10月4日、メタバースの演劇コミュニティ「一般社団法人メタシアター」が開発する「総合芸術劇場Dramapia」がプレオープンしました。
「総合芸術劇場Dramapia」は、VRChatに構築された大型劇場ワールドです。市や区が運営するような劇場を模しており、2種類の舞台、稽古場、ミーティングルーム、カフェなど、演劇制作に必要な設備がすべて揃っています。
VR空間で活動する演劇のコミュニティであり、交流の場としての役割を担おうとするメタシアターにとっては、いわば「拠点」となるような場所です。
そんなワールドの制作を担当したのは、youyouさん。メタシアターの代表理事であるぬこぽつさんの要望を受け、工夫を凝らして作られたとのことです。
今回は、プレオープンイベントで公開された「総合芸術劇場Dramapia」の内部を紹介します。
ギミック盛りだくさんの舞台などの豊富な設備
「総合芸術劇場Dramapia」は3階建てで、豪華なロビーを始めとした多くの設備を備えています。
2種類の舞台、稽古場、ミーティングルーム、カフェなどを備え、劇場としての機能を1つのワールドに充実ぶりです。
現実と同様に開閉する自動ドアから、建物へ入っていきましょう。
メインホール「PLAY HALL」
「総合芸術劇場Dramapia」のメインとなる舞台が「PLAY HALL」です。
本物の演劇場と見紛うばかりの造りや、舞台の雄大さは、訪れるお客様を歓迎してくれます。名称は、東京・池袋の東京芸術劇場のホールに由来するそうです。
舞台には、照明やセリといった実際の舞台にも使われている装置を完備。これらの装置は、すべて裏のコントロールルームで、操作できます。
照明の操作も多彩で、様々なジャンルの演目でその本領を発揮。アバターのシルエットを映し出す演出や、アバター追従機能を備えています。
コントロールルームからは舞台と客席が一望でき、最適なタイミングで舞台装置を操作できます。舞台袖やキャットウォークへの移動用には、ワープギミックも用意されています。
劇場入口手前には待機スペースがあり、扉の開閉もコントロールルームから行えます。
総合芸術劇場Dramapia 第二の舞台「円形劇場」
メインホール「PLAY HALL」に続いて、第二の舞台、円形劇場を紹介。
中央に位置する円形の舞台を、360°ぐるりと客席が囲む形となっています。円形劇場は、ダンスや歌など、演劇以外の用途にも使用できる舞台として制作されました。
もちろん、この舞台にもスポットライトなどの照明やセリといった舞台装置が取り付けられており、円形劇場用のコントロールルームから操作できます。
入口前には、横断幕のようなモニターが設置されており、上映される演目によって表示を変更できます。舞台のポスターや出演陣のポスターを並べると圧巻です。
また円形劇場から見渡せる外の景色も美しく、噴水のある広場を一望できます。
円形劇場は建物の3階に位置しています。1階と2階を吹き抜けにした構造で、広いロビーの真上に円形劇場があります。現実にはあり得ない構造ですが、物理法則にとらわれないバーチャル空間だからこそ実現できた設計です。
稽古場
役者たちは日々の稽古を通して技術を磨き、舞台を作り上げていきます。「総合芸術劇場Dramapia」には、役者の努力を支える、広々とした稽古場が用意されています。
稽古場では、一度に多くの団員が稽古が可能。ミラーは大きいものが備えられており、一緒に稽古する団員たちを見渡せます。
タイマーやバミリも完備。バミリはPLAY HALLと同じ大きさで、セリの場所も表示されるため、本番を想定した稽古ができます。
ミーティングルーム
舞台や稽古場に加えて、ミーティングルームもワールド内に用意されています。ここまで揃えば、同一ワールド内で活動が完結します。
これまでにも稽古に使えるワールドはありましたが、その場で打ち合わせをすると話し声が聞こえてしまい、会話に集中しにくいことがありました。このワールドでは、同じワールド内に稽古場とミーティングルームが分かれているため、ワールドを変える必要がありません。
Theater Cafe
「総合芸術劇場Dramapia」内には、舞台に直接関わるもの以外にも演劇談義に花を咲かせられるカフェが併設されています。
細かなこだわりポイントとして、座席の近くに充電用のUSBコネクタとコンセントが用意されています。
カフェには、VRChatでよく見かけるコーヒーメーカーが設置されており、カフェスタッフが一杯一杯丁寧に淹れてくれます。カフェスタッフには他の店舗型イベントでのスタッフ経験がある方がいるため、本格的なカフェ体験ができます。
今後はカフェでイベントが開催される予定とのこと。演劇好きな方はぜひ訪れてみるのもいいでしょう。
「総合芸術劇場Dramapia」を作った理由
なぜ、ここまでこだわって「総合芸術劇場Dramapia」を作ったのでしょうか?
メタシアター代表理事のぬこぽつさんが、日本の現代演劇界で活躍する演出家「平田オリザ」さんの塾生をしていた時に、日本とヨーロッパの演劇の違いについて学んだことが、「総合芸術劇場Dramapia」を制作するに至ったきっかけでした。
日本とヨーロッパの劇場の違いには、演劇場の運営形態の違いがあります。
日本では貸館営業が主流で、劇団に貸し出すものとして運営していることがほとんどです。一方、ヨーロッパでは演劇が公共事業扱いになっており、劇場に予算が付きます。つまり劇場内でアーティストは舞台の制作だけに集中できるのです。
日本でも行おうとした事例がいくつかありましたが、うまくいった例はなかったそうです。しかし、バーチャルならば実現できるのではないかと考え、「総合芸術劇場Dramapia」の制作を始めたそうです。
「総合芸術劇場Dramapia」の今後
Dramapiaは今後、公演機能がロックされた状態で、パブリックに近い形で公開される予定です。公演で使用する際は、公演周りの機能がアンロックされます。
2024年はメタシアター演劇祭で使用され、2025年1月からは他の団体でも使用できる予定です。
また、Dramapiaを使用する団体には、劇場所属のスタッフによるサポートもしていくとのことです。
演劇関係者の方は、ぜひメタシアター演劇祭で会場をチェックして、来年以降の公演場所として検討してみてはいかがでしょうか。
●参考リンク
・Dramapia公式X
・メタシアター公式サイト
・メタシアター公式X