に対応できるのが強みです。
企業案件であるBEAMSのワールド制作においても、エゴを企業相手にも上手く折り合いを付けられるあたり、エゴの乗りこなし方が上手すぎる気もします。クリエイターが自由にやるだけではいけないというバランス感覚も大切ですが、それを持ち合わせている人は意外と少ないように思います。
作りたいものと受け入れられるもの、企業が求められているものをどうやって釣り合わせるのかは、インタビューあたりで一端が分かると思うので、読んでみるといいかもしれません。
このオタク的探求心は映像作品にも反映されていますが、カデシュ・プロジェクトが他と一線を画すのは、むしろ映像作品「以外」の部分にあります。
映像作品では、フォロワー的な作品が登場し注目を集めることもありますが、世界観やブランディングにおいては、カデシュ・プロジェクトが依然としてリードしていると感じます。これは、彼らが探求し、その結果をどのように展開するか、何を世界観として守り、どのように見せるのかを緻密に練り上げているからです。
最近の例では、ストリーマーの配信で話題になったことを受け、主要キャラクターの紹介ポストをまとめています。注目されたタイミングで情報を整理し発信することは、広報として重要なポイントです。
カデシュの強みは、このポストに含まれる文章と画像に見事に表れています。統一されたデザインの画像に加え、「どの場面で配信に登場したのか」という具体的な説明、演者や使用アバター、映像作品の内容を簡潔にまとめています。
特筆すべきは、「使用しているアバター」まで紹介している点です。これは、VRChatに詳しくない人が見たときに、使用アバターと演者を強く結びつけるのを防ぐためです。実在する俳優でも、特定の作品のイメージで語られることがあるのと同じです。
この「イメージで覚えてもらう」という戦略は、「どの場面で配信に登場したのか」という説明にも反映されています。初めてコンテンツに触れる人は「印象」が先行するだろうという読みを基に、カデシュを最近知った人に向けて言葉や内容を工夫しているように思えます。
解説すると些細なことに思えるかもしれませんが、「どう見せるか」を大切にする姿勢は、このような細部の積み重ねによって実現されます。このバランス感覚は、作品はもちろん、世界観を構築する上で非常に重要です。なにしろ、ロールプレイが軸となる団体です。演じるために憂いなく世界観に浸れるのはとても大事。
作り手がオタクであることが強く感じられるカデシュ・プロジェクトだからこそ、リアルイベントの開催には、ファンとして大きな期待を抱いていました。演出に強いこだわりを持つカデシュがリアルイベントを開催するからには、「これなら出せる!」と思わせる確信があったはずです。
会場内の様子
会場となったのは、東京立川にあるコトブキヤホール。キャパシティが200人程度の会場で、公式の発表によると来場者は318人とのことです。実際に参加した身としては、「これ以上人が増えたら入場規制がかかるのでは」と思うほどの盛況ぶりでした。
会場内には、今回のイベントのために特別に描き下ろされたイラストなどがパネル展示されていました。もちろん、VRChat上でも3Dモデルとして制作できますが、やはり実物として目の前にあるパネルには感動を覚えます。
中でも、ロールプレイキャラクターが一堂に会したパネルは圧巻でした。キャラクター一人ひとりの設定や想いがひしひしと伝わってきて、その存在感に圧倒されました。
プロジェクターには、これまでの作品に加え、今回のイベントのために特別に収録された映像が上映されていました。新録映像では、カデシュのキャラクターたちが2人組で掛け合いを披露。過去の作品の中には、現在YouTubeチャンネルでは非公開となっており、なかなか見ることができない貴重な初期の作品も含まれていました。もしかしたら、すべての映像を見たことがある人は少ないかも……?
ファンとして特に興味深かったのは、複数枚にわたって展示されていた解説パネルです。カデシュ・プロジェクトの誕生秘話から、作品の裏側、そして今後の展開まで、情報が盛りだくさんで、じっくりと読み込んでしまいました。
設定資料なども一部公開されており、ファンにとっては嬉しいサプライズでした。まさかキャラクターシートを見られる日が来るとは……!
ファンとしては読み応え満載の内容でしたが、イベントのパネルだけで留めておくのはかなり惜しい……
いつか、関係者の証言をまとめた書籍として形に残してほしいというのが、いちファンとしての切なる願いです。カデシュ・プロジェクトはいつか終わりを迎えるという考え方が根底にありますが、遠い未来に、かつてカデシュ・プロジェクトが存在した痕跡を残すためにも、ぜひ実現してほしいものです。
現実から仮想へ…… さらに現実へ
こだわって作り上げられたカデシュ・プロジェクトのリアルイベント。特に印象的だったのは、公式コスプレイヤーの存在!
アニメやゲームのリアルイベントでは、公式コスプレイヤーの登場はもはや定番となっていますが、それでもやはりテンションが上がります。「グランブルーファンタジー」の公式コスプレイヤーは、予算規模が異なるため単純な比較はできませんが、クオリティや動きの作り込みがとんでもないですよ。
また、ディズニーランドのようなテーマパークにおいても、キャラクターが現実世界に現れることは、欠かせない要素と言えるでしょう。
今回のイベントには、なんと5人もの公式コスプレイヤーが登場しました! 衣装はもちろん、キャラクターの振る舞いまで再現されており、まさに圧巻でした。今回は、その中でも特に印象に残った2人について詳しく紹介したいと思います。
まずは「NINE-prequel of emeth-(以下、NINE)」に登場する「探偵」でしょう。本物がそのまま来てしまいましたね。なんてこった。
そもそもDJ⑨さんは、サイバーパンク作品の影響を受けて現在のスタイルを確立し、VRChatでも仮想と現実をシームレスに繋げるためにリアルアバターを使用しています。つまり、もともと仮想と現実の境界線を曖昧にし、その連続性を楽しむことを追求している人なのです。
そんなDJ⑨さんが、中田らりるれろさんの手によってカデシュの世界観とガッチャンコさせたのが「NINE」です。詳細はぜひDJ⑨さんのnoteをご覧ください。かなり「探偵」の解像度を上げるのにオススメです。
DJ⑨さんの「現実と仮想」の境界の曖昧さは既にある面白さですが、今回すごかったのは「現実と仮想」の境界も壊してきたことでしょう。先程会場内にプロジェクターで映像が流れていると紹介したのですが、実はNINE探偵事務所が間近にあったんですよね。
つまり、何が起こったかというと……予告映像を見て「俺、出てる!」と話す「探偵」の姿があったのです。自分が映っている映像を見て喜ぶキャラクターなんて、そうそういませんよね!
カデシュの世界観に限らず、VRChatはワールドやイベントなどそれぞれが独立しているような関係です。その独立性がVRChatの幅広さであり、多様性、面白さとも言えます。ですが、同時に独立しても成立してしまうがゆえに閉じている側面もあります。また、VRとリアルで二項対立として並べられるのもあるでしょう。
このDJ⑨こと「探偵」は、どこにでも出向けるほどの自由さを持っています。その自由さは、孤独だから成立するものであり、自分の心情次第で相手が誰でも身勝手に手を差し伸べます。
必要なのは、その身のみ。望むのであれば、仮想のVRChat、エメス、現実の立川まで出向きます。なんなら身体すらも必須でもなく、依頼募集のチラシさえあればもうすでに「その場所に」出向いたとも言えます。ポピー横丁ですらも、もはや通りすがっていますからね!
「本物」は2人いたッ!! キャラクターに会える醍醐味
「探偵」が本物なのは分かるでしょう。ですが「本物」は2人いたッ!!
そう、二階堂ダニエルも「本物」だったのです。つまり喋ります。ご本人でした。会場内に”ご本人”が「二階堂ダニエル」のコスプレをして、喋りながら応対をしていました。そう、推しが喋りました。
関係者いわく、本物が登場するのは先述したDJ⑨さんのみだとミスリードするように狙っていたそうです。常々思いますが、濃いオタクが作品を仕掛ける側になるとオタクとのプロレスをうまい具合に仕掛けてくる気がします。期待に応えて予想を裏切るし、好きだからこそ気になるモヤモヤを事前に潰してくる手腕を見せてきます。
完全に個人的な話になるのですが、開場早々に物販でダニエルのグッズを買った後に、ちょうど彼が通りかかっていたんですよ。「買いましたよ!」と全力のサムズアップをしていたのですが、まさか本人を目の前にしているとは……まだそのときは喋っていなかったので、本人とはまったく思っていないで接していました。
立ち振舞も最高でしたし、チェキ撮影しているときにも掛け合いが「いつもの」のやり取りなんですよ。ダニエルと奈々代のワチャワチャを目前で見られるのはたまらないです。
てっきりダニエルを演じている狩間レイさんがコスプレを楽しんでいる人かと思っていましたが、未経験だったのが驚きでした。演じるに至った経緯については、ぜひ本人のポストをご覧ください。
「探偵」以外のコスプレには、ファンメイドでリアルグッズを作ってきたcatrentさんが関わっているとのこと。すごく納得なアサインだと感じます。
もともと自分はカデシュ・プロジェクトとの出会いはバーチャルマーケットの特別展がきっかけで知り、その後映像作品、ロールプレイイベントと触れていきました。
ロールプレイイベントに初参加したとき、検問として現れたダニエルのことが本当に衝撃的でした。これまで、映像の向こう側にいた存在が今こうして目の前で会えていることに。
映像の向こう側にいる存在に会えるのは、ディズニーランドのようなテーマパークでもありますが、自分も同じ世界観に参加して、同列の存在として接することができるのは、これまでにはありませんでした。
かつて作品越しで出会い、ロールプレイイベントで同じ世界観で出会うことができた。今回はさらに、次元の壁も越えて出会えました。はじめて好きなキャラクターに出会えた喜びを、何度も感じるとは思いませんでした。表現する媒体ごとに優劣があるわけではないのです。また、「出会い」で喜びを感じられたことが何よりも嬉しいし、たまらなかったのです。
なので、昼食は公式マップにダニエルおすすめのダイナーとして紹介されていた店舗に行ってきました。ここまで実在感を感じたのであれば、食などの体験を通じて解像度を上げるしかない!
ということで、昼食で頂いたのは「OLD NEW DINER」のベーコンチーズバーガー。これが王者のハンバーガーなんだね。
普段食べるハンバーガーと違ってバンズから存在感が違いました。バンズの噛みごたえに驚き、パティ、ベーコンの肉類の食べごたえを堪能し、チーズとソースの濃さに口の満たされました。
ダニエル……お前の食っていたハンバーガーはこれだったのか……
スペシャルステージで裏話と新情報が大解禁
イベント後半にはスペシャルステージも開催。参加型クイズとトークショーからミニライブ、新作情報など盛りだくさんでした。
ゲストとして、「探偵」役のDJ⑨さん、中田らりるれろさん、二階堂ダニエル役の狩間レイさんが参加。3周年記念イベントでもゲストとして参加していた面々が、リアルでも同じように行われているのも面白い話です。
参加型クイズでは、ホテル・カデシュに関する4択クイズが実施。クイズの合間には裏話も語られ、ファンとしては大満足の内容です。ちなみに、問題の一部にはメタカル最前線で過去に執筆した特集記事での発言もあったりします。
ミニライブでは、SATIUSさんによるカデシュ作品の関連曲が披露。中には公開直前の「ヴードゥー・キングダム 香港ゾンビ紀行」のエンディングソングも含まれているサプライズも。
新作・新企画情報では、しんおじ監督の新作が発表。ポスターに映っているキャラクターが主役とのことですが、一体どうなることやら。
「NINE2」の会場限定映像も上映されました。これまでに出ていたトレーラー2本を合体させたイメージです。
会場で見たときに「メカクレ成分多くない……?」で自分の脳内は占めていました。本当はベクター1らの再登場がサプライズのはずなのに!?
もともとマスクを頭に被っているキャラクターが大半を占めている作品ではありますが、のこったキャラクターもメカクレであることもあり……「NINE2」で目元が見られるシーンはやってくるのでしょうか。
また、監督の中田らりるれろさんから「NINE2」の尺が「NINE」以上になることも触れられました。前作が30分弱だったことを踏まえると、一体どうなることやら……
最後に上映されたのは、「ヴードゥー・キングダム 香港ゾンビ紀行」の冒頭10分の映像でした。基本的に撮影OKのイベントでしたが、この映像だけは明確に撮影が禁止されていました。そのため、内容を知っているのは会場にいた人だけです。
一つだけ言えるのは、冒頭10分だけでも、まるで一本の作品が完成しているかのようなクオリティで、ここから本編が始まると考えると、一体どうなるのか楽しみで仕方ありません。
ライブ感や思い出を残せるのは、「今」追い続ける人の特権!
そんなわけでカデシュフェス2024のレポートでした。VR発のコンテンツや団体がリアルイベントを開催することに、「みんな結局リアルに回帰していくのか?」みたいになる側面があると思います。
しかし、好きな人が集まっている実感や、キャラクターの「出会い」を繰り返し楽しめる感覚は、リアルイベントならではの醍醐味です。カデシュのファンである自分にとって、このリアルイベントは本当に嬉しいものでした。
次に待っているであろう展開は「ヴードゥー・キングダム 香港ゾンビ紀行」の映像作品とゲームワールドの公開。考えてみれば、自分がカデシュを知ったときに「ヴードゥー・キングダム 香港ゾンビ紀行」を制作していると話していたので、実に2年ぐらい制作に費やされていることになります。
どこまで作り続けるのか、作品自体は後から追えるかもしれませんがライブ感や思い出作りは現行で追い続ける人の特権です。これからもカデシュ・プロジェクトを追うしかない!