バーチャルファッションイベント「Virtual Fashion Collection “Voyage” 2022 Winter」は12月23日にVRChat上で開催。
ファッションショーではアクターが実際に歩行しながらランウェイに登場。国内外問わず8ショップが衣装提供を行い、ECサイト.stがプロデュースするアバターもランウェイを歩いていきました。
ソーシャルVRをやったことない人にも魅力に思えるほどの完成度は一体どこから来たのか。主催者のゆいぴさんとディレクターのPONYOさんとのインタビューを通じて迫っていきます。
Voyageはおめかしして行く特別な日にしたかった
ーー今回ゆいぴさんはVoyage全体の演出に関わったと思うのですが、Voyageの名前やテーマはどのようにして選んだのでしょうか。
ゆいぴ 豪華客船でファッションショーを開催しようと考えていました。幼い頃に家族と豪華客船に何度か乗ったことがあり、大きなシャンデリアやグランドピアノなどがあって憧れの世界でした。私は夢見がちなところがあるので、VRChatの中でもちょっと特別な日を作って、パーティに行くのにおめかしを頑張ろうとすることをしたいなって思ったんですよ。
ワールドに入るときに招待状が現れたと思うんですけども、その人だけの物をたくさん用意したかったんですよね。
もっと特別感あるものを用意したいなって話をワールド制作の坪倉さんにしたら、ケーキの側に名前入りのカードを置いてくれました。
ーーVoyageの準備期間はどれほどあったのでしょうか。
ゆいぴ メンバー集めなどで本格的に動き出したのは10月辺りからで、当初のメンバーは自分の運営している「Melty Lily」、「Add+Re:collection」、もう1つの3つのショップでした。もう1つのブランドが忙しくてできなくなってしまったのでいろんなショップにお声掛けし、ワールド制作を担当した坪倉さんにも相談してワールドを作り始めたのが11月半ばになります。
PONYO 2ヵ月でここまでのワールドが用意されたのは本当にすごいなと思います。お客さんに向けた仕掛けのみならず、イベントのオペレーションに関するアクターへの配慮が細かくされていて、坪倉さんは大変だっただろうなって思います。
ーーワールドの雰囲気もリアルなファッションショーですよね。
ゆいぴ 横のモニターなどの会場の雰囲気についてPONYOさんにペンを使ってこういう風にやりたいよねって話していたのですけども、まったく伝わっていなかったらしいですよね。実際に会場に連れていってみたら「なるほどね」って伝わったんですけどもね。
PONYO 手書きの絵からは、正直「良い」と思えるイメージが全く湧いていなかった前提があるので、ワールドに来たときにぶったまげて、こんなすごいクオリティになるなら言ってよって思いましたね。
ゆいぴ ワールドに連れてくる前にいろんな人にアイデアを話したのですけども、誰もピンと来なかったですよね。ワールドが出来上がって連れてくるたびに、本気度が違うなって感じ取ってもらったんですよ。声を掛けたアクターさんも乗る気じゃなかったのですが、会場を見てから「有給取れないか相談してみる!」と返事をもらえたんですよね。ちゃんと自分の熱意が伝わったんだなって思いました。
ーーイベントは配信で見ていたのですが、カメラのスイッチングがすごいなって思いました。
ゆいぴ 坪倉さんにはワールドが仕上がる前に、カメラはどのように動かすのか、どのようにモデルを映してほしいのかといった話をずっとしていました。最初はイメージができていなかったですけども、回を重ねてイメージができたら「できるよ」って話したんですよね。ギミックを見せてもらうと想像以上にできていて、神かなって感情しかなかったです。
ーーギミックが実装できたのは、ゆいぴさんがやりたい画があったからだろうなって思います。
ゆいぴ 私は無限にアイデアが出てきて、坪倉さんは無限に実装ができてしまうからなんでしょうね。カメラ以外にもいろんなアイデアを出したんですけども「できるよ」って言って実現するんですよね。
いろんなワールドクリエイターがいると思うんですけども、坪倉さんはトップクラスだと思うんですよ。そのクオリティが分かっていたから坪倉さんに声を掛けたい!って強く思っていました。ワールド制作に2週間ぐらいしか使っていないのに、妥協せずにここまでできるとは思いませんでした。
あとは私とPONYOさんはイベントが終わった後に、かっこいいツイートをしていたのですけども、坪倉さんが技術的なツイートをしたのは面白かったですね。
Voyageを告知しての反響
ーーTwitterでの告知の時点で反響は多くあったと思うのですが、実際にファッションショーを行うまでどのような心境だったでしょうか。
ゆいぴ 正直ワールドが出来上がったのが12月だったので、リハーサルもまともに出来ていない状態で人や企業を巻き込んでしまって大丈夫だったかなと考えていました。
本当は告知も早く出したかったのですけども動画を撮る機会がなくて、ようやく撮影できたので1日で編集して、その日に告知する慌ただしい作業になりました。リツイートとかの反響があったのですけども、イベントの準備で頭がいっぱいで気にする余裕がなかったですよね。
PONYO 僕はゆいぴさんとは違って冷静に見ていました。イベント経験者なので告知のリツイート数や動画の再生数を見ると、ワールド内に人を入れるタイプのイベントだったら、大体何人くらいの方が遊びに来ていただけるのか予想がつきます。僕の読みだと「これ思ったよりも人が呼べないな」みたいな気持ちでした。
ゆいぴ 本当に!?
PONYO 配信限定のイベントは集客のハードルが高いんですよ。なぜハードルが高いかといえば、フレンドのところにたまたま来てみたら楽しかったみたいな多角的な広がり方がしないわけなんですね。正直こんなにも多くの人に見てもらえるとは思わなかったです。
ーー舞台を見ている側としては、焦っていたり、人数が少ないなって思っていたのは意外でした。
ゆいぴ Twitterでは不安を出さないように余計なことを書かずに、動画でも開催日時を書くだけにしていました。無駄を省いてかっこいいイメージでやっていたので、不安だったことが意外だと思われていたのは成功だったのかなって思います。
真反対の性格をしたゆいぴさんとPONYOさん
ーー今回のVoyageは点数を付けるなら何点でしょうか。
ゆいぴ 私の中では1万点ぐらいでいいんじゃないですかね。自分の理想に向けて完全にできたのかといえば期間的な問題もあり、できていないですけども、イベントの関係者の頑張りを見ると今回のイベントは100点以上は付けます。
ーーそんな風に言ってくれるゆいぴさんだからついて行くだろうなって思います。
ゆいぴ みんなには言っていないですけどもね(笑)
PONYO 僕も100点以上をつけたいです。伸びしろや反省点はたくさんありますが、関係者全員の熱量が高くて、些細なミスなんて補って余りあるほどの成功だったと思います。
大抵のイベントは主催者が1番熱量があって、どうにかみんなを引っ張るための工夫をしていると思います。Voyageに関してはそんなことなく、アクターが自主的に練習をしたり、写真を撮ってプロモーションしたりして、みんながこだわりを持って取り組んでくれました。
ゆいぴ 正直トラブルもなく終わってしまうと、どうやって改善していけばいいのか分からないですよね。トラブルや問題点がわかったからこそ、次に向けて大事にしないといけない部分が分かって全部糧になりますね。
PONYO 失敗も含めて成功です。
ーー次回に向けてやりたいことがあればお聞きしてもよろしいでしょうか。
ゆいぴ 考えていることとしては、今回も含めてカッコいいことをやりたいだけなんですよ。だから次回でどれぐらいカッコよくなるか、自分も楽しみなところですね。
PONYO 補足するならば、Voyageの制作の流れって短期で計画、実行を繰り返すアジャイル型なんですよね。プロジェクトを進める中で必ず問題にぶつかるやり方なので、次からは長く準備期間を持つようにしたいと思っています。
ゆいぴ 私にとって難しいことなんですけどもね。私ってビビるぐらい飽きっぽく、ビビるぐらい毎日違うことを考えているんですよ。半年の準備期間はこれまでになかったので、やってみたいとやらないの繰り返しの人生で初めての試みになりそうです。また、2ヶ月前に「やるよ!」って言い出すかもしれません。
PONYO ゆいぴさんがそう言わないように、長期プロジェクトに長けている僕がなんとかします。
ーーお話を聞いていても性格や長所が真反対の2人だと思います。
PONYO 瞬発力の高いゆいぴさんと持久力のある僕って感じですね。
ゆいぴ そこに神みたいな坪倉さんが入りますね。正直今できないことはないんじゃないかなって思います。
Voyageは敷居のある憧れ場の場所にしたい
ーーお声掛けをしたショップを選んだ理由などはありますか。
ゆいぴ お声掛けしたショップの基準については詳しくお答えできないのですが、Voyageは誰でも出られるわけではないイメージでいてほしいと思います。理由としては、Voyageを見て今後現れるクリエイターが自分も出てみたいと思える気持ちでいてもらうためですね。
ただDimgrayさんが何故出たのかだけは答えさせてください。今回のVoyageはリアル志向のファッションなのでファンタジーな衣装は出さないようにしようと考えていました。でもバーチャルでリアルと同じことをやったところで、物理演算などの問題もあるからリアルに勝るわけではないんですよね。なので、バーチャルならではの良さとバーチャルだけでもリアル寄りの良さの2つを出さないといけないなって思いました。
今回出てくれたDimgrayさんはワイルドな衣装で出てくれたと思うんですけども、ファンタジーの良さを出しているので出したかったですね。リアル志向ではあるけど、バーチャルじゃないと出せない良さも取り組んで行きたかったからDimgrayさんは出したかったですね。
ゆいぴ Voyageに出たいと思うクリエイターが出てくることを願っていますし、リアルの方からバーチャルはお遊びだけじゃないって思ってほしいです。イベントの最後にも言いましたが、リアルでは実現を諦めていた夢が叶うかもしれないって思ってもらえたらVoyageは大成功だと思います。Voyageは自分のショップである「Melty Lily」を出すための場所ではなく、頑張っている人や頑張りたい人を巻き込む場所にしたいです。
ーーゆいぴさんのお話を聞いて、Voyageを目標に動いてくれる人が出てくれると嬉しいですね。
ゆいぴ イベント終わった後にBlenderをはじめたてのフレンドが「私もあそこに出るからね!」って声を掛けてくれて、興奮のあまり悲鳴みたいな感じで半分以上聞き取れなかったですけども良かったなって思いました。(笑)
1回目でここまで思ってくれるとは思わなかったです。ファッション以外にも無限歩行頑張ってみるとかのツイートもあったので、いろんなところに影響を与えるイベントにしていきたいなと思います。
インタビューを通じて、Voyageは多くの人に憧れや夢をもたらす場所としてのあり方を意識しているように思います。将来、Voyageに影響を受けたクリエイターやパフォーマーが現れるかもしれません。今後のVoyageはどんな航海を迎えるのか、見てみるのも一興ではないでしょうか。
・インタビュアー:柘榴石まおりん(Twitter)
●参考リンク
・Melty Lily(Twitter)
・ゆいぴちゃんちーむ(Twitter)
・PONYO(Twitter)