【PR】「VAGRANT」ブランドインタビュー 衣装制作で一番大事なのは「愛」アバターの魅力を考え抜く

みなさん、「VAGRANT」というバーチャルファッションブランドをご存じですか?

メタカル最前線を普段から読んでいただいている読者の方であれば、連載「週刊VRChat向けBOOTH商品トレンドランキング」にて「ファースト・ラブ」「ナイト・イン・シャンハイ」などの商品名が印象に残っているかもしれません。いまや、新作商品を出すたびに大きな話題を呼ぶVRChat向けアバターファッションブランドの中でもトップクラスのショップです。

しかし、そのオーナーについて深く知る人は少ないでしょう。今回は、そんな「VAGRANT」のオーナーであるRain Minstrel(以下、レイン)さんにVRChat上でインタビューを敢行。彼の「VAGRANT」に込める想いをお聞きしてきました。

日本語と英語と韓国語の3ヶ国語を操るトリリンガル、そして元インディーズゲームクリエイターという多彩なバックボーンを持つRainさんから、衣装モデリングをはじめたキッカケから、制作の際に大切にしている「愛」についてなど、幅広くうかがえたので、ぜひ最後までご覧ください。

本記事は、メタカル最前線公式FANBOX「プレミアムプラン」加入者向けPR特典にて執筆されたものです。詳細はこちらのリンクをご参照ください。

プレイ時間が3000時間を超えた頃にモデリングを始めた

――本日はよろしくお願いします。まず、「VAGRANT」はRainさんお1人で運営されているブランドなのでしょうか?

レイン:
そうですね。1人でやってます。ショップを開設したのは、2021年10月頃でした。ちょうどその頃にVRChatのプレイ時間が3000時間を超えたんです。当時は、アバター改変をしたり、フレンドさんたちとワールド巡りしたりと、楽しく遊んでいたんですけど、「3000時間もやったし、何か得るものがあってもいいんじゃないかな」と思い立ち、一ヵ月前の9月からblenderを触り始めたんです。

左:筆者(アシュトン) 右:「VAGRANT」オーナーのレインさん

――かなりVRChatで遊んでからだったんですね。VRChatはいつ頃から始めたんですか?

始めたのは2018年くらいですね。それまでは、友人とSteam向けにインディーズゲームを作ってました。アーリーアクセスで販売したりして。それがひと段落ついたあと、しばらくしてふと「最近、VRって聞くけど、面白いのかな」と思い立ったんです。

それで、さっそくデパートにOculus Riftを買いに行って。当時は、VRChatも知らなかったので、とりあえずゲームをいくつか遊んでみました。一ヵ月くらいいろんなゲームをプレイしてみたのですが、当時はまだゲームタイトルも少なくて、だいたい人を倒すかパズルするかみたいなものばかりで。ゲームクオリティで見ても、長さで見ても満足のいくものがなく「VRは面白いけど、面白いゲームはないな」という印象でした。それで返品も考えていたんですが、たまたまSteamで「VRChat」を見つけたんです。

最初、「なんだこのゲーム」と思ってインストールして実際にやってみたら、「なんだこのゲーム」と思って(笑)。目的があるわけでもないし、なんか人たちが話してるなと。コミュニケーション系のゲーム?ロールプレイをするゲームなのかな?としばらく観察してるうちに、なんだか不思議なゲームだなとハマっていって。現実には絶対にないような、カオスな感じが好きになりました。

――もともとインディーズゲームを制作されていたんですね。

そうですね。あと、ドット絵とかも描いてました。ドット絵だけだとこの先に作れるゲームの幅も広まらないという印象もあって、最初はその下準備として3Dモデリングを始めたというのもあります。

――モデリングの勉強はどうやってしましたか?

実は、モデリングの勉強をちょうど始めようと思っていた時に、フレンドのSiromoriさんにVRホラーゲームの「PHASMOPHOBIA」を一緒にやろうと誘ったことがあったんです。その時に、2人だけだと心細いからと、Siromoriさんの仲間内で、とあるDiscordサーバーに誘われたんです。

Siromoriさんは、BOOTHショップ「Siromori」のオーナー。代表作に「Urban Tech Obsidian」などを持つ人気ブランド。「VAGRANT」とは、BOOTHショップの開設時期がほぼ同じ”同期”とのこと。(TwitterBOOTH

もちろん、勉強自体は1人で黙々と動画などを見ながらしていたんですが、いざアクセサリーを作り始めた頃に、そのDiscordサーバーで画面共有をしていたら、分からないところを教えてくれたりアドバイスしてくれる方が出てきて。実はそれが、「#Ene_Collection」Eneさんなんです。

そうやって、先輩クリエイターさんたちに教えてもらえる環境があったのはラッキーでしたね。

最初に作った衣装は「ファースト・ラブ」のリメイク元

――そこから、商品販売に漕ぎだしていったと。

そうですね。それでアクセサリーを作ってみて。VAGRANTとして最初に販売をした衣装は、舞夜ちゃん用のオフショルダーセーター + ジーンズです。実はこれ、今年1月に販売した「ファースト・ラブ」のリメイク元にあたるんですよ。

ちょうどその頃にアバター制作者のキュビさんが、舞夜ちゃんの準備をしていて。その前の狐雪ちゃんを出されていた頃から、個人的に仲が良くて、「最近モデリングをはじめて、アクセサリーとか衣装とか作ってるんだよね」という話をしたら「私のアバターで作ってみる?」と提案してもらったんです。

――キュビさんからの提案だったんですね。そこから衣装コンセプトを練っていったと。

舞夜ちゃんをいただいて、はじめてUnityで眺めたときに、僕のイメージとして、この子は恥ずかしがり屋で、ちょっと無口だけどそういったところがかわいくて、お茶目な一面もある、そんな女の子かなと思ったんです。

デフォルトの衣装は、魔女とメイドを合わせたような衣装ですが、ファンタジー系の衣装に飽きて、改変するぞとなったユーザーさんは何を求めるんだろうと考えて。それで、ちょうど時期的にも冬に差し掛かっていたので「タートルネックが似合いそうだ」と思いました。タートルネックだけだと寂しいので、それをインナーにオフショルダーセーターと合わせて、ジーンズを履かせてみたら、「これはなかなかいい感じだ。作れるぞ」という経緯でした。

センシティブさは取り入れなきゃという使命感がある

――キュビさんといえば、最新作の「萌」発売に合わせて販売した「ナイト・イン・シャンハイ」は大きな反響を呼びましたよね。

「ナイト・イン・シャンハイ」は、販売が少し遅れてしまったのですが、もともと「萌」と同時発売の予定でした。当時、20ショップ以上が、同時発売キャンペーンに参加していたので、正直出す前は不安だったんです。新しくてインパクトがあるものでないと埋もれてしまうなと。

「萌」の素体をいただいたときに、この子に似合う衣装は何だろうと深く考えました。フレンドさんとかとも話してみたら、彼はバニーやチャイナ服が好きだと話していて。ただ、「バニー」「チャイナ服」だと想像の範囲内でインパクトがないなと思ったので、これを融合しちゃおうと。それで、チャイナっぽいイメージをさらに加えるために、ふんどしもモチーフにしてみたんです。そしたら「ナイト・イン・シャンハイ」になりました。

――あれは、なかなか攻めたデザインでしたよね。

実はちょっと申し訳ない気持ちがあるんです。僕の感覚が少しずれているのかもしれませんが、僕にとっては「ナイト・イン・シャンハイ」って比較的健全なイメージだったんですよ。ただ、実際に出してみると「なんだこのエロい服は」「萌ちゃんのエロい服はナイト・イン・シャンハイだよね」というような感想がいくつも見つかって。思ったよりもヤバかったのかなと(笑)

――そこは想定外だったんですね(笑)

僕がアバターの衣装を作るときは、素体の魅力を最大限に引き出したいと考えてるんです。特に、お尻や胸の造形は、アバターでも最も大事な要素なので、完璧でなければいけないと考えていて。衣装モデリングの時に、他の部分は比較的すんなりできても、胸の部分とかはそれだけで4、5時間かけたりしています。

VRChatは男性ユーザーが多いですよね。しかも、アニメ美少女の文化が継承されていると思います。そうすると、センシティブさは絶対に必要な要素なんです。一番求められているというか。その要素はどういった形であれ、絶対に取り入れてあげないとなという使命感があります。

――なるほど。とはいえ露骨すぎても品位に関わるので、そのバランスは難しいですよね。

そうなんです!僕が考えているのは、「フレプラで着られるか」という基準です。パブリックまでは正直望んでいません。「ナイト・イン・シャンハイ」は少しギリギリかもしれませんが。

改変する人ってある程度ヘヴィーユーザーなので、パブリックにはそんなにいかないんじゃないかなと考えているんです。パブリックだとアバター・リッピングやナンパの問題もあるので、改変に力を入れているような当店のユーザー層は、フレプラが一番多いんじゃないかなという想定で運営しています。

衣装制作で一番大事なのは「愛」

実は、衣装制作を始めて最初の数ヵ月は、「他のアバターには対応しない」という方針だったんです。それこそ、2作目にあたる「ファンタスティック・ベイビー」も、制作者のジンゴさんから竜胆のデータをいただいていて。「竜胆ちゃんが託されたなら、竜胆ちゃん専用の衣装を頑張って作るしかない」と思って制作しました。

ジンゴさんから、竜胆ちゃんのキャラクターとしての性格や設定もヒアリングしてデザインしてるんです。僕は、衣装制作をするときにアバターの性格や外見や表情や設定までなるべく詳細に考えて、「この子が着そうなものって何だろう」という軸でデザインしています。キャラクターデザインに近い考え方ですね。そうすると、「この衣装はこの子だけの衣装だ」と思っちゃうんです。

「ファンタスティック・ベイビー」を制作して、少ししてから周りのクリエイターやユーザーからも他アバターにも対応してみたらどうかという声をいただいて、段々と対応するようにしていきました。

ただ、対応するといっても、単にサイズを合わせてウェイトを塗るというだけではなく、きちんと「素体の魅力を引き出すためにはどうしたらいいんだろう」と考えて対応するようにしています。例えば、セレスティアちゃんならお腹の部分が特に魅力的なので、それを強調してあげられないかとか。必要に応じて、輪郭などを調整してあげたりして、きちんとフィットするように気をつかっています。

――キャラクターとしてのアバターを強く意識されているんですね。

そうです。VRChatにおける衣装って、キャラクターがまとってこそ意味があると思います。そのキャラクターを含めて、それこそ表情アニメーションの一覧とかまでにらめっこしながら、作者が意図したイメージって何だろうと考え抜いて作っています。

それに、衣装を作る際に、アバターを眺めていると自然と愛着が湧くんです。なるべくよくしてあげたい、似合うものを着せてあげたい、この子が着たい衣装を着せてあげたいと思います。

僕は「愛」が重要な要素だと思うんです。VRChatに対する愛や、アバターに対する愛とか。単にお金のためだけにやるとかではなく、このゲームに興味があり、アバターに興味があり、愛着があり、作者さんのスタイルが大好きで、そういったことが大切だと思います。

――ちなみに、「VAGRANT」というショップ名には何か由来があるんでしょうか?

「VAGRANT」って、英語で「彷徨う人」という意味なんです。VRChatに来てる人たちって、みんな色んな意味で何かを探している人たちだと思います。新しい技術を見に来たり、新しい文化に触れたり、新しい趣味の合う人たちに出会うためだったり。そんな彷徨っている人たち、新しい世界で、新しい何かを発見しようとしている人たちを応援するブランドでありたいなという想いから「VAGRANT」というショップ名にしました。

――応援したいという部分はもう少し深掘りするとどういう意味でしょうか?

ショップとして、かっこいい服やかわいい服を提供して、ユーザーがVRChat内で衣装を着ますよね。そのアバターを纏って、いろんなことをしていくと思います。その思い出の一部になれるというのはとても魅力的ですよね。衣装をまとうことで、思い出がより美しくなるんじゃないか。そうしていきたいという意味での応援です。

――長い時間ありがとうございました。最後に、読者に向けてメッセージ等ございましたらお聞かせください。

「VAGRANT」は毎回新しい挑戦をしていきたいと思っています。新しいジャンルで会ったり、クオリティであったり、作るたびに成長を迎えたいと思うので、これからも末永くよろしくお願いいたします。

また、ユーザーのみなさんが衣装を使っている姿が見られると本当に勇気づけられます。ぜひ、ツイートするときは「#VAGRANT」をつけてツイートしてください。みなさんが着ている姿が見られると嬉しいです。

●参考リンク
「VAGRANT」公式Twitter
「VAGRANT」BOOTHショップページ

ABOUT US
アシュトン「メタカル最前線」初代編集長
2021年3月より「VRChat」はじめソーシャルVR/メタバースの魅力を発信するメタバースライターとして活動。週100時間以上仮想空間で生活する「メタバース住人」として、AbemaTV「ABEMA PRIME」、関西テレビ「報道ランナー」、TBS「サンデー・ジャポン」ほか多くのメディア取材を受ける。2022年4月に「メタカル最前線」を創刊。