8月5日、clusterにて開催されたメタバース音楽フェス『スマメタ Smile the Night presented by Metaverse Collection』(以下、スマメタ)を皆さまはご存知でしょうか?
最も注目すべきは、VRChatの音楽イベント『SMILE THE NIGHT』とclusterのアバターファッションイベント『Metaverse Collection』が強力なタッグを組み実現した夢のコラボフェスというところです。
そこで、現地に招待された筆者が、当日の様子を皆さまにレポートとしてお伝えしながら感想と共に振り返っていこうと思います。
なお、こちらの記事は配信アーカイブと一緒にお楽しみください。
本フェスに登場したのは、VRChatやclusterで活躍しているVR音楽アーティスト総勢8名。
順に「ViANKiE」、「Sha-la」、「乙女雨☔」、「Yamamii」、「Eneko=Stinger」、「93poetry」、「潮成実」、「YSS」(敬称略)とソーシャルVRの音楽に注目していれば、誰しもが一度は名を見聞きしたことがある錚々(そうそう)たる顔ぶれ。
そんな豪華絢爛なアーティストたちがランウェイの上で、思い思いの熱いパフォーマンスを披露してくれるというのです。胸が高鳴りますね。
ということで、この実力者揃いの面々にフォーカスを当てながら『スマメタ』を紹介していこうと思います!
目次
まずは、会場から
会場に入ってすぐ目に映ったのは、出演アーティストたちの立ち絵が飾ってあるスタンディです。もちろん、真ん中の隙間に自分が入り込み写真を撮る事もできます。こういうおもてなしがあると、アーティストのファンとしては嬉しい限りですね。
これまでに行われた『Metaverse Collection』のポスターも展示されていました。
そして、いよいよオープニングへ。
イベント運営であるPapaさん、今回出演アーティストでもあるEneko=Stingerさんが本フェスについての説明をしてくれました。
このイベントは、第1部と第2部に分かれた構成になっており、全3時間超えのライブフェスとなっているということで圧巻のボリューム感。これには主催・運営の”本気”を感じました。
R&Bの女王『ViANKiE』
さて、最初に登場したのは、VRChatやYouTubeなど幅広く活動している実力派バーチャルシンガー『ViANKiE』です。
R&B/ソウルを得意とする彼女は、その確かな歌唱力と持ち前の明るさで会場にグルーヴ感をもたらし、スタートダッシュには有り余る勢いを見せてくれました。
ViANKiEといえば、個人的にお気に入りの曲は『Morning Firework』です。この日も3曲目に披露してくれました。
エレピとベースラインがなんともセクシーな1曲なのですが、2番のAメロが突然Jazzyな曲調に変わり、それがオシャレでたまらないのです。そして、ViANKiEがMorning Fireworkをライブで歌うということは、観客も黙ってはいられません。ViANKiEが「せーのっ!」と声を掛ければ、観客も「Morning Firework~!」と一緒に合唱。曲名の通り、会場が華やかに弾けます。
そして、4曲目の『LaLaLa to You』を見ていて思ったことなのですが、ViANKiEは心の底からライブを楽しんでいる。それが圧倒的な自信となり、見ている観客も促されるように笑顔になれる。彼女の歌を聴いていて心が朗らかになるのはそういう理由からなのでしょう。
現実と仮想を行き交う歌姫『Sha-la』
2番目に登場したのは、『Sha-la』。VSingerとして幅広くバーチャル空間で活動している彼女ですが、現実世界でもオリジナルバンド『カレ枝ニハナ』のメインボーカルを担当。リアルとメタバースを両立している歌手はなかなか珍しいのではないでしょうか?
ロックバラードを得意とするSha-laですが、この日最初に歌ったのは『ユメウキヨ』。この曲は、尺八の音から始まり”和”を取り込んだ、ロックバラードとなっています。桜がはらりと舞うようなリズムに、Sha-laの透き通る歌声がミステリアスで艷やかな雰囲気を作り上げます。
個人的に、面白いと思った楽曲は3曲目に披露してくれた『終わりと始まり』です。”東方”ぽさを感じさせるこの楽曲ですが、4拍子と3拍子が各所で切り替わり、プログレッシブなロックバラードになっています。
そして、最後に披露してくれたカレ枝ニハナのオリジナル楽曲『荒野に咲く』。アップテンポなロック曲で、Bメロで大きく転調したりと面白い楽曲ですが、サビの盛り上がりは思わず腕を上げながらジャンプしたくなってしまうほど疾走感に溢れていました。
1,ユメウキヨ
2,風鳴り
3,終わりと始まり。
4,荒野に咲く
いつも濡れてる雨女『乙女雨☔』
続いて、3番目に登場したのは、あめちゃの愛称で同じみの『乙女雨☔』です。VRChat内で期待されている人気急上昇中のバーチャルストリートミュージシャンといえば彼女なのですが、この日もパワフルかつキュートな世界感をスマメタで見せてくれました。
開幕から元気いっぱいに繰り出したのは、femme fataleの『だいしきゅーだいしゅき』です。戦慄かなのと頓知気さきなが歌う如何にもな”THE アイドルソング”を乙女雨☔がカバー。乙女雨☔が歌うと、カバーでも彼女の楽曲になってしまうのは面白くも流石だと思いました。
「あたしのこと知って、あたしじゃないなんて終わってんねー!!」「大至急だいしゅきになれー!!」と叫ぶ姿も挑発的で、会場のボルテージは盛り上がる一方でした。
そして、驚いたのは2曲目に披露してくれたカヒミ・カリィの「ハミングがきこえる」です。
会場で聴いていた筆者は「この曲、どこかで聴いたことがあるような……?」と思っていたのですが、それもそのはず、90年代後半にちびまる子ちゃんのOPで使われていた曲なのです。原曲はカヒミ・カリィがウィスパーボイスで歌っているのですが、乙女雨☔カバーではかわいく力強くそして大人な雰囲気を内包した曲に仕上がっていたのです。先述した通り、これが彼女の歌い方の魅力で”乙女雨☔ワールド”そのものなのです。
そして、最後に披露してくれた『虹はキライ』は乙女雨初ソロオリジナル曲です。
こちらの楽曲は、私が一度記事にして解説しているのですが、このライブを通して聴いた感想としては”この曲が乙女雨☔の初ソロ楽曲で良かった”という確かな実感です。キラキラと輝く曲の中に、雨の日のような少しメランコリックな歌詞。彼女のすべてがこの曲に詰まっています。
1,だいしきゅーだいしゅき
2,ハミングがきこえる
3,オンリーワンダー
4,虹はキライ
存在がハロウィンそのもの『Yamamii』
さて、第一部の最後を飾ったのは、ハロウィン好き音楽家VTuberの『Yamamii』です。VRChatやclusterで活動中の彼(彼女?)ですが、一言でまとめると”とんでもなく面白い”。もう一言付け加えると確実な”狂気”です。
写真を見て頂けると分かると思うのですが、Yamamiiはとにかく動き回る! 前へ後ろへと縦横無尽、かと思えば観客の背後に忍び寄ったりと、その姿はまさにハロウィンのいたずら好きな幽霊そのもの。
そんなYamamiiの楽曲で注目したいのは、2番目に披露してくれた『Pumpkin’s Scream』です。
ミュージカルのように展開が目まぐるしいこの楽曲ですが、音楽に少し詳しい人なら『EL&P』や『Dream Theater』などのプログレッシブ・ロックを想起するのではないでしょうか。ハロウィンというポップな皮を被り、それでいてとても複雑で”狂気”を感じさせる1曲です。そんな楽曲を、幽霊のように舞い踊りながら、透き通ったハイトーンで歌い上げるYamamiiに私は脱帽せざるを得ませんでした。
そして、最後に披露してくれた『Trick or Treble』はこのライブで初披露の楽曲ということで、ファンには嬉しいサプライズが用意されていました。会場をどう楽しませるか、そんなYamamiiのプロ意識を感じさせるライブになっていたと思います。
1,Sweetie Spooky Party!
2,Pumpkin’s Scream
3,踊 – Jazz arrange
4,The Zombie Streamer
5,Trick or Treble
ということで、第1部はここで終了です。まだまだ、熱いアーティスト陣が後半に控えています。
なお、突然のことで写真が撮れていないのですが、第2部のステージへ移動する方法は”Yamamiiが呪文を唱えると、会場の床がぱっくりと割れ地獄に落ちる”というものでした。何を言っているか分からないかもしれませんが、自分も何が起こったのか分かりません。超能力だとか催眠術だとかそういった類ではなかったと思います。詳しく知りたい方はアーカイブをチェック!
未来から来たネコ型アンドロイド『Eneko=Stinger
いよいよ後半戦ということで、第2部の最初に登場したのは『Eneko=Stinger』です。
“2122年の未来から来たネコ型アンドロイド”というバックボーンを持つ彼女は、精巧で冷血なパフォーマンスを……ということはなく、とにかくノリの良いキュートでセクシーな歌手でした。
スマメタでは司会も担当していることもあり、トークの勢いも一見の価値ありですね。
1曲目に披露してくれたのはbakerの『夏に去りし君を想フ』で、続いて2曲目は新しい学校のリーダーズから『オトナブルー』。どちらも大人っぽく色気のある歌い方で、観客はすぐに魅了されたのではないでしょうか。
そして、3曲目には映画リトルマーメイドから『アンダー・ザ・シー 』が披露されました。意外な選曲に、筆者は驚きを隠せません。ディズニーの楽曲は基本的にミュージカル風で、複数人で歌う楽曲が多いのですが、それをEneko=Stingerは一人で完璧に歌い上げたのです。これぞ”未来から来たネコ型アンドロイド”だからこそ為せるワザですね。
最後に披露してくれたのはAIRから『夏影 -Sumeer Lights-』です。過ぎ行く夏へと向けて届けられるこの歌は、私個人としても大好きな楽曲のひとつです。スローテンポなバラードに込められた想いを紡ぐように歌うEneko=Stingerに、我々は感嘆するしかありませんでした。
余談ですが、MC時に”ガソリンタイム”ということで、エナジードリンクを一気飲みするシーンがとても印象に残っています。未来のロボットはエナジードリンクが動力源なんですね、面白い。
1,夏に去りし君を想フ
2,オトナブルー
3,アンダー・ザ・シー
4,夏影 -Sumeer Lights-
エモ✕ポエトリーリーディング『93poetry』
後半2番目に登場したのは『93poetry』。顔のないポエマー、そしてVR界のポエトリーリーディングといえばこの方ですね。
簡単にポエトリーリーディングを説明すると、”詩を読み上げること”です。曲に合わせて詩を読み上げることで、ラップとは違う美しさがそこに生まれるのです。
1曲目に披露してくれたのは『会話』。現実でもネットでも繰り広げられる何気ない会話。そこにあるそれぞれの距離感、正解や不正解、言葉の暴力性や優しさ、単純に見えてそれらが複雑に絡み合う”会話”というものを93poetryは曲とともに我々に語りかけてくれました。
そして、私が一番心を打たれたのは3曲目の『インターネットお友達』です。
SNSが日常の一部になった昨今、フレンドという概念はより身近なものになったと思います。93poetryは「知り合いと友達のあいだ」とそれを定義します。お互いの顔を知らずとも、住んでいる場所も年齢も性別さえも分からなくとも、フレンドになれてしまう。そんな時代です。
しかし、当たり前に連絡をしあっていたネット友達が突然音信不通になった場合、その弊害を初めて知ることになります。あなたは今どこで何をしているのか。そんな、ありふれたことですら知るすべがない「不安定さ」を思い知ることになるのです。だから、「どうか、幸せでいてください」と遠くから願うことしか出来ない。彼はそんな詩を歌い上げながら、感情的に声を震わせていました。これが本当の”エモ”の姿だと私は思います。
1,会話
2,「エモい」
3,インターネットお友達
4,おしらせ
R&Bの女帝『潮成実』
後半もいよいよ折り返し、3番目に登場したのはシンガーソングライターの『潮成実』です。R&B/ソウルを得意とする彼女は、その中性的でスモーキーな歌声とパワフルで確かな歌唱力で、聴いた者の心を必ず鷲掴みにします。ViANKiEを「R&Bの女王」とするなら、潮成実は「R&Bの女帝」ですね。
1曲目に披露してくれたのは、『夜を越えて』です。
日常の一部を切り取ったような歌詞は、”夜”をテーマに、静まり返った街を車で走り抜けながら、空が白けて”君”が消える前に会いに行くといったものになっています。
チルでメロウなこの楽曲は、潮成実のハスキーな歌声と相まって会場を温かく包み込んでくれました。
そこから、一気に会場の雰囲気が変わったのは、3曲目の『Attention』です。
これまでのスローテンポな楽曲とは違い、こちらの楽曲はハイテンションなダンスポップ。まさにサタデーナイトにピッタリな1曲です。観客は飛んで跳ねて大盛り上がりでした。それにしても、ブレスを入れるタイミングが難しそうな曲ですが、難なくと歌い上げる潮成実の歌唱力は流石ですね。
そんな彼女ですが、途中のMCで自分が映ったポスターを指差し「お、顔がいいです! びっくりしました、自分の顔が良くて」とお茶目なコメントも。クールで大人な雰囲気を醸し出す潮成実のキュートな部分を垣間見るワンシーンでした。
注釈:潮成実は性別を設定しておらず、またその解釈は各々に委ねるというスタンスを取っています。
1,夜を越えて
2,音沙汰
3,翳り
4,Attention
5,Itenerary
多彩な音楽ジャンルを横断する『YSS』
さて、スマメタの最後を飾るのは、VRChatを代表する音楽ユニット『YSS』です。
コンポーザーの『yopi』とボーカルの『Sorte』で構成されているこのユニットですが、何と言ってもこの2人が織りなす独自の世界観がすごいのです。様々なジャンルの楽曲を制作している彼らですが、どれを聴いても必ず”YSS”だと分かります。この日もYSSの世界がそこに広がっていました。
1曲目に披露してくれたのは、『Beyond Our Dreams』。”おんゆー”といえばこの曲、YSSの代表曲ですね。
この曲が流れた瞬間から空間が広がるような錯覚に囚われます。そして、続いてくるのは浮遊感。これには、思わず観客も左右に揺れ始めます。
そして、Sorteの煽りが来れば会場の全員が「おんゆー!」と歌い始めます。この一体感、そして空間に溶け込んで混ざり合ってしまうような心地よさがたまりません。
2曲目の『Not Enough』はヒップホップとミクスチャーロックを取り入れたような楽曲ですが、やはりこの曲もYSSらしさが健在です。揺らぐようなサビのメロディに光のパーティクルが会場を包み込みとても綺麗でした。
しかし、改めて考えると、4曲目の『SAME』はトラップ/ドリル、5曲目の『Toward The End』のサビではカラーベースの要素を取り入れるなど、本当にジャンルの幅が広い。YSSを聴いていればクラブミュージックはすべて網羅出来てしまうのではと思うほどです。
さて、フィナーレを飾る6曲目は『Carry On』です。ギラついたギターのリフが鳴り響くなか、どんどんと疾走感を展開していくフューチャーベース、これは最高の締めくくりですね。観客のボルテージも最高潮で、会場は大きなうねりとなり渦巻いていました。
1,Beyond Our Dreams
2,Not Enough
3,envy
4,SAME
5,Toward The End
6,carry on
まとめ
以上が、スマメタのおおまかなレポートと感想になっています。
私個人としては、メタバースの大きな可能性を感じることが出来た一日だったと思います。
現実世界と仮想世界には垣根はありません。どちらも同じように人々が活動し、生きています。
だからこそ、もし現実世界に不自由を感じたとき、仮想世界へ気軽に足を運んでみてはいかがでしょうか?
ファッショナブルに着飾ることも出来ますし、自分を表現するための場所もたくさんあります。
そうすると、観客としてアーティストから勇気をもらったり、逆にアーティストとして観客へ感動を与えることになるかもしれない。
それらの集大成が、今回のスマメタなのです。
そして、すべてを紹介するにはあまりに濃密すぎるフェスだったため、割愛してしまっているところが多くあります。ぜひ配信アーカイブのほうを見て、スマメタのすべてを楽しんでいただきたいと私は思います。
最後に、今回のイベント運営を担っていたあだちさんとPapaさんからのコメントを頂いたので掲載しておきます。
●あだち
今後も、メタバースを盛り上げてまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
●Papa
今回の音楽フェス「スマメタ」はみなさまのおかげで最高の盛り上がりを見せ終えることができました。今後もVRChat、clusterを始めとするメタバースでイベントを開催していきますので今後ともよろしくお願い致します。
1,HIGHWAY
2,Quiet Room
3,Morning Firework
4,LaLaLa to You