アバターとは、自分の分身となるキャラクターのことを指し、現在もSNSやゲームで多く使われています。ソーシャルVRでは、アバターの価値はより重要になっており、アイコンやキャラクターのみならず、もう1つの身体といっても過言ではありません。
東雲りんのアバター入門では、ソーシャルVRにあるアバターの背景・文化をなるべく分かりやすい形で噛み砕き、まだ触れていない人の手助けになるようにお届けします。
前回は、ソーシャルVRのユーザーが、どのようにしてアバターを選んでいるのか、同じアバターでもアバター改変を通じて楽しんでいることを紹介しました。
今回は、アバター改変をして楽しむアバターファッションについて、消費者、個人クリエイター、企業の視点からどのように考えているかお届けします。
ファッション好きが集まって話した結果、リアルとバーチャルのファッションがどのように異なるのか、どのように発展したいのかという願望を聞けました。
インタビューは、前後半に分かれており、前編の今回は、個人クリエイターがどのようにアバターの衣装を作っているのか、何故コミュニティを作ろうとしたのかにフォーカスします。
今回の記事を読んで、アバターのファッション事情の理解の手助けになれば幸いです。
目次
ファッションを愛する3人
ーーまずはじめに自己紹介をお願いします。
EXTENSION CLOTHINGというアパレルブランドをやっているアルティメットゆいです。
BEAMSで広報をやっている木下です。VRとの初めての接触は、2020年の12月にバーチャルマーケットでBEAMSが出店した際に担当したときでした。去年の年末にゲーミングパソコンを自宅にも置き、会社以外でも自分のアカウントを作って遊び始めました。
バーチャルでもリアルと同じようにデザイナーの世界観が表現できる
ーー今いるワールドもアルティメットゆいさんのEXTENSION CLOTHINGで販売している服を展示していますよね。
アルティメットゆい イベントで出店する形式だとワールドを軽くしないといけないので、テクスチャなどに制限が存在します。自分でワールドを作ると、売っている服の3Dモデルをそのまま置くこともできるのでいいです。
木下 このワールドは前にJONERさんたちと来たことがあるのですが、本当にすごいです。海外出張先で旬の洋服店を巡るときの感覚を思い出しました。LAの洋服店なのかな、ちょっとココナッツの匂いがするのかなって空気感が伝わってきて、作り込みにびっくりしました。
デザイナーの世界観を存分に表現できるという意味ではリアルのデザイナーブランドの単独店と一緒だなって思いました。
JONER 同じ服でも、ライティングや空気感で変わってくるし、もう来るだけでインパクトありますね。
木下 なんかもうおしゃれして来ないとって思いますね。
ーー写真撮るスペースとかもあっていいですよね。
アルティメットゆい VRChatのユーザーは写真を撮る文化があるので、ワールドの要所ごとにフォトスポットがあります。
ーーちなみにこのワールドもアルティメットゆいさんが作りましたか。
アルティメットゆい そうなります。ワールド作ったことなかったですけども、挑戦してみた感じですね。テクスチャ類はほぼ自分が作って、複雑な物は既に作られたものから置いてテクスチャをアレンジしました。大体半月ぐらい掛けて作りました。
JONER 頭にあるものを具体的な形にできるのはVRの強みだなって思います。
EXTENSION CLOTHINGは最初からブランドとして作りたかった
ーー元々はなんとなくEXTENSION CLOTHINGってのがあるよって知っていたぐらいだったのですけども、ワールド公開してTwitterで撮影した写真が流れてきてから明確にブランドとして認識するようになりました。
アルティメットゆい 僕はboothで商品を売り出すのを決めたときから、ブランドっぽくしていきたいなと思っていたので、店舗のワールドを作るのは最初から決めていました。店舗のワールドは、あんまり見たことがないので、これから増えると嬉しいなと思っています。
JONER 作者が接客するようなワールドが増えると嬉しいですし、リアルの流れを汲んだものは説得力があると思います。商品って画像や動画だと分かる情報に限界があるんですよ。ワールドで展示されていると、3Dモデルでディテールも細かく見れるので大きいなって思います。
アルティメットゆい 自分も同じ経験があるんですよ。boothで服を買ってきて、アバターに着せてみたときに、思ってたのと違って買い物に失敗したという経験があります。なので、ワールドで展示して少しでも状況を改善できたらなって思います。
木下 リアルで言うと、通販と実店舗みたいな感じですね。
JONER このワールドみたいなのが増える動きが出てくるとワクワクしますね。
衣装は作るのも着せるのも大変
ーーアルティメットゆいさんの場合は衣装を作るのにどのような時間配分をしていますか?
アルティメットゆい 服の形を作るモデリングは一日とかで終わってしまって、Unityを使ってVRChatに使えるようにセットアップするのに時間が掛かって、数日から1週間になります。ただ、アバターによって体型が異なっているので、アバターに対応した衣装を2,3体分用意するので1ヶ月ぐらい掛かります。
ーーアバターの体型に対応しないとどうなるのでしょうか。
アルティメットゆい ゲームだと服の下は何もないですけども、VRChatだと肌があるので、服から肌がはみ出ると破綻しているって言われてしまうんですよね。今はアバターの体型をある程度調節できる場合があるので昔よりはマシではあります。
JONER 胸とか小さくできて便利なんですよね。
木下 Unityを使ってアバターをアップロードするだけでも大変だったのに、さらに着替えたいって思った時にUnityを触らないといけないですよね。ネットで調べても全然分からなくて難しかったです。
アルティメットゆい Tポーズで着せたと思ったら、アバターの手しか動いてなくて服はTポーズのままってのがあって……
JONER みんなから残したほうがいいってその状態のアバター持ってますよ。初心者にアバター改変できないって時に俺もこうだったから大丈夫だよって見せてますね。
木下 みんな調べながらやっているのですか?独学でやっているのですか?
アルティメットゆい みんな調べたり、フレンドに聞いたりって感じですね。
JONER 分からないけどもパラメーター弄ってたりして、なるべく理解していく感じですね。
バラバラだった繋がりをリアクロ集会を通じて集まっていった
ーー身の回りのフレンドさんだと、リアル寄りの改変をしている人ってあんまりいなかったですけども、リアクロ集会に行ってから自分好みの改変をしている人と多く繋がれたんですよね。リアクロ集会をやろうってなったきっかけはありますか?
JONER 色々きっかけはあるんですけども、元々はクリエイターをやりたいなって漠然と思って、VRChatでもニーズがどのようにあるか考えていました。そのときに、リアル寄りのファッションをしているコミュニティが点々としていたんですよ。
せっかくなら交流できるような場所があれば、界隈も盛り上がって、着る側も制作側もいいのかなって思って開催しました。
ーー個人的になのですが、JONERさんの使っているGrusの衣装や界隈はリアル寄りのファッションが多いなってイメージがありますね。
JONER ぼちぼちいたのですけども、自己満だけではなく見せる場を用意できたらって輪も広がるかなって思ったところもあります。嬉しかったのは、Twitterで見た人同士が繋がって、もっと面白いことになったときです。
ーーTwitterでは見たことあるけどもVRChatで会ったことない人って意外といますからね。イベントを通じて繋がったと言えば、BEAMSとリアクロ集会もコラボイベントをやると聞きました。経緯について聞いてもいいですか。
JONER 元々服好きってのもあり、バーチャルマーケットでBEAMSが出店しているのを覚えていました。リアクロ集会をやっているときにBEAMSのアバターを着ている人がいるなって思ってたら、DM送られてきたんですよ。
打ち合わせの最初は木下さんじゃなかったですけども、その後に聞いたことある声の人が出てきたって思ったら木下さんだったんですよ。そういえばBEAMSのアバター使っている人いたって思い出しました。
木下 個人的な興味で参加しましたし、あんまり企業の人って前全面に出したくなかったので、あえて言わないでいましたね。リアクロ集会に行った後、会社の人にアツく話て、リアクロ集会に参加しているような人たちにBEAMS分かってるなて言ってもらえるようなことをしたいって思うようになりました。
ーー分かってるなって言われるために、8月のバーチャルマーケットではどのようなことをするのですか。
木下 8月のバーチャルマーケットでは、はじめてアバターの洋服を売ります。リアクロ集会でアバター改変して服を着替える楽しさに気付いた経験から来ています。最初に使っていたBEAMSのアバターは、アバターと服が一体化していて改変できない作りをしていたのですね。
ーー改変して服を着せ替えるというのは想定していなかったことですか。
木下 昨年の自分たちは、アバターごと着替える方が簡単だという頭しかなくて、皆さんがファッションを楽しんでいる方法を理解していなかったですね。コミュニティの様子を見て、リアルの服を3Dモデルに起こして、皆さんが愛用するアバターに着せてもらえるようにして販売しようとフィードバックしました。
アルティメットゆい ちなみにコラボ服ってどのアバターに対応していますか。
木下 女性用は桔梗ちゃんとウルフェリアちゃん、男性用は碼希くんです。
ーーVRChatのユーザーが使うメジャーなアバターを抑えた感じがしますね。
木下 BEAMSのスタッフアバターの洋服を作ってもらったことがあって、今回のアバター用の服をモデリングしていただいたCornetさんと相談した上で、アイテムの選定や対応の幅も決めていきました。
今回出すものにはトレンドのオーバーサイズもあって、ドロップショルダーや弛みなどを再現しようとするとどうしても無理が出てきてしまったり、ぎりぎりまで調整していただきました。
アルティメットゆい オーバーサイズの服ってモデリング自体は簡単にできるんですけども、実際に動かすとなると難しいですよね。リアルに比べるとアバターの肩幅は極端に狭いのでドロップショルダーをやろうとすると、癖が出てきてAラインになってしまうので難しいのが分かります。
ーーリアルのトレンドを抑えようとすると難しいってわけなんですね。
アルティメットゆい 作れるものと作れないものが分かれていて、例えば重ね着やレイヤーで着る服は難しいですね。服の重なりが上手く処理できず、デニムから中の服が出てしまうような感じになってしまいます。
木下 かなり頑張ってもらったので、CornetさんがTwitterで疲れたって言ってたのは完全にうちのせいです。Cornetさん、本当にありがとうございます!
前半はここまでになります。後編では、BEAMSがVRに興味を持ったきっかけから、セレクトショップのBEAMSだからこそできる役割についてお届けします。
こんにちはJONERと言います。オシャレをするのが好きで、VRChatでリアクロ集会というファッションを通じてユーザーが交流するイベントをやっています。