アバターとは、自分の分身となるキャラクターのことを指し、現在もSNSやゲームで多く使われています。ソーシャルVRでは、アバターの価値はより重要になっており、アイコンやキャラクターのみならず、もう1つの身体といっても過言ではありません。
東雲りんのアバター入門では、ソーシャルVRにあるアバターの背景・文化をなるべく分かりやすい形で噛み砕き、まだ触れていない人の手助けになるようにお届けします。
前回は鼎談の前半をお届けし、EXTENSION CLOTHINGとリアクロ集会について掘り下げました。後半では、BEAMSのこれまでのVR展開についてからこれから担いたい役割について掘り下げていきます。
BEAMSのVR展開はどこから始まったのか
ーーもともとBEAMSってVRに興味を持ったのでしょうか?
木下 きっかけは色々あるのですが、HIKKYの代表である舟越さんからバーチャルマーケットで出店しませんかと持ちかけられたところ、弊社代表の設楽たちが面白いって思って参加したのが始まりです。そこで私は舟越さんと知り合いだったので担当広報になりました。
最初からアバターのファッションに注目したのかというとそうでもないです。バーチャル接客でVRChatに入ってみて、アバターを選ぶことって自己表現できるし、ファッションだと気づきました。
2020年12月のバーチャルマーケット初参加のときも、アイドルファンの装いのVケットちゃんを販売してみたのですが、、2021年8月のバーチャルマーケットで「PUI PUIモルカー」とのコラボでモルカーのアバターを売ってみたら反応があって、やっぱりアバターってファッションなんだと思いました。
JONER BEAMSさんってアンテナがすごいですよね。
木下 わりとなんでもありな会社なので……ユーザーやコミュニティと触れる度に学んだことを企画にフィードバックしていって、次はBEAMSの服を着たアバターを売ってみよう、次はアバター改変できるようにBEAMSの洋服を売ってみようって流れになりました。
アルティメットゆい リアルのファッションブランドが入ってくるのは想像してはいたのですけども、いざなるとどのようになるかワクワクしますね。改変をしているとリアルのファッションやトレンドをバーチャルでもほしいなって思うんですよ。
バーチャルだから着れるものを大事にしている半面、バーチャルだからこそリアルなものを持ち込みたいっていう両方の考えが浮かんでくる感じです。
JONER 人気のスニーカーとか合法で堂々と履きたいですよね。
アルティメットゆい そういう感じです。例えばスニーカーだとレアリティとかあるので、簡単に手に入ると味気ないですけども、買ったことがステータスになると楽しくなりますよね。
JONER カルチャーが生まれると楽しくなりますよね。例えばコラボする際にどういった経緯があったのか分かると、ストーリーになって面白いと思うんですよ。既存の人にアピールするのもそうですけども、動きがあると新規の人も興味を持つのでやって欲しいですね。
VRならではのファッションへ
アルティメットゆい バーチャルのファッションはリアルとは別の発展をしていて、ファンタジーな服とリアルな服が混在しています。お互いが上手く混ざり合って、VRオンリーのファッションがあると面白いかなって思いますね。
木下 前にフレンドさんを連れてJONERさんに会った時JONERさんの髪を見て、これぞバーチャルファッション!ってフレンドさんが感激していたんですよ。
ーー物を描写する時にシェーダーっていうプログラムを使って表示しているんですけども、オシャレでシェーダーを使うのはなかなかないと思います。
JONER やっぱり遠くから見ても自分だって分かってもらえますね。改変しているときに、アクセサリーに使っていたシェーダーを髪の毛に当てはめてみたら「あ、イケるじゃん」って思いました。最初は、透明にしていたのですが、だんだん服と合うような髪色って感じで色もいれていくようになりました。
アルティメットゆい リアルだとできない表現ができるのは楽しいですからね。
JONER リアルだと身長や骨格がどうしてもあって、身長は低くてレディースでも着れるじゃんって言われるんですけども、やっぱり体型に合った服を着るのが似合うですよね。アバターだったら体型が選べるので、女性だったら着れるかなってのをイメージしたのをアバターに着せています。
BEAMSが今後やっていきたいこと
木下 BEAMSみたいなセレクトショップの役割としては、リアルファッションの人たちをバーチャルに引き込みたいというのがありますね。BEAMSがやってるならうちもバーチャル商品出そうかなとか、BEAMSのバーチャルショップに置いてくれるなら公式コラボ商品任せてみようかなとか思ってもらえるような、橋渡しの役割を担いたいなって思います。
データの複製やブランド毀損などリアルブランドの心配や懸念がなくなって3Dモデルの販売が一般的になったら、リアルショップ、オンラインショップ、メタバースってチャネルの違いだけなんですよ。ソーシャルVRで活動しているクリエイターやユーザーと、リアルのブランドやデザイナーが垣根を超えて行き来して、ファッションの楽しみ方がどんどん拡大していってほしいです。
JONER 実際に声をかけてもらった身としては、木下さんみたいな明るい人がいると精神的にとても助かりました。
木下 勉強していきたいので、これからも教えてもらえると嬉しいです。アルティメットゆいさんのこのワールドみたいに、このお店に商品を置いてもらいたいって感じさせる素敵な場所があると、リアルブランドもやってみたい、商品を売ってみたいと思うきっかけになりそうですね。
JONER リアルとバーチャルのコラボが進んでいって経済が発展したら、VRの中で生活をするってできると思いますし、自分のやりたいことで過ごしていくこともできると思いますね。
ーー最後にこういう風になっていったらいいなって展望を聞かせてください。
JONER リアルファッションとシームレスになっていって、空間を選ばずに刺激を受けて盛り上がっていってほしいです。盛り上げていくのも、見ているのも人生を楽しくしていくものになると思います。
アルティメットゆい 元々EXTENSION CLOTHINGをリアルでやろうって考えていました。インスタとかで自分で作って、自分で着るというのをやりたかったですけども、コロナでダメになってしまいました。
その後、VRで遊んでいる中で、ここならできるかもって独学で3Dを勉強してここまでやってきました。今後、リアルのアパレルブランドが入っていくことで、色んな可能性が広がっていくと思うので期待しかないし、自分も頑張っていきたいと思います。
木下 着る服によって、いろんなアイデンティティを器用に楽しむことが得意な日本の人は、ソーシャルVRの中でも同じ役割をアバターに求めていると思います。現に自由に洋服を作り始めている人がいて、それを買ってアバターを改変させて自分の個性を表現するユーザーがいて、しかもレベルが高いって、日本はVRファッション先進国だと思うんですよ。
その中で企業の私たちは、リアルブランドとのコラボだったり、バーチャルとリアル間のクロスオーバーだったり、みんながやりたかったことを実現するためのきっかけを作れるように、バーチャルファッションの楽しさをリアルファッション業界へ向けて発信しながら、交流を増やしていきたいと思います。
ーー本日はありがとうございました。
今回の鼎談を通じて、立場は違えどファッションが好きな人が集まると、思い描く未来は近いように感じました。
東雲りんのアバター入門は今回で終わりです。ソーシャルVRは、アバターに限らずですがコミュニティの外にはなかなか情報が出ない現状があると思います。今回のアバター入門でアバターについて少しでも理解できれば嬉しいです。
願わくば、ソーシャルVRの世界へ自分の思い描いた姿で来ていただけると幸いです。