VRChatで感じる戦争の記憶。「語り続ける戦争遺跡」ワールドレポート

8月7日、東海地方に多く残された「戦争遺跡」の3Dスキャンモデルを展示するワールド「語り続ける戦争遺跡 war ruins ⁄ Chunichi Shimbun」がVRChat上に公開されました。

今年の8月15日で、終戦から79年。戦争体験者がどんどん減っている現在、かつての戦争について改めて考えるきっかけは減る一方です。

そんな中公開された「語り続ける戦争遺跡」。一体どんなワールドなのか、紹介していきます。

「語り続ける戦争遺跡」とは?

このワールドのもととなった中日新聞「語り続ける戦争遺跡」は、戦災をいまに伝える東海地方の「戦争遺跡」を特集している企画です。公式サイト上には、多くの記事や中部の戦争遺跡マップなどが公開されています。またそれだけでなく、遺跡の風化が進む現状を記録に残そうと、動画による記録や、3Dスキャンモデルの作成が行われていました。

そして今回、中日新聞がこれまでに収集してきた戦争遺跡の3Dモデルを展示するため、VRChat上に公開されたのが本ワールドです。

作り込まれた建造物と展示

まずワールドに入って、目の前にある階段を上ると、開けたエントランスに出ます。

エントランスはとても綺麗に作りこまれています。ワールド全体で見ても、展示以外の箇所、例えば通路などのクオリティが高く、それだけでも見る価値のあるワールドになっています。

展示は「軍事・防衛関係」「戦闘地・戦場関係」「石碑」と3つのカテゴリに分かれていて、エントランスから各展示の場所に行くことができます。

俯瞰とガリバートンネルで体感

多くの展示の中から、特に印象的だったものをいくつかピックアップして紹介します。まずは「伊良湖射場の気象塔と福江観測所跡」。ひと際大きいこの展示では、現在も残っている気象兼観測所の周辺一帯がまるごとモデル化されています。

上空から俯瞰するように遺跡を眺められるだけでなく、体が小さくなるトンネルを通ることで、実際の遺跡の大きさを感じたり、遺跡がある周辺を歩いたりできる特徴的な展示になっています。

イチョウをのぞき込む

続いて、「戦災樹木のイチョウ」。空襲の影響で中心部が空洞になりながらも生き続けているイチョウの3Dスキャンモデルが展示されています。イチョウの生命力に驚かされるとともに、空襲の恐ろしさを感じる展示です。

3Dモデルなので、空洞部をのぞき込んだりもできます。これは映像記録では難しい、VRChatならではの体験でしょう。

音色で感じる戦争の記憶

最後は、「被弾ピアノ」。 米軍機による機銃掃射で側面を抉られたピアノが展示されています。

VRChat上でこのピアノを弾くことはできませんが、隣に設置された動画プレイヤ―で流れている解説動画では、修復された被弾ピアノを使って演奏された曲が使用されていて、音で戦争遺跡を感じることができます。

戦争の記憶を感じる

この記事で紹介したもの以外にも、様々な展示が『語り続ける戦争遺跡』にはあります。一人でじっくりと回るのはもちろん、友人と議論しながら回るのもいいかもしれません。ぜひ実際にワールドを訪れて、戦争の記憶を感じ、今一度戦争について考えるきっかけにしてみてください。