メタカル最前線は12月31日、同主催の年末年始バラエティ企画「年越しメタバース2022」にて、カウントダウン音楽ライブ「メタカル紅白歌合戦~KAWAII VS KAKOII~」を開催しました。毎年恒例の音楽番組「紅白歌合戦」をモチーフに、KAWAII組とKAKOII組に分かれ全9組のアーティストが出演した一大音楽イベントです。
配信では、YouTube Liveにて同時接続者数約150名ほどを記録し、またVRChat内のワールドにて視聴できる24時間放送テレビ局「VRC放送局」にも同時中継を行いました。現在、アーカイブの再生回数は2800回を超えるなど、特に注目を集めた企画となっています。
本記事では、そんな興奮冷めやらない「メタカル紅白歌合戦」を公式レポート。WithVR撮影によるオフィシャル写真とともに、約5時間にわたる公演を振り返っていきます。
メタバースにもアイドルはいる!可愛さ全開の「乙女雨」「Elfa」
まず、トップバッターを飾ったのはKAWAII組よりバーチャルストリートミュージシャンの乙女雨さん。乙女雨さんは、2022年4月から活動を開始した新人アーティストです。デビュー当初より、「Public」インスタンスにて音楽パフォーマンスを行うストリートミュージシャンという形式で、知名度ゼロの状態から徐々にファンを集め、最近では「AWAKE24」にも出演するなど昨年1年で頭角を見せました。
なんといってもその特徴は、観客を最大限に巻き込む元気な姿と、コミュニケーション。1曲目から、昨年のVRChatにて大バズりをみせた広瀬香美氏の「ロマンスの神様」を、その発端であるキノピオProさんをゲストに迎え披露。映像では2倍速で行っていたというフェイスダンスを生パフォーマンスしたその姿にも注目です。
そして、続く「ようこそジャパリパークへ」。乙女雨さんお得意のVRChat替え歌バージョンです。「WELCOME TO ようこそ VRChat」まさに、メタバースの煽りをうけユーザーが増え、新たなカルチャーシーンが多く生まれた2022年を表すのにふさわしい選曲と替え歌でした。
KAWAII組の2人目はELfα✝︎さん。VRChatを中心に歌ってみた活動を行うVTuberで、ライブ経験はあまり多くないとのこと。甘く可愛らしい歌声と、確かな歌唱力、そして可愛らしいアバター、まさに「KAWAII」の権化ともいえるその姿にコメント欄も「かわいい~」「天使!」「えるふぁちゃん!」と応援コメントが多く印象的でした。
セトリも「愛言葉Ⅲ」や「可愛くてごめん」など王道のかわいいソングを抑え、正月らしい晴れ着を取り入れたアイドル衣装も本当に可愛かったです。ちなみに、3曲目に披露した「くもりぬくもり」は、KAKOII組にてトリを務めた「PHAZE」のメンバーであるShellさんが個人で出したオリジナル曲。元楽曲の優しい雰囲気は残しつつ、ELfα✝︎さんらしい可愛さも乗せた落ち着く歌声でした。
ボイスチェンジャーに男性ボーカル 多様なVRChatアイドルシーン「Li:Luck」「Suc×Suquel。」
そして、「KAWAII」と一口にいっても様々な「KAWAII」があるのがメタバースの面白いところ。そんな「KAWAII」の多様性を見せてくれたのが、後半の「Li:Luck」と「Suc×Suquel。」(しゅくしゅくえぃる)です。
「Li:Luck」は、2022年11月に結成した新生のアイドルユニット。VRChat上のオープンマイクイベント「Virtual Bar Chill Moment」を主催する骨山すいかさんと、同イベントのキャストでもある猫迩こばんさんの2人組です。2人は、ボイスチェンジャーを用いて女性ボーカルを歌ういわゆるバ美肉シンガーでもあります。
ボイスチェンジャーで歌を歌うというのは、ループバックの遅延や、そもそもピッチを変えているため変換後のピッチに合わせてあえて元の音を外さなくてはいけないなど、通常に歌う以上にハードルの高い行為ではありますが、男性でも女性ボーカルの歌を女性の声と姿で歌えるというのは、メタバースならではの音楽表現です。
続くKAWAII組のトリを務めたのがバーチャルライブアイドルの「Suc×Suquel。」。VRChatアイドルシーンを追っているユーザーならお馴染みの、アラモードグリーン担当キャラメル・ミーさん、タルトオレンジ担当緋の粉さんの2人で結成したユニットです。
夫婦漫才のようなMCや、歌って踊ってパーティクルや衣装も操作する”ガチ”なパフォーマンスなど洗練されたステージパフォーマンスは見逃せません。2022年12月には、ライブの公演回数が通算100回を超えたとのことで、トリに相応しい見事な安定感でした。
このユニットの特徴は、キャラメル・ミーさんが男性ボーカル、緋の粉さんが女性ボーカルであるにもかかわらず、2人ともが女性アイドルとしてのロールでパフォーマンスをしている点です。見た目や声に囚われないメタバースならではのアイドルユニットで、かつ実力派という2023年も注目のユニットですね。
今回が初ライブ!?圧巻の世界観を見せた「VisitoR」
ここまで、KAWAII組の4組を見てきましたが、本当に三者三様すべてが違った「KAWAII」を体現していました。そして、ここからは「KAKOII組」。バンドやHIPHOPなど、こちらも様々なタイプのKAKOIIを披露してくれます。
1組目を飾るのは国際的なクリエイティブグループ「VisitoR」。2021年10月頃よりYouTubeへの動画投稿をはじめ、オリジナル曲「VisitoR」を発表。2022年4月にリリースした「Hello! Metaverse.」はその楽曲およびMV、世界観のクオリティの高さから多くの注目を集めました。
そんな「VisitoR」は、なんと今回の「メタカル紅白」が初のライブパフォーマンス。本出演陣の中でも最多の10人で、メドレー形式にパフォーマンスをしていきます。
今回披露したのは、「Hallo,Metaverse」「Deviate」「Friday Night」「New Song」(曲名未決定)「VisitoR」の全5曲。韓国出身のminigunさんによるラップや、suibowさん、tamagogayuさん、Chappyさんによるボーカル、ShanamoNさん、紅雨蒼さんによるバックダンス、POKOさんによるDJなどなど各々のクリエイティブの集結が見られ、純粋に感動するパフォーマンスでした。
中でも、新曲のパートではsuibowさん演じるメインボーカルが、羽を広げ巨大な光を出現させる圧巻のパフォーマンスが。ゴシックを彷彿させる黒を中心とした衣装に、静かな歌声、盛り上がって来たところでのあの光の羽は、まるで目の前で奇蹟が起こっているかのような神々しさがあり、ぜひ現地で見てほしいと心から思うシーンでした。
VisitoRは、音楽制作以外にも映像制作やワールド制作など本当に多岐にわたる創作活動を国際的なメンバーとともに行っているメタバースの最先端ともいえるクリエイティブ集団です。2023年も再注目のグループの一つとなるでしょう。
メタバースでもHIPHOPがアツイ!「Make論」「CROWK」
そして、2022年。リアルでもバーチャルでも大きな盛り上がりを見せたのがHIPHOPです。リアルでも、ABEMAでのバトル大会の中継や、YouTubeやTikTokでの切り抜き・バース集の盛り上がりなど、新規層を多く獲得し躍進した日本のHIPHOPシーン。VTuberも含めたバーチャル全体の動きとしては、ピーナッツくんの活躍なども印象的です。
そんな流れはメタバース/VRChatにおいても健在でした。KAKOII組、2組目と3組目を飾るのがラッパーの「Make論」と、2人組HIPHOPクルー「CROWK」。
開幕早々に、まずMake論さんが「smash」を披露したのち、「加勢に来たぜWE ARE CROWK!」とCROWKの2人も登場。「KnockDown」は、Make論さんとCROWKがコラボした楽曲。「Make論 vs CROWK」のサブタイトルの通り、闘志むき出しのリリックとがなり声で、一気に会場を盛り上げます。
Make論さんのDJを務めたのが、CROWKのCROTCHETさん。初出しの新曲「PLAYERS」を含め、続けて3曲を歌い切ります。Make論さんは自己紹介によると「生きづらさや苦しさを吐露するラッパー」とのこと。渋い歌声と、スキルフルな韻の応酬と、つい聞き込んでしまう生々しいリリックは、生のパフォーマンスでも健在でした。
そして、年を越した2023年一発目を飾ったのが「CROWK」。
CROWKは、2022年最も活躍したVRChatアーティストの1つと言ってもいいグループです。ライブの出演回数は、なんと21回。そのうえに、「嗤ゥせぇるすまん」をはじめ新曲もリリースし続けた実力派ユニットです。
マイクパフォーマンス、観客への煽り、楽曲すべてがパーフェクトで、会場からの声援も配信に届くほど多く聞こえてきました。
ドイツと日本のメンバーが生セッション トリを飾った「PHAZE」
そして、KAKOII組のトリを飾ったアーティストが、実力派VRバンド「PHAZE」です。「PHAZE」は2021年1月頃に結成した3人組のVRバンド。キーボード担当のShellさん、ベースとトラックメイカー担当のDizさん、ボーカル担当のAkiさんの3名で構成されます。
このバンドの最大の特徴は、ボーカル担当のAkiさんがドイツ在住であること。3人ともが、VRChatで出会い、VRChat上で結成したバンドとのことですが、国が離れていてもバンドが結成できるのは、場所に縛られないメタバースならでは。YAMAHAのSYNCROOMを活用し、生セッションでも音がずれないように調整しているとのことです。
離れた距離を一切感じさせない息ピッタリのパフォーマンスに、会場も一体感で包まれます。1曲目はハイテンポなラップ調が特徴的な「Dangling」。ボーカルのAkiさんは今回のライブに合わせて、和風な袴姿で登場です。小さく可愛らしい姿から発せられる力強い歌声。楽曲も演奏も歌声も本当にクオリティが高くまさにトリに相応しいパフォーマンスです。
クラブシーンも欠かせない りさえなじー&Endeが魅せたライブセット
メタバース音楽シーンのパッケージ化という目標を掲げた本ライブですが、やはり欠かせないのがクラブシーン。VRChatでは、日々世界中でDJイベント、クラブイベントが行われており、特にコロナ禍で現実のクラブが休業していた中、独自の発展を遂げ、その愛好家を増やしていった点は見逃せません。
本ライブでも、DJを呼びたい。そんな呼びかけに応じてくれたのが、「初心者でも気軽に楽しめるDJイベント」を目標に掲げ活動するDJEventチーム「GZ」にも所属するりさえなじーさんでした。
りさえなじーさんは、特にFreeform Hardcoreというジャンルで活躍するトラックメーカー兼DJ。りさえなじーさんは、以前にもGZ主催の2時間ワンマンライブ「GZ最強DJシリーズ」にも出演しており、海外レーベルを含め数多くの楽曲をリリースしている実力派。今回はオリジナル楽曲もしくはREMIXにてDJプレイを行うライブセットを披露していただきました。
背景の映像は、VJのEndeさんが担当しました。すでに深夜1時を回っているにもかかわらず、会場にはりさえなじーさんのライブセットを聞きに来たDJ仲間も多く訪れ、45分間を華やかに飾りました。
メタバースに広がる多様な音楽シーンに2023年も大注目
ストリートミュージシャンから、歌い手、ボイチェンアイドルに、男女ユニットアイドル、国際的なグループユニットや、HIPHOP、そしてDJなど、今回出演いただいたアーティストだけでも本当に多種多様な音楽がメタバースに広がっていることが伝えられたと思います。
「VRChat」や「cluster」などソーシャルメタバース上においては、ソーシャルメタバースから生まれた新たな音楽グループや、楽曲が広く親しまれています。
国際的なユニットや、現実の属性に囚われない表現活動など、メタバースならではのアーティストから、たまたま音楽に出会った、メンバーと出会った場所がメタバースだったというアーティストなど、メタバースで活動するきっかけは様々です。ただ、「音楽」というひとつ現実に置き換えてもわかりやすいカルチャーが、メタバース上でこれだけ発展しているということは、目を見張るものがあります。
2023年も、きっと今回出演されたアーティストもさらなる発展をし、新しく音楽活動を始める方も多くあらわれるでしょう。メタカル最前線としては、初の音楽イベントとなった「メタカル紅白歌合戦」。次回までにメタバースの音楽シーンがどんな発展をしていくか、いまから注目です。
●イベントオーガナイザー:からし明太子
●オフィシャル写真撮影協力:WithVR(Twitter)
●参考リンク
・「メタカル紅白歌合戦」アーカイブ(YouTube)
・年越しメタバース(Twitter)
●乙女雨
M1.「ロマンスの神様」広瀬香美(ショートver)
M2. 「ようこそジャパリパークへ」どうぶつビスケッツ
M3. 「ダーリンダンス」かいりきベア
M4. 「フライングゲット」AKB48
●ELfα
M5. fancy baby doll
M6. 愛言葉Ⅲ
M7. くもりぬくもり
M8. 可愛くてごめん
M9. ファンサ
●Li:Luck
M10. 突撃ラブハート
M11. そばかす
M12. 空色デイズ
M13. ファントムセンス
●Suc×Suquel。
M14. Make Me Magic
M15. ば~ちゃる すぃ~と らぶ
M16. しゅくしゅくえぃる!!
M17. S×S。 Twinkle Dream
●VisitoR
M18. Prelude+Hallo,Metaverse
M19. Deviate
M20. Friday Night
M21. New Song(曲名未定)
M22. VisitoR
●Make論
M23. Smash
M24. KnockDown
M25. PLAYERS
M26. Over Flow
M27. 押韻道中浪々歌
●CROWK
M28. RuleCheck
M29. 嗤ゥせぇるすまん
M30. Mappa!!
M31. BOMBERMAN
M32. ENDROLL
●PHAZE
M33. Dangling
M34. abyss
M35. Trail
M36. Mx.BlackBox