VRChatの写真文化は日々進化を続けています。その中で独自の表現を追求するフォトグラファーたちが、バーチャルならではの写真表現を模索しています。今回注目するtakakongさんは、あえて「正方形」というフォーマットに特化した作品を発表し続けているフォトグラファーです。
VRChatでの写真撮影を始めてわずか半年。写真が並べられている展示も、他の写真展でもなかなか見ない雰囲気が出ていました。今回の個展では、すべての作品が1:1の正方形で統一。その切り取り方に込められた思いや技法についてフォトグラファーのtakakongさんへ話を聞きました。

スクエアフォーマットという選択
──今回takakongさんの特徴はスクエアサイズで撮影していることにあります。スクエアとなると、正方形ですね。通常だと16:9で横長であることが多いと思うのですが、今回出している作品はすべて1:1の正方形となるわけですか。
そうなります。

──元々写真の趣味はありましたか?
VRChat自体は2023年の12月から始めていて、写真をしっかり撮り始めたのが2024年10月になります。
──となると、VRChatの写真趣味は半年ぐらいですね。スクエアサイズをメインにしてやってみようと思ったのは何があったのでしょうか。
単純にやっている人が少ないから始めました。自分が知っている範囲では、もう1人いるのですが全然数がない領域です。
──毎回展示物を見ていますが、今回はすべて正方形なので見慣れない感覚がしてきますね。実際、takakongさんがスクエアサイズで写真撮影をしているのはどのような考えがあるのでしょうか?
写真のレイアウトとして好きというよりも、撮影していて好きだから使っているのが大きいですね。16:9の横長と違って、端っこの部分がないのでどのようにして被写体を収めるか難しいのですが考えるのが好きなんです。

──作品をいくつか見ていても、窮屈さは感じないと思いつつも凝縮されている印象は感じますね。考えながら撮影しているのでしょうか。
画角を考えながら撮るよりも、その場のアドリブで模索して撮影していますね。
──他にも作品を見ていると、前に物を置いて奥行きを示すものもあって、切り取る範囲が狭いスクエアでやるものなので、針に糸を通すような調整を感じさせちゃいます。
物があると想像できる余地が増えますから。

──スクエアサイズの撮影はどのように行っているのでしょうか?
アバターに入れられるギミックのIntegralとFlex FishEye Lensで撮影しています。VirtualLens2もなくはないのですが、撮影するときは直接確認できないので感覚で撮って後でスクエアサイズにしています。
──すごいことを言い出しますね。
レイアウトによって切り取られるものが変わる
──情報量の入り方が印象が変わってきますね。真ん中にアバターを置いてといったものもありますが、少し引きの画で撮影されるのもありますよね。
日々の瞬間を切り取るといったことはあります。自然な感じで撮ることを考えると、被写体が近づくのは難しいかなと。

──横長で引きで撮るとまた変わってきますかね。
また変わってきますね。情報量が増えていますので。
──横長だと視線誘導といった動きを盛り込むことができるけども、最初にみた印象を万全に、誰でも変わらず届けるならスクエアの狭さが生きるみたいな感じですね。ちなみにスクエアサイズ以外で撮影することはありますか?
65:24の横長でのレイアウトを使った撮影はしていますね。
──また普段馴染みなさそうなレイアウトを……
井の頭公園前駅のワールドで撮ったものだとこんな感じですね。リアルでスナップショットを撮ったことがあるので得意です。

──見たことのない切り取られ方だ……情報量的にも横長を活かしていますよね。
このレイアウトで撮影したものを使って、3枚1セットのスクエアサイズの写真に仕立てています。比率は変わってしまうのですが、最近楽しんでいる遊びですね。

──こうしてみると、レイアウトによって同じ場所でも見せ方が変わってきそうですね。切り取り方によって写真における主役を誰に仕立てるのか、情報量をどのように置くのか、それぞれのレイアウトごとに活かし方を変えているのが伝わりました。
難しいことを特に考えず、珍しいものを見る感覚で来てほしい
──ワールド『Gallery & fanCafé Kittens』で開かれる個展「記憶に残る写真を、」について聞いていきます。展示されているエリアは1,2,3階と分かれていますが、どのような選定を行いましたか?
1階はお気に入りの写真、2階は普段撮影している写真、3階はワールドを映した写真となっています。

──早速手前を見ていると、実写とイラストの中間のような質感を感じさせますね。
光と影を大切にしていることは多いですね。

──自然なので、ちゃんと言わないといけないのですが、カメラの持つ手が自然すぎませんか?VRChatで何かを持つのを自然に行うのは手間がかかるので。
レンズキャップを外すシーンなんですよ。つまりは、写真撮影をこれからする場面ってことです。
──まさに展示会で1番最初に置くのに相応しい一枚ですね。他の写真を見ていると、質感に統一感がありますね。
自分としてはフィルムのようなザラザラとして質感の入った一枚が好きなんですよね。なので、Integralを愛用しているのもあります。

──光の入り方がキレイなうえ、質感とスクエアなのも相まって絵画やジャケットを見ているような気分になってきます。写真に映っているのは、ご自身のアバターですか?
そうなります。今回は自分だけを映しています。普段はフレンドを撮影することもあるのですけどもね。

──3階に置かれているワールドの写真は額縁が大きくなっていますね。光の軌道が印象的な写真もIntegralでシャッターを開き続けて露光を活かした感じでしょうか。
同じ制作者が出しているギミックで、面光源を出すギミックに搭載されているドローン機能を使って撮影したものですね。

──光源にドローン機能があるわけですね!? 写真撮影に使うギミックは豊富ですね。
1番奥にある写真たちは、直近のアップデートで追加されたクロスフィルターを活かしたものです。この一枚とかだと、真ん中の白い光が街の明かりになっています。

──クロスフィルターは、光源から十字状に線を伸ばす効果を出すフィルターですね。強弱の調整ができて、最大限に効果を出すとここで展示されているような光の線が表現できるわけですね。街の明かりが幻想的に見えます。
クロスフィルターを使ったものは、スクエアがちょうどいいですね。横長だと同じのが続くだけか……みたいな印象を与えてしまうので。
──これもまたスクエアを活用した1枚なわけですね。
Integralが好きなのは、人の動きを拾えるところですね。


──最後に個展に来ていただける方に一言お願いします。
他の方と異なり正方形のスクエアのみで統一されているので珍しいものを見るような感覚で来てください。本当に深いこと考えずに「あっ、いいな」って楽しめているとうれしいなって感じです。
──今回はありがとうございました。スクエアにチャレンジしてみたくなるお話を聞けました。

takakongさんの個展は、4月20日から開催されます。1ヶ月程度の期間限定の開催のため、気になる人はお早めに訪れることがオススメ。