12月17日、東京都・秋葉原にてVRChat Inc.による”公式”のオフラインビジネスイベント「VRChat Japan Business Experience 2025(以下、JBE2025)」(主催:VRChat Inc.、企画・運営:株式会社V、GMOペパボ株式会社)が開催されました。そこで開かれたステージイベントで、ホビー関連の出版や販売を行う株式会社ホビージャパンとIPを活用した VRChat向けアバターの衣装を制作する株式会社ARROVA、その2社のパートナーとして組んだ株式会社Vが、「『IP×VRChat』の主戦場はどこへ向かう?」と題した講演を行いました。
この記事では、登壇した株式会社ホビージャパンの営業部 時津弘さん、株式会社ARROVA代表取締役社長 河合佑介さん、株式会社V 代表取締役 藤原光汰さんの3名によるVRChatにまつわるIPについて語ったセッションのレポートをお伝えします。
「IP×VRChat」異なる路線で戦う2社
株式会社ホビージャパンは、言わずと知れたホビー雑誌「月刊ホビージャパン」を1969年から出版する企業で、今ではさまざまなメディア展開を行っています。VRChatでは2023年からVRChat公式とパートナーシップを結んで、VRのホビー博物館「ホビースフィア」を始めとしたワールドの公開などを行ってきました。そこからVRとホビーの相性の良さを感じ、これまでの技術や経験、人脈を結集させた、ホビー特化イベント「バーチャルホビーフェス」を株式会社Vとタッグを組んで来年3月に開催予定です。これまでの積み上げがあったからこそ、開催に踏み切ったことが伺えます。

VRChatでビジネスを行うに際して感じていることとして、VRChatユーザーとホビーの相性の良さと、若いユーザーが多いことを挙げていました。ホビージャパンはリアルでのイベント開催や出展なども行っていますが、参加者層は40~50代のユーザーが多く、対してVRChatでは10~20代の方が多いと話します。若いオタクが集まる場所こそVRChatなのだと語ります。

株式会社ARROVAは、デジタルファッションを通じてVRChatでIPを呼びこむことをビジネスとして行っています。2023年8月に設立した会社で、同社が公開するワールド「TOKYO AVATAR GATE」にて、制作した衣装の展示を行うなどしています。
これまでに公開したアイテムでは、『モブサイコ100』、『鋼の錬金術師』、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』、『無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~』などがあります。

河合さんは、「IP×VRChat」のポイントについて3つ語りました。まず1つ目は、「IP・キャラクターの選定」について、”着たい”キャラなのか、”応援したい”キャラなのかで大きく異なってくると話しました。河合さんも好きな『鋼の錬金術師』を例として、作品の主人公であるエドワード・エルリックが使う”錬金術”の真似を小学生の頃に何度もやっていたと話し、VRChat内でそれができるようになることが魅力と考え、つまりそれは”着たい”キャラになると語りました。この選定基準はIPをバーチャルの衣装として使う際に非常に大切であると言いました。

2つ目の「持続可能なエコシステムの形成」については、これまでVRChatの文化を作ってきたのはVRChatにいるクリエイターの文化であることは非常に考えている上で、そういった方たちだからこそ、株式会社ARROVAやIPの版権元の方と一緒にコラボレーションしていける関係を築いていけたらいいと考えていると語りました。
最後の3つ目は、これからチャレンジしていく領域だと前置きを入れた上で、アイテムの分かりやすい利用規約の策定だと話しました。IPに対して愛やリスペクトを持ったユーザーだからこそ、アイテムの利用規約をしっかり確認して、アバター改変などで使っているからこそ、ユーザーも版権元の企業も納得するような規約の策定を続けていきたいと語りました。現状、企業や作品ごとにNGなポイントが変わってくることもあり、その点についてVRChatの文化をお伝えした上で話を進めていくことが、株式会社ARROVAとしての使命だと語りました。
なぜパートナーとして株式会社Vを選んだのか
株式会社Vの藤原さんから時津さんと河合さんに向けて「なぜパートナーとして株式会社Vを選んでくれたのか」という質問がありました。

河合さんからは、理由の1つにVRChatに対するカルチャーへの理解と、IPコンテンツそのものに対する理解が非常に高いということが理由として語られました。VRChatは日夜新しいニュースが掘り起こされたり、さまざまな文化が生まれてくるスピード感溢れる場所であり、そのようなところで日々情報をキャッチしていたり、その文化自体の形成にも関わっていることが株式会社Vを選んだ理由だと言います。さらに、IPコンテンツを扱う者として、同じくコンテンツに理解があったり、元々好きで普段から接している方が居てくれることが嬉しいと語りました。そして藤原さんからも、そのコンテンツが本当に好きかどうかは、ユーザーにも伝わる部分だと思うので大事にしていると続けました。

時津さんも株式会社VのVRChatカルチャーに対する理解が深いことにも触れつつ、広がるVRChatの文化を追い続けるその速度感や、キャッチアップしきれない要素やトレンドもしっかりと追い続けている点を評価していました。
ここで藤原さんから、VRChatでビジネスを行っていく中で大事なこととして、ユーザーとの交流について語られました。
「VRChatのユーザーと一口に言えど、一人一人それぞれ全然違うので、企業やIPとの相性を考えて、それに近いコミュニティを探せばあると思うので、本当に近しいコミュニティを探して、交流することが必要です。プロジェクトの担当者が一人でも、できる範囲でいいので、コンテンツと近しいコミュニティに触れてみるとか、ユーザーと会話することがとても大事です。」
ユーザーに触れる点について、時津さんは自身の経験から「例え有名なコンテンツをVRChatに呼んだとしても、それだけで人が集まってくるといった単純なことではない」と言い、コミュニティやイベントの一つ一つ違う気質を見極めて、そこに最適なものを指していくっていうのは本当に重要だと感じましたと話しました。
河合さんも株式会社Vから「もっとVRChatに入ってユーザーと交流をした方がいいですよ」とアドバイスをもらったと話し、VRChatのユーザー=クリエイターという世界になっていることを中で対話することによって感じ、今でも非常に大事にしていると話しました。

来年のゴール
VRChatでのビジネスに熱い想いを燃やす株式会社ホビージャパンと株式会社ARROVA。そんな2社が2026年の展望を語りました。

まず、株式会社ホビージャパンの時津さんは、来年3月に開催予定のバーチャルホビーフェスについて、2027年、2028年と継続して開催をしていく熱い姿勢を示す他、イベント内で行うデジタルのアイテム販売にも力を入れたいと語りました。
特に推したいと言うのが先日発売した「ユビークル零戦」というVR空間で遊べる”おもちゃ”。アバターギミックとして販売され、指の示す先にゼロ戦が飛んでいくというものです。今後も別のIPでこのようなVRChat内で遊べるおもちゃを制作し、アバターや衣装と並んで普及させたいと話し、そのおもちゃでみんなでワイワイと遊ぶ世界になったら、VRChat市場が広がる一助になるのではと考えているとのことです。
そして、株式会社ARROVAの河合さんからは、日本のコンテンツホルダーが安心してVRChatの世界に来れるようにしたいと語りました。衣装の利用規約やアバター改変の文化に配慮して、一社一社対応していきたいとのことです。また来年からは海外展開を進める予定で、「TOKYO AVATAR GATE」に”TOKYO”と入れたのも海外展開を見据えてのことだったそうです。河合さんはアニメやゲームを日本の資産だと考えていて、その資産を海外のファンにも届けていきたいと熱く語りました。
それに対して藤原さんは、誰もが一度は憧れたアニメの世界に入ることが叶う場所がVRChatであるというのはとても夢のあることで、特にVRChatとIPとの相性が良いことは間違いないので広がっていくと考えていると語りました。






















