総務省「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」が発足し、事務局資料の「メタバース等の様々な利活用」において、バーチャル美少女ねむ著『メタバース進化論(技術評論社)』より「イベントの様子」・「”VR飲み会”の様子」として画像提供を行いました! 総務省で実際のユースケースに寄り添った議論が行われることは非常に嬉しいです。
また、こちら研究会資料について一部で不安の声が上がっていた「Web3」「メタバース」に関する表現についても、指摘して見解を頂いたので本記事で紹介させてください。
目次
総務省情報通信政策研究所「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」
2022年7月13日、総務省は「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を発足することを発表しました。
総務省は、メタバース等の利活用が急速に進展しつつあることを踏まえ、様々なユースケースを念頭に置きつつ情報通信行政に係る課題を整理することを目的として、「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を開催します。
1 目的
総務省では、メタバース等の利活用や、Web3の市場が拡大しつつある中、利用者利便の向上、その適切かつ円滑な提供及びイノベーションの創出に向け、ユーザの理解やデジタルインフラ環境などの観点から、様々なユースケースを念頭に置きつつ情報通信行政に係る課題を整理することを目的として、新たに「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を開催します。
2 研究事項
(1)メタバース等の利活用における利用者利便の向上に関連する事項
(2)メタバース等のユースケース毎の利活用における課題整理に関連する事項
(3)メタバース等の利活用拡大が、デジタルインフラ、社会経済活動、利用者等へ与える影響
(4)(1)から(3)に掲げる事項のほか、新たな時代のメタバース等の利活用に関連する事項
7/13 総務省 報道資料「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」の開催
そして本日8/1、第一回の研究会が開催されました。開催概要や事務局資料はこちらで公開されています。
総務省|Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会|Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会(第1回)
研究会に画像提供しました!
なんと総務省の研究会事務局さまよりご相談を頂き、第一回事務局資料の「メタバース等の様々な利活用」において、拙著『メタバース進化論(技術評論社)』より、私のMusic Vketでの路上ライブとVR飲み会の実際の写真を「イベントの様子」・「”VR飲み会”の様子」として提供しました!
拙著でも述べた通り、メタバースは日本が優位性を生かしてリーダーシップを取りうる非常に大きな可能性を秘めた領域です。総務省で実際のユースケースに寄り添った議論が行われることは非常に嬉しいですし、今後の展開が楽しみです!
※参考:バーチャル路上コンサート @MusicVket3
※参考:メタバース飲み会 ~ぶらり昭和飲み屋街へ~【ポピー横丁】
気になった点:「Web3≠メタバース」では?
一方で、資料を見ていて私が非常に違和感を感じた点は、全く別の概念である「Web3」と「メタバース」の理解がごちゃまぜになってしまっているように見受けられたことです。
- そもそも名称が「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」となってしまっている(「Web3時代」と「メタバース」って関係あるの!?)
- 事務局資料の骨子は仮想空間である「メタバース」の利活用であるにも関わらず、p5において唐突にWeb3の話が挿入され、その中で「Web3時代のデバイス」として「VR/AR/MRデバイス」が挙げられている点(「?」が付いていますが…)
以上について研究会開催前に事務局さまに指摘したところ、今回の資料については今から修正できないものの「研究会としてもWeb3とメタバースは別概念として認識しており、誤解を招かないように今後の説明等の際にもこの点留意したい」旨、回答を頂くことができました(良かったです!)。
正しい理解のもと、実際のユースケースに寄り添った議論が行わるとよいなと思ってます。
なお、これについては私以外にもネット上で不安の声が挙がっていました。
つい先日『いちばんやさしいWeb3の教本(インプレス)』で用語の解説がデタラメで大炎上となり回収となったことが記憶に新しいですが、こちらでも「ブロックチェーンで構築されたメタバース」「メタバースはブロックチェーンが使われている」という実情からかけ離れた記載があり問題視されていました。
「Web3」「メタバース」とは?
「Web3」とはブロックチェーン技術を用いた分散型インターネットのこと、一方で「メタバース」とはオンラインの三次元仮想空間のことで、これらは全く別の概念です。
「Web3」については、提唱者であるEtheriumの創設者ギャビン・ウッド氏の記事が非常に参考になります。もちろん定義が固まった言葉ではありませんが、とはいえブロックチェーン技術の上に分散型インターネットを構築する、という部分はブレない部分で、VR/AR技術がWeb3の要件であるとされることはほとんどないと思います。
※参考:Web3.0とはどの様なものかをギャビン・ウッド氏のブログから学ぶ | 一般社団法人日本暗号通貨技能検定協会
「メタバース」も細かい定義が定まっている訳ではないものの、VRゴーグルで仮想世界に没入するSF小説「スノウ・クラッシュ」が初出の言葉で、「オンラインの三次元仮想空間」のことを指す部分は概ねブレない部分です。現状「メタバース」と呼ばれているサービスのほとんどは処理速度の低いブロックチェーン上で実現できるようなものではなく、全て既存の中央集権的なサーバーのインフラの上に構築されているものです。
※参考:拙著『メタバース進化論(技術評論社)』でも「メタバース」という言葉の由来や定義など詳しく紹介しています。
実は欧米でも「Web3」と「メタバース」とメディア等でごちゃまぜに喧伝されて混乱が広がっており、遂に先日7/25にメタバース領域の著名な投資家であるマシュー・ボール氏が見解を発表するに至り話題になりました。
※参考:DIGIDAY|「本質的に、 Web3 とメタバースは相互に関連していない」:メタバース専門家 マシュー・ボール氏
私は「Web3」「メタバース」どちらも技術トレンドとしてとてもポジティブに捉えていますし、場合によってはそれらを融合させるメリットも少なからずありうると思っています(そう主張されている方もいます)。ただし、技術の活用は正しい理解から始まるもので、相乗効果を語る文脈以外で「単に新しい技術領域だから」という理由でこれらをごちゃまぜに語るのはナンセンスです。
今回総務省がメタバースに着目してくれたのはとてもよい機会ですので、誤解が払拭されて、より現実的な活用に向けた議論が加速するとよいなと思っています。
参考
文化庁にも「メタバース及びNFT」について助言&データ提供を行いました。こちらでも「メタバース」「NFT」共に有望な技術である一方で、技術としては全くの別物であることと、活用には技術とユースケースの正しい理解が重要である旨助言させて頂きました。
※本記事は、バーチャル美少女ねむさんより特別に許諾をいただき以下note記事を再編集・転載したものとなります。
note|総務省「Web3/メタバース」研究会に画像提供しました【と、Web3≠メタバースでは!? の話】