アバターの選択肢に少年を 「+Head」クリエイターにインタビュー

少年アバターの共通素体「+Head」をご存じでしょうか。共通素体というと、「ネミア」や「イェーナ」、「ルキフェル」、「リセ」といった「まるぼでぃアバターズ」を思い浮かべる人はいるでしょう。

「+Head」は「みみの」や「りとり」、「LSBody」といったアバターや素体を手掛けたモデラー、よわいさんが発表し販売を開始した新しい素体の規格です。

共通素体は、同じ素体を使っているアバター同士で衣装が共有しやすく、対応衣装の数が増えやすいというメリットがあります。結果として、アバターを使用する人、アバターを製作する人、衣装を制作する人、全員にとって恩恵のある取り組みになるのです。

「+Head」では、Puton.さんが制作した「KALNE」の販売を皮切りにアバターの販売がすでに始まっています。

さらに今後も3体のアバターが販売されることが予告。予告されたアバター以外にも「+Head」の素体を使ったアバターが随時発売されています。

今回は、「+Head」から販売されるアバター4体の制作者であるよわいさん、HARIPON!!さん、Puton.さん、ぜれゔぃあさんにパネルディスカッション形式でインタビューを実施。

どのようにして、「+Head」の企画が始動したのか、「+Head」のねらいとは一体なんなのかに迫ってきました。

少年アバターという選択肢を作りたかった

ーー「+Head」リリースにあたってよわいさんが声を掛けた感じなのでしょうか。

よわい もともと自分が製作している男性アバターがいたのですが、一人でやっても盛り上がりに欠けそうだと思い、考えた結果、素体をクリエイター向けに販売するアイデアを思いつきました。
このことを友人のHARIPON!!さんに相談したところ、自分も共通素体で作ってみたいから是非一緒にやりませんかと言っていただきました。
それからは僕とHARIPON!!さんで身近にいる少年系アバターの製作経験のあるクリエイターさんに声をかけていこうとなりまして、結果Putonさん、ぜれゔぃあさんにも加わっていただき、4人でプロジェクトをスタートすることになりました。

HARIPON!! 昔と比べると少年アバターの販売も増えてきてはいますが、やっぱりまだまだ少ないですよね。アバターの数が少ないとなると、出てくる衣装の数も少なく、少年アバターの使用者がなかなか増えずに、結果として少年アバターが作られないという悪循環となってしまいます。
これを打開するためにも、複数人で一緒にやって、少年アバター好きの界隈を盛り上げて、なにかムーブメントみたいなものを起こせたらいいなと思ったわけです。

ーーなぜ少年アバターを作ろうと思ったのでしょうか。

よわい 皆さん単純に、楽しそうだから、あまりないジャンルに挑戦してみたかったというのはあると思いますが、しいて言えば、「程よい身長の男性アバターが欲しかった」というのがあるかもしれません。一般的な身長の女性アバターと並んだ時に違和感なくなじむようにしたいと思っていました。

ぜれゔぃあ たしかに現在は高身長の青年アバターか低身長の少女アバターの2択になりがちで、身長が2極化しているような感じがしますよね。

よわい なので女性アバターと同じ目線で話せる男性アバターを用意したかったというのはありました。そこで今回の「+Head」では、頭の大きさによって厳密な身長が変わりますが150cmぐらいにしてあります。150cmというのは、女性アバターの平均身長であろう130cmよりちょっと大きいぐらいのちょうど少年らしい身長でかつ、普段使いしやすい大きさになっています。

ーー自分が普段使っているアバターが大体150cmなので分かるのですが、使っていて困らないですよね。とくにフルトラッキングで座っていると自然と目線が合う大きさなんですよね。
共通素体のプロジェクトは多くありますが、アバター制作者から見て共通素体のメリットはどこにあるのでしょうか。

よわい 身体を作らなくっていいところですかね。

Puton. それはそうですね(笑)
工数削減という利点もありますが、やはり対応服を作ってもらいやすいことも大きなメリットだと思います。

HARIPON!! 服も増えるし、普段より気軽にアバターが作れるしといいことばかりですよね。

よわい +Head素体の販売をきっかけに、普段あんまりそういうジャンルを作らないアバター制作者にも少年アバターという選択肢を考えてもらえたら嬉しいです。
素体と対応服があるならいけるかも!みたいな。

作る側としても、需要が低くて売れないから女性アバター以外はあまり作られない、という状況は寂しいですし、市場的にも新しい分野を切り開く動きはクリエイター、ユーザー双方にとって価値があることだと考えています。

Puton. 作る側にとっても使う側にとっても、選択肢は多いほうがいいですもんね。

よわい 僕らとしては、このプロジェクトが成功するかしないかに関わらず、少年アバターを出したことで「そういうのありなんだ」と思って、多様なアバター文化を一緒に盛り上げてくれる方が増えればと考えています。

ーー頭を作れば少年アバターが完成するということは、いままで少年アバターを作らなかった人の少年アバターが見れる可能性があるわけですよね。結構ユーザーとしても夢のある話になるんじゃないかなって思います。

よわい そうですね。素体が既にあるというだけでかなりアバター製作の敷居が下がると思いますので、例えば有名な衣装モデル制作者さんやイラストレーターさんがアバターを販売をする、となったら喜ぶファンの方も多そうですよね。そういったきっかけになってもらえれば嬉しいです。

ーーずばり言ってしまうと、「+Head」という名称もアバターの頭を作ればアバターが完成するというクリエイターに向けた名称ですよね。

よわい その通りです。「〇〇ボディ」みたいな名称は、共通素体にありがちな名前だったので少し外しておきたかったというのはありました。素体を使ってモデルを販売するのもユーザーではなくクリエイターですので、そういった意味でも従来の共通素体とは違う印象の名前に変えたかったというのがあります。

BOOTHにてクリエイター向けの素体が販売されている。

素体へのこだわり

ーー共通素体を作る上で苦労した点はありますか?

ぜれゔぃあ 素体を制作したよわいさんがめちゃくちゃ調整に苦労したって言ってましたね。

Puton. やっぱり素体を組み込んでもらう都合上、後から素体のバージョンを上げて修正するといったことが困難ですからねー。更新が発生しないように丁寧に仕様を詰めていた印象です。

よわい そうですね。クリエイター目線でもユーザー目線でも使いやすいデータにする、というのはなかなか骨が折れました。どういうシェイプキーがあると嬉しいのかとかみんなで相談しながら進めましたね。
あとはクリエイター向けの話だと特に3DCGソフトのBlenderで開いてもMayaで開いても同じようなデータにするのに苦労しました。

ーー素体を作る上でこだわった部分はありますか。

よわい いくつかあるのですが、一番はいろんな服が似合うような体型バランスというものにこだわりました。
例えば手足の長さでしょうか。VR中でとにかく見栄えが良くなる長さを目指して試行錯誤しつつ、近年のファッショントレンドでもあるワイドパンツ等も似合うようにと考えながら調整しました。 全体的にクセのない細身ですらっとした体型に仕上がりました。

Puton. あとは手がいいですよね。ちゃんと男の子だと分かる骨ばってる感じの手なんです。

よわい ゴツゴツしすぎると少年ではなく成人男性になってしまうんですよね。なので、男性としての特徴を削る場面もあって、胸筋などの男性としてのランドマークを結構削ったんですよ。その上で女の子っぽくならないように、ちゃんと男だって認識できるようにするのが難しかったです。少年特有の、子供と大人の狭間にいるような絶妙なバランスを表現できるように頑張りました。

HARIPON!! よわいさんが作った素体は本当に出来がいいですね。肩ボーンがすごくて、挙動が良く出来ているんですよ。

よわい 肩を上げると鎖骨もしっかり上がるようにしました。

Puton. この鎖骨の挙動を再現するのは自分には絶対無理ですね…!
あとはボーンに珍しくUpperChestが入っているので、アバター使用者の間で話題に上がっていました。

ーーボーンというと、アバターを動かすための骨というわけですが、UpperChestの有無ってどのような影響があるのでしょうか。

よわい 胴体に3つのボーン配置されるわけなので、胸トラッカーがあるときの挙動が良くなるのがありますね。昔は使えなかったのですが、実はSDK3の時点では使えるようになっていたんですよ。ただボーンの構成を変えると、衣装を変えるときに面倒なことになってしまうので、UpperChestがないのが主流のままなんですよね。

今回の少年アバターは女性アバターに比べるとまだ数が少ないということで、変えるなら今ということでUpperChestを入れました。使えるものは使って、フルスペックにしておこうという考えですね。

誰もが参加しやすいムーブメントになってほしい

ーー「+Head」には制作者用のdiscordサーバーがあるそうですが、サーバー内ではどのようなやり取りをしているのでしょうか。

よわい クリエイター同士で進捗の報告や素体に関する質問のやり取り以外にも、販売予定日などを共有しており、コラボなどの持ちかけがしやすい環境になっているかと思います。例えば衣装の発売日を「+Head」を使ったアバターの発売日と合わせるなんてこともできるのではないでしょうか。

ーーアバター制作者はアバター自作交流会というイベントで知り合っているそうですが、衣装制作者とは繋がっていることが多いのでしょうか。

Puton. X(Twitter)などで、作品を見てお互い認知はしているケースはあると思いますが、意外と交流できる場は少ないような気がしますね。

よわい 今後「+Head」のサーバー内で交流する機会を作るのもいいんじゃないかなって思います。
これを機にアバター制作者が+Head用に衣装を作ってみたり、衣装制作者がアバター製作に挑戦してみたりと、制作ジャンルの垣根を越えられそうな雰囲気もありそうですので。

ーー最後にですが、記事を読んでいる人に向けてメッセージをお願いします。

よわい 最初は一人でアバターを作っていただけのはずが、気が付いたらこんなに大きな企画になってとても嬉しいです。同じジャンルを好きな人同士で集まれるのは素敵だと思うので、先ずは試着会や集会イベントを開きたいと考えています。

きっかけは我々が作りますが、ゆくゆくは誰でも気軽にアバターや衣装を作ったり、イベントを開いたりできる環境になってほしいなと思います。

ーーありがとうございます。インタビューは以上になります。

●参考リンク
よわい(X)
HARIPON!!(X)
Puton.(X)
ぜれゔぃあ(X)
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