「Keep On Dancing!!」にこめられたもの 活動3年目、DancerVTuber・海夏青が牽引したいVRダンス

DancerVTuberって、知っていますか?

2Dまたは3Dのアバターを使って活動しているYouTuberの中でも、特にダンスに特化した活動をされている方々です。今回のインタビュイーである海夏青(わたつみ なつせ)さん以外にも、バーチャルダンスバトラーひいろさんやDr.floさん、Tiktokを中心に活動しているプロダンサーのフィニティさんなど、最近増えてきています。

幅広いメディアでクリエイティブな発信をしているDanceVTuberの中でも、VRChatをメインに活動している海夏青さん。自分自身もVRChatでダンスをしている筆者が、海夏青さんに深堀りインタビューしました。

VRの環境が「勢いで行動する」自分の性質にフィットしていた

ー海夏青さんについて教えてください

2020年12月21日にDancerVTuberデビューした海夏青(わたつみ なつせ)と言います。今、活動して2年と3ヶ月位です。ダンサーとしてはリアルでの経験が18年あります。

ー綺麗な印象をうける名前の響きですよね。由来はありますか?

憧れのVTuberさんにあやかって”漢字3文字+読み7音”にしたかったので、それぞれ過去に自分がつかってきた名前から1文字ずつ持ってきて、組み合わせてできました。気軽に夏青と呼んでください!

ーでは夏青さん、DancerVTuberとしての活動を始めたきっかけを教えてください。

学生時代、映像表現学科CGコースに在学していました。ゼミの先生に「VTuberやってみたら」とオススメされたこともあります。言われた当時は「わざわざVTuberにならなくてもいい」と感じていて。笑。内心では、長年ダンスをしていた経験もあり、自分の音楽のとらえ方をカタチにしたい、3Dキャラクターで踊ってみたいという気持ちを持っていました。

2020年12月に、名前の由来でもある憧れのVTuber天開司さんが麻雀大会で優勝した時の動画を見つけたんですよ。そこからたくさん天開さんの動画を見て、漢気を感じて。ご本人は歌うアーティストでもあって、もう総合的に見て、かっこいい!リスペクト!となって、あとを追いかけるように「私もVtuberやろう」と決めて。

思いたった時、ちょうど都合よく学校の課題制作で、モーションキャプチャーの課題があり、業務用加速度式モーショントラッカーを使える環境だったので「持ってるし、できるな」って、やりたいという気持ち+追いかけたい目標の存在で即勢いでデビューしました。笑

ーそのエピソード含め、DancerVTuberとしてYoutubeチャンネルの運営、VRChat上でのイベントオーガナイザーやレッスン、ダンスチームでのショーケース出演、FANBOXなどで幅広く活動されていて、実現させるエネルギーや行動力、スピード感がすごくあるなと思っています。その原動力ってなんでしょうか。

実は、頭の中で考えたことを「カタチにするのが苦手」だったんですよね。

過去、ニコニコ動画の「踊ってみた」ジャンルでも中高生の時活動していたのですが、自分がやりたいことの完成度を完璧にしたいという気持ちがあったから、実行にうつすまで時間がかかっていたんです。色々な意味で自分にハードルを課してしまっていて。

だけどVTuberは、すぐ動画が撮れるという気軽さがあって、リアルよりも気持ちの面でも、リソースの面でも軽いコストでできるなって。VRの環境が本当に「勢いで行動する」自分の性質にフィットしていたんですよね。VRの技術があったからこそ、今の活動ができています。

「Keep on Dancing」にこめられたもの

ー2022年末に主催された、活動2周年記念イベント「Keep on Dancing」は夏青さんの熱量とこだわりを多分に感じたイベントでしたね。特に気になったのは、イベント名です。なぜこの名前に?

実は「Keep On Dancing!!」という言葉は、自分のダンス人生で人にいちばん言われた言葉なんです。幼少期からダンスでの活動をする中で、ダンス界の大御所や海外のダンサーと同じ場で踊ることが多かったんですね。その時、いつも去り際に「Keep On Dancing!!」と声をかけてもらった経験があって。思い出深い言葉なんです。

あと、長年ダンスをするなかで、一度ダンスから離れた時期がありました。その時に「今までお世話になってきた人の気持ちを考えろ」と言われたことがあって。ダンスを責任感で続けることは違うと思っているのですが、周りの人からの思いも背負っていることは理解していても、当時はダンスをしたくなかった。

だけどVRに出会って、ダンスを再開していくにつれて「自分にはダンスが必要なんだ」と気づくことができた。だからVRダンスに感謝の気持ちがあります。「これからも踊り続けるぞ」という意思表明もこめて、「Keep On Dancing!!」というイベントタイトルにしました。私の原動力になっている言葉です。

ーそこまでの思いがこめられたイベントだったんですね。主催として企画演出や、出演もされていました。なぜイベントオーガナイザーまで活動範囲にしているのですか?

私はイベントって経験値を貯められる場所だと考えているんです。フレンドや、VRでダンサーをしている人たちにも色々な経験をして欲しいなと思って開催しています。レベリングをする場所として使ってもらいたいと思っています。

ただ、実際やるからには、リアルのイベントと張りあえるクオリティのものを作りたいんです。特にショーケースイベントは。

VRのコミュニティが大きくなっている中、VR外の人にまで届いた時「その程度か」と思われたくないんですよね。自分が全力で活動している領域なので。その魅力を届けきるためにクオリティをあげたいって意識しています。

活動3年目の目標は「妥協」

ーVRでのダンスは、夏青さんのようなDancerVTuberの存在やダンス団体の立ち上げやイベントなどの影響で、国内外でプレイ人口が増えてきているように思います。活動を始めた当初から、とりまく環境も変わってきた訳ですが、今後どのような活動をしていきたいですか?

そうですね、まず前提として、私は自分のことをへなちょこダンサーと自称していて。プロではなくアマチュアであるという立ち位置で発信しています。

ーどうしてですか?

過去の案件で、モーションキャプチャースタジオで光学式モーションキャプチャーを利用した振り付けを作成したのですが、自分が作成した振りはプロの世界では「タブー」な動きだったんです。

「自分が表現したい世界観」がプロの世界でタブーなら、アマチュアでしか活動できないと実感したんですよね。その時、プロの仕事のタブーを遵守するのと、自分が表現したい音楽をストレートに表現することを天秤にかけて、後者を選びました。

自分の活動がビジネスにつながったら嬉しいけれど、責任が伴ってくると、自分のこだわりを通し切ることができなくなる可能性もあると考えていて。アマチュアだからこそ可能な自由度を担保することを重視して、今の活動があります。

あと2023年の目標は「妥協」なんですけど。笑。実際にイベントを形にして、100点にしようとしすぎないことも大事と思うようになったんですよね。バランスを整わせるための妥協を導入しようと思っています。

ー先月からスタートされている夏青さん主催のダンスバトルイベント「軽率なノリで」はまさに名前からしてテーマにそって企画されたかなと思ったのですが。笑

要素はもちろんありますよ。笑。そもそもは、周りのダンサー達から「アウトプットの場がほしい」と需要を多く聞いていて。ショーケースのイベントはたくさんありますけど、ダンスバトルイベントは殆どないので軽率に始めました。

ダンスバトルの良い点は、120%を出しきれることだと考えていて。練習や普段、100%の力を出すのってあまり無いじゃないですか。120%出すと、自分の知らない自分にも出会えると思うんですよね。

先月1回やってみて、VR環境ならではのダンスができるバトルイベントにしようと改めて思っています。例えば小さいカワイイアバター縛りや、ダンス歴半年以内限定とか。

こういうアイデアって、去年までのストリートダンスカルチャーをVRに絶対落としこもうと考えてたときには出てこなかった。そもそもVRとストリートは土俵が違うのに。だからVRChatの環境に適応したバトルイベントにしますので、みんなに気軽に参加してほしいですね!

ー夏青さんのイベントを通して、ダンスバトルを楽しむ層が増えていくと良いですね!最後に夏青さんにお聞きします。ご自身の活動を通して「表現したい世界観」を教えてください。

難しい質問ですね。笑。私はストリートダンスと踊ってみたジャンルを合わせて18年、ダンスをやってきました。2つのジャンルを融合させたスタイルのダンサーって私くらいしかいないかもと考えていて。そのスタイルを表現したのが、2022年の3月に公開した「ヒアソビ (feat. 初音ミク) – モーションキャプチャ」です。

どのダンスを土台にするかで、踊り方が変わるんですけど、私はストリートダンスの中でもオールドスクールと言われる長い歴史をもつスタイルを根底に、融合させたものを世に出していきたいです。

あと私、自分の身体をスピーカーだと思っているんです。ありのままの音楽を夏青というスピーカーを通して、変幻自在にダンスにする。この気持ちで活動をしています。

ー夏青さんだからできる、オリジナルなスタイルをこれからも楽しみにしています。今日はありがとうございました!今後の活躍も応援しています!

夏青さんは、PIXIV FANBOXにて、「オリジナル3Dモデル制作」のために、支援者募集中!とのこと。DancerVTuber・海夏青を推したいアナタ、支援してみてはどうでしょうか。

◆告知事項◆ VRC Dance Challenge vol.2 開催決定!

『――あれから1年。あの舞台が帰ってくる。進化し続けるVR Danceの世界。もう一度挑戦する時が来た。』

VRC Dance Challenge vol.2
開催日時 : 2023年5月20日(土)19:00 START

主催 : DancerVTuber 海 夏青(TwitterYouTube

審査員
レオン・ゼロミヤTwitterYouTube
たみ(People)Twitter
Dr.floTwitterYouTube