8月30日、国内シェア1位の音声認識エンジン「Ami Voice」を開発する株式会社アドバンスト・メディアが、ソーシャルVR「VRChat」にて同プラットフォーム向けとしては初となるAI音声対話アバター「AI Avatar AOI」の開発を発表。お披露目体験会を実施しました。
「AI Avatar AOI」は、同社の開発する音声認識エンジン「Ami Voice」を利用した、ユーザーとの対話が可能なNPCアバターです。VRChatにおいて、外部ツールとの通信を可能とする機能「OSC」を利用しており、ひとつのアバターとして同社開発のソフトウェアと連携、全自動での移動や対話を実現しています。
メタカル最前線では、この「AI Avatar AOI」(以下、AOI)のお披露目会に参加。実際に対面し会話をしてきました。AI×メタバースの最先端ともいえる同製品、さっそく当日の様子をレポートしていきたいと思います!
無限の可能性秘めるAIによるアバター接客 開発の背景について
同製品を開発したアドバンスト・メディアは、主にカスタマーサービスの領域にて活躍するテック系の企業です。これまでは、主に対面での接客や、オペレーター通話などがメインだったカスタマーサービス領域ですが、コロナ禍の影響もあり、最近ではチャットボットや、SNSなどより多様化が進んでいるといいます。
そんななか、新たな領域として誕生したメタバース。同社によると、メタバースでのカスタマーサービスは、既存のチャネルでは実現できなかった音声・テキスト・映像・自動化のすべての要素を包括できる可能性があると主張。ほかのチャネルでは実現しえない独自性と無限の可能性を持つ新たなチャネルとして強く注目していることを伝えました。
「AOI」は、ワールドに依存することなくVRChat上のアバターとして動作する対話型AIです。カスタマイズ性が高く、アバターの機能を用いてどんなワールドでも自由に移動し、任意の説明を365日24時間自動で実施することができます。また、利用用途に合わせてアバターの外見を変更でき、ユーザーとの対話はログを取得することが可能です。
これまで、「アバターワーク」として注目を集めていた、ショールームや展示会イベントでのコンシェルジュ業務や、販売・接客の業務などを利用シーンとして想定しています。
実際に会って話してみた!新鮮なAIとの会話体験
今回の記者会見では、実際にVRChatの特設ワールドにて「AOI」のデモを体験できました。ソーシャルVR上では、通常そのすべてのアバターは操作する人間がいるため、無人のAIアバターというのは非常に新鮮な体験です。
まず、会場へ入場したら通常のプレイヤーと同じように立っていたAOI。アドバンスド・メディアの担当者が近づくとさっそくそれを感知し「メニューからお話しください」とひとこと。担当者が「挨拶をして」と話しかけると「みなさまこんにちは、ただいま紹介にあずかりましたAOIです。本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」と会話を続けます。
イメージとしては、「Siri」や「Alexa」などの音声アシスタントに近い会話です。しかし、実際に目の前に人の形をしたアバターがいて、発話に合わせて自然に動く姿には普段のメタバースにはない新たなワクワクを感じました。ちなみに、この自然な所作はメタバース上で活躍するプロアクターチーム「カソウ舞踏団」のyoikamiさんが指導を行っているそうです。
さらに続いて、「ご案内差し上げて」と話をかけると、AOI自身が所定の場所に歩いて移動して、来場者を案内します。この案内機能は、事前にアバターギミックで位置を指定することでワールドに依存せず任意に設定できます。VRChatでNPCのAIアバターがプレイヤーと同じようにふるまっている状況には、まるで初めてペッパーくんを見たときのような不思議さがありました。
AOIにはいくつか対話のモードがあるようで、飲み物の前に立っているAOIに「ワインが飲みたい」と話しかけると「品種ごとに適する土壌には違いがあるとされているようですね」と気の利いたうんちくを返す場面も。基本的には、「AmiVoice」の音声認識にて事前に設定した特定のキーワードを抽出し、それに対応するセリフを返すという仕組みだそうです。
活用次第では、幅広いシーンでの利用が見込めて、もしかしたら今後メタバース上でこうした対話型のNPCアバターが活躍する時代がそう遠くない未来にあるのではないかと期待感が高まるお披露目会でした。
この「AOI」の体験ワールドは、本日9月2日の14時まで「AOI VR-Agent」へJOINすることにて体験が可能となっています。現在はまだ開発中とのことで、実際のリリース時期や導入コストは未定です。気になる方は、まず「AOI」との会話を体験してみてはいかがでしょうか。
●参考リンク
・プレスリリース
・アドバンスド・メディア公式サイト
・AmiVoice技術発信アカウント(Twitter)