現実の模倣にならない独自の展開へ バーチャルファッションショー「”Voyage” 2023 Spring/Summer」開催レポート

5月27日、ファッションブランド「Melty Lily」オーナーのゆいぴさんは、バーチャルファッションコレクション「”Voyage” 2023 Spring/Summer」をVRChatにて開催しました。

「Voyage」は、VRChat向けファッションアイテムを販売する個人ブランドを中心に、その新作衣装を発表するコレクションイベント。モーションアクターさんが実際に長いランウェイを歩いて衣装を見せたり、配信用に準備された完成度の高いカメラワークだったりが特徴となっています。

前回、初回となる「“Voyage” 2022 Winter」を昨年2022年12月23日に開催し、大きな反響を呼んだことは記憶に新しいですよね。

第2回目となる今回の「Voyage」には合計で7つのブランドが登場。しかも、全てのブランドが今回のイベントに合わせ作り下ろしの新衣装を用意。制作過程のSNS投稿すらも制限する徹底っぷりで、本物のファッションコレクションさながら「すべて初お披露目」の舞台となりました。

メタカル最前線では、そんな「”Voyage” 2023 Spring/Summer」の現地会場へ取材してきました。さらにパワーアップした”バーチャルならでは”の演出を徹底レポートしていきます。

バーチャル”ならではの演出を突き詰めたファッションショー

今回の「Voyage」は、前回に比べると“バーチャル”ならではの演出を突き詰めたファッションショーと言えるものでした。

前回の開催時にも印象的だったAdd+Re:collectionでのパーティクルを活用した演出。クリスマス衣装をまとったアバターが、パーティクルを出しながらランウェイを駆け抜けるのはバーチャルを生かした演出だと言えるものでした。おっちょこちょいな「あわてんぼうのサンタクロース」を思わせる姿なので、よければ前回のアーカイブを見てもらえればと思います。

今回は、パーティクルやオブジェクト、KillUさん制作の映像によるVJの使用によってより突き詰めた形になりました。ディレクターであるPONYOさんがDJのイベントをやっていることもあり、ランウェイ横に配置されているスクリーンの演出が印象的に仕上がっていたと思います。

とくにEXTENSION CLOTHINGの演出は素晴らしいものでした。サイバーパンクな衣装である「KING SLAYER」を際立たせるためにロゴのグリッチと高速での点滅。シンプルながらも、黒と近未来感をメインに打ち出したEXTENSION CLOTHINGを最大限に魅力を引き出す演出だったでしょう。

インパクトがあった演出といえば、各ブランドの水着紹介が挙げられるでしょう。ランウェイを文字通り水浸しにして登場。会場を不可逆的に破壊するほどの演出は、間違いなく現実ではできないバーチャルならではの演出と言えるでしょう。

今回の演出を語る上で外せないのはDimgrayに間違いありません。龍をテーマとした衣装は、素晴らしく間近で見ると鱗を思わせる質感でした。衣装に使われているグラデーションの使い方も素晴らしいものでした。手に持っている灯籠もまるで「水先案内人」のような印象を与えます。実際水先案内人という印象は近く、この後に登場する衣装の前座的な役割を果たしていました。

1人目が終わった後に、龍に乗って登場する大胆な演出。前回のアフターインタビューで、リアル志向を心がけていた「Voyage」に「リアル志向ではあるけど、バーチャルじゃないと出せない良さ」と思わせてくれたDimgray。今回パワーアップしたバーチャルならではのファッションショーの演出にバッチリハマっていました。

そして主従関係を見せる2人。アバター同士の関係性を垣間見えるように演出するのも、キャラクターとして存在の近いアバターならではの魅力でしょう。

VJを生かした演出、ワールドを破壊するほどの大胆な演出、アバターのキャラクター性を生かした演出。これらの演出は、現実の模倣ではない”バーチャル”のファッションショーの雛形になったと言えるのではないでしょうか。

夢を与える衣装たち

今回の「Voyage」は、リアルクローズからレトロファッション、サイバーパンク、ファンタジーまでありとあらゆるジャンルを網羅していたと言えるでしょう。

リアルクローズでは、この2つ。夏にふさわしい男性のイケてるファッションを見せたORGE。

もはやファッションショーに参加するために生まれてきたといっても過言ではないアバター「WEIL」で参加したl’Autre Villa。

髪型と衣装はセットで成り立っていると示していったROSI atelier。

そして今回の「Voyage」の出展で著しい成長を見せたのはNatelier。これまでのリアルクローズから一転して、レトロファッションに挑戦。これまでの小道具を生かしたフルコーデのデザイン性をそのままに、一歩先へ行ったかわいらしさ溢れるデザインの衣装でした。

そして最後に登場したMelty Lilyに関しては、ウェディングドレスで登場。独自のシェーダーである「MLShader」でのシルクの質感はカメラ越しでも分かるほどにリアル。教会を思わせる扉で退場していったのが印象的でした。

ここまで紹介した7ブランドの衣装は、いずれも統一感のないバラバラの衣装たちです。実際ファッションといっても、想像するのは人によって違うでしょう。実際EXTENSION CLOTHINGのサイバーパンク衣装である「KING SLAYER」は、制作者のアルティメットゆいさんがバーチャルのファッションショーをイメージして作ったと語っています。

ですが、いずれのブランドも夢を与えるパワーを持った衣装を生み出せるという点で統一しているのではないでしょうか。

「Voyage」は確実に新時代のバーチャルファッションに向けて”航海”している

週間VRChat向けBOOTH商品トレンドランキングで分かる通り、毎週多くの新衣装がBOOTHに出ています。「”Voyage” 2023 Spring/Summer」は、衣装の持つ輝きを最大限に引き出すイベントではないでしょうか。

そして今回の「Voyage」で、リアルの模倣ではないバーチャルだからこそできるファッションショーへ”航海”しにいったと思います。

ぜひ、アーカイブが配信されたら自分で見るのはもちろん、VRChatの知らない人たちも誘ってみてはいかがでしょうか。きっと、VRChatの知らない人にも届くパワーがあるはずです。