まめひなたのファッションショーで話題に「バーチャル出荷工場ツアー」アフターインタビュー

3月28日、VRChatにてオカムラによるイベント「バーチャル出荷工場ツアー」が開かれました。イベントでは、アバター「まめひなた」のファッションショーやアーティスト「azwiz」によるジャズライブが行われました。

オカムラは、オフィス製品を作る会社として知られています。「なぜ、オカムラはVRChatでイベントを開いたのか」「なぜ、まめひなたでのショーを行ったのか」、今回はイベントプロデュース、会場制作を担当したkumaさん、まめひなたの制作者であるかめ山さんを招いて、聞いてみました。

「人を想い、場を創る。」というオカムラの想い

ーー今回はじめて主催イベントを開催したと思うのですが、そもそもオフィス製品を作るメーカーであるオカムラが何故VRChatでイベントを開いたのでしょうか。

kuma オカムラはオフィス家具メーカーとしてよく知られていますが、実際はオフィス空間や商業施設の什器や空間デザイン、あるいは物流システムの開発・販売まで事業分野が多岐に渡り、その根本には「人を想い、場を創る。」というオカムラの想いがあります。ですからバーチャルであっても人が活きる場を創るという取り組みは、リアルでやっていることと何ら変わりがないという感覚を持っています。

ーーオカムラがVRChatに参入するきっかけはなんでしょうか。

kuma きっかけとしては、私が以前からEAJCというVRの有志団体でVketとのコラボレーションイベントを⾏っており、そこにオカムラが去年2回に渡りスポンサーとして参加してくれたのがはじまりです。それと平行してオカムラ社内にてDX人材の育成と新規事業の創出を目的としたプログラムによりVRプロジェクトが発足し、そこに私が参加する形で今回のイベントを開催する流れとなりました。

https://www.youtube.com/live/17MjmIY0rZ0?feature=share

ーーこれまでスポンサーだったと思うのですが、今回初めて主催するきっかけはなんだったのでしょうか。

kuma オカムラが一般の方を対象としたECサイト「OKAMURA Lifestyle Store」のオープンにあわせてオフィスチェアのフラッグシップモデルである「Contessa Ⅱ(コンテッサ セコンダ)」の発売20周年を記念した100脚限定のアニバーサリーモデルを販売するという企画があり、そのプロモーションイベントをVRでやろうというお話になったんです。

「OKAMURA Lifestyle Store」はユーザーコミュニティとの対話を大切にしたいという想いを持っているので、オカムラを知ってくださっているユーザーさんやオカムラ製品と親和性の高いVRChatユーザーさんとのコミュニケーションを目的に、Twitter、YouTube、VRChatを連動したオンラインイベントを開催することになりました。

ーーイベントのコンセプトはどのようにして決めていきましたか。

kuma イベントのコンセプトは、工場見学のワクワク感が味わえる「バーチャル出荷工場ツアー」としています。

会場に創業当時の工場を再現したのはいくつか理由があって、⼀つは1945年の創業当初から今にいたるまで⼀貫している、人を想ってものづくりしてきたオカムラの歴史を、工場という表現で伝えたいという想いから来ています。

⼈々の⽣活に寄り添う⾞や⾶⾏機をつくっていたという歴史や、物流システムを扱っているといったバックボーンを皆さまに⽬にしてもらうことで、よりオカムラを⾝近に感じてもらえたらいいなと思っています。

もう一つは空間デザインの観点によるものです。工業的な直線で構成された歴史を感じさせる重厚な空間にすることで、ファッションショーやジャズライブのような⼈による活動を際立たせる意図があります。

まめひなたをアームでつかんでも大丈夫か聞きたかった

ーーかなりコンセプトを練ってイベントに取り組んだと思うのですが、かめ山さんはお声掛けいただいたときにどう思いましたか。

かめ山 オカムラさんの名前は知っていたので驚きました。kumaさんにはまず最初に工場見学ツアーとしてベルトコンベアにまめひなたちゃんを流して、アームでつかんで踊りだしますって聞かされたんですよね。どういうことかって思いました。

(笑)

kuma ロボットアームで掴まれて釣られるっていうのが、かめ山さん的に問題がないかお聞きたかったんです(笑)

かめ山 どういう表現になるかなって思いつつも、企業のしっかりしたイベントなので、大丈夫だろうって送り出しました。実際のショーを見るとおもしろかわいい印象になっていてよかったです。最後は宙に浮かんでいき出荷されていくんですよね。あれは想定外でしたね(笑)

ーーかめ山さんの話を聞いた感じですと、まめひなたを題材にするのは企画当初から決まっていたようですが、まめひなたを軸にファッションショーを行うことにした経緯はどういったものでしたか。

kuma 私はConnectCreatorsという活動をしていて、普段からアバターや衣装作家さんをチェックしていたので、かめ山さんが作られているアバターのかわいらしさや技術力の高さは知っていました。

まめひなたを選んだ理由にはいくつかあるのですが、1番は「健康的なかわいらしさ」がお子様とでも一緒に楽しめるコンテンツとしてイベントにマッチすると思ったためです。

ーーたしかにいろんな人に届けられるかわいらしさですよね。

kuma Youtubeを見てくださった方からは、お子さんがダンスを真似しようとしていて楽しそうでしたという声もいただきました。

かめ山 かわいすぎる。

「改変作家」という職業を通じて、改変文化に多様性を

ーー今回のイベントで印象的だったのが、アバター改変に着目しているところだったんですよね。アバター改変を軸にしようって思ったきっかけはあるのでしょうか。

kuma 以前から改変文化に興味があり、応援したい気持ちがありました。改変⽂化における現状の課題として、がんばって改変をしても、身の回りの友人にしかお披露目する機会がないため、個人に光が当たりにくいと考えていました。

今後「改変作家」という職業ができたら、もっと改変文化に多様性が増して、より個人が活きる世界になるのではと思っていました。

まずは第一線で活躍しているアバター、衣装作家さんに独自のセンスで改変をお願いし、未来の「改変作家」のお手本になるような作品をお披露目したい、という思いで企画しました。

ーー良いコンセプトですね。となると今回お願いした改変作家さんはkumaさんが選んだということでよろしいでしょうか。

kuma はい、以前よりチェックしていた作家さんの中から、独自の世界観とセンスをお持ちの方にお声掛けさせていただきました。また、まめひなたの作者であるかめ山さん自身による改変も見てみたい思いで、かめ山さんに相談し快諾いただきました。

ーーかめ山さんから見て、今回の改変作家たちの改変はいかがでしたか。

かめ山 事前に行われた試写会ではじめて見たのですが、本当に個性豊かで想像できなかった改変をいっぱいしてくださって「かわいい」しか言えなかったです。

ーーkumaさんに質問なのですが、改変作家にはテーマや条件をどのように依頼されたのでしょうか。

kuma 制作条件としては、自作アイテム以外にも許諾を取れた他作家のアイテムも使用可としました。テーマに関しては、それぞれの作風からイメージしたテーマを仮に伝えて、最終的に作家さんに任せるスタイルにしました。

ただ、かめ山さんに関しては、まめひなたを作った本人ですので、「すべておまかせ」というスタンスでした。

ーーお伝えしたテーマから変わった人はいましたか。

kuma 中には大きく変わった方もいましたが、普段の作風とは違う新たな一面が見れてとてもよかったと思います。

もはやyoikami劇場

ーー改変したまめひなたをカソウ舞踏団のyoikamiさんが動かしていたと思うのですが、起用した理由はなんでしょうか。

kuma 実は、以前yoikamiさんをフューチャーしたイベントを企画したことがあるんです。その際に、yoikamiさんの考え方や経験、技術を垣間見ることができてとても感動したんです。結局企画は実現しなかったのですが、今回の企画を練るにあたってyoikamiさんにお願いするしかないと思い、「再チャレンジ」という形でお願いしました。

ーーまめひなたの動きって全部yoikamiさんですもんね……

kuma 他にもazwizジャズライブのベースは、カソウ舞踏団のえーすけさんがモーションを担当してくれました。

かめ山 逆に言えばそれ以外はyoikamiさんがやっていたということですか。

kuma 実はドラムのモーションもyoikamiさんなんです。

ーーもはやyoikami劇場じゃないですか。

kuma ドラムも5年ほどやられていたそうなんですよ。

ーーかめ山さんから見て、これは良かったなぁって思ったまめひなたの動きはありましたか。

かめ山 全部世界観が反映されていてよかったですけども、スチームパンク風のまめひなたが、胡散臭さを感じる独特な動きでかわいかったですね。

kuma モーションはyoikamiさんが事前に大まかな振り付けを考えてくださり、当日相談しながら柔軟に対応してくれました。

いつまでも21時にイベント開いています

ーー最後にまめひなたのファンに向けて一言お願いしてもよろしいでしょうか。

かめ山 自由に楽しんでください。すごい改変がたくさんあったので、クオリティを上げないといけないと思うかもしれませんが、ご自分のできる範囲で楽しんでいただければと思います。依頼するのもありだと思います。

まめひなたは、発売前に衣装製作者さんを募ったこともあり、衣装が今でも多くリリースされていてありがたい限りです。どうしても、VRChatで主流のアバターとは体型が違うので、いままでは衣装がないから改変が思い浮かばないという方もいらっしゃったんですよね。

ーーまめひなたに関しては他のアバターと体型が違うのに、専用みたいに衣装を対応させていてすごいですよね。

かめ山 もちろんデフォルトの衣装を気に入ってくれる人もいて、私も嬉しいです。私もデフォルトの衣装を気に入っていて、胸にある名札だけ変えるとかしています。それぞれのスタンスで楽しんでいただければと思います。

ーー今回のバーチャル出荷工場ツアーを見逃してしまった人は、またVR会場で見る機会はないのでしょうか。

kuma 毎晩21時に定期公演を行っています。ご来場いただいたユーザーさんからは、VRChatをはじめたばかりの人に音楽イベントの体験として案内したいというお声もいただきました。是非そのような用途でもご活用いただければと思います。

ーー終了時期は設定されていない感じでしょうか。

kuma 実はVRChat社とお話をしていて、契約期間中は定期開催の許可をいただいております。ですので「21時はオカムライベントがある」ことを頭の片隅に入れてもらえれば有難いです。

ーー今後もVRChatでイベントを開催する予定はありますか。

kuma はい、これからも皆さんの生活に少しでもお役に立てるようにVRイベントやワールドを更新していきます。今回制作した会場もJASRACやVRChatにも活動の理解と許可をいただいているので、ユーザー主催の音楽イベントや集会イベントで活用していただければと思います。無償でご利用できますので私のTwitterDMにご相談いただければと思います。

ーー本当にオカムラの「人を想い、場を創る。」を体現していますね。今回はインタビューありがとうございました。