【ド夏祭2024】元バンドマンがVRChatで10年ぶりに一夜限りのステージに立つまでの5ヶ月間

8月31日、VRChatにて「超弩級仮想音楽夏祭2024」(以下、ド夏祭)という音楽イベントが開催されました。アイドルドラフトライブ、2D&3DVSingerによるリレーライブ、一夜限りのバンドライブという3種類のライブを3会場をサーキット形式で結ぶライブイベント。

そこに、筆者もバンドとして参加してきました。

実はVRChatを始める前からバンド活動はやっていたのですが、長らくブランクがあり10年ぶりという状態。VRChatで音楽をやってる人がこれだけいるなら自分でもバンドがやりたい!という思いを抱え続けていたところに「一夜限りのバンドライブ」の企画が目に入ったのです。

この記事では、エントリー開始から本番までの5ヶ月にわたる様子をお届けします。

「ド夏祭」とは?

正式名称は「超弩級仮想音楽夏祭2024」(8月31日開催)。
アイドルドラフトライブ「LiveHouse Mii Mii」、一夜限りのバンドライブ「V-Kitazawa AWAKE」、2D×3D VSingerライブ「LIVE CLUB AMPLIFIER」の3会場で同時開催された超ド級のバーチャルサーキットフェス!

自身もアイドルユニット「Coconuts Miilk」やバンド「LAUTRIV」で活動するゆめ心中さんを中心として企画されました。

公式YouTubeチャンネルにて、アーカイブ動画もあがっているので要チェック!

バンドエントリー開始

3月25日にエントリーが開始されました。

VRChatを始めて当時半年強、私はとにかくバンドがやりたいと飢え続けていたのです。そしてギターボーカルで。

早々にフォームを記入してエントリー。エントリー者プロフィールを見ると以前より交流のあったギタリストのKooTAさんがいました。プロフィールを確認すると、あるミュージシャンの名前を確認。私は即時にダイレクトメッセージをお送りしたのです。それがボーカロイド楽曲や、様々なアニメ・ゲーム関係の楽曲で編曲・ギターを担当している「光収容」さん。ダイレクトメッセージからすぐに「光収容さんのコピーバンドやりましょう」と話が盛り上がりました。

ド夏祭公式Discordに「光収容さんのコピーをやろうと思っています!鏡音リン曲かGirls Dead Monster(以下、ガルデモ)の曲がやりたいです!」と書いてみると、芹井さんからリアクションが。「えっあの楽器めっちゃモデリングして売ってる方でしょ……いいんですか……?」と怖気づいたのですが、KooTAさんが「声かけてみましょう」と積極策を取ったところ、ドラムで快諾いただけることに。

別日にバンドKAGARIHIyuzpi-さんからVRChat上で「ウチのベースのらどりんがガルデモ興味あるよ」と声掛けがありました。らどりんさんとも元々親交があり声をかけたところOKが貰え、スムースにバンド結成。バンド名は、ガルデモにちなんで「Boys Dead Human」に決定しました。ここまでわずか5日程度でした。

そしてなんと4月3日で上限の10バンドになりエントリーが締め切り。非常に皆さん動きが早く、私も早めに動いたことと、ありがたいことに同好の士がすぐに見つかった運の良さがなければこのレポートもなかったことでしょう。

バンド結成交流会

4月7日にバンドエントリーした人の交流会があり参加。すでにバンドエントリーが終了していましたが、バンドを組まれていない方も複数名参加されていました。

主催のゆめ心中さんが「このイベントで今までなかった交流をたくさん作ってほしい」と述べていたのですが、交流を増やすのに積極的な方が多かったためこのイベントの大きな目的の一つは既にこの時点でも達成できていたわけです。

最初の交流会では各自の自己紹介と、結成済みメンバーでのSYNCROOM(オンライン合奏ソフト)の遅延状況の確認がメインになっていました。

4月20日にも交流会がありこちらにも参加しました。実際の会場となるV-Kitazawa AWAKEでの下見を兼ねた開催で、この時はざっくりとその場にいた人で即興演奏が繰り広げられていました。

コピー楽曲の選択

「光収容さんのボーカロイドオリジナル楽曲」と「ガルデモの曲」をどれくらいのバランスで入れるのか、が今回の選曲の鍵になっていました。ガルデモがバンドの原体験だった、というメンバーが多かったこともあり、ガルデモ曲中心で行くことに。ガルデモから「Crow Song」「Alchemy」の2曲が代表的な楽曲ということでまず決定。ボーカロイドオリジナル曲から光収容さんの代表曲「孤独の果て」を選び、ここまでの曲がどれもハイテンポなため、遅めの曲が一つ欲しいという理由でガルデモから「Little Braver」が最後に選曲されました。

しかしこのあとちょっとした危機が訪れます。権利関係がクリーンな状態で実施したいので、JASRAC、NexToneにて、「演奏会」の区分が許可されている楽曲からの選曲をお願いしたいとの通達がありました。今回の曲はこれらに該当せず、「JASRAC非管理だが、非営利であればライブ利用は可能」と読める独自のガイドラインになっていたのです。運営への確認を行ったのですが、判断が下されるまでは本当に気が気でなかったです……。

結果的には承諾が下りたのでひと安心。個別練習を進めることになりました。

いざ全体練習

全体練習を8月10日、8月18日、8月25日の3回行うことに。この時点では自分の練習があまりうまく行っていないのもありかなり不安を抱えたまま最初の全体練習に突入しました。ところがその不安は吹っ飛びました。初回の練習時点でバンドとしての出来がそこそこ良かったのです。

「インターネット恥晒しになったらどうしよう……」と私はこの時点で怯えていましたが、メンバー全員から「その心配はないです」とバッサリ。なんとかなるの精神でここからはやっていくことになります。

全体的な音量調整、バランス調整などはKAGARIHIでも担当されているらどりんさんに指揮を取ってもらい詰めていきました。OBS(会場へ音を流すために使った配信ソフト)での出力前に様々なエフェクトを掛けて、可能な限り良い音で届けられるように腐心していました。このあたりの調整は直前まで続き、全体練習が終わってから本番直前、8月29日に行ったリハーサルまで重ねていました。

音楽を演っている人には今更な学びですが、ボーカルにも少し調整を加えるだけで見違えるほど声が通るのに驚きました。バンドをやっていたころはライブハウスのスタッフに任せきりでしたので、自分たちで調整をやっていくとこれだけ学びがあるのだなと改めて思ったのです。

一方、ここでセットリストを削る必要が出てしまいました。MCやメンバー紹介などの時間を加えると、4曲で持ち時間の20分を超えかねないことに。どの曲を削るか議論の結果、 チューニングを変える手間がある「Crow Song」を削ることになりました。

本番!

さて8月31日の本番を迎えました。

芹井さんとKooTAさんは私のバンド「Boys Dead Human」の前に出演があり、そちらの出番が終わり次第集合。演るぞー!と気合も十分に私はバックステージへ。直前チェックも済ませいざ本番。

1曲目の「Alchemy」でイントロの特殊奏法を決めて……決めすぎました。今回演奏に集中するためにデスクトップモードで入ったのですが、VRモードを意識したかのような無駄な動きをしてしまい盛大にコケかける始末に。なんとか立て直して歌とギターに集中していったのですが内心「なんかリズムずれてないか!?」と焦っていました。

2曲目の「Little Braver」はゆっくり目の曲ですがどうしても本番は演奏が速くなりがち。私以外のメンバーがうまくコントロールしてくれたと思っています。

3曲目の「孤独の果て」ではトラブルが。なんとドラムの芹井さんだけベースの音が聞こえなくなってしまっていたのです。かなりリズムが怪しいことになりましたがこちらから合わせていくことでなんとかケア。今回の3曲では最も歌いながら弾くのが難しい曲だったので、かなり焦りました。

おわりに

「なんとかやりきった……」という達成感はそれは大きいものでした。実に10年以上のブランクの空いていた「バンドで音楽をやって披露する」ことが巨大イベントでできたのです。もちろん完璧にやり切れれば何よりよかったですが、それでも大きな、大きな「夏の思い出」になりました。