VRのクリエイティブは『9cWorks』に依頼するだけで完成!サウンドエンジニア・くっしーEXにインタビュー

VRChatには、さまざまな活動の形があります。歌を歌ったり、映像を作ったり、配信者を目指したり……。しかし、やってみたけど思い通りにいかなかった、という経験は誰しもあるのではないでしょうか?

もし、それら全てを専門家に相談できるサービスがあれば、よりハイクオリティなものを世に出せるのに……そう思ったことがある人も少なくないはずです。

そこで紹介したいのが、くっしーEXさんの個人ブランド 9cWorks(きゅーしーわーくす)です。

くっしーEXさんは、VR映像作品のコンペティション「VRCムービーアワード」にて第1回、第2回で音響音楽賞を受賞した経歴の持ち主。音の取り扱いに関しては、VRChatの中でも信頼できる存在と言えるでしょう。

音声編集のみならず、9cWorksと提携しているクリエイターに様々な分野の制作を依頼することもできます。なので9cWorksに依頼を行うと極端な話、VR映画を1本作ってしまうことすら可能なのです。

今回はそんなくっしーEXさんにインタビュー。リブランディングされた個人ブランド『9cWorks』について。さらには、初期提携クリエイターの皆様にもお話を聞いてきました。

本気で完成したい個人制作者に向けたサービス

──今回リブランディングすることになった経緯についてお聞かせください。

くっしーEX 基本的にはこれまでと大きく変わらず、私個人のブランドとなります。加えて、今回新しい試みとして提携クリエイターを募りました。普段仲良くしているクリエイターに力を借りて、さまざまなコンテンツを包括的に一箇所でご依頼いただける環境を整えています。

──となると、依頼できる内容はどういったものになるでしょうか。

くっしーEX 大規模レコーディングやライブストリーミングサービスのようなもの以外でしたらある程度までは対応できます。現状個人からの依頼内容で多いのは「歌ってみた」のミックス、所謂ボーカルミキシングです。その他には作曲と編曲、効果音制作、MAといったものが主な依頼内容になります。また、UnityでVRChatのワールド用音声を実装するといった業務実績もありますね。

──ワールド用の音声実装というのは……?

くっしーEX 実装用SE等の音源作成から、制作した音源をゲーム上で再生できる状態にするまで対応できます。ただし私はプログラミングは行えないので、スクリプトを活用したギミックに関しては別途スクリプトをご用意いただく必要があります。

くっしーEXがサウンドディレクターとしてSE制作、音声実装を手掛けた「TOKYO MOOD by BEAMS」

──ワールドの音声データは容量が膨れ上がる原因にもなるので、軽量化を踏まえたうえで作ってくれるのは嬉しいですね。想定している依頼に関しては「歌ってみた」などの音声周りなのは変わらず、付随する作業があれば提携クリエイターに紹介する流れが新たに加わった認識でよろしいでしょうか。

くっしーEX そうですね。たとえばお客さんの中には、ミュージックビデオを作ろうとして、依頼して完成した音源はあっても、動画制作で断念してしまうことがあります。完成しない要因として、面倒くさいといったものもありますが、別途頼んでいたクリエイターが納品しないトラブルに見舞われるといった場合もあるんですよね。

──音声として完成しても世に出てこない可能性もあるわけなんですね……

くっしーEX 結構ありますね。

──言ってしまえば、完成品が世に出ないということはくっしーEXさんにとっても実績が減るわけですよね。たしかに、お願いしたいと思う人であれば、ちゃんとクリエイターを繋げるようにしたい気持ちが出てきます。

くっしーEX 実績が減るといった個人的損失よりは、もったいないと思う気持ちが強いですね。依頼者含めそれぞれ頑張って制作したものが、なにかひとつ欠けたせいで出せないのはすごくもったいないと思います。

とはいえ、このクリエイターにお願いしてみたら?といった紹介形式だと腰が引けると思いますし、紹介先へ声を掛けるのも面倒だと思います。なので、私がコンタクトを取れる相手へ聞いてみて、そのまま私側から話を進められる形にしました。

そのため9cWorksでは、本気で作品を完成させたいと思う人が -9cWorks.-に頼めばすべてが終わる形になっています。プロフェッショナル向けで高価な価格帯でのワンストップサービスはありますが、あくまでメインターゲットとしている個人制作者が頼める範囲の価格帯で設定する予定です。

ただ、あくまでも安かろう悪かろうとしたくないので、適切なクオリティを届けるかわりに適切な報酬を頂く形にしています。

──提携クリエイターを活用することを想定しているケースをお聞きしてもよろしいでしょうか。

くっしーEX VTuberが活動するうえで必要なものをすべて、が今のところの想定です。音声系は自分がやるとして、ロゴやフライヤーなどのデザイン関係をはじめ、撮影や編集などの動画制作に対応できます。

また、現在は小さくスタートするため提携外ジャンルになりますが、必要があればワールド用モデル制作やギミック制作、CM用ナレーションボイス収録等もご相談いただくことが可能です。

──VTuberを想定として入れているのは、依頼者がVTuberの人が多いからでしょうか。

くっしーEX 日頃依頼を多くいただくのが、VTuberやVTuberとは名乗っていないけれどもVRChatをメインで活動している人が多いです。

──提携クリエイターに依頼した場合は、料金はどのような形で計算されますか。

くっしーEX ワンストップで依頼を受ける場合は、私のほうで調整してそれぞれに分配します。なので、請求が1本でまとまりますね。仮に誰かが納品しない事態になったとしても、私が責任持って代わりのクリエイターを見つけることもできるので、依頼者は発注すれば完成品が届く安心感があると思います。

──くっしーEXさんに関しては、クレジットカードでの支払いもできますよね。支払いの窓口を1つにするメリットは、かなり大きそうです。

くっしーEX 自分が依頼する側の立場になった時、いくつもの請求書を確認して支払いを行うのが手間だなと感じる場面も多かったので、そういった需要もあるかなと。

──今回のリブランディングに合わせて料金プランには変更ないという認識でよろしいでしょうか。

くっしーEX そうなります。ワンストップサービスに関しては、むしろ少し割引できるような形にしようと思っているので、個別でそれぞれに依頼した場合よりも安くなるはずです。

私個人の料金プランに関しては、昨今の円安の影響などで変動する場合もありますが、少なくとも今回のリブランディングに合わせて値上げすることはありません。

──料金プランに関しては、サイトにあるメニュー表通りですね。

くっしーEX 基本的には料金表に書かれている通りで、書いていないものは都度問い合わせていただけたらと思います。あくまでも最低価格なので、工数が増える場合は別途料金も変動します。また制作物が増えれば増えるほど1個あたりの単価が安くなるものもあります。例えば、効果音を1つ頼むと1000円だとしたら、100個まとめて頼んだら1個あたり300円になるといったイメージです。

映像制作からデザインまでお任せ! 提携クリエイターを紹介

──ここからは提携クリエイターに話を聞いてみようと思います。担当する業務と実績についてお聞かせください。

おみる

担当はボーカルエディターとなります。ミックスを行うときのボーカルの修正をすることが多いです。BGM制作に関しても配信用から映像用、VRChatのワールド用など幅広く承っています。また、くっしーEXさんの手が回らないときにお手伝いをすることもあります。これまでの実績はYouTubeのリストでまとめられているので、確認してもらえると嬉しいです。

だめがね

エディトリアルデザイン及び映像の制作をしています。映像制作に関しては撮影以外の工程を一通り経験していますので、コンテから脚本やイメージボード、編集などができます。基本的にはフリーランスとして仕事を引き受けていないのですが、 9cWorksを通じてのみ引き受けます。

過去の作品はポートフォリオサイトから確認できます。これまでの作品だと、VTuber九条林檎氏主催の劇団IMGN『HarmonicA』のポスターや、カデシュ・プロジェクトの映画が高い評価を頂いております。

中田らりるれろ

担当する業務としては、脚本から編集まで音声以外はこなせる映像ディレクターです。映像制作会社で15年前後やっているので大抵のジャンルはやってきたので、VTuber的な編集はもちろん、バラエティや企業紹介といった硬めの雰囲気にも対応できる引き出しがあります。VRChatの撮影はもちろん、ミュージックビデオの映像制作も凝ったグラフィックを要求する場合は外部の連携が必要な場合もありますが対応可能です。

業種の慣例では編集とディレクターは分かれていることが多いのですが、自分は演出含めて編集できるディレクターとして活躍できるので、ある程度方向性を決めてもらえたらいい感じにやってくれると思ってください。

今はフリーランスとして活躍しているのですが、広告代理店を挟んでいる都合で公表できないものが多いです。なので、趣味でやっているチャンネルを観てもらうのが1番だと思います。

じぇーゆー

担当する業務としてはVRChat内の撮影です。これまでの実績としてはVR映像製作チーム「JaMstudio」の作品をはじめ、日産やメタバースヨコスカなどの企業や自治体の映像制作にも携わりました。ドローン撮影にも対応できますので、映画のような画が欲しいときは満足いただける結果を出せるかと思います。

ジカウム

担当する業務としてはイラストレーターとデザイナーを受け持っています。VTuberのミュージックビデオに登場するようなイラストやデザインなどをイメージしてもらえたらと思います。

デザイン分野ではVRCボクシングのロゴデザインや、サキュバス酒場のコンセプトアートデザインを。

『SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland』の関連ワールド『ポチャッコのぱくぱく大作戦』ではステージデザインを、『ミニショー:ハローキティと友情の飛空艇』では飛空艇デザインを担当しました。

イラストレーターとしては、アークシステムワークスをはじめホビージャパンVR部、メタバースヨコスカのPRマンガを担当しました。それ以外にもホテル・カデシュのリアルイベントでのキービジュアルの一部を担当しました。

いくつか作品を見てもらえると分かるのですが、絵柄の振り幅がそれなりに大きいと思っているので、イメージしている作風を提案してもらえたら対応できます。デフォルメからリアルな等身まで描き分けできます!

くっしーEXの考えるクリエイターの姿勢と後進の育成

──個人でのクリエイターができることが増えるようになった反面、有償依頼でのトラブルも多く見られるようになった印象があります。提携クリエイターの話を伺うと、意識しているのかなと考えたのですが、いかがでしょうか。

くっしーEX これは個人的な経験則ですが、やはり価格が低いものだとそれ相応にいい加減な対応をされがちだと思います。例えば「歌ってみた」のミキシングだと、一般的なボリュームゾーンが1曲あたり5000円から8000円ですが、トラブルの事例を多く聞きます。ただ、必ずしも依頼料に相関しているわけではなく、高額であっても持ち逃げされることもあり得ますけどもね。

なので単純なことではありますが、請求書や領収書などの契約書をしっかり発行し、金銭のやり取りはきっちりやらせてもらっています。アマゾンギフトカードでの支払いや欲しいものリストで送るケースもありますが、うちとしては一般的な会社と同じ運用で今までもこれからもやっていく予定です。

各種書類が発行されるので、個人事業主として活動する人にも使いやすいサービスになると思います。

──後進の育成に関して、リブランディングの目的と事前に伺っていましたが、危機意識として持っている点はありますか。

くっしーEX 後進の育成に関しては、技術面というよりは契約や金銭のやり取りなど、知らないでいると騙されやすい面を学ぶ場が非常に少ないことを危惧しています。

私自身も過去に経験がありますが、法人個人問わず善意に漬け込んでクリエイター側が不利益を被るように差し向けてくるケースは非常に多いです。まずはそれらから自分を守る術を身に着けておくことが、長く創作活動を続けていくためには必須のスキルだと考えています。

なので一番は、私がサラリーマン生活で得た経験や受けた教育を後進にフィードバックしていくことですね。

また制作側としては、クリエイターだから遅れてもいい、といった態度が許されているのが個人的には良くないなと思っています。やるならちゃんとやってもらいたいですね。提携クリエイターはそういった面でも信頼できる面子を選んでいるつもりです。

──提携クリエイターとの関係性は、企業と個人の間ぐらいなんですね。仕事としても、コミュニティとしても横の繋がりを持つことで仕事として担保できるようにする関係性だと感じました。ちなみに、今後提携クリエイターを増やす予定などはありますか。

くっしーEX 9cWorksはあくまでも私の個人ブランドなので、積極的に増やしていくつもりはないです。どうしても手が回らない場合にまた改めて考えていく予定です。

──最後にですが、今回のリブランディングに関する思いを聞かせてください。

くっしーEX 元々運用していた個人ブランド『feriaEX sound』はX(旧Twitter)のIDをもじったもので、BOOTHショップ名としての運用予定だったのですが、さまざまなプロジェクトでクレジットされることも増え、誰の、何のブランドなのかが分かりづらいと思ったのがリブランディングを考えたきっかけです。

なので、9cWorksでは自分の名前(くっしー)と絡めた名称にしてより分かりやすい形にしてみました。顧客層のターゲットや料金も変わりません。ユーザーに提供するサービス部分で変わるのは概ねワンストップサービスのみです。提携クリエイターによって依頼を受けられる幅も広がりました。

私自身、これからも様々な分野で制作を続けていきたいと思っております。一緒にいいものを作っていきたい方のご依頼を、心よりお待ちしております。

──今回はインタビューありがとうございました。