日本時間6月14日、VRChatにて中国のインターネットミームを集めた博物館ワールド「中文梗博物馆v1․1 Chinese memes Museum[CN]」(以下、中文梗博物馆)が公開されました。四迹さんをはじめ、中国語圏ユーザーによってつくられたこのワールド。タイトルから単なるネタワールドなのかと思いきや、実際に行ってみると、「VR展示イベントの正解」ともいえるほどトップクラスのワールドクオリティでした。
「なぜベストを尽くしたのか……」と言いたくなるほど贅沢なこの「中文梗博物馆」。具体的な展示物に関しては記事では紹介できないものも多いのですが、特にどの部分がすごかったのか、「VR展示・博物館ワールド」としての観点からご紹介をしていきたいと思います。
当該ワールドは「インターネットミーム」を主題としていることもあり、グレーな要素を多分に含みます。あくまで「非公式」ワールドとして楽しんでください。また、本記事はワールドの批評・紹介を目的としており、不法行為を助長する意図は一切ございません。
「中文梗博物馆」とは?
「中文梗博物馆」(正式名称:「中文梗博物馆v1․1 Chinese memes Museum[CN]」)は、中国語圏ユーザーである四迹さん、Sonic853さん、时隐さんらを中心に制作された中国のインターネットミームを総合的に紹介する博物館というコンセプトのワールドです。
すごいポイント① とにかく圧倒的なボリューム!
このワールド、なによりすごいのが圧倒的な展示ボリュームです。ネットミームというものはその性質上、時事性が高く、かつ記録にも残りにくいという全容を記述するハードルが非常に高い文化です。それを、その起源から最新事情まで、ひとつひとつにキャプションや音声、展示用モデルなども制作して、まとめる労力は少し想像しただけで辟易とします。
エリアはテーマごとに大きく7つに分かれています。前半の「梗起」「梗承」「梗兴」では、1995年頃のインターネット黎明期から、2010年代頃までのインターネットミームを、時系列順に紹介しています。
中盤の「二次元」「玩家」では、それぞれ二次元とゲームに関する分野別のミームを紹介。続く「梗繁」では、今も広がっているインターネットミームというような趣旨でここ数年の事例を展示。ラストの「家馆」では、「ミーム」というものをさらに広い視点で捉えようという試みなのか、中国の歴史に関するネタが取り扱われていました。
筆者がフレンドと一緒に1周した際には約1時間ほどかかりましたが、これでもすべての展示をじっくり見たわけではないので、場合によってはさらに多くの時間がかかるでしょう。
中国のインターネットミームを並べたということで、日本人でも楽しめるワールドなのかと不安に思ったら大間違い。意外にも日本から輸入されたインターネットミームや、日本でも話題になった海外ミームもかなり多く展示されており、全体の半分弱程度は知っているものだった印象です。
すごいポイント②とにかく圧倒的な展示クオリティ
「Chinese meme museum」というワールドタイトルを見たら、ただのネタワールドか何かだと思うでしょう。しかし、このワールド、単に展示ボリュームが多いだけではなく、1時間まわっても一切飽きない圧倒的な展示クオリティも有しているのです。純粋なVR展示会としてのクオリティが異常に高い。これもこのワールドがにわかに話題を呼んでいる要因の一つです。
特に展示の工夫として感動したのがこの「Minecraft」のエリアです。
一見すると、ただのミニチュア展示ですが、展示模型の中と外に何やら怪しげな「ネザーゲート」が設置されていますね。
なんとこれ、ゲートをくぐるとミニチュア展示の中に入り込めちゃうんです!
特殊ギミックのためか、カメラには映らないのですが、ミニチュア展示の中に入っている人は外からも見えます。展示物の中で歩き回るフレンドを眺めるのも楽しいですし、何よりこの「不思議の国のアリス」を彷彿とさせる体験。VR博物館であることの利点を最大限に生かしたまさに発想の勝利といえる展示手法だなと感じました。
すごいポイント③その他にも遊び心満載の展示がたくさん!
展示手法として特に驚きを覚えたのは上記の「Minecraft」エリアでしたが、ほかにも遊び心満載の展示がたくさんありました!
例えばこれ。「希望の花~」の楽曲と「止まるんじゃねえぞ」のセリフでおなじみのTVアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」オルガ・イツカのあのシーンが完全再現されてます!(笑)
細かいギミックだなぁと感心したのが、この解説パネルにあるオブジェクトON/OFFを切り替えるボタン。これをクリックすると、「オルガ・イツカ」風モデルを非表示にできて、だれでも団長ごっこができてしまうのです!
続いては、「玩家」コーナーへ行くためのこの土管。
どこかで見たことある緑の土管をくぐってみるとそこには……
あの某人気ゲームの世界観が広がる通路が……!一気にゲームの世界観に引き込まれる、まさに導入として完璧な演出と言えるでしょう。展示ルートの緩急の付け方が本当に良く計算されています。
そして最後に、最近Twitter上などで話題に上がっているあのエリアも実はこのワールドなんです!
展示名は「When my mom isn’t home」。一時期本当に流行りましたよね。(笑)
オリジナルのYouTube動画は現在3900万回再生を超えています。アップロード日は2014年。思ったよりも前のミームでした。
抱腹絶倒な「中文梗博物馆」 一見の価値アリ!?
圧倒的な物量とクオリティでにわかに話題を呼んでいるこの「中文梗博物馆」。青春時代をインターネットで過ごした層であれば、だれもが「これ知ってる!」「懐かしい!」「流行ったな~」と感じる場面があることでしょう。遊び心満載の展示も相まって、実際にワールドをまわった1時間、誇張なしに「抱腹絶倒」という言葉を使えるほど笑い転げてしまいました。
インターネットミームという様々な面からグレーでかつ、時代とともに流れていってしまいがちな、かなり「つかみどころのない」文化を、ここまで歴史・ジャンルの縦と横の線を貫いて展示しようという試みは、かなりチャレンジングかつ文化的な資料としても価値のあるものでしょう。
そしてなにより、展示会・博物館ワールドとしても、トップクラスのクオリティを誇る作り込みと遊び心。今回記事で紹介したのは、ワールド全体の中でもほんの一部分でしかありません。その全体像はぜひ自分自身の目で確かめてみてください。
●参考リンク
・ワールドリンク(VRChat)
・公式紹介動画(bilibili)
・四迹(bilibili)