大成功で終わったファッションショーの裏話がここに 「”Voyage” 2023Winter」アフターインタビュー 

12月23日、VRChatにてイベント「Virtual Fashion Collection ”Voyage” 2023Winter」(以下、Voyage)が開催されました。

主催はファッションブランド「Melty Lily」オーナーのゆいぴさん。すべてのショップから新衣装を発表、さらに新ブランドをお披露目する舞台となりました。

協賛企業の中には、BEAMSも参加。驚きの演出によって話題になりました。

2023年のバーチャルファッションにおける総決算となったVoyage。今回は主催のゆいぴさん、ディレクターのPONYOさんにインタビューを行いました。

参加ブランドに関する裏話からPONYOさんのディレクター卒業についてまで掘り下げていきます。

終わったことへの安心感

ーー3回目のVoyageおつかれさまでした。終わった今の心境をお聞かせください。

ゆいぴ 今回は「やっと終わった」でした。1回目は私すげーと思い、2回目はみんなすげーという感じだったんですが、もう今回は燃え尽きた感じでした……

PONYO たしかに無事終わって燃え尽ましたね。今回はBEAMSの出展がありました。特に協賛企業ということもあり、そのパートは絶対失敗しないというプレッシャーがありました。インカムで指示を出していたのですけども、BEAMSのパートが終わったときの「ふぅ」って声がすごかったですよね。

ゆいぴ これまではハッピーベースでイエーイとやっていたのですが、今回は特に協賛企業への責任感が全面に出ていたと思います。

ーー前回のアフターインタビューで「熱量を持って関わってくれる企業と一緒にやりたい」と話していましたが、今回の協賛企業とはどのような関係で取り組みをしていましたか。

ゆいぴ そもそもVoyageは往来のぴちきょさんの後押しで始まりました。「ゆいぴちゃんのやりたいことをやりなよ」って。それからずっと全面的に応援してくれています。今回のメタスカの出演も、Voyage側からお願いしたら快く受けてくださってステージとしてお見せできた形です。

ゆいぴ ポリゴンテーラーは、代表のなるがみさんが前回のVoyageを見てくださって、リアルではできないバーチャルのファッションショー要素に感動した!と今回の協賛に繋がりました。

PONYO 配信で途切れてしまったポリゴンテーラーのロゴを見せたいですね。

ゆいぴ ここで改めてお披露目させてください。
協賛企業には会場内のバナーやブースへのロゴのあしらいなどで還元させてもらっています。

ゆいぴ BEAMSにはVoyage側からお声掛けしました。Voyageはリアルとバーチャルの架け橋になるという目的がありますから、VRCでもリアルクローズを展開しているBEAMSには打診したかったんです。

ーーBEAMSから出たバーレスクの衣装なのですが、個人的にショーを見ることもありテンションが上がりました。

ゆいぴ 「オートクチュールのバーレスクドレス」ですね。

今回衣装を作るにあたって、はじめて『バーレスク』の映画を観ました。クリエイター仲間から「バーレスクの映画を見ていないくせに、バーレスクの衣装を作るなんて」って言われていたので。笑 すごく良かったしバーレスクに対する理解度もあがって、映画を観てテンション上がった勢いで作りました。

LAYONの扱いは本当に悩んだ

ーー今回参加されたブランドについてどのようにして選出したのか伺いたいです。

PONYO 選出のキーワードに「ファンタジー」と「リアルクローズ」があります。全部のブランドが出揃うにあたって、2つに分類してバランスを見ました。順番に関して、ファンタジーとリアルクローズが交互に登場しすぎると展開のチグハグさが出てしまい統一感が損なわれると考えて順番を決めました。ただ、LAYONは例外ですね。

ゆいぴ Voyageはファッションデザインの下絵を早めに提出してもらうのですが、LAYONから最初に出てきたのが香水瓶のデザインだったんですよ。

PONYO コンセプチュアルでびっくりしましたよね……

ゆいぴ ファッション「ショー」をわかっているなと思いました。

PONYO もともとLAYONはVRoid向け衣装を作っていて、Voyageに誘った段階で3D衣装をはじめて出した頃だったんですよね。もう3D衣装でここまで仕上げてくるとは思いませんでした。

ゆいぴ Voyageに参加するクリエイターはみんなクオリティを上げてくるんですよ。終わったあとにショップオーナーに「Voyageに出るからめちゃくちゃクオリティを上げました」って言われます。Voyageの主催としてめちゃくちゃ嬉しいんですよ。BOOTHのショップオーナーとしては「うわー出たよ。すごいのが出てきちゃったよ」と頭抱えますね。

なのでLAYONのオーナーであるLYRAさんがVoyageを通して成長していたのを見たときは、苦しさ半分、嬉しさ半分って気持ちでした。

ーークリエイターのジレンマですね。

ゆいぴ 衣装を出す順番としても、LAYONはまだ駆け出しのブランドということもあり最初の方に出すつもりでした。だけど仕上げてきた衣装があまりにもすごくて、後ろに持ってきてプッシュすることにしました。

PONYO 構成を考えるときに一番悩んだのはLAYONだと思いますよ。

ゆいぴ ここまでVoyageのコンセプトにハマる服を出すとは思ってなかったので本当に悩みましたね。

ーー今回は2つ新ブランドを発表されたと思うのですが、こちらはどのような経緯で発表になりましたか。

ゆいぴ 実は面白い裏話があります。会場内にブランド名が書かれたアーチを置いているんですね。アーチを作っている最中に、Yzhaさんに「ショップ名ってどうすればいいですか」と聞いたところ、「柚の葉」でいいですと答えがあったんですね。「本当にこれでいいの?」って聞き返したら、唐突に新ブランドの「fille dé finir.」を立ち上げることになりました(笑)

ーーゆいぴさんが人生を変えてますね。

ゆいぴ もともと新しいブランドを立ち上げたいとは思っていたらしいですけどもね。

ーーアルティメットゆいさんの新ブランドであるMAISON DARC.はどうでしょうか。

ゆいぴ MAISON DARC.はVoyage関係なしにアルティメットゆいさんが企画していました。Voyageで発表してもいいよとのことだったので、ぜひ発表させてくださいと言って決まりました。

ーーMAISON DARC.は演出すごかったですよね。

ゆいぴ あれはもう……嫉妬しちゃいますよね。

PONYO (笑)

ゆいぴ ショップオーナーとしての自分はぐぬぬとなりましたが、Voyageの主催としては完璧だったなという感情です。

ボツになってしまったEXTENSION CLOTHINGの演出

PONYO これは裏話になるのですが、EXTENSION CLOTHINGの方で出した「BY EXTENSION」にボツになってしまった演出があったんですよ。

ーーそうなんですね。

ゆいぴ アレはやりたかった……

ーーどういった演出だったのでしょうか。

ゆいぴ 「BY EXTENSION」はラグジュアリーな衣装なのでホワイトタイガーと一緒に登場する予定だったんですよ。一番前に出たらホワイトタイガーと一緒に、がおーってする演出でした。

Photo by ecochin

ゆいぴ ただどうしてもホワイトタイガーは4本足なので、無限歩行ができないですよね。歩行モーションで対処しようにもモーションを作るのも大変ですし、アクターがスピードを合わせられない可能性もあったのでボツになりました。

ーーMelty Lilyからは前回に引き続きウェディングドレスを出しましたね。ショーの最後のトリとしての存在感もあり、とても素敵でした。

ゆいぴ ヴァイスと一緒に出てきたのがよかったですよね。PONYOさんからのケモノアバターを使いたいという提案を受けて実現しました。

ゆいぴ 当初、提案を受けたとき、お互いが想像するケモノアバターが違ったんですよ。私がイメージするケモノアバターは海外ユーザーが使うカートゥーン調で、PONYOさんがイメージしていたのは美女と野獣で。大きくすれ違っていました(笑)

PONYO ステージから舞踏会のような印象を受けていたので提案しました。1時間ぐらいうまく説明できずにすれ違っていたところ、美女と野獣みたいなことをやりたいと言ったところ、ようやく伝わりましたね。

PONYO ヴァイスを起用した理由としてはヴァイスの持つ高貴なイメージが演出とあっていたこと、もともと製作者のHARIPON!!さんとは以前からVRChatで交流のある方だったことですね。

パワーがあるアーティストとしてPHAZEを起用した

ーー音楽面について聞いていきたいと思います。今回のオープニングステージはPHAZEでしたが、起用の理由はなんですか。PONYO 前回は春夏で華やかなステージが続くこともあり、徐々に盛り上げていく意図もあって潮成実さんにお願いしました。中性的でキレイな歌声ということもあり、バッチリハマっていました。

PONYO 今回はファンタジー路線でやさしいイメージの場面が続くことを想定し、冒頭にパワーがあるノリが強い人を持ってきたほうがいいと思い、PHAZEを起用しました。

PONYO 結果的に冒頭に盛り上がりを持ってきたあとに、衣装の世界観に浸ってもらい、後半にさらなる盛り上がりを用意する流れに持ち込めたと思います。

ーーたしかにPHAZEの楽曲は盛り上がりますよね。

PONYO 界隈が違うとPHAZEのような長年活躍しているアーティストでも知られていないこともあるので、今回の楽曲は「PHAZEといえばコレでしょ」というのを引っ張ってきました。見ている人の反応もファンになったというのが多くて、クオリティの高さでオープニングステージを預けられるのは本当に頼もしかったですね。

ーー他にも、ファッションショーに流れる楽曲もいいですよね。

PONYO 今回が一番苦労しましたね。

ゆいぴ メタスカのときに流れる楽曲が好きですね。

PONYO メタスカの前はAdd+Re:collectionだったのですが、日本語の歌詞でアキバ系を表現する楽曲を使っていました。次のメタスカのパートでは、アキバ系ではない日本語の歌詞を使ったスピード感ある楽曲を使えば世界観的にも繋がりが生まれるのではないかと、こだわりました。

PONYO 演出としてもメタスカでは多くのアクターが出るので詰まらないように、歩くスピードが遅めなんですよ。なので、スピード感を損なわないように速いテンポ感の曲にして、見た目に引っ張られないようにしました。

10回目のVoyageにはみんな集まろう

ーー前回のVoyageでは「ラストの演出が、次の開催への物語に繋がっている」と話していました。今回はそのような繋がりがあるように見えませんでした。今回も次回のVoyageへの繋がりはあるのでしょうか。

ゆいぴ 実は今回も意図してあります。少しわかりにくかったかもしれません。ただ、この場ではどこが次回への繋がりだったのかは言わないでおきますね。

ーーなるほどです。会場を見ると、船から降りたことに驚きました。てっきり、Voyageの旅路は船に乗りながら続くのかなと思っていましたが、降りるに至った経緯を伺いたいです。

ゆいぴ Voyageにとって、船は最初の一歩に過ぎない、会場の一つでしかないんです。船の中ではできないこともありますし。ファッションショーをやる場所にこだわりはないですね。たとえば汚い路地裏などでもやりたいなと思っているぐらいです。
ーー今後の会場がどういう場所になるのか、楽しみにしています!

ーーイベント終了後にPONYOさんが今回をもってVoyageから卒業することを発表され、とても驚きました。改めて、これまでのVoyageを振り返ってみてどうでしたか。

PONYO まず第1回はもう何もわからないまま1ヶ月でやりきった回でしたね。これは最低限やっておかないといけないことをやり抜いた感じでした。

2回目は、今後を続けるのにあたって毎回高コストを掛けていたらやってられないことを考えて、仕組み化をすることに着手しました。

今回は、協賛をしっかり商談を通じて獲得するといったビジネス的な知見を得ることを目標にしました。商談にはゆいぴさんも加わってもらって、学んでいってもらいました。

卒業しようと思ったのは、ゆいぴさんが成長して自発的に動くようになったのが大きいです。ゆいぴさんの活躍によって今回は成り立ったと思ったので、ここがタイミングかなと思い、卒業に至りました。

僕自身もやりたいことは多くありますし、できることもあります。いろいろな方からお声が掛かることもあり、Voyageで学んだことを活かして別の活動ができればと考えています。

ゆいぴ 子離れですね。

ーー(笑)

PONYO 一通りの流れができたので、第4回を開催するときに「できない」ということはないと思うんですよ。そう思えたから、これからは一般の方としてVoyageの応援をします。

それで卒業の話をアルティメットゆいさんに話したところ、「でも10回目には帰ってきますよね?」って言われたんですよ(笑)

ーー再結成的な話の流れですね(笑)

PONYO それぞれの方向性に成長したみんなが10回目のVoyageで集まろうと話したんですよ。

ゆいぴ そうしましょう。それで10回目のVoyageでみんなが集結して終わりにしましょう。

PONYO なので、アルティメットゆいさんには「10回続いたら帰ってきてもいいですよ」と答えました。(笑)

ーーPONYOさんはこれからどのように活動していきますか。

PONYO Voyageから離れる以上、Voyageに負けないぐらいのコンテンツを作ろうと思っています。

ゆいぴ ライバルということですか?

PONYO ライバルになりましょう。

ゆいぴ ファッションだけはやめてくれませんか?

PONYO どうかな……ファッション好きだからなぁ……(笑)

ーー最後にですが、これからのVoyageについて展望をお聞かせください。

ゆいぴ 楽したいですね(笑)でもそういうわけにはいかないですね。メンバーの体制も変わると思いますが、そのときにできる最善を尽くしたいと思います。

インタビュアー:柘榴石まおりん(X)