Meta Quest 3Sは、48400円から購入できる最安レベルのVRヘッドセットです。しかも、機能や使い勝手はほとんどMeta Quest 3と同じです。これからVRChatを始めてみたい入門者はもちろん、ヘビーユーザーにも応えられるポテンシャルを秘めています。
一方で、Meta Quest 3との違いを理解したほうが後悔のない選択ができるのも事実です。本記事では、Meta Quest 3Sを2か月ほど使用した筆者の視点から、本機を「VRChatユーザー向けにおすすめできるか」という観点からレビューします。
Meta Quest 3Sの特徴
Meta Quest 3Sは、Meta Quest 3の廉価版モデル。一部の性能を抑えることで価格を抑え、現行販売されているVRヘッドセットの中でも最安レベルになりました。
VR未経験者が最初の一歩を踏み出すときに、価格の高さは大きなハードルとなります。しかし、Meta Quest 3Sはそのハードルを大幅に下げてくれます。現状、最もVR入門向きのデバイスと言えるでしょう。やはり安さは正義です。
Meta Quest 3Sの性能比較
Meta Quest 3の廉価版であるとしたら、性能はどのようになっているのかが気になるでしょう。Meta Quest 3、および前世代機のMeta Quest 2と性能比較してみます。
Meta Quest 2 | Meta Quest 3S | Meta Quest 3 | |
片目当たりの解像度 | 1832 × 1920 | 1832 × 1920 | 2064 × 2208 |
画素密度(PPD) | 20PPD | 20PPD | 25PPD |
レンズ | フレネルレンズ | フレネルレンズ | パンケーキレンズ |
視野角(水平/垂直) | 90°/90° | 96°/90° | 110°/96° |
SoC | Snapdragon XR2 Gen1 | Snapdragon XR2 Gen2 | Snapdragon XR2 Gen2 |
RAM | 6GB | 8GB | 8GB |
瞳孔間距離の調整 | 3段階のみ | 3段階のみ | 無段階で可能 |
パススルー | モノクロ(低画質) | カラー(4MP、18PPD) | カラー(4MP、18PPD) |
価格 | 販売終了 | 128GB:48,400円256GB:64,900円 | 512GB:81,400円 |
Meta Quest 3と比べると主に画質面(解像度、画素密度、視野角など)の性能が抑えられていることが分かります。特にレンズは、Meta Quest 3のパンケーキレンズに対して、Meta Quest 2と同じフレネルレンズを採用しており、このレンズの違いが映像の見え方や満足度に大きく影響します。
一方で、処理性能面(SoCやRAM)や、VRヘッドセットを付けた状態で周囲を確認できるパススルー機能は、Meta Quest 3と遜色ありません。
Meta Quest 3と同様に高画質でかつカラーで表示されるため、Meta Quest 3Sでも十分なMR(Mixed Reality)体験ができます。ですが、VRChat用途に限ればMR機能は基本的に重要ではありません。そのため、VRChat専用機として使うのであれば、Meta Quest 3Sの機能だけで充分です。
容量についても、VRChat専用機として使うのであれば、Meta Quest 3Sの最小容量・128GBで問題ありません。そのため、Meta Quest 3SとMeta Quest 3で比較する際は、映像の見え方とMR機能を活用するコンテンツへの関心で考えることがオススメです。
装着感とアクセサリーについて
Meta Quest 3Sの装着感は決して良いとは言えないでしょう。ほぼ全てのパーツがヘッドセット前面に集中しており、前後の重量バランスが悪いからです。そのため顔面や目の周りが圧迫されやすく、非常に装着ストレスを感じやすいデザインをしています。筆者は装着してから30分程度で顔の痛みを感じてしまいました。
VRChatは1時間以上遊び続けることも珍しくありません。そのため装着感の良し悪しは非常に重要な要素と言えるでしょう。
対策としては、「別売りのヘッドストラップを購入する」などがあります。特にバッテリー付きタイプのヘッドストラップであれば、前後の重量バランスが改善するため装着感がかなり良くなる印象です。
Meta Quest 3SであればMeta純正のエリートストラップがありますが、純正品は値段が高いため、サードパーティ製のヘッドストラップも視野に入れておくと良いでしょう。
筆者はBOBOVR製のバッテリー付きストラップを愛用しています。
入門もヘビーユーズもOK:全てのVRChatが遊べる
本時期執筆時点で、VRChatを遊べる環境は、モバイル版とSteam版の2つに分かれています。Meta Quest 3Sの場合は、単体で遊ぶのであればモバイル版、パソコンに繋げて遊ぶ場合はSteam版となります。
・モバイル版:Meta Quest 3SのようなVR機器単体や、Android搭載のスマートフォンで遊べる環境。クロスプラットフォーム対応されたアバターのみ表示され、同対応のワールドのみ訪問できます。
・Steam版:Steamからダウンロードして遊べる環境。VRなしのデスクトップモードと、VR機器とパソコンを接続するVRモードが存在します。モバイル版に比べ制約が緩いが、一定以上のスペックを持つゲーミングPCが必須です。
モバイル版とSteam版は、アバターやワールドの制約に違いがあります。Meta Quest 3Sは、手元のデバイス次第で、いずれかの環境を選んで遊ぶことができます。PCがない場合でもモバイル版から遊び始めて、後からSteam版へ移行することも可能です。その際、アカウントに紐づいているお気に入りなどのデータなどはそのまま使うことができます。
結論:入門機としておすすめ。質を求めるならQuest 3
結論としては、VRChat用途を想定した場合、Meta Quest 3Sはエントリーモデルとして、体験の質を求めるならMeta Quest 3がオススメです。
性能比較でも言及しましたが、Meta Quest 3のパンケーキレンズは本当に素晴らしいです。映像がクッキリ見える範囲(スイートスポット)がかなり広いため、どこを見てもぼやけませんし、ヘッドセットが多少頭からズレようがピントがずれず、常にクリアな視界を保ってくれます。
筆者はこれまで20台以上のVRヘッドセットをレビューしてきましたが、Meta Quest 3(とMeta Quest Pro)のレンズが最も素晴らしいと感じています。現に筆者は、Meta Quest 3SもMeta Quest 3も所有していますが、レンズの違いによるVR体験の違いが理由で、Meta Quest 3Sは全く使わなくなりました。Meta Quest 3Sは「廉価版」なのです。
しかし、Meta Quest 3Sの128GBモデルは48400円、Meta Quest 3(512GBモデル)は81400円と、価格には33000円もの開きがあります。その差は決して小さくありません。Meta Quest 3は満足度が高くてオススメですが、価格に躊躇してしまうのであれば、今すぐMeta Quest 3Sを買ってVRを体験するのが良いでしょう。